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ゼロHiME~嬌嫣の使い魔~ 第九話(中編)


 「まずいぜ姐さん、このままじゃ追い詰められてジリ貧になる」
 「せやね、こら本気ださんと勝てへんかも」

 繰り出されるゴーレムの拳を避けながら、静留はデルフに向かって軽口を叩く。

 「軽口とは随分と余裕じゃないか。なら、これはどうだい?」

 そう言ってフーケが再び杖を振ると、静留の移動を妨害するようにゴーレムの攻撃に合わせてぼこぼこと地面から土の柱が飛び出す。
 始めのうちは全てかわしながら反撃したりと余裕を見せていた静留だったが、相手は疲れを知らぬゴーレムである。疲労から徐々に動きが鈍くなっていき、やがて防戦一方な状況に追い込まれていく。

 「お願い、シズルを助けて!」
 「無理、近づけない」

 今にもシルフィードから飛び降りそうな剣幕で怒鳴るルイズに向かって、タバサは少し焦った表情で首を振る。

 「落ち着いて、ルイズ。タバサのいう通り、近づかないとどうしようもないわ。それにヘタに魔法で援護すれば、シズルを巻き込みかねない」

 ルイズはいさめるようなキュルケの言葉に唇をかみ締める。なんとかシズルを手助けできないかと思った時、タバサが『破壊の杖』を抱えているのに気づいた。

 「タバサ、それを!」

 タバサはうなずくと、ルイズに軽量化の魔法をかけた『破壊の杖』を手渡す。
 しかし、棍棒状の杖は手にしてもなんの魔力も感じられず、とてもマジックアイテムだとは思えない。
 その時、何故か脳裏に静留に渡せばなんとかなるのではないかという考えがひらめき、ルイズは立ち上がって杖を高く掲げた。

 「シズル、受け取って!」

 そうルイズは大声で叫び、ありったけの力を込めて『破壊の杖』を静留に向かって投げ放った。

 「――姐さん!」
 「言われんでも分かっとります!」

 静留は突き出す土の杭を利用して空中に跳躍すると、左手にデルフを持ったままの姿勢で右手を伸ばしてを掴み取った。
 同時に左手のルーンが強力な光を放ち、『破壊の杖』に関する情報が静留に流れ込む。

 「……使えるかどうか知らんけど」

 着地と同時に静留はデルフを地面に突き刺し、『破壊の杖』――パンツァーファウストの膨らんだほうを前方にして肩に背負う。

 「あんじょう往生しいや」

 そう言うと、照準機を起してゴーレムに照準を合わせると、静留は発射スイッチを押し込んだ。
 発射筒の後方から爆風が吹き出し、弾頭が鈍い音を立てて発射される。そのまま弾頭は放物線を描いて飛んでいき、みごとにゴーレムに命中した。
 轟音と共にゴーレムの上半身が吹き飛び、金属混じりの土の欠片が周囲に降り注ぐ。

 「……ちっ、まずいね」

 目の前でゴーレムを破壊されたフーケは慌てて森の方へと逃走を始める。

 「どこいきますん? 逃がしまへんえ」
 「――ッ!」

 フーケは追ってくる静留に向かって杖を振るおうとするが、静留がパンツァーファウストの発射筒を投げつけて杖を叩き落とす。そして、そのまま一気に距離を詰めた静留はフーケを地面に仰向けに押し倒して、その首の横にデルフを突き立てた。

 「そのまま動かんといてな、危ないさかいに」
 「シズル、大丈夫?」 

 にっこり笑ってフーケを脅しつける静留の元へ、着地したシルフィードから降りたルイズ達が駆け寄ってくる。

 「うちは大丈夫どす。この通りフーケはんも取り押さえましたしな」
 「本当に大したもんだわ。ルイズが『破壊の杖』を投げた時はどうなるかと思ったけど……で、杖は無事なの?」

 キュルケが誰ともなく尋ねると、タバサがフーケのそばに落ちていた発射筒だけになった『破壊の杖』を彼女に手渡した。

 「ねえ、これ……壊れてない?」
 「ええ~っ、そんな~」

 姿が変わってしまった『破壊の杖』を見て、キュルケは顔を引きつらせ、ルイズががっくりと肩を落とす。

 「心配せんでもええ、これは使い捨ての大砲みたいなもんやから」

 その静留の言葉に全員から安堵の息が漏れる。その時、タバサがふと思いついたように呟く。

 「……ミス・ロングビルは?」
 「そいえば森に行ったきりよね、大丈夫かしら?」
 「大丈夫でしょ。案外、馬車まで戻っているかもしれないし」

 そんなルイズ達の言葉に、静留がくすりと笑いながら答える。

 「ああ、心配せんでもミス・ロングビルならここにいますえ」

 静留はそう言うと、フーケが被っていた黒いフードを取り去った。その下から現れたのは悔しげな表情を浮かべたロングビルの顔だった。


 「……でも、大丈夫? フーケを逃がしたって言い訳は通るとしても、ミス・ロングビルが消えたことを納得させるのは至難の業よ」
 「ほんならフーケは実はミス・ロングビルの仇敵で、後を追っていったいうことにすればええかと」

 (せっかく捕まえたのに逃がすなんて何考えてんのよ!)

 馬車で学園に帰る途中、そんな会話を交わすキュルケと静留を見ながらルイズは、心の中で毒づいた。
 フーケの正体を暴いた後、彼女を廃屋に連れ込んで尋問した静留は、何故かフーケを逃がすことを強硬に主張すると、皆を上手くいいくるめて逃がしてしまったのだ。もっともルイズは最後まで不服だったのだが。
 ちなみにフーケは「ううっ、汚されちゃった……ごめんね、ティファニア」と意味不明なことを言い残し、泣きながら脱兎のごとく逃げ去っていった。 

 (大体、そんな嘘、誰も信じる訳ないでしょうが)

 「……なるほどのお、彼女にはそんな事情があったとは。どうりですんなりと儂の秘書になってくれた訳じゃ。仇敵が現れるのを学園に入り込んで待ち構えていたとは、なんとも健気な話ではないか」

 ルイズの懸念とは裏腹に学院長室で話を聞いたオスマンは、その嘘をあっさりと信じてしまった。しかも、勝手に美談をつけ加えて感動すらしている。

 「ところで、ミス・ロングビルはどういう経緯でお雇いなさったんどすか?」
 「街の居酒屋じゃよ。私が客で彼女は給仕をしておったのだが、尻の形が実に儂好みでのう……ついついこの手が撫でてしまったんじゃ。だが、彼女は怒らんかったので私の秘書をやらないか?とな」
 「はあ、そうどすか」

 オスマンの答えに静留が呆れたような表情を浮かべる。全員から軽蔑のまなざしがオスマンに注がれる。

 「……一度、死んだほうがいいのでは?」

 コルベールがボソッと呟き、それを聞いていた皆が同意するようにうんうん頷いた。

 「さて、諸君はフーケを取り逃がしたとはいえ、『破壊の杖』を回収し、無事帰還した。つまり一件落着じゃ。ついては今回のご褒美ということで、君達には学院から感謝状を贈らせてもらうつもりじゃが……おや、あんまりうれしそうではないの」

 オスマンは誤魔化すように咳払いをして話を続けるが、途中でルイズ達の表情が冴えないのに気がついて怪訝な顔で尋ねる。

 「『破壊の杖』を回収したとはいっても、ゴーレムを倒すために使ってしまって原型を留めていませんし……なによりフーケを取り逃がしたのですから一件落着とはいかないのではないかと」
 「なに、そんなことは君達が無事帰ってことに比べればささいなことじゃよ。君達が自ら動こうと努力した結果なんじゃからのう」

 オスマンは恐縮するルイズに好々爺とした笑顔で答えると、ぽんぽんと手を打った。

 「さてと、今日は『フリッグの舞踏会』じゃ。事件も無事解決したし、予定どおり執り行うとしよう!」 

 その言葉を聞いたキュルケの顔がパッと明るくなる。

 「そうですわ! フーケの騒ぎですっかり忘れていました!」
 「今夜の主役は君達じゃ。早速、用意をしてきたまえ。しっかりと着飾ってくるんじゃぞ!」

 ルイズ達三人は一礼して、コルベールと共に部屋を退室しようとするが、静留は動かずにルイズへ向かって声をかける。

 「ルイズ様、うちは学院長さんと少しはなしがありますさかいに、先に行ってておくれやす」
 「ふむ、何か私に聞きたい事があるようじゃの……よろしい。そういう訳でミス・ヴァリエール、悪いがしばしの使い魔をお借りするぞ。かまわぬかな?」
 「……はい」

 ルイズは心配そうにちらりと静留を見た後、学院長室を出て行った。



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