あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔を買いに-02


 振り向き、道の向こうからやってきた存在を認識すると同時に利き手で杖を抜く。腰を
下げ、四足の獣に近い姿勢をとって道の脇にさがった。
 細部を省略した説明により、凄腕暗殺者かベテラン近衛兵を思わせるが、もちろん現実
のわたしとは若干の差異がある。
 実際には来訪者をしばし呆然と見つめたのち、慌てて杖を抜き、奇声を噛み殺して転げ
まろびつ道を譲った。

 周囲の生臭さに隠れていたからかもしれないが、匂いを感じることはなかった。
 葉摺れの音さえ聞こえないのに、足音があれば耳に入らないわけがない。
 突き放す冷たさも抱き寄せたくなる温かみも感じさせず、空気の動きさえ感じられなく
て、要するに何も無い。かといってそこには真から何も無いのかというとそんなことはな
く、起こりと過程を省略して結果のみが存在した。

 ずぶり、と人の足型を形作って土が沈み込んだ。右の足型の次は左の足型、その次は右
の足型、と同じ事を繰り返す。
 新しい足型が生じるたびに古い足型が消え、土は元通りに盛り上がる。
 杖を構え警戒態勢をとったわたしの前を足跡が横切っていった。
 大きさから平均的な成人男性くらいの体格だろうが、姿かたちは存在しない。単に見え
ないとか感じられないとかいうことではない。存在そのものが無い。風に吹かれた木の葉
が何者にも触れず足型の上を通り過ぎていく。
 足跡は爪先が指す方角に進み、つまりは人間が歩くのと同じようにして前に進み、わた
しを顧みることなく歩いて――この場合歩くという動詞を使うことは適切ではないかもし
れないが、わたしにはそれ以外どう言ってみようもないため歩いていたということにして
おく――いった。 
 見送るわたしには全く頓着することなく、道の向こう、闇がぼんやり覆い隠している部
分に消えていく。吐息が漏れ、今まで息を止めていた事実にようやく気がついた。

 何だったのだろう。
 わたしはあれを魔獣やエルフ、幽霊等の意志を持った存在だと認識していたが、何かの
現象だったのかもしれない。
 もっと単純に、怪現象に見舞われ疲労困憊しているわたしが見た幻覚とか。そもそもこ
の怪現象自体が夢だとか。
 ああ、それなら大いに納得できることだと得心顔でぽんと手を打ったわたしの前を顔の
無い男が通っていった。頬をつねるとすごく痛い。

 足跡に引き続き、気配も匂いも音も無い。
 彼らはわたしの心臓に衝撃を与えて寿命を縮めんとしているのか。だとすれば、忌々し
いことだがその目論見は概ね成功しているといえよう。
 鼻も、髪も、耳も、目も、口も、何もかも、あるべき場所に無く、本来あるべきではな
い場所にも無い。
 息をのんだ。足跡に比べればまともかもしれないが、これはこれで見るものをぎょっと
させる。
 単純な造りの服を一枚まとい、腰帯でまとめることによって乱れを防いでいた。バスキ
ンに似た靴をつっかけていたが、彼はどう見ても男性だ。右手に小ぶりの布包みをぶら下
げている。中身までは分からない。
 つるんとして卵のように何も無い顔貌のインパクトは強烈だったが、異民族風の服装も
相当に異質だ。異民族とはいっても、どこの民族なのか想像もつかない。

 わたしは男を見た。客観的に見て不躾な視線だったと思う。男は足を止めてわたしを見
返した。スクウェアクラスのアイスストームもかくやに肝が冷えたが、今さら視線を外す
こともできず、わたしも黙って見返した。
「……俺の顔に何かついてるかい?」
 その声がどこから発せられたか。それは彼以外に分かりようがないし、ひょっとしたら
彼にだって分からない。腹の底から出たような低い声だったので、本当に腹の底から出た
のかも。

 顔の無い人間が、自分の顔に何かついているのかと聞く……これは彼なりの冗談とかユ
ーモアとか諧謔とかそういうものだったのかもしれない。
「いやいや、あんた顔無いから」
「あ、そうだった。こいつはうっかりしてた」
「もういやあねえ。あっはっはっは」
「まいったなあ。ハッハッハッハ」
 このような円滑なコミュニケーションをとるための掴みだったのかもしれない。
 だがウィットに富んだ返しで会話を盛り上げる余裕はなく、わたしは髪を振り乱して首
を横に振った。わたしの返答を見ても引っかかるものがあったらしく、妙な手つきでペタ
ペタと頭部を触りながら顔の無い亜人は歩み去っていった。
 危害を加えられなかったことに安堵した。右手の杖を左手に持ち替え、手汗をマントに
こすりつけた。額に浮いていた汗の玉はハンカチを出して拭い取り、警戒を崩さないまま
で比較的大きめの樹木の下へと腰を下ろした。

 整理してみよう。わたしは使い魔召喚の儀式の真っ最中だった。コモンを唱え、今まさ
に使い魔が召喚されんとしたはずだ。
 爆発音が無かったことから常日頃の失敗魔法とは違う現象が起きたものと思われる。場
所、時間は明らかに違っている。どこかに飛ばされたのか。
 他の魔法では爆発という形で失敗していたが、サモンに関しては転移という形で失敗す
る……なるほど。頬をつねって痛みを感じる以上はそう考えるのが自然というものか。
 ただその飛ばされた場所がどこかというと……顔の無い亜人は公用語を使っていた。つ
まり、海の向こうというわけではなかろう。
 だが、学院の近くにこのような場所はない。足跡だけの生き物も、顔の無い亜人も聞い
たことがない。
 ガリア? アルビオン? ゲルマニア? 歩いて帰れる場所ではないが、人間の住んで
いる場所ならまだマシだ。大砂漠? 火竜の住む山? まず違う。
 わたしは二度の出会いで手に入れた情報について考えた。

 足跡が何者だったのかは今もって分からない。何かを意味する片鱗さえ感じ取ることが
できない。あれはもうああいうものなのだと割り切って考えることしかできないだろう。
 人間の歴史は名をつける歴史だった。万物に名を与えることで恐怖を払拭して文明を築
き上げてきたのだ。人跡未踏の島を発見した開拓者、未知の生物に遭遇した探検家、新た
な物質を生み出したメイジ。彼らは偉大なる命名者として歴史に名を連ね、わたしはでき
たら彼らの末席にでも座らせてもらいたいな、と願う。
 名前のない足跡だけの存在は未知の象徴のようなものであり、つまり恐怖そのものであ
り、そんなものの目的や性質を考えるべきではない。強くそう思う。
 結局のところ言葉を弄して何を主張したいのかといえば、怖いものは怖い。それにつき
る。うん。

 そんな足跡に比べれば顔の無い男は名前が無いなりに理解しやすい。
 水系統のメイジならああいう芸当もできるだろうし、そういう姿かたちの亜人がいても
おかしくはない。
 言語は共通しているし、円滑ではないにしてもコミュニケーションをとることができた。
 じっと見つめるわたしを不審がる仕草などは人間と何ら変わりなかった。
 今思い返してみれば、あのまま別れてしまったことが大変悔やまれる。
 未知の存在でありながら言葉が通じ、こちらに食欲や縄張り意識等の害意を抱いていな
いという、亜人の中でも稀有な存在だったのに。
 もったいない。返す返すももったいない。今から追いかければ間に合うだろうか。
 しかし向かう先は足跡が行った方向と同じだ。どんな所か想像したくもない。それに、
ここ以外の場所が安全だと誰に保証できよう。

 よし、決めた。次に通りかかった者が危険そうなら木の陰に隠れてやり過ごす。安全そ
うなら話しかける。ここがどこか、今はいつか、どちらに向かえば人里におりることがで
きるのか。それだけ聞くことができれば自力で帰ることができ……るのだろうか。
 着の身着のまま、銅貨一枚さえ持たず、保存食や水袋も無い。これで未知の地から帰還
しようというのは無理があるような……。
 ええと、帰還した折に充分な謝礼を払うことを約束し、衣食の面で協力してもらう、と
いうことにしよう。そうしよう。

 誰かが整備しているとも思えない、だがなぜか雑草のない、その上どこかじめついてい
る地面の上に、肩から外したマントを敷いた。枯葉を集め、それだけでは足りずに木の枝
を何本か手折り、マントの上に振りかけ、わたしはその下に潜り込む。
 道から外れた木陰にまで注意しているものもそうはいないだろうが、念には念を入れて
偽装する。敵はわたしの常識の外にいるのだ。

 決意も新たに隠れ潜み、息を殺していつでも逃げられる体勢で待つこと三十分。
 怒り狂う母さまから逃げ隠れること数十回の経験が、わたしの逃げ足を鍛え上げた。
 生半な相手ならはるか後方へ置いていく自信がある。どうか生半な相手が来ますように。

 繁華なわけはないが、獣しか使わない道というわけでもないようだ。あの短時間の間に
足跡と顔無しが続けて来たことでそれを証明していた。
 次にやってきたのは二匹の蝙蝠だった。学院の近くでも目にするありきたりな蝙蝠だっ
たように思えた。
 ……そういえば、月も星も見えない、光源はどこにもないという闇夜のただ中、暗いは
ずの闇が妙に薄ぼんやりとしている。闇の黒というよりは、質の低い褐炭にも似た暗褐色
というか……まぁわたしにとっては都合のいいことなので、とりあえず気づかなかったこ
とにしておこう。
 二匹の蝙蝠は成人男性の肩くらいの高さをふわふわと心もとなく飛んでいた。

「夜市がきた」
「夜市がやってきたよ」
「夜市がきた」
「夜市がやってきたよ」
 この二文のみを繰り返し、足跡と顔無しが消えた方角へと飛び去った。
 果たして彼らは安全か、それとも危険か。わたしが判断する前に飛んでいってしまった。
蝙蝠という生き物は存外速く飛ぶ。

 二匹の蝙蝠がしゃべっていた。蝙蝠という生き物が持つ印象にのっとり、耳障りな甲高
い声で会話をしていた。
 今さら蝙蝠が口をきいたことをどうこう言うつもりはない。
 常識に固執してただただ悲観するよりは、頭を柔らかくして閉塞状況を打開する方策を
考える。これこそわたしのすべきことだ。

 夜市、とはなんだろう。字面で判断するなら夜に開かれるマーケットだが……ふうむ。
 蚤の市ではない。花市や馬市、青果市でもないだろう。泥棒市といった反社会的なもの
ですらないように思える。反社会的は反社会的だろうが、もっとこう胡乱というか胡散臭
いというか摩訶不思議な……夜の……こう……市場?
 足跡や顔無し、喋る蝙蝠が当たり前の顔で売ったり買ったりする。当然、売り買いされ
る物も世間一般の品ではないだろう。
 ここまで生命の危険が無かったこともあり、まだ見ぬ謎市場に好奇心が頭をもたげかけ
たが、次なる来訪者を目にして好奇心は再び恐怖心に代わった。

 音無しでやってきた前四者とは違い、地響きに伴う振動、砂埃とともにそれはあらわれ
た。
 鬼だ。トロル鬼ににているが少し違う。鋼のような筋肉で構成された五メイルにも及ぶ
巨躯は同じだが、闇夜の中でもはっきりと分かる深紅の肌はトロル鬼に無い特徴だ。
 虎の皮を腰巻にし、巨体に見合う黒光りした棍棒を肩にかつぎ、長大な一本角と鋭い牙
を剥き出しに、のっしのっしと闊歩する。
 暗がりで一人震えて見送った。それ以外に何をしろと言うのか。トロル鬼は人間を撲殺
するのが何より好きで、そのためだけに傭兵として雇われている者もいると聞く。
 そんな危険な生き物の親戚に助けを求めて何を得ようというのか。そのような愚挙に及
んでどうなるか、わざわざ考察するまでもない。
 ああ怖かった。本当に本当に怖かった。下着に指を這わせてみたが、特に湿ってはいな
いようだ。よかった、替えはどこにも無い。

 鬼の次は……なんだかぬめっとした……水陸両用の……亀? 甲羅は亀だが、背格好は
人間に似ている。頭に皿を乗せているのは何かのまじないか。
 鰭のついた手足といい、尖ったクチバシといい、いざ戦いになればかなり強そうだ。そ
う考えやり過ごした。

 その次は半透明の浮遊体だった。ほの光っている。どの角度から見ても現世の生き物と
は思えず、わたしは頭を抱えてやり過ごす。次。

 浮遊体と入れ違いにあらわれたのは若い男女だ。年のころはわたしより少し上くらいか。
 見た目ごく当たり前の男女……貴族全とした美しい風貌、パーティーにでも繰り出すの
かという場違いな正装できめている。美髯の丈夫はタキシードで装い、エスコートされる
白皙の令嬢は、胸の開いた若草色のイブニングドレスを上品に着こなしていた。
 これはいけるかもしれない。この何も無い一本道には不似合いだが、杖を持っていない
こと以外は絵に描いたような素晴らしい貴族だ。何やら楽しげに囁きあっているが、耳を
そばだてても断片的な会話しか聞こえてこない。男の方が女の方に対して夜市について語
っているようだが……。
 よし、声をかけてみようと腰を上げかけたわたしの目に、男女の口元から生えた獣じみ
た犬歯が飛び込み、あわてて腰をおろして息を止めた。

 危なかった。危なかった。危なかった。本当に危なかった。吸血鬼は人間の姿を装い人
里に紛れ込むと聞いていたが、まさかあれほどとは。
 ここでノコノコと顔を出したが最期、恐ろしい怪物に豹変した二人がわたしの頭をガリ
ガリと……おお怖い。絶対に騙されるものか。

 油断してはならない。相手が弱そうでも、小鳥や昆虫のように小さな姿であっても、気
を許さずに観察しなければならない。
 人差し指と中指とを素早く動かし、小動物のように走っていく手首は見送った。話が通
じるとは思えない。
 人間の頭部に翼を生やしたような鳥も見送った。あまりにも牙が鋭すぎた。
 直立した人間大の猫も見送った。怠惰なはずの猫に相応しくない、どこか鋭角な印象も
気に入らなかったし、
「悪い子は……しまって……」
 ボソボソと呟く言葉があまりにも恐ろしすぎる。
 次にきた少女はごく当たり前の平民に見えたが、頭頂部から一本の草を生やしており、
しかもそれがあまりに毒々しい色合いだったため見送った。
 一つ目の巨大な猿は獰猛に見えたため、ヒラヒラと飛ぶ一枚の白布は眼が怖かったから、
血塗れのナイフをひっさげた子供の人形はもはや言うまでもなく……。
 ……まずい。選り好みしすぎているような気がする。命がかかっているとはいえ、好機
を逃すようでは元も子もない。
 だが、もう少しまともな、声をかける気になろうという、柔らかいというか、優しいと
いうか、もうちょっとこの……ね?

 次にきたものは二つの意味で今までのものとは違っていた。
 だからといって声をかける気になったかといえばそんなはずもない。
 違っていた点の一つ目は、来た方向だ。
 他のものがわたしから見て左から右に歩き、あるいは飛んでいったのに対し、それは右
から左に向けてやってきた。夜市の帰りだろうか。
 違っていた点の二つ目は、わたしの見知った生き物だったということだ。
 見知ったといっても幼少のみぎり遠目に見たことが一度あるだけだが、それでも他の連
中に比べれば随分馴染みがある。

 体長は二メイルほど、体重は同じ身長の人間の五倍近く、豚に似ているようでいて遥か
に醜い顔と豚を凌駕する卑しさを持ち、凶暴性は興奮した猪をもしのぐ。
 子供の頭を割って取り出したドロドロの中身が何より大好物で、その忌まわしい習性か
ら暴力的なだけのトロル鬼より嫌われている。
 それはどう見てもオーク鬼で、わたしは絶対に、絶対に、何があってもあいつにだけは
声をかけるまいと決めた。

 決めた。絶対に決めた。何があってもあいつにだけは頼ってはならない。
 俗にいう大人と子供と中間の年齢であるわたしだが、あの捕食者がそこまで年齢にこだ
わる繊細さを持っているとは思えない。
 トロル鬼の親戚の方がまだ救いがある。殺されるにしても吸血鬼に血を吸われる方が美
しく死ねる。
 ここまで考えたうえであいつには声をかけないと決めた。
 なのに。
 なぜ。
 あいつは足を止めるのか。こちらへ顔を向けているのか。

 ああ、そうだ。豚はキノコを探すんだった。人間では感じ取れない匂いを嗅ぎ取って、
どこまでも胴欲に食べ物を探す、それが豚。
 オーク鬼は鼻を鳴らしている。その仕草は滑稽に見えたかもしれないが、餌の視点から
見れば一片の面白みも感じない。
 一歩、大股でこちらに踏み出した。二歩、三歩……どうするどうするどうするどうする
どうする。どうすればいい。

 以前わたしが見たオーク鬼は汚らしい獣皮をなめして衣服の代わりにまとっていたが、
目の前のオーク鬼は鉄でこしらえた頑丈そうな鎧兜に身を固めている。
 右手には一本の槍。人間にとっては槍だが、身の丈二メイルを超えるオーク鬼にとって
は投げ槍程度の大きさでしかない。
 槍も鎧もどちらも使い込んでいるようだ。戦場で傭兵として働いていたのかもしれない。
 戦であれば誰に咎められることもなく人を殺せるし、人を殺せばそのまま食べることも……
ううっ、どうするどうするどうするどうする。
 逃げ足なら負けないだろう。相手は重武装だが、こちらは軽装だ。歩幅の差は大した問
題にもならない。
 だが、使い込まれた武装が気になる。オークなりに歴戦の戦士ということではないか。
木々の隙間を縫って、逃げるわたしの背中に槍を放るくらいの芸当はしてみせるかもしれ
ない。そうなれば一巻の終わりだ。

 選択肢はもう一つある。不意をついての先制攻撃だ。
 失敗魔法とはいえ、人間一人を軽く吹き飛ばすほどの爆発だ。頑丈な鎧を避け、上を向
いた鼻面にでも打ち込んでやれば一撃だろう。
 問題は実戦経験の無さと、失敗だけに狙いすますことができないということ。
 一撃でトドメをさすことができなければ、手傷を負って凶暴になったオーク鬼がわたし
に向かってくる。そうなればまず殺される。

 恐怖心が服を張り付かせるほどの汗を呼び、汗は匂いをともない、匂いはオーク鬼に居
場所を伝える。
 時折足をとめながら、一直線にこちらへ向かってくる。もう考えている時間は無い。行
動あるのみ。あの大きな、オーク鬼用に作られたとしか思えない、特別あつらえであろう
兜。あれに錬金をかけてやる。

 そうだ。こんな所で死にたくない。嫌だ。断る。わたしは生きて、学院に戻って、アカ
デミーに入って、特効薬を作るんだ。オーク鬼になんか殺されてたまるものか。
 切り抜けてやる。誰の手助けもいらない。一人であいつを撃退してやる。

 勇気を振り絞って立ち上がり、錬金の魔法をくわえるべく突き出されたわたしの杖は、
蹴りの一撃であっさりと弾き飛ばされた。
 拾いにいく間もなく巨体に押し倒され、右手をがっちりと極められ身動きを封じられた。
 熟練のオーク鬼とゼロのルイズが戦えばこうなるだろうと皆が予想するだろう。わたし
だって予想できる。
 このように非常識な場においても現実は動かしがたいものであり……重い。本当に動か
ない……あああああ! クソクソクソッ!


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