あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

魔法少女リリカルルイズ36


窓から顔を半分だけ出したタバサは、階下をぐるり見渡した。
下にはたいまつがいくつか。
特に襲撃者が集まっている様子はない。
よく見ると襲撃者達の装備はまちまちだ。統一性という者に欠けている。
つまり、彼らは傭兵なのだろう。たまに山賊になるかも知れないが。
それのほとんどが正面に集まっているようだ。
「あれやって」
「あれ?」
タバサの最小限の説明がギーシュにはわからない。
わかるのは少し遅れて来たキュルケの方だ。
「あんたのワルキューレよ。人数が減ってるのがわかったら囮にならないでしょう」
「あ、ああ。そう言うことか。まかせたまえ」
ギーシュが杖を振ると、舞い落ちるのは赤い花びら2つ。
床に落ちた2枚は、わずかの間に2体の青銅像になった。
「これで本当にあの二人の代わりになるのかい?」
作っては見た物のいささか不安だ。
青銅の乙女はどう見てもワルドとルイズの二人には見えない。
「暗いから」
そう言ったタバサは小さい体を窓の外に飛ばす。
「そう言うこと。あ、ワルキューレはちょっと遅れてから下ろしなさいよ」
続くキュルケも窓の外に身を躍らせる。
小さく呟いたレビテーションの呪文が効果を現すと、キュルケは地面に激突するようなこともなくふわりと地面に降り立つ。
その後はギーシュ、最後に2体のワルキューレが壁を砕いて飛び降りた。
タバサとキュルケは間をおかずに再びレビテーション。
ワルキューレは金属音を立てずに、地面に降りた。


フーケに雇われた傭兵達が、壁を破って降りてきた5人に気づかないわけはない。
近くの傭兵達は5人組に燃えるたいまつをかざす。
「いたぞ!学院の貴族どもだ」
「なに?」
「捕まえろ!!」
怒号が飛び交い、傭兵達は5人組に殺到する。
「ひ、ひぃいいいいいいっ」
ギーシュ達は走り出した。
囮なのだから宿屋からなるべく離れなければならない。
任務としてはごくごく正しいものだ。
だが、ギーシュはそんな役割なんか忘れて全力疾走をしていた。
貴族としての誇りも、平民は貴族の相手にならないという常識もすでに吹き飛んでいる。
「ば、ばれた方がよかったぁあああああ」
傭兵達は殺気立った目をギーシュ達に向けている。
さらには、たいまつにあぶられ、顔をしかめている。
それが炎に照らされてゆらゆらと揺れているのだ。
理屈なんか超えて怖い。
一回、怖いといったくらいじゃ足りない。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
これくらい怖い。
「いたぞ!」
「追え!」
「逃がすな!」
追いつかれては終わりだ。そんな予感がひしひしとする。
「来るなぁああああああああああああああああああ」
ギーシュは必死に走る。
そして叫ぶ。
その叫びがより多くの傭兵達を引きつけていた。


同じ頃、ワルドはユーノを肩に乗せたルイズを抱いて、ギーシュ達と反対側の窓から飛び降りていた。
「うまくいったようだな。あの三人、思った以上によくやる」
時間差で降りた窓の下に傭兵は誰もいない。
ギーシュ達を追って行ってしまったのだ。
「今の内に桟橋まで行こう」
「ええ」
ほとんどの傭兵の目がギーシュ達に集まっている。
逃げるなら今の内だ。
ワルドはルイズを下ろし、小さな手を引いて走る。
だが、引きつけられたのはほとんどだ。
全ての目ではない。
「こっちにもいたぞーーー!」
目端の利く者というのはどこにでもいる。
ギーシュ達を追っている傭兵に比べれば遙かに少ない数であるが、幾人かの傭兵がルイズ達を見つけ、後を追ってくる。
「そううまくはいかないか」
ワルドは足を速めようとしてやめた。
ルイズでは訓練された魔法衛士隊の足についてこれるわけがない。
ワルドは少しずつ差を詰めつつある傭兵達を見ると、腰に差した杖に手を伸ばした。


ユーノが走るルイズの肩から飛び降りる。
壁際の闇の中を走り、路地に飛び込んだ。
(ユーノ!?)
ルイズはユーノを止めようとした。
だが、その暇もなくワルドに手を引かれ走り続けるしかなかった。


傭兵達とルイズの距離はさらに縮まる。
明らかにルイズより傭兵達の方が速い。
まもなく追いつかれてしまう。
「そろそろ迎え撃つしかないようだな」
ワルドは足を止め、ルイズを背中に隠した。
剣のこしらえをした杖を迫る傭兵に向けて構える。
「ワルド……」
「大丈夫。僕は魔法衛士隊の隊長だ。武器を持っているとはいえ、たかが平民。あのくらい蹴散らしてやるよ」
ワルドはルーンを唱える。
風が杖の先に集まりつつあった。
そのとき傭兵達は驚きの声を上げ、足を止めた。
それは、ワルドの魔法がもたらした結果ではなかった。


空から降りてきた少年を見た傭兵達は、もちろんわずかに逡巡を見せた。
だが、それもすぐに無くなる。
少年はマントを着けている。
つまりメイジだ。
メイジが空を飛ぶのは当たり前だからだ。
それより、わざわざ剣の間合いに入ってきた愚かさを笑う。
この距離ならば魔法より剣の方が速い。
ためらうことなく邪魔な少年に刃を振り下ろす。
そして、剣は傭兵の手を離れた。
地面に剣が落ち、金属が石畳を叩く音が響く。
ユーノが斬りつけてきた傭兵の剣をデルフリンガーで跳ね上げたのだ。
ユーノは傭兵達の前に立ちはだかり、両手を広げ、精一杯の声で叫んだ。
「ここから先は行かないでください!」
とても人を脅せるような声色ではないが、傭兵達は足を止める。
そして、ある者は剣を構えなおし、ある者は剣を弓に変え、その目標をユーノに移した。
「君は!ユーノ君か?」
「はい」
背中にいるワルドに答えてもユーノは後ろを見ない。
デルフリンガーが教えてくれていた「絶対に目を離すな」と。
「ワルドさん。ルイズを任せていいですか?」
「無論だ。ルイズは僕の婚約者だ。言われるまでもない」
「お願いします!」
ワルドは構えた剣を腰に戻す。そして、ルイズの手を引いた。
「ワルド、本気?ユーノは……!」
「わかっているよ。彼が普通の子供ならこんな事はしない。だが、彼はそんな者じゃない。わかるだろ?それに君には任務がある」
「でも……」
ルイズはユーノを見た。それからワルドを見て、もう一度ユーノを見る。
どうすればいいのかわからなかった。
ここでユーノを守ればいいのか。それともワルドの言うとおりに、任務のために走ればいいのか。
どちらを選べばいいか、全然わからない。
「ルイズ!早く行って」
その一言がルイズの決心を決めた。
たいまつの炎に照らされ、背中を見せるユーノがどんな顔をしているのかルイズにはわからない。
けれど今まで一緒にジュエルシードを集めてきたユーノなら、この危険もどうにかできると思えた。
「ユーノ、危なくなったら……わかっているわね」
「うん。前と一緒だね」
ルイズは走った。
ユーノに背を向け、ワルドの手を握り、桟橋に向かってひたすら走った。


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