授業の始まる前の待ち時間、教室は自然と生徒達が談笑する声でつつまれる。
そんな中ルイズは一人黙って自分の席に腰掛けていた。
遠くから複数の生徒達の声が聞こえる。
そんな中ルイズは一人黙って自分の席に腰掛けていた。
遠くから複数の生徒達の声が聞こえる。
―オイ、そういえばあいつが召喚したあの化け物ってどうなったんだ?
―いや、それがコルベール先生を半殺しにした後学園の外に逃げちまったてよ。
―そういえばこの間ブルドンネで殺人事件があっただろ?殺し方が人間技じゃなかったて言うぜ。
もしかしたら……
―おいおいマジかよ、怖くて街にも行けねーな……全くやってくれるぜ『ゼロのルイズ』は。
―いや、それがコルベール先生を半殺しにした後学園の外に逃げちまったてよ。
―そういえばこの間ブルドンネで殺人事件があっただろ?殺し方が人間技じゃなかったて言うぜ。
もしかしたら……
―おいおいマジかよ、怖くて街にも行けねーな……全くやってくれるぜ『ゼロのルイズ』は。
あの日以来、幾たびもルイズの耳に聞こえてくる会話である。
その度にルイズは今のように拳を固く握り締め耐えていた。
召喚の日から一週間ほどが経っている。亜人の足取りは未だに全くわからない。
ブルドンネの事件についてはオスマンから聞かされた。いくら捕まれば極刑であろう犯罪者とは言え
自身が召喚した使い魔が人を殺したのだ。ルイズを更に悩ませることとなった。
その度にルイズは今のように拳を固く握り締め耐えていた。
召喚の日から一週間ほどが経っている。亜人の足取りは未だに全くわからない。
ブルドンネの事件についてはオスマンから聞かされた。いくら捕まれば極刑であろう犯罪者とは言え
自身が召喚した使い魔が人を殺したのだ。ルイズを更に悩ませることとなった。
やがて担当の教師が入ってくると生徒達は一斉に席に着いた。
年配の太った女性教師が教壇から教室を見回すと開口一番、こう言った。
年配の太った女性教師が教壇から教室を見回すと開口一番、こう言った。
「ふふ、皆さん使い魔召喚の儀式は上手く言ったようですね。
毎年こうして召喚された使い魔たちを見るのが楽しみなのですよ」
毎年こうして召喚された使い魔たちを見るのが楽しみなのですよ」
教師がそう言うと多数の生徒がルイズのほうを冷ややかな目で見る。
その空気を察してか教壇の教師は慌ててこう言った。
その空気を察してか教壇の教師は慌ててこう言った。
「ま、まぁ無駄話はこのぐらいにして授業を始めましょうか」
授業も終わり、すっかり日も暮れた学院の中庭をルイズが歩いていた。
不意に横から声が掛かる。見るとキュルケ、そしてその傍らにタバサがポツンと立っている。
不意に横から声が掛かる。見るとキュルケ、そしてその傍らにタバサがポツンと立っている。
「ちょっとルイズ、あなた大丈夫なの?あの化け物の事とか……」
キュルケの言葉にルイズは振り向かずにこう言い放った。
「ツェルプストーの女になんか心配して貰わなくて結構よ」
「何よそれ!?せっかくこの私が心配して……」
「うるさいわね!!放っておいて!!!」
ルイズがヒステリックに叫び歩き去ろうとしたその時、学院中央の塔のあたりから
豪音が轟いた。
キュルケの言葉にルイズは振り向かずにこう言い放った。
「ツェルプストーの女になんか心配して貰わなくて結構よ」
「何よそれ!?せっかくこの私が心配して……」
「うるさいわね!!放っておいて!!!」
ルイズがヒステリックに叫び歩き去ろうとしたその時、学院中央の塔のあたりから
豪音が轟いた。
「な、何!?……アレはッ!?」
キュルケが驚嘆の声を上げる。見ると塔のそばに体長40メイルはあろうかという
巨大なゴーレムがそびえ立っているのだ。
キュルケが驚嘆の声を上げる。見ると塔のそばに体長40メイルはあろうかという
巨大なゴーレムがそびえ立っているのだ。
「あんなに大きな土ゴーレム……まさか、『土くれのフーケ』!?」
『土くれのフーケ』とは今トリステインを騒がせている盗賊である。
どんな頑丈な錠や壁も錬金により文字通り『土くれ』に変えてしまうこと、
そして巨大な土ゴーレムを生成し操ることからそう呼ばれている。
どんな頑丈な錠や壁も錬金により文字通り『土くれ』に変えてしまうこと、
そして巨大な土ゴーレムを生成し操ることからそう呼ばれている。
ゴーレムが拳を振りかぶり塔の外壁を殴りつける。再び豪音が轟くが外壁は破れない。
どうやら40メイルの土ゴーレムであっても手に余るほどの強固な造りらしい。
塔からは蜂の巣を突付いたように内部にいた人間が続々と避難している。
どうやら40メイルの土ゴーレムであっても手に余るほどの強固な造りらしい。
塔からは蜂の巣を突付いたように内部にいた人間が続々と避難している。
「タバサ、行くわよ!」
キュルケの言葉とともにタバサもゴーレムの方へと飛び去って行く。
キュルケの言葉とともにタバサもゴーレムの方へと飛び去って行く。
「クソ!何て頑丈な造りなのよ!!ヒビを入れるのがやっとなんて……」
ゴーレムの肩の上でフーケと思われる女性が嘆く。
フードを深く被っている為、顔は確認できない。
ゴーレムの肩の上でフーケと思われる女性が嘆く。
フードを深く被っている為、顔は確認できない。
不意にゴーレムの胸部あたりで巨大なファイヤーボールが弾け、氷の槍『ジャベリン』が突き刺さる。
「ふふ、ようやくお出ましかい。だけど、そんな攻撃じゃこのゴーレムは壊せっこないね!!」
ゴーレムの拳が地面めがけ振り下ろされる。
「ふふ、ようやくお出ましかい。だけど、そんな攻撃じゃこのゴーレムは壊せっこないね!!」
ゴーレムの拳が地面めがけ振り下ろされる。
「これじゃどうしようもないじゃない!一体どうすれば……」
ゴーレムの拳をフライでかわしつつ、キュルケが言う。
もう一度呪文を詠唱しようと杖を振り上げる。その時突然ゴーレムの頭部あたりで爆発が起こる。
そしてキュルケは自分の背後に立つ人影に気づいた。
ゴーレムの拳をフライでかわしつつ、キュルケが言う。
もう一度呪文を詠唱しようと杖を振り上げる。その時突然ゴーレムの頭部あたりで爆発が起こる。
そしてキュルケは自分の背後に立つ人影に気づいた。
「ルイズ!あなた……」
ルイズが再び杖をかざすとともにゴーレムの拳が振り下ろされる。
しかし、拳が当たる寸前で何かが素早くルイズとキュルケを運び去った。
タバサの使い魔、シルフィールドだ。
しかし、拳が当たる寸前で何かが素早くルイズとキュルケを運び去った。
タバサの使い魔、シルフィールドだ。
「ルイズ!あなたは下がってなさいよ!攻撃魔法も何も使えないんだから!」
「う、うるさいわね!私だってやってやるわ!」
シルフィールドの背中で二人が言い争う。
「全く……タバサも何か言ってやってよ」
キュルケの言葉にタバサは小さく呟くように言った。
「足手まとい」
「う、うるさいわね!私だってやってやるわ!」
シルフィールドの背中で二人が言い争う。
「全く……タバサも何か言ってやってよ」
キュルケの言葉にタバサは小さく呟くように言った。
「足手まとい」
タバサとキュルケの言葉にルイズは杖を振り上げ叫んだ。
「うるさい!敵に後ろを見せない者を貴族と言うのよ!!私だって戦える!」
杖を振り下ろすとともに今までに無い大爆発が起こり、あたりが爆煙につつまれた。
やがて爆煙が晴れ、ゴーレムの姿が露になる。しかしゴーレムは健在している。
そして、何と先ほどゴーレムの拳でヒビの入っていた外壁に大穴が空いていた。
「ふふ……何だか知らないけど助かったわ。礼を言うよ!」
大穴からフーケが現れる。その手には長方形の箱のような物が持っている。
「『破壊の銃』、確かに頂いたよ!」
そう叫ぶとフーケは学院の外の草原へと飛び去って行った。同時にゴーレムが崩れ落ち、巨大な土の山となる。
そして、何と先ほどゴーレムの拳でヒビの入っていた外壁に大穴が空いていた。
「ふふ……何だか知らないけど助かったわ。礼を言うよ!」
大穴からフーケが現れる。その手には長方形の箱のような物が持っている。
「『破壊の銃』、確かに頂いたよ!」
そう叫ぶとフーケは学院の外の草原へと飛び去って行った。同時にゴーレムが崩れ落ち、巨大な土の山となる。
「クソッ!……ってルイズ!?」
見るとルイズは前のめりに倒れこんでいた。ここ最近のストレスと今までに無い強力な爆発を起こしたことにより
精神に限界が来たようだ。
見るとルイズは前のめりに倒れこんでいた。ここ最近のストレスと今までに無い強力な爆発を起こしたことにより
精神に限界が来たようだ。
フーケは一人無人の野を飛んでいた。予想以上に頑丈な外壁には苦労したが何とか
お目当てのマジックアイテムを手にすることができた。自然と表情が緩む。
学院の教師達の中でもオスマンしかその実態を知らぬと言うマジック・アイテム『破壊の銃』。
初めて聞いた時から何かそそられていた。
お目当てのマジックアイテムを手にすることができた。自然と表情が緩む。
学院の教師達の中でもオスマンしかその実態を知らぬと言うマジック・アイテム『破壊の銃』。
初めて聞いた時から何かそそられていた。
『HAHAHAHAHA!!』
フーケが隠れ家に向かい飛行していると不意にどこからか野太い男の笑い声が聞こえた。
フーケが止まりあたりをうかがう。しかし誰もいる気配は無い。
空耳かと思い再び動き出そうとした時、また声がした。
フーケが止まりあたりをうかがう。しかし誰もいる気配は無い。
空耳かと思い再び動き出そうとした時、また声がした。
『IM THE BOSS OF THIS CITY!!HAHAHAHAHAHAHA!!』
フーケにとっては全く聞いたことがない言語であった。
フーケが地面に降り立つと無人の野原に向かって言い放った。
「何者だい!?出てきな!この『土くれのフーケ』が相手になってやるよ!!」
杖を振ると地面が盛り上がり数秒であの巨大ゴーレムが出来上がった。
フーケが地面に降り立つと無人の野原に向かって言い放った。
「何者だい!?出てきな!この『土くれのフーケ』が相手になってやるよ!!」
杖を振ると地面が盛り上がり数秒であの巨大ゴーレムが出来上がった。
不意にフーケの前方で青白い光が光った。次の瞬間小さな光弾がゴーレムの頭部目がけて
高速で飛来し被弾した。
高速で飛来し被弾した。
「な……バカなッ!?」
フーケは驚嘆の声を上げた。
なんと被弾した光弾が爆発しゴーレムの頭部が木端微塵に吹き飛ばされてしまったのだ。
続けざまにゴーレムの上半身に数発の光弾が被弾し、体の半分ほどを吹き飛ばされゴーレムは崩れ落ちた。
地面へと着地したフーケはすぐにゴーレムを回復させる呪文を詠唱しようとした。
その時、前方で青い電流が走る。そして襲撃者は姿を現した。
いわずもがな、あの亜人である。左肩に装備された筒状の物からは煙が立ち昇っている。
なんと被弾した光弾が爆発しゴーレムの頭部が木端微塵に吹き飛ばされてしまったのだ。
続けざまにゴーレムの上半身に数発の光弾が被弾し、体の半分ほどを吹き飛ばされゴーレムは崩れ落ちた。
地面へと着地したフーケはすぐにゴーレムを回復させる呪文を詠唱しようとした。
その時、前方で青い電流が走る。そして襲撃者は姿を現した。
いわずもがな、あの亜人である。左肩に装備された筒状の物からは煙が立ち昇っている。
「一体……何なのよ……!?」
次の瞬間、亜人の体がフーケめがけ宙を飛んだ。亜人が空中で両手を大きく広げる。
そしてフーケの目の前に着地するとともに広げた両手をフーケの側頭部へと振り下ろした。
そしてフーケの目の前に着地するとともに広げた両手をフーケの側頭部へと振り下ろした。
強力な両手張り手によりフーケの両鼓膜は破裂、同時に脳を激しく揺らされ地面に崩れ落ちそうになる。
しかし崩れ落ちはしなかった。亜人の手がフーケの頭部を掴み、持ち上げる。そしてフーケの体を
強力な前蹴りで突き飛ばした。宙を舞ったフーケの体は近くの森へと消えていった。
しかし崩れ落ちはしなかった。亜人の手がフーケの頭部を掴み、持ち上げる。そしてフーケの体を
強力な前蹴りで突き飛ばした。宙を舞ったフーケの体は近くの森へと消えていった。
「おお~飛んだなー、死んだかなあの姉ちゃん。土くれのなんとかと言ってたけど」
亜人の腰に差された剣が鎬をカタカタと鳴らし喋る。
人間であれば相当な巨躯の持ち主でなければ背中に背負うこととなる長剣であったが
2メイルを遥かに超えるこの亜人ならば腰に差すことが可能であった。
人間であれば相当な巨躯の持ち主でなければ背中に背負うこととなる長剣であったが
2メイルを遥かに超えるこの亜人ならば腰に差すことが可能であった。
「で、何だ。そいつが目的だったのか相棒?何かさっきゴーレムにぶっ放したやつに似てるけど」
亜人はフーケが落とした箱から中身を取り出す。自身の左肩に装備された物と酷似している
『破壊の銃』を見つめながら亜人は肉食獣のように喉を鳴らした。
『破壊の銃』を見つめながら亜人は肉食獣のように喉を鳴らした。