あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

デュエルモンスターズZERO-10

魔人の腹をくぐり、長い闇を抜けると、そこは美しい碧空であった。

「……空?」

2人の少女は大空に投げ出された。
そして風船のように、ふわふわと宙を舞う。
レビテーションをかけていないというのに。

飛んでいる場所もトリステインとは違う。
ましてやさきほどまで自分がいた、心の中ではない。

空を飛んだまま眼下を見回すと、うっそうと茂る大森林と、オレンジの屋根が印象的な純白の外壁を持つ城が見えた。
だが、あるべきはずの魔法学院は何処を見渡してもありはしない。

「…何で…?」

あまりの突拍子の無い展開と、訳の分からない事象に、ルイズは心が砕けそうになるのを感じる。
だが、背中の温もりが、ギリギリで彼女の理性を保つ。

「……お城に行けば、人がいるわよね」

迷っていてもしかたがない。
ルイズは、そう結論付けると、ふらふらと危なっかしい形で城に向かう。
いや、向かうというよりも、城に向かって落ちて行くといったほうが正しいか。
ルイズの思考する事柄は唯一つ。

『大事な人を助けたい』

「シエスタ。死ぬんじゃないわよ。 アンタが死んだらあたし、一生許さないんだから」

ゆるゆると下降し、二人は城内の一室へと降り立つ。

「……ここは」

二人が入った場所は、大理石で作られた間。
天井は吹き抜けになっており、幾本もの白柱がそびえたつ間からも陽光が射していた。

「ここは貴方がいらした場所と近くにある世界。されど決して交わることの無い世界にございます」

声がした。澄んだ女性の声が。
ルイズが振り返った先、そこには1人の妙齢の美女がいた。
鮮やかな緑の髪と瞳。
自分をこの世界に呼び込んだあの男……虚無魔人と同じようなマントを羽織っている。最も、虚無魔人のマントが黒だったのに対しこちらは白だったが。
彼女は己の胸に手を当て、ルイズの前に跪いた。

「お待ちしておりました。我が主。 ようこそ、デュエルモンスターズの世界へ」
「貴方は……っ?」

目の前で跪く女に戸惑いながら、ルイズは視線を感じ、辺りを見回す。
そこには様々な者達がいた。

背に羽根が生えた正真正銘の天使がいる。
杖を持ったメイジがいる。
全身を鋼で覆われた龍がいる。
中には正真正銘の悪魔までいた。
ある者はもの珍しげに。
ある者は尊敬と崇拝の眼差しで。
全員がこの世界にやってきた異邦人を見やる。

一方のルイズは曝された視線に怯まず、自らに話しかけてきた謎の美女に訴えでた。

「お願い! 誰か、私が背負っている子を助けて!!」
「……かしこまりました。誰か『ディアン・ケト』をここへ!」

跪いたままの麗人の指示を受けて、幾人かの戦士や悪魔達が駆けて行く。
やがてすこし息を切らせながら、胸元の大きく開いた服を着たふくよかな老婦人がやってきた。
優しそうな顔に刻まれた幾本もの皺が、生きてきた年月を感じさせる。
その髪と瞳は、目の前で跪く女と同じ、澄んだ緑。

「彼女は『治療の女神』です。怪我であれば、どんなものでも治して見せましょう」

立ち上がった女性は、ルイズの肩をそっと抱いた。

一方のルイズは思わず胸の前で手を組んだ。
始祖ブリミルを初めとする神に祈りながら、

治療の女神 ディアン・ケトは、己の持つ杓杖をシエスタの胸に当てた。
アンクと呼ばれる杓杖は淡い緑の光を放ちながら、シエスタの傷を塞ぐ。
しかし、少女は目を開けない。

「…………」
「シエスタ! 眼を開けなさい! アンタ、私の言うことが聞けないの!?」

虚無の少女は物言わぬ奉公人に駆け寄り、声を震わせる。
しかし、その瞳は少女を捉えてはいない。
ルイズは薄々気づいていた。
心臓を貫かれた人間が生きていられるはずが無いと。
さきほど、怪我人と言ったが、それは他でもない。
ルイズ自身を騙すための言葉だと。

ディアン・ケトの勺杖から光が消えた。
彼女もまた、自らの無力を悔いるようにうなだれ、言葉を絞り出す。

「申し訳ありません。……彼女が蘇ることは……もう」
「嘘よ!」

治療の女神の言葉を遮り、彼女の胸倉に掴みかかる。
涙を流しながらルイズは治癒の女神に叫んだ。

「私達をここに連れてきた男……虚無魔人が言ったのよ! 『ここにくればシエスタは助かる』って!!」

ルイズはディアン・ケトの襟袖を離し、愛すべき友人に抱きついた。
彼女の涙が己の頬とシエスタを濡らす。
だが、奉公人の少女はそれをふき取ろうとも、優しい言葉を掛けることもせず温かい雨を受け続ける。

「シエスタ! 早く眼を覚ましなさい! このまま離れるなんて許さないんだから!!」
「……」

シエスタに抱きつきながらも心の奥底で少女は自覚していた。

(……私がもっと早く、牢屋から逃げ出していれば、シエスタは死ななかった。私が……シエスタを殺したんだ)

城の間には1人の少女のすすり泣く声が響いた。

―私のせいだ―
―私が無能【ゼロ】だから―
―シエスタは死んだんだ―

すすり泣く声以外にも異質な音が混じり、ルイズは顔を上げた。
誰かが自分の元に歩いてくる。

だが、それがどうしたというのだろう?
今の自分は他者のことなど考えられない。
自分を、少しは放っておいてほしい。

そんな想いを抱きながらも振り返る。
日の光が射し、姿が良く見えない。
ただ美しい女性の声が聞こえた。

「主よ。そんなにもその者が愛しかったのですか?」

憤慨する。

―当たり前じゃない! この子が助かるというから私はここに来たのに!―

キッと声を掛けた者を睨み付ける。
自らに歩み寄ってきた緑髪の麗人を。

「許せませんか? 貴方様の従者の命を奪った者が」
―それも許せない、でも 私が一番許せないのは……―

「貴方様自身の弱い御心が……許せないのですね?」

緑髪の美女はルイズを抱きしめ、告げた。

「主よ。我等は貴方と共にあるべき従僕。どうか、お側において頂きたく存じます」

だが、ルイズは俯きながら麗人を突き放し、言葉を吐き捨てた。

「……私にかまわないで」
「主…」

ルイズの心は頑なであった。
まるで巨大な氷塊のように。

だが、その氷塊はこれより現れる1人の言葉にて砕かれる。

「ミス・ヴァリエール」

鋭い男の声が響き、少女はビクッと肩を震わせた。
後ろから聞こえた声は自分の良く知っている者の声。
幾度無く教えを乞うた、でも目の前に横たわっているシエスタから賊の手にかかったと断じられた人物だったのだから。



物語は、今 スタンバイフェイズ〈雌伏の時〉を終える。

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