あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのドリル 前編


――これはまだ、自らの運命に気づかぬ、一人の女の物語。


 トリスティン魔法学院の中庭にて行われた春の召喚儀式。生徒達は抜けるような青空の下、各々が召喚したすばらしい使い魔達と親睦を深めていた。
 その傍らで、両手両膝を大地につけてガックリ項垂れる少女が一人。名をルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという。
 ふわふわした桃色の髪がトレードマークの小柄な女の子だ。
 他の生徒達が召喚したモグラやサラマンダーなどの使い魔と戯れている中で、彼女だけは何も相手にせず、ただ一人でうつむいていた。
 そんなルイズを心配げに見下ろしながらそばに歩み寄る一人の男性。年若い生徒達の中で、彼だけは歳経た深いしわを顔にこさえている。
「ミス・ヴァリエール。元気を出せと言うのも無茶かもしれないけれど、そろそろ顔を上げなさい。“それ”がなんであれ、君はサモン・サーヴァントに成功したんだ」
「……コルベール……先生」
 自分の小さな肩にそっと乗せられた手の感触に気づいて、ルイズはコルベールに顔を向けた。瞳に溜まった涙のせいで、視界はぐにゃぐにゃに歪んで見えた。
 まるで氾濫を起こす寸前の河のようだ。それでも涙をこぼさないのがヴァリエールらしいと思いながら、コルベールはその場にしゃがみこんでルイズの側に落ちていた"それ”を拾い上げると、そっと彼女の手に握らせる。
「変わった金属で出来た物だ。もしかしたら何かのマジックアイテムかもしれない」
 マジックアイテムと聞いて、ちょっとだけルイズの瞳に光が戻った。
「とにかく、"それ”が君の元に召喚されたのはきっと意味のあることなんだ。大事に持っていなさい」
 ルイズは手の中にある“それ”をじっと見つめた。

 綺麗だと思う。それは宝石で出来たわけでもなければ趣向を凝らしたデザインをしているわけでもない。
 けれど、その螺旋を描いた形はなぜかルイズの目をつかんで離さなかった。



 ゼロのドリル 前編 私を一体誰だと思っているの!



 召喚した"それ”に契約の儀式を行う。金属の塊にキスをするルイズを見た他の生徒達はそろって爆笑して彼女を罵った。
 普段なら意趣晴らしで罵り返す所だが、今のルイズにはそれをするだけの気力は無い。悔しくてかみ切りそうなほど唇を噛みしめる。
 自分以外の生徒達の傍らについて彼等に従う使い魔達。それを見ていると、自分の隣りに何も居ないのがたまらなく恥ずかしかったのだ。
 悔しくて"それ”を握りしめる。ルイズを見て笑う者と、誰にも目線を合わせずに悔しがるルイズ。
 どちらも目をやらない中で、“それ”がうっすらと緑色に発光していたことに気づいた者はいなかった。

 ルイズが召喚した金属の塊は、名前をドリルと言う。
 契約の儀式が終わった後、刻まれたルーンについて調べていたコルベールからルイズはそう聞かされた。
「挿絵を見つけたんだよ! かつて始祖ブリミナルが召喚した使い魔の一人、ガンダルーヴが愛用していた槍とそっくりだ。いや、これは凄い発見だ!」
 これ槍ッスかこれ!? とルイズが驚いているのにも気づかずに、コルベールは一人ではしゃいでいた。
 たしかに棒の先端に付ければ槍として使えなくもない気がするけれど……どうせならガンダルーヴの方が来れば良かったのに。
 ヒモを通して首からぶら下げているドリルを指先で弄びながら、そんな事を愚痴るルイズ。

 召喚の儀式から数週間後、土くれのフーケと名乗る盗賊がトリステイン魔法学院の宝物庫を襲撃して「カオガミ様の象」を奪うという事件が起こる。
 学院長であるオールド・オスマンはカオガミ様の象が持ち去られたことに激しく狼狽した。
 オスマンの話によると、カオガミ様の象とは一見すると単なる鉄で出来た人形だが、その正体は始祖ブリミナルの時代から存在する最強のゴーレムの一つであるという。
 ブリミナルが作ったとされるそれは歴史的価値ならば始祖の祈祷書なみだ。かつて多くの者がこのゴーレムを動かそうとしたけれど、今まで誰一人として動かすことが出来なかったという。
 けれど、フーケほどのゴーレム使いならば、あるいはカオガミ様の動かし方について何か心当たりがあるのかもしれない。
 それを危惧した学院長オールド・オスマンは至急の追撃部隊を編成しようとするが教師は誰も参加しようとしなかった。
 そんな中、たまたまフーケが宝物庫を遅う場面に居合わせたルイズと、ルイズの仇敵・キュルケ。そして無口なメガネ少女、タバサ。
 この三人が追撃部隊に立候補した。
 やる気のない奴よりやる気のある連中。……ということで、オスマンは危険を承知でこの三人をフーケ追撃のメンバーに選ぶ。
 情報を入手してきたオスマンの秘書、ミス・ロングビルとともにフーケを追うことを彼女たちに命じた。

 ミス・ロングビルの情報を元にたどり着いたのは森の中にたたずむ一軒の小屋だった。どうやらここが、フーケの隠れ家らしい。
 中を見ると灰色の小さなゴーレムの顔が一つ、小屋の中央に鎮座しているだけだった。一目で分かった。これがカオガミ様の象であると。
 顔から直接小さな手足が生えた姿を見ていると、とても学院長が恐れるほどの強力なゴーレムとは思えない。
 辺りにフーケの姿も見えないことから「拍子抜けね」とキュルケが気を抜いた瞬間、ドシンと地響きが小屋を襲った。
 驚いてキュルケとタバサが小屋の外に出てみると、そこには身の丈三十メイルを超える、巨大なゴーレムが出現していた。
「出たわね土くれ!」
 叫んで、キュルケはゴーレムに向かってファイアーボールを唱える。しかし分厚いゴーレムの身体は炎で貫くことができない。
 巨大な手足を振りまわして、ゴーレムはキュルケを狙う。相手は恐ろしく巨大で、踏みつぶされただけで終わりだ。
 地上戦は不利と判断したタバサは自らの使い魔である風竜、シルフィードの背にキュルケと一緒に飛び乗ると天高く舞い上がった。
 いちいちゴーレムなんか相手にしてられない。術者であるフーケを直接叩くことにしたのだ……と、舞い上がった所でキュルケは先ほどからルイズの姿が見えないことに気づいた。
「小屋の中」
 めんどくさそうにルイズを探すキュルケに、タバサは小屋の方を指し示す。
 なんだ、小屋の中に隠れてたのか……キュルケは無意識に息をついていた。

 キュルケとタバサが小屋の外に出て行ったとき。
 うっすらと、カオガミ様のゴーレムの両目が光っていることにルイズは気づいた。共鳴するように、自分のドリルも緑色に光っていた。
 それから後のことを、ルイズは良く覚えていない。二人が小屋を飛び出したことにも、巨大なゴーレムが起こす地震にも、キュルケのファイアーボールにも気づかなかった。
 何かにひかれるようにカオガミ様の顔に触れて、するとおでこより上の部分がいきなり開いて、中から操縦席のような物が現れた。
 乗り込んで、両壁から突き出た操縦桿を握ってみる。妙に手になじむ。
 目線を前にやると、小さくて丸い穴があった。穴の奥からは、ルイズのドリルと同じ、緑色の光が輝いている。
 なぜかそれを見て、ルイズは分かった。胸元にぶら下げたドリルは、こう使う物だと。

 ルイズは自分のドリルをカオガミ様の穴にねじ込んだ。

 緑色の極光がカオガミ様から放たれて、灰色の顔が深紅と白のカラーリングに入れ替わる。
 ルイズは操縦桿を強く握りしめる。
 ――――行ける!!

 カオガミ様は緑色の流星となって小屋から飛び出すと、鋭い弧を描いて一直線にフーケのゴーレムに突っ込んだ。
 カオガミ様の顔より下からはルイズのドリルより遙かに巨大なドリルが出現している。
 ちょうどゴーレムの顔があった部分に刺さると、ルイズは操縦桿を力一杯握りしめた。ルイズの小さな身体から緑色の光があふれ出て、操縦席の目の前にあるドリルに螺旋を描きながら吸い込まれてゆく。
 光を吸収したカオガミ様はその光を自分のドリルの先端から放出し、フーケのゴーレムの中に出した。
「あんな凄い量を中に出すなんて」
「溢れそう」
 すさまじい光の量に驚くキュルケとタバサ。
 フーケのゴーレムは緑色の光に包まれると、ずんぐりむっくりした姿からスマートな人の形へと変貌する。
 それを、その様子を見ていたミス・ロングビルは唖然としていた。
 岩で出来ているせいでゴツゴツしていた表面も、まるで大理石のようにツルツルになり、ゴーレムというより芸術家が作った彫刻のような姿に変わった。
 美しい女性の姿を象ったようなゴーレムが、そこに誕生した。
 ルイズの願望か、胸には撓わに実った果実が二つ。一流の彫刻家だってこんな美しい女性の象は彫れないだろう。見ただけでそう思わせる姿であった。

「だ、大丈夫ですか? ミス・ヴァリエール!」
 操縦席の中から外の景色を眺めていたルイズにそんな声が届く。三十メイル以上のゴーレムの足下を見下ろすと、キュルケとタバサ。そしてミス・ロングビルがいた。
 降りようと思って自分はフライもレビテーションも使えない事に気づく。そして今、自分が居るのは巨大なゴーレムの頭の中だ。
 どうやって降りようか悩んでいると、なにやら下から騒がしい声が聞こえ始めた。
 何事かと目を向けると、キュルケがミス・ロングビルに向かってファイアーボールを唱えている所だった。
 驚いてキュルケを静止させようとゴーレムの手を動かすと、すかさずタバサが操縦席のすぐ側まで風龍に乗ってやって来て、ロングビルの正体がフーケであることを伝えてきた。
 うっそーと驚いてロングビルを見ると、彼女は今まで学院の中では見せたことのない、妖艶な笑みを浮かべてすぐさまもう一体、巨大なゴーレムを作り出した。そのゴーレムに乗ってルイズ達から距離を取ると、続けて土の呪文を唱え巨大な岩で出来たドームを作り上げる。
 ドームはルイズのゴーレムごと三人を完全に覆って真っ暗闇の中に三人を閉じこめた。タバサの風も、キュルケの炎も、ゴーレムの拳も、そのドームの壁を破ることが出来なかった。
 三連続で大がかりな呪文を唱えたフーケは心身ともに疲労困憊であったが、なんとか三人を閉じこめたことに一息ついていた。あとはカオガミ様を奪う方法を考えるだけだ。

 閉じこめられたキュルケとタバサは持てる全ての呪文を使ってみたが壁を壊すには至らなかった。
 肩で息をつくキュルケとタバサ。
 その傍らで、ルイズは今も執拗にゴーレムを操って、その拳を壁にぶつけ続けている。
 しかし何度も打ち続けたせいで、逆にゴーレムの腕が砕け始めていた。よく見れば、ゴーレムの身体から出ていた緑色の光も消えかけている。
「無理よルイズ。力押しじゃこの壁は壊せそうもないわ」
「固定化に似た魔法がかけられている。物理的な方法で破壊するのは至難」
 それでもルイズは、砕けた腕をさらに壁にぶつける。

「うっさいツェルプストー! 私を! 私をぉ!! 一体、誰だと思ってるの!!!」

 魔法を使えなかった。
 貴族の家に生まれながら、ヴァリエールに生まれながら、ルイズは魔法を使うことが出来なかった。
 それでもあきらめずにここまで来た。
 相変わらず魔法は使えないけれど、似たような真似は出来た。今、自分はゴーレムを動かしている。
 なら、あきらめなればきっと――いつか本当の魔法を――――。
 だから! こんな所で!!

「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはこんな所でっ! 行く道引いてらんないのよ、バカーーーー!!!」

 ルイズの叫びに呼応するように、操縦席の前面に螺旋状のメーターが出現。メーターは一気にMAXまで高まると、同時にゴーレムも再び緑色の極光に包まれる。
 砕け散ったはずの両腕が再生。さらに腕の先端からドリルが飛び出す。
 空気を切り裂きながら高速で回転するドリル。ルイズはそれを目の前の壁に思いっきりぶち込んだ!
 あれほど硬かった壁がまるで砂糖菓子のように、粉々に吹き飛ぶ。
 壊れた壁から光が差し込む。抜けるように青い青い空が、壁を壊したルイズの目の前に広がっていた。

 壁が破壊されたことに気づいたフーケは一目散にその場から逃げ出した。もう、自分には連中を相手にする魔力が残っていないからだ。
「たかが学生にここまで……。この借りは必ず返すわよ、お嬢ちゃん達」
 森の陰から闇へ、フーケはその姿を消して行った。


 次回 中編 あばよ、デル公! 

 近日公開…………するかどうかはわからない


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