ルイズにとっては訳が分からなかった。
遅刻したらしいメイドが突然使い魔の声で話し出したら誰だって驚く。
それ以前に、使い魔が人語を解する点、そして尚且つ意思疎通できるという点でこの学院の人間は大方驚くとは思うだろうが。
取り敢えず人間に化けられるという事を前提にして説明を求めた。
それによると、シエスタというメイドと知り合いになった彼女は、洗濯を済ませた後食堂の位置を訊いて大急ぎでこの本塔へとやって来たとの事であった。
その話に一応は納得するものの、メイド姿のままでは流石に不味い。
そう思ったルイズはラティアスに、一旦外で元の姿に戻ってからここに来なさいと促した。
メイドことラティアスは上機嫌になって一旦外に出るが、数秒の後には元の姿に戻ってルイズの元に戻ってきた。
その時一瞬にして食堂にいる大方の者達がどよめく。
小型ながらにして風竜以上の飛行速度を誇るラティアスは、召喚された使い魔としては昨日の内に噂のネタになっていたからだ。
その様子に上機嫌のルイズは床に幾つかの料理の乗った一枚の皿を下ろす。
それを見たラティアスは喜んでそれに食べ始める。
その様子に昨日までの鬱屈とした日々への決別を感じたルイズであった。
遅刻したらしいメイドが突然使い魔の声で話し出したら誰だって驚く。
それ以前に、使い魔が人語を解する点、そして尚且つ意思疎通できるという点でこの学院の人間は大方驚くとは思うだろうが。
取り敢えず人間に化けられるという事を前提にして説明を求めた。
それによると、シエスタというメイドと知り合いになった彼女は、洗濯を済ませた後食堂の位置を訊いて大急ぎでこの本塔へとやって来たとの事であった。
その話に一応は納得するものの、メイド姿のままでは流石に不味い。
そう思ったルイズはラティアスに、一旦外で元の姿に戻ってからここに来なさいと促した。
メイドことラティアスは上機嫌になって一旦外に出るが、数秒の後には元の姿に戻ってルイズの元に戻ってきた。
その時一瞬にして食堂にいる大方の者達がどよめく。
小型ながらにして風竜以上の飛行速度を誇るラティアスは、召喚された使い魔としては昨日の内に噂のネタになっていたからだ。
その様子に上機嫌のルイズは床に幾つかの料理の乗った一枚の皿を下ろす。
それを見たラティアスは喜んでそれに食べ始める。
その様子に昨日までの鬱屈とした日々への決別を感じたルイズであった。
食事が終われば授業が待っている。
ルイズはラティアスを連れてこの日最初の授業が行われる教室へと入る。
その瞬間、それまで雑談の声しか聞こえなかったそこは一転してしんと静まり返った。
その様子がルイズにとっては面白くて仕方が無い。
昨日までは何かと嘲笑が絶えなかったものだが今は違う。
こんな立派な使い魔を召喚出来たのだから、そうそう文句を言える者などいるまい。
そんなルイズの感情はお構い無しに、ラティアスはルイズを次々に質問攻めにした。
ルイズはラティアスを連れてこの日最初の授業が行われる教室へと入る。
その瞬間、それまで雑談の声しか聞こえなかったそこは一転してしんと静まり返った。
その様子がルイズにとっては面白くて仕方が無い。
昨日までは何かと嘲笑が絶えなかったものだが今は違う。
こんな立派な使い魔を召喚出来たのだから、そうそう文句を言える者などいるまい。
そんなルイズの感情はお構い無しに、ラティアスはルイズを次々に質問攻めにした。
「ご主人様。私みたいにういているあの目の玉は何ですか?」
「あれはバグベアーって言うのよ。」
「じゃあ、あの生き物は?」
「あれはスキュア……ってラティアス、今はちょっと質問しないで。私一人が見えない誰かを相手に喋ってるみたいに見えるから。」
「あれはバグベアーって言うのよ。」
「じゃあ、あの生き物は?」
「あれはスキュア……ってラティアス、今はちょっと質問しないで。私一人が見えない誰かを相手に喋ってるみたいに見えるから。」
そうルイズに小声で言われ、ラティアスは慌てて閉口する。
だがその様子は既に数名の生徒に見られていたらしく、教室の何処かからくすくす笑いが起きていた。
ルイズが席の一つについたのと同時に、いかにも魔法使いといった雰囲気を纏った女性が教室に入ってくる。
優しい感じも覗かせる彼女は、生徒達のいる席をぐるっと見回してから満足そうに言った。
だがその様子は既に数名の生徒に見られていたらしく、教室の何処かからくすくす笑いが起きていた。
ルイズが席の一つについたのと同時に、いかにも魔法使いといった雰囲気を纏った女性が教室に入ってくる。
優しい感じも覗かせる彼女は、生徒達のいる席をぐるっと見回してから満足そうに言った。
「皆さん。春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔達を見るのが楽しみなのですよ。」
そこでシュヴルーズ女史の目はルイズの隣にいるラティアスへと行く。
「中でもミス・ヴァリエールは興味深い生き物を召喚しましたね。風竜か、或いは珍種の鳥か。何れにせよその翼の力は、私達の間でも噂になっていますよ。」
ルイズは澄ました顔をして少しだけ胸を張る。
「この子にはそれ以上の能力があります!」と言って変身や超能力見せたりするのを我慢するのが、当人にとってはかなりきつい事ではあったが。
その時教室の一角にいたマリコルヌが冷やかす様に口を開く。
「この子にはそれ以上の能力があります!」と言って変身や超能力見せたりするのを我慢するのが、当人にとってはかなりきつい事ではあったが。
その時教室の一角にいたマリコルヌが冷やかす様に口を開く。
「ゼロのルイズ!『フライ』も『レビテーション』も出来ないからって、まさかその都度その使い魔の厄介になるのかい?空を飛んで遠くへ速く飛ぶ事なんて風竜だって出来るぞ!」
その言葉が不味かった。ルイズは立ち上がり、長い桃髪を揺らしながら怒鳴る。
「違うわ!きちんと召喚して『サモン・サーヴァント』も成功出来たもの!それに只の使い魔よりずうっとこの子の方が役に立つもの!!」
「じゃあそのご自慢の使い魔は一体何の能力に長けてるんだよ?只の使い魔より役に立つんだろ、ずうっと!」
「じゃあそのご自慢の使い魔は一体何の能力に長けてるんだよ?只の使い魔より役に立つんだろ、ずうっと!」
それを言われてルイズは黙るしか他無くなる。
その様子に教室のあちこちから笑いが起きた。
が、それは直ぐに全員の心にいきなり聞こえてきた怒鳴り声で瞬く間に収まる。
その様子に教室のあちこちから笑いが起きた。
が、それは直ぐに全員の心にいきなり聞こえてきた怒鳴り声で瞬く間に収まる。
「ご主人様をバカにしないでっ!!」
しんと静まり返った教室の中では誰もがお互いの顔を見合わせた。
それから直ぐに多くの生徒が頭や耳の辺りをこんこんと叩き始める。
いきなり聞こえてきたそれはルイズにもしっかりと聞き取る事が出来た。
そして恐る恐る隣を見ると、床から数十サントの所で滞空しているラティアスが、教室にいる全員に向けて怒りの表情を向けていた。
「何やってるのよ!」という当惑の表情をラティアスに向けるが、彼女は全く気にする事も無く表情も変える事が無い。
それを見てルイズは初めて彼女に対して頭を抱えた。
やがて何時までもざわつきが収まらない生徒達に向かってシュヴルーズはぴしゃりと言い放った。
それから直ぐに多くの生徒が頭や耳の辺りをこんこんと叩き始める。
いきなり聞こえてきたそれはルイズにもしっかりと聞き取る事が出来た。
そして恐る恐る隣を見ると、床から数十サントの所で滞空しているラティアスが、教室にいる全員に向けて怒りの表情を向けていた。
「何やってるのよ!」という当惑の表情をラティアスに向けるが、彼女は全く気にする事も無く表情も変える事が無い。
それを見てルイズは初めて彼女に対して頭を抱えた。
やがて何時までもざわつきが収まらない生徒達に向かってシュヴルーズはぴしゃりと言い放った。
「静かになさい!何が起きたかは知りませんが、授業はとっくに始まっているのですよ!」
その言葉にほぼ生徒の全員がえっ?という表情で教壇に立つシュヴルーズを凝視する。
その視線にシュヴルーズは半瞬、何事?と思うが、直ぐにコホンと一つ咳払いをして言う。
その視線にシュヴルーズは半瞬、何事?と思うが、直ぐにコホンと一つ咳払いをして言う。
「では、授業を再開します。」
その言葉を合図に授業は何の滞りも無く殆ど淡々と進行し始める。
魔法の四大系統の説明に始まり、『錬金』魔法の実演、そしてメイジのレベルを測る基準。
教室の生徒は皆それを真剣に聴いている……ようで内心は全く別の事に気を取られていた。
自分達の心に直接怒鳴り込んできたあの声は一体何なのか。
そして、何故ミセス・シュヴルーズは気づいていないのか。
その全ての答えはルイズのみが知っていた。
彼女にははっきりと分かる。
自分は勿論の事、自分に対してとてもよくしてくれている主人をも散々馬鹿にされた事に腹を立てたラティアスが、笑っていた教室内の生徒にだけ焦点を当てて怒鳴りつけたのだと。
ラティアスの気持ちが分からない訳でもない。
自分だってそれ相応に腹が立っていたからなのは言うまでも無い。
ただ幾らなんでも先程の行動は正直勘弁してほしかった。
意思疎通の事を話していない人間に対し、一方的にそれをされた場合における困惑の度合いは、ラティアスと初めて会った時に経験済みだからだ。
だが、ルイズは自分の心の裡で『意思疎通は二人だけの秘密』にしたい願望があったのかな、と薄ぼんやりと思う。
でなければ、教室にいる皆にそれを快く説明していたであろうからだ。
そう思っているとシュヴルーズから声がかかった。
魔法の四大系統の説明に始まり、『錬金』魔法の実演、そしてメイジのレベルを測る基準。
教室の生徒は皆それを真剣に聴いている……ようで内心は全く別の事に気を取られていた。
自分達の心に直接怒鳴り込んできたあの声は一体何なのか。
そして、何故ミセス・シュヴルーズは気づいていないのか。
その全ての答えはルイズのみが知っていた。
彼女にははっきりと分かる。
自分は勿論の事、自分に対してとてもよくしてくれている主人をも散々馬鹿にされた事に腹を立てたラティアスが、笑っていた教室内の生徒にだけ焦点を当てて怒鳴りつけたのだと。
ラティアスの気持ちが分からない訳でもない。
自分だってそれ相応に腹が立っていたからなのは言うまでも無い。
ただ幾らなんでも先程の行動は正直勘弁してほしかった。
意思疎通の事を話していない人間に対し、一方的にそれをされた場合における困惑の度合いは、ラティアスと初めて会った時に経験済みだからだ。
だが、ルイズは自分の心の裡で『意思疎通は二人だけの秘密』にしたい願望があったのかな、と薄ぼんやりと思う。
でなければ、教室にいる皆にそれを快く説明していたであろうからだ。
そう思っているとシュヴルーズから声がかかった。
「ミス・ヴァリエール!あなたにやって貰いましょう。」
「あ、えーと……すみません、何でしょうか?」
「私の話をきちんと聞いていたのですか?ここにある石ころを使って望む金属に変えてごらんなさい。」
「あ、えーと……すみません、何でしょうか?」
「私の話をきちんと聞いていたのですか?ここにある石ころを使って望む金属に変えてごらんなさい。」
困ったルイズが立ち上がれずにその場で戸惑っていると、ラティアスが意思疎通をしてきた。
「頑張って下さい、ご主人様!さっき笑った人達を見返すいい機会ですよ!」
その言葉に意を決し、ルイズは席を立って教壇に向かい歩き始めた。
が、直ぐに近くの席にいたキュルケが小声で咎める様に言った。
が、直ぐに近くの席にいたキュルケが小声で咎める様に言った。
「ルイズ、お願いだからやめて!ミセス・シュヴルーズは今年初めて私達をもつのよ!あんたの爆発がどれ程危険か知らない……」
そこで彼女は言葉を切った。
自分に向けられている異様なまでの殺気を感じたからである。
ふとルイズが座っていた席の方を見ると、彼女の使い魔が愛らしい面立ちには似合わないほどの鋭い形相でキュルケを睨め付けていた。
その様子に彼女は気に喰わないわねと思いながらも、ふとある懸念を心に持った。
もしかして……さっきの声はあの使い魔が?
自分に向けられている異様なまでの殺気を感じたからである。
ふとルイズが座っていた席の方を見ると、彼女の使い魔が愛らしい面立ちには似合わないほどの鋭い形相でキュルケを睨め付けていた。
その様子に彼女は気に喰わないわねと思いながらも、ふとある懸念を心に持った。
もしかして……さっきの声はあの使い魔が?
「馬鹿みたい、我ながら考えすぎね……」
そう呟き、ああ疲れたといった感じで髪を掻き上げる。
が、それは直ぐに自分の考え過ぎでない事が証明される。
何故か?答えがその本人から直接返って来たからだ。
が、それは直ぐに自分の考え過ぎでない事が証明される。
何故か?答えがその本人から直接返って来たからだ。
「考えすぎな訳無いわ……熱そうなお姉さん。」
その言葉にキュルケはぎょっとしてもう一度ルイズの使い魔を見る。
相変わらず自分の方を見ていたが、気のせいか先程より鋭さが増した様にも思える。
それから周りを改めて見ると、今度は自分以外誰も反応していない。
冗談じゃないわ……まさか本当に?
キュルケはとかく気味が悪くなったので慌てて目を逸らした。
が、その声は彼女の意思を無視して更に続いた。
相変わらず自分の方を見ていたが、気のせいか先程より鋭さが増した様にも思える。
それから周りを改めて見ると、今度は自分以外誰も反応していない。
冗談じゃないわ……まさか本当に?
キュルケはとかく気味が悪くなったので慌てて目を逸らした。
が、その声は彼女の意思を無視して更に続いた。
「目を逸らしてもちゃんと聞こえてるでしょう?惚けても駄目よ。」
「いい加減にして!」
「いい加減にして!」
そうキュルケが言い放つのと全く同時に黒板の前にある机が大爆発した。
その勢いは凄まじく前方にある机という机はひっくり返り、窓ガラスには小さくひびが入る。
教科書の類は空中を舞い、羊皮紙はあちこちへ飛んでいく。
また突如発生した爆発に、教室中の使い魔達がギャアギャアと暴れだした。
教室は阿鼻叫喚の様子を呈していた。
そして騒ぎを収める筈のシュヴルーズも仰向けになって気絶している。
その爆発の原因であるルイズは煙が晴れた後、所々衣服が破れている事も気にしていないのか懐からハンカチを取り出して煤を払いながら言う。
その勢いは凄まじく前方にある机という机はひっくり返り、窓ガラスには小さくひびが入る。
教科書の類は空中を舞い、羊皮紙はあちこちへ飛んでいく。
また突如発生した爆発に、教室中の使い魔達がギャアギャアと暴れだした。
教室は阿鼻叫喚の様子を呈していた。
そして騒ぎを収める筈のシュヴルーズも仰向けになって気絶している。
その爆発の原因であるルイズは煙が晴れた後、所々衣服が破れている事も気にしていないのか懐からハンカチを取り出して煤を払いながら言う。
「ちょっと失敗したみたいね。」
さらっと放たれたその言葉に教室のあちこちから怒号が飛び出す。
「ちょっとじゃないだろう!ゼロのルイズ!!」
「いつだって成功の確率殆どゼロじゃないかよ!」
「ああ、もう!ヴァリエールは退学にしてくれよ!!」
「俺のラッキーが蛇に喰われたじゃないか!ラッキー!!」
「いつだって成功の確率殆どゼロじゃないかよ!」
「ああ、もう!ヴァリエールは退学にしてくれよ!!」
「俺のラッキーが蛇に喰われたじゃないか!ラッキー!!」
纏める者がいない為に一向に騒ぎは収まる気配は無い。
そんな中、ラティアスはルイズの側まで飛んで行き優しく声をかける。
そんな中、ラティアスはルイズの側まで飛んで行き優しく声をかける。
「ご主人様!大丈夫ですか?!」
その問いかけに彼女は小声で誰にも聞こえない様に答える。
「大丈夫よ。それよりさっき私の許し無しに勝手に意思疎通やったでしょ?みんなには私が上手く誤魔化しておくから、後でこの部屋の片付け私と一緒にやりなさいよ。いいわね?」
「は、はい……」
「は、はい……」
ラティアスはすっかりしょげかえる。
しかし遠くからその様子を見ていたキュルケは遂に確信した。
ルイズの使い魔は只の竜崩れの使い魔ではない事を……
しかし遠くからその様子を見ていたキュルケは遂に確信した。
ルイズの使い魔は只の竜崩れの使い魔ではない事を……