あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのMASTER-06

キートンとルイズが話をしてからしばらくの時間が経過した。
夕食の時間、とルイズが言う。直談判しただけあって、食事も多少は改善されているだろう。
彼女と共に食堂へと向かうキートンだったが…。

甘かった。

確かに、朝食のときとは違う。皿一枚ではない。しかし、そこにあったのはみすぼらしいパンとスープ。
これなら軍のレーションの方がよっぽど上だぞ…。
頭を抱えるキートンであった。

結局、それらを平らげた後はシエスタ君の言う通りに厨房へと向かうことにした。
申し訳なさそうに厨房に向かったのだが、マルトー氏は大声を出して歓迎してくれた。
どうやら、来るのがわかっていたらしく、テーブルの上には豪勢な料理が置かれている。
「あの…いいんですか?これだけの料理を」
「いいってことよ、お前さんの昼の活躍、シエスタから聞いたからな!」
ああ、あれをシエスタ君も見ていたのか…。食事をしながら考える。
しかし、思っていたよりも目立っているようだな、私は。
食べ終わるとシエスタ君が笑顔で食器を片付け、マルトー氏は貴族に対する不満を洩らし始めた。

それにしても…。
貴族と平民、その対立は予想以上に深刻なようだ。
この世界の歴史は、地球が歩んできた歴史と酷似しているのだろうか?
ルイズ・ヴァリエール。私がいた世界の過去の人物と同じ名を持つ少女。
これは偶然なのだろうか。
もっと、この世界のことを深く知るべきだろう。そうすれば、元の世界に帰る道も、自ずと開けるかもしれない。
何か、情報を入手できる場所…そうだな、図書館でもあればいいんだが。
この学院には無いだろうか?

腕組みをして考えていると、シエスタ君が心配そうな顔をしているのに気付く。
「あの、大丈夫ですか?なにか問題でも」
「あ、ああ。いやいや。とても美味しい料理でした。ありがとうございます」
マルトー氏、シエスタ君にお礼を言う。ごちそうさまでしたと言うと、不思議そうな顔をされたけど。
二人は喜びながら、「いつでも来て」と言ってくれた。本当に有難いなあ…。
おっと、ルイズを心配させては…いや、むしろ怒らせてはいけない、か。
急いで戻らなくては。厨房を出る私を二人は見送ってくれた。
ああ、そうだ。アレを作る材料も仕入れないとな。


「んん?シエスタ、スプーンが何処に言ったか知らないか?」


ルイズは既に自室に戻っていた。
キートンが戻ってくると、どこに行っていたのかと尋ねたが、散歩と答えるのみであった。
それ以前に気になったのは、キートンが抱えていたものだった。
木の棒が6本、大きなボロ布が一枚。それにロープが数本…。
「何をするつもりなの?」
キートンはにやりとして言う。
「ベッドを作るのさ」

「ベッドですって?それだけの材料で作れるわけないじゃない」
「なに、簡単だよ。見ててくれ」
キートンはそう言うと、組み立てを始める。程なくして、ルイズの目の前に簡素なベッドが出来上がる。
「本当は、チューブを使いたいんだけど…。仕方がないかな」
「こんなの作れるなんて、あんた昔は何してたの?」
ルイズが呆れながら言う。キートンは照れながら、頭を掻くのみだった。
キートンによると、これはフレームベッドというらしい。

「さて、そろそろ僕は風呂に行ってくるよ」
「言っとくけど、平民用のサウナ風呂だからね。わたし達のお風呂じゃなく」
「わかってるよ」
キートンは苦笑すると部屋を出る
。トリステイン魔法学院で働く平民用にサウナ風呂があることは前に聞かされていた。
学院の外に出て探していると…。
「あれか…」
あまり期待していなかったとはいえ、これはひどい。
掘っ立て小屋一軒の中に共同風呂がある。学院で働く平民用に作られたものであるが…
焼いた石を詰めた暖炉の隣に座って汗をかく。汗をかいたら、外に出て水浴びをするサウナ式だ。
さすがにこれを毎日するのはキツイな…。風呂も自分で製作する必要があるかも知れない。
キートンは悩みながら共同風呂に入っていった。

「やれやれ…。いざ自分が体験するとなると、けっこうきついものがあるな」
予想通り、入り心地は悪かった。やはり、風呂という以上は湯船に漬かりたいものだ。
ルイズの部屋に戻る途中の廊下でそう考えていると、大きなトカゲを目撃した。
あれは確か、キュルケ君のトカゲだったな。いや、トカゲではなく使い魔か。
使い魔は私の方を見ると、いきなり走り寄ってきた。大きな身体だけに、突進してくるとかなりの迫力だ。
さすがに少し驚く。まさか、襲ってきたりはしないだろうな。
警戒していると、使い魔は私のズボンを引っ張り始めた。何をする気なのだろうか?
「お、おいおい。ズボンが破れるから勘弁してくれよ」
話が通じるとは思えないが抗議をする。しかし、私の言葉を無視して使い魔は強引にどんどん引っ張っていく。
…なにか、嫌な予感がするな。

不思議なことに気が付く。
キュルケ君の使い魔が私を引っ張っていったのは、ルイズの部屋の方向だった。
送り届けてくれる気なのだろうか?
と、思ったら、ルイズの部屋の隣でぴたっと止まった。
「見送ってくれたんだね。君は賢いな」
使い魔の頭を撫でると、きゅるきゅると鳴いた。…嬉しそうな顔には見えないな。何か違うような――
目の前の部屋は開けっ放しだった。これだと、無用心だな。扉をゆっくりと閉めると、私はルイズの部屋に入った。
なにか、声が聞こえたような…。まあ、気のせいか。

「遅かったじゃない」
「すまない、ちょっと遅れてね。隣の部屋のドアが開いてたから、ついでに閉めてきたんだ」
そういった途端、ルイズの眉が吊りあがる。
「あんた、まさかキュルケの部屋に入ったんじゃないでしょうね」
「キュルケ?…ああ、彼女は隣の部屋なのか」
どうやら彼女は隣室にいたらしい。そして、今のルイズはかなり不機嫌なようだ。
「ま、待ってくれ。僕は彼女の部屋のドアを閉めただけだよ。別に部屋に入ったりなんかしてない」
「だといいけど!気を付けなさいよね。キュルケに何か言われても、絶対に誘いに乗っては駄目なんだから」
ルイズとキュルケ。どうやら相当に仲が悪いようだ。少し気になり、ルイズに尋ねてみた。
「君とキュルケ君はあまり仲が良くないみたいだけど…。過去に何かあったのかい?」
「あんたは知らないでしょうけど、キュルケはトリステインの人間じゃないわ。
隣国ゲルマニアの貴族なの。わたしはゲルマニアが大嫌いなんだから」
「ゲルマニア?」
キートンが何か思い当たるような顔をしたが、ルイズは構わずに続ける。
「そうよ、にっくきゲルマニア!わたしの実家の領地のすぐ向こうに、国境の向こうにキュルケの生まれた土地があるわ!
戦争のたびに殺しあってきたんだから!」
「そうか…」
「なによ、何か言いたいことがあるの?」
ルイズはじろりとキートンを睨む。
「いや、君達の世界でも戦争は起きてるんだなって、そう思ってね」
「え…」
「すまないが、今日はもう休むよ。いろいろあって疲れたから」
そう言うと、キートンは簡易ベッドに入っていった。

「なによ…。急に深刻な顔して。明日は虚無の曜日だから、授業は休み。
いろいろと買う物があるわ。あんたも付き合いなさいよ!」

ルイズもまたベッドに入る。キートンの悲しそうな顔、この世界に来て、初めて見せた顔。
それが気になった。



――朝。気持ちの良い晴天。
しかし、目覚めたばかりの彼女の機嫌はすこぶる悪かった。
「ああ、もう!せっかくフレイムを使ってまで呼び込んだのに、あっさりと無視するなんて!」
キュルケである。
昨日はキートンを自分の部屋に呼び込んで、ああしてこうして、そうするはずだった。
しかし、部屋の前のキートンは自分に気付くどころか、部屋のドアを閉めていってしまったのだ。
おかげで昨日はしつこい男子連中を追い払うのに一夜を使ってしまったのだった。
「ギーシュに人泡吹かせたあのキートンという人…。見てなさい!
恋と炎の宿命、フォン・ツェルプストーの家名にかけて、必ず振り向かせてみせるわ!」
ベッドの上でガッツポーズを決めるキュルケ。フレイムはまだ眠っていた。

「ヘークション!」
「なによ、風邪?」
「あ、ああ。少し悪寒がしてね…」
トリステインの城下町に向けて、馬が走る。正直、ルイズはキートンが馬を扱えるとは思っていなかった。
だが、意外なことに乗馬の腕前はなかなかのものらしい。
それなりに馬に乗れるのね、と尋ねる。キートンによると、仕事で使うことがそれなりにあるそうだ。
ホケンチョウサインってどんな仕事なのかしら?
そう考えているうちに城下町に到着する。

馬を駅に預けた後、二人は街を歩く。
「すごいなあ…」
「あんまりキョロキョロしないの」
街は活気に溢れ、いろいろな物が売られている。ここはブルドンネ街といって、一番大きな通りらしい。
興味深そうに品物を見るキートンを引っ張って、ルイズは一件の店へと向かう。
「ここは?」
「あんたの服、ボロボロだから。修繕しなきゃいけないでしょ」
「ああ、そうだったね…」
ルイズを庇ったときに、けっこう傷んでしまったからなあ。
だが、店の主人は困った顔をしている。
「うちでこういったものを修繕するのは、ちょっと…」
「なによ、直せないの?」
ルイズがじろりと主人の方を見る。主人は慌てながら苦しそうに答えた。
「い、いえね、若奥様。この服の生地は布じゃなさそうなんで、はい。
正直、あたしゃこんな生地は今までに見たことがないものでして。直してもツギハギになっちまう恐れがあるんですよ」
「ナイロン製ですからね、そりゃ」
キートンが口を挟むと、主人とルイズはナイロンって何だと言ってきた。
やむを得ず、二人は店を出る。…まあ、修繕は自分でするか。
キートンは傷んだスーツを見ながら呟いた。

「ねえ、ナイロンって何?」
「合成繊維の一種さ。僕の世界では、この材料で作られた服が普及しているんだよ」
「ゴウセイセンイ?」
ルイズは首を傾げている。…複雑なことはあまり言わないほうが良さそうだな。
買い物をするお金はキートンに預けられている。
紙幣といったものではない。金貨が詰まった皮の袋を持たされているのだ。
かさばって仕方が無いが、ルイズ曰く、『買い物をするためのお金は使い魔が管理するもの』だそうだ。
これは無くせないな、さすがに。後が怖い。

「あんた、剣とかは持たないの?」
通りを歩いていると、ルイズが尋ねてくる。…どうやら、向こうに武器屋を見つけたらしい。
剣のマークが書かれた看板が掛けてある。わかりやすいな。
「そういったものはあまり持ち歩きたくないな」
「頼りないわね。いざってときになったらどうするのよ」
キートンは苦笑すると答える。
「可能な限り、危険は回避するよ。もちろん、やらなければならないときはやるけどね」
本当に頼りないんだから、とルイズはむくれる。
「言っとくけど、悪い人達が来たらちゃんと戦ってよね。最近は治安もあまり良くないんだから」
「そうなのかい?」
「いろんな事情で勘当されたり、家を捨てたりした貴族の次男や三男坊とかが問題を起こすことが多いの。
そういった人達が暴れだしたら、手が付けられないわ」
「…肝に銘じておくよ」
会話していると、キートンがいきなり立ち止まる。どうやら、古物商を見ているようだ。
様々な形、彩色が施された壷や食器を夢中で見ている。こういったものが好きらしい。
「ちょっと、寄り道しないでよ」
「ごめん、もうちょっとだけ…」
キートンは嬉しそうに店の主人と話している。どうやら気があうようだ。

「もう!先に行ってるわよ!」
ルイズは膨れっ面をしながら歩いていく。古物を見るキートンはまるで子供のようだった。
路地裏を背にして溜息をつく。自分は何をやっているだろうか。
由緒正しい旧い家柄を誇るヴァリエール家の一員であるのに、ここ最近は失敗ばかり。
…いや、最近でなくとも失敗ばかりだが。
このままではいけない。そうだ、自分はヴァリエールの三女なのだ。
そのためにも、使い魔であるキートンをしっかりと躾け、また己も鍛えなければならない。
「よし!」
気合を入れて、キートンのところに戻ろうとした。
「むうっ!?」
突然、後ろから布のようなものが自分の顔に巻かれる。苦しくて暴れるが、路地裏へと引き摺りこまれる。
布からは薬品のような強い匂いがした。気が遠くなる――怖い、怖い!
キートン助けて!キー………。

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