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るいずととら第二章-3



魔法学院の正門をくぐり王女の一行が現れると、生徒たちはいっせいに杖を掲げた。
学院長のオスマン氏が王女の一行を迎える。

「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおな――り――ッ!」

先に降りた枢機卿に手を取られ、王女が降りてくると、生徒たちから歓声が上がった。王女がにっこりと笑って優雅に手を振る。

「どう? とら、おお王女さま素敵でしょ? ああ、あんなに素敵な王女さまに、しし失礼なんてできないわよね?
 ね、お願いだから降りて。頭から。降りて。ししし、失礼にあたるから、王女さまに」

ルイズは自分の頭の上に乗るとらに向かって震える声で繰り返す。とらはそんなルイズの切なる願いにも無関心に、アンリエッタ王女を眺めていた。

「くっくっく……どうもいけねぇな……陰の気があるぜ、あの王女とやらよ」
「そそ、そんなこと言わないッ! 陰気とか言わないッ!!」

慌ててそう言うルイズだったが、言われてみれば確かにアンリエッタ王女の表情は、笑ってはいてもどこか陰のあるものであった。

(3000年の経験かしら……うう、くじけそう)

物理的には重さはかかっていないものの、自分の呼び出した使い魔の重さに、つぶれそうなルイズであった。

結局、ワルドはルイズに気がついて貰えなかった。


その日の夜……

とらはシエスタのところに『テロヤキバッカ』を食べに出かけ、一人になったルイズは、よいしょと机に本を広げる。
最近、ルイズは熱心にコルベール師の貸してくれた古書を読んでいた。といっても、書かれている言葉はルイズには読めない。書き込まれたコルベールの字を拾って読んでいるのである。
研究熱心なコルベールは、自力で古書を翻訳しようとしていたらしい。やや乱雑だが熱意あふれる字でコルベールの記述があちこちに入っている。

(確かに……見たことない幻獣ばかりね。近いのもあるんだけど……)


例えば吸血鬼の項。どうもハルケギニア大陸に住む吸血鬼とは性質が違うように思われるのだ。コルベールも興味を感じていたらしく、書き込みも多かった。

(やっぱり、東方には変わった幻獣がすんでいるのかしら? とらみたいに……)

はあ、と溜息をついて、ぱらぱらとページをめくる。と、張り付いたようになったページを見つけた。ルイズは貴重な古書もお構いなしに、べり、と引っ付いたページを開く。
慎重に、大切に古書を取り扱っていただろうコルベール師が見たら、泣くような光景であった。
だが、ルイズの頭の中には、もはやそんなことを考える余裕は残っていなかった。

(こここ、これ――――)

開いたページに描かれた絵を見て、ルイズは絶句した。

稲妻を放つ、巨大な幻獣。たてがみのようすから見ても、とらと同じ種類の幻獣に見える。そして、その横で長い棒のようなものを振るう、長髪の人間らしき姿。
しかし、ルイズの頭の中には、それらの絵は入ってこなかった。ただ一つ――そこに描かれているものに目を奪われていた。

(な、によ、『コレ』は――――)

巨大な、あまりにも巨大な『それ』の姿が、絵からもひしひしと感じられた。一緒に描かれたとらがまるでアリのように小さく見える。

(200……いえ、ひょっとしたら500メイル近い大きさ……そ、それにこの尻尾……)

尻尾の一つ一つは、それぞれが大きな幻獣になっていた。ルイズの体がカタカタと震えだす。

(とらは、この怪物を知ってるんだわ……私の夢にでてきた、あの街を焼き尽くす怪物……それが『これ』なんだ……!)

ルイズは本を閉じてベッドに倒れこむ。体をぎゅっと自分の手で押さえていないと、震えが止まらなかった。
自分は、一体何を召喚してしまったのだろう?
ルイズに、突然恐怖が蘇る。とらを召喚した頃の、あの失禁するような恐怖が……

(ば、ばかばかばか! わたしのばか!! 主人が自分の呼び出した使い魔を信じなくて、どーすんのよっ!!)

ルイズは飛び起きると机に頭を打ち付ける作業を始める。自分への罰のつもりだろうが、はたから見ると狂ったようにしか見えない。


ゴスゴスゴスゴスと、激しい音が部屋の外にまで響く。

(ど、どうしましょう……)

扉の向こうで、アンリエッタ王女が旧友の部屋をノックしたものかどうか、おろおろと悩んでいるとは、ルイズの露知らぬことであった。


始めに長く二回、続けて短く三回。

ノックの音が響く。しかし、ルイズが頭を打ち付ける音にかき消されて、どうもルイズは合図に気がついていないようであった。
おろおろとするアンリエッタの後ろに、人影が立つ。はっとアンリエッタは身構えた。

「なんだ? るいずに用なら、はいりゃいいのによ……」

そう言ってじろじろと見つめてくるのは、メイドの服を着た少女だった。思わずアンリエッタがはっとするほどの美少女である。
しかし、その顔はどこか好戦的で、なんともいえない態度のでかさがあった。何よりも王族への礼儀が皆無であった。

「わ、わたしを知らないのですか?」

怒りにかすかに震えて、アンリエッタが問うと、目の前の平民(どうみても貴族にはみえなかった)は、ごき、と首をかしげる。

「……む。ああ、王女サマとやらじゃねーか。るいず! 王女さまが来てるぜ」

そういうと、平民はドアを開けて部屋に入っていく。慌てて机に頭を打ち付けていたルイズが、顔を上げた。
アンリエッタは、これだけ王女王女と連呼されては無駄骨だと思いつつも、無言でディテクト・マジックを使った。
そして、ふう、と溜息をついてにっこりと笑う。涼やかで上品な笑顔であった。

「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ」
「ひひひ姫殿下!」

ルイズが慌ててひざをつく。とらはといえば、事情が飲み込めずに、ごきごきと首をかしげるのみであった。


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