あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの看板に偽り有り-01

「どう見ても悪人です。本当にありがとうございました」
「あああああ悪魔が来たりて笛を吹くうぅぅぅ!」
「ゼロのルイズが悪魔を召喚しやがったぞー!」

蜘蛛の子を散らすように逃げてゆくトリステイン魔法学院の生徒達。
貴族と言っても人間、貴族と言っても子供なのだ。それも仕方の無い事だ。
春の使い魔召喚の儀式でルイズに召喚されたのは恐ろしい外見の怪人だったのだから。
白骨の白と闇の漆黒で構成されたスーツ。
赤い同系デザインの前腕を覆うグローブと膝下のブーツ。
血の色を思わせる真紅のマント。
そして人間なら顔があるはずの部分には、青い液体を満たした透明カプセルが付いていた。
その中に浮かぶ頭蓋骨。
あまり信じたくないが、そのドクロがこの怪人の頭なのだろう。

「あああああああアンタ、誰よ?」

誰という表現が正しいのかどうか、ともかく怯えつつもそう聞いたルイズの勇気は立派なものだと言えるだろう。

「わたしは……」

ドクロがルイズを向いて、意外に落ち着いた様子の声音で静かに答えた。
その虚ろな眼窩の奥がビガーっと光っている様子に、ルイズの方は失神寸前だったのだが。

「わたしは、魔法少女っス」
「なんでじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

恐怖も忘れて全力でツッ込むルイズだった。

<ゼロの看板に偽り有り>

「アンタの何処をどう見れば魔法少女なのよ!
百歩譲って魔法はいいとして、少女じゃ無いでしょう少女じゃあ!!」
「わわわかった、私が悪かったから。今のナシ。もういっかいやりなおしで!」

相当な剣幕で迫るルイズに怪人が謝る。
その様子を見た学院生徒達は、とりあえず思ったほどの危険は無いのかと戻ってきた。
そして最初のシーンからもう一度。

「ゼロのルイズが……えーっと、何か変なのを召喚したぞー!」<棒読み
「さすがはゼロのルイズだぜー」<棒読み
「それで、アンタは何者なのよ」<ちょっと面倒そう
「私はドクロ仮面ッ! 悪の組織の幹部だッッ!!」
「ぎぃやあぁぁぁぁぁぁぁ! やっぱり悪党だあぁぁぁぁ!!」
「逃げろっ!殺されるぞおぉぉぉぉぉぉ!!」

再び蜘蛛の子を散らすように逃げ出す生徒達。
青い液体に浮いたガイコツがビガーッと目を光らせながら言うんだから当然である。

「好きなものはー、黒猫とか仏滅ー」
「意味は判らないけどなんか縁起悪いっ!」
「口癖はー、先に家族から始末してやる!」
「正にッッ! 悪逆非道ぅぅ!!」
「ミス・ヴァリエール! こっちです! つかまりなさい!」

生徒達が素早く逃げ出して、人っ子一人居なくなった草原。
唯一タイミングを逃して怪人ドクロ仮面のプロフィール紹介なんぞをガクプルしながら聞いていたルイズだったが、 フライの魔法で飛んできたコルベールに掴まれて運ばれる。

「ふう、無事でしたかな、ミス・ヴァリエール」

最高速度で離脱して、やれやれと息をつくコルベール。
その腕の中で、ルイズは大変な事を思い出した。

「ああっ! 私まだあの使い魔と契約してない!」
「……やめておきなさい。私のカンだが、彼は戦場を経験している本物の戦士だ」

シリアスな表情で告げるコルベール。
後ろ暗い過去を持つ彼だからこそ気がつけた事だが、あの怪人は間違いなく同類だと感じ取っていた。
どう考えても、まだ学生でしかないルイズの御し得るような相手ではない。
その上魔法がどうこうと言っていた事から考えれば、なにか忌まわしい実験によって生まれたメイジの成れの果てかもしれない。
そんなモノを自分の生徒の使い魔になど、させてはならないと『炎蛇』は決意していた。

ピョウピョウと風が吹く。
誰も居なくなった草原にたたずむのはただ1人、異世界から召喚されて右も左も分からぬドクロ仮面。
世界征服を狙い正義の味方「超星戦騎エクセリオン」と戦う、超次元からの侵略者「ZONE」の幹部。
飛行機事故で死んだ人間と融合する事でこの世界に出現した、超次元の炎を操る冷酷なる魔人。
その強すぎる力を抑えきれないため頭部の冷却液で封印しているが、開放されれば自身を含めた全てを焼き尽くす劫火の化身―――という設定。
そんなドクロ仮面は、所在無げに飛び去ってゆくルイズやコルベールを見上げてボーっとしていたが、
やがて人差し指をピッと立ててあたりを指差し始めた。
ピッと。
『異世界ハルケギニア』
ピピッと。
『トリステイン魔法学園』『召喚された使い魔(候補)』
ピッピと。
『魔法使い・ゼロのルイズ』『魔法使い・炎蛇のコルベール教師』
空中に浮かび上がる半透明のホログラム。
宇宙付箋という宇宙テクノロジーの産物は、指差した物の名前や情報を確認できる宇宙スゴイ宇宙アイテムだ。
その能力を使って確認をとったドクロ仮面は、おぼろげに感じていた事実を確信していた。

「ここはやっぱり……魔法の世界っス」

自分はアルバイトの最中に異世界に召喚されてしまったのだという、その事実を。


春の使い魔召喚の儀式の数時間後。
トリステイン魔法学院『アルヴィーズの食堂』調理室の裏口。
1人の少女がナイフを片手に手際良く野菜の皮を剥いていた。
度の強い眼鏡をかけて、黒い髪を二つに束ねて結んだ、野暮ったい外見の平民である。
借り物の御仕着せメイド服がまるで似合っていないと言うか、生活臭が漂いすぎて似合っていると言うか。
やがて大きな鍋に一杯になるまで野菜を剥くと、それを抱えて食堂へと入る。

「マルトー親方ー、野菜剥き終わったっスー!」
「おう、じゃあ次は皿の用意を頼むぜ」
「了解っス」

元気良く返事をするとテキパキと下働きの仕事を進める少女。

その働きっぷりは実に手馴れた様子で、今日初めて『ここ』で働く事になったようには見えない。
ちなみに『ここ』と言うのは『この食堂』と言う意味ではない。

「いやぁ、でも親方がここで働かせてくれて助かったっス」
「良いって事よ。貴族にいきなり連れて来られて路頭に迷ってたって言うじゃねぇか。
そんなヒドイ話を聞いちゃあ、見捨てて置けねぇのが人情ってモンじゃねぇか」
「ホント恩に着るっスよー」

『ここ』とはつまり『この世界ハルケギニア』という意味。
この地味な少女こそ名前をベホイミちゃんと言う。
異世界の日本からルイズによって召喚されたドクロ仮面の中の人。
そう、ドクロ仮面とは単なるイベントアトラクションの着ぐるみなのである。

「礼だったらシエスタ――アンタを連れて来た黒髪の娘に言いなよ。
買出しに街まで行ってたあの子が馬車から見つけたアンタを連れてこなきゃ、
ひょっとして野垂れ死にしてたかも知れないんだしな」

厨房で働く若い見習いコックが言う。
ベホイミは彼等が野菜や魚介等の生鮮食品を買出しに出た馬車での帰り、フラフラと街への街道で彷徨っていた所を拾われたのだ。
ちなみにメイドであるシエスタが買出しに借り出されていたのは彼女がなぜか御者の技能を持っていたから。
馬どころか竜の牽く竜車すら御せるという、ワリとレアなスキル持ちなのである。
もし走る馬車の御者台からシエスタが見つけなければ、右も左も判らない異世界で、冗談抜きに行き倒れていたかもしれない。
だからその言葉に納得して、ベホイミは大きく頷いた。

「そうっスね。ひと段落したら改めて御礼を言うっスよ」

そして数刻後。
豪華な夕食の準備を終えたベホイミは、配膳担当であるシエスタがまだ現われないからと探してくるように命じられる。
普段は時間に正確な真面目な娘なのにと首を捻るマルトー親方。
心配そうなその様子に、ベホイミ自身も多少不安を感じながらシエスタを探す。
そして見つけてしまった。貴族の少年にからまれているシエスタの姿を。

同じ頃。使い魔を召喚したものの契約できなかったルイズは落ち込んでいた。
あの草原へはコルベールが学園の兵士を引き連れて確認に行ったものの、ドクロ仮面の姿は発見できなかった。
一応召喚自体は出来たという事で、成績等は考慮してくれるとコルベールは言ったが……ルイズにとって重要なのはそこではない。
ずっと憧れていた。一人前の魔法使いが持つという使い魔という存在に。
今まで一度も魔法が成功せず、それぞれのメイジが自分の得意な魔術に掛けて冠する二つ名すら『ゼロ』だという自分。
そんな自分でも使い魔を得れば、少しはメイジらしくなれるかもしれないと、淡い期待を抱いていた。
……あまり愉快な想像では無いが、もしも召喚すら出来なかったとしたら、ある意味諦めもついた。
自分にはメイジとしての能力は無いのだと、新たな自分を探し始める契機になったかもしれない。
けれど召喚自体は出来た。出来てしまったのだ。

なのに契約する事が出来なかったなどというのは、あまりに痛恨の失敗だ。
諦めるには諦められず、さりとてあの恐ろしい外見の使い魔を見つけ出して再度契約を迫れるかと言うと、そんな自信も無い。
そもそも、あんなのを連れて歩く自分の姿を想像すると……まるっきり悪の魔法使いだ。
いっそドクロ仮面をなんとか見つけて倒して、もう一度サモンサーヴァントを唱えるべきか。
そこまで思い悩んでいた時だった。
トボトボと歩いていたその先で、2人の平民が貴族に絡まれている姿をルイズが見かけたのは。

話は少しだけ過去に遡る。
諍いのきっかけは何処にでもあるような話で、新米のメイドが洗濯物を風で飛ばしてしまった事から始まる。
慌てて洗濯物を追った彼女は、ウェスタリの広場まで走るハメになってしまった。
学院本塔の西側にあり昼間でもあまり日の差さないその場所は、あまり人気の多い場所ではない。
だからこそ逆に、教師に見咎められては困る行為をする生徒達にとって都合のいい場所だった。
たとえば校則では禁止されている決闘騒ぎであったり。
たとえば健全とは言い難い不純異性交遊の逢引であったり。
彼女が目撃してしまったのは後者だった。
まだ日も落ちていない午後の公園で、野外だというのにシャツのボタンを最後の一つだけ残して外した男女が絡み合っていた。
男子生徒の手は女子生徒の豊満な胸と細い腰からボリュームのある尻を情熱的に探りまわし、
女子生徒の手はむき出しの胸板と、スボンに包まれた下半身のアレな部分をまさぐっている。
そして二人の唇は当然のように重ねあわされ、お互いを激しく貪りあっていた。

ここで彼女が、それなりに経験を積んだ街娘なら、あるいは学院にきでそれなりに長い経験を積んだメイドなら問題はおきなかっただろう。
礼儀正しく見なかった事にして、洗濯物を拾って回れ右すればよろしい。
だが、彼女はほんの数日前に片田舎から従姉を頼って出てきたばかりの村娘でしかなかった。
そのため、目の前の刺激的な情景に過剰反応をしてしまう。
つまり、顔を耳まで真っ赤に染めて。

「きゃあぁぁぁぁぁ!?」

と、叫んでしまったのだ。
いくら学園の敷地が広いとは言え、その声を聞きつける者も居る。
幸いにも教師には見つからなかったが……少女にとって不幸な事に、集まってきたのは男子生徒が数人だった。
野次馬の姿に、見事な赤毛の女生徒はつまらなそうに「興が削がれたわ」と言って立ち去る。
収まらないのは男の方で、この不始末の責任はどうとるつもりだと少女を怒鳴りつけた。
そこへ割り込んだのが、シエスタである。

「申し訳ありませんメイジさま。
この子はまだ御奉公させていただいて三日目で、右も左も分からない新米なんです!
お怒りは至極ごもっともですが、どうか寛大なお心でお許し下さいませ!」

男子生徒――ペリッソンという三年生の剣幕に震える事しかできない同僚を助けるため、シエスタは土下座をして代わりに謝った。
だが、貴族達はそれを許さない。
ペリッソンが、ではなくて、集まった野次馬の生徒達4人がニヤニヤと笑いながらシエスタ達を責める。

「なんだオマエ。平民のクセに生意気に貴族に意見しようってのか」

冷酷な視線で震えるシエスタ達を見下ろす少年達。

5人もの貴族に囲まれて責められれば、平民など震える事しかできない。
そんな様子に嗜虐心を刺激されたのだろう。
普段は面に出さないであろう下劣な欲望を、少年達は歪んだ笑みで口にした。

「ふん、新人の教育が出来て無いのは先輩であるお前の責任だよなぁ?」
「なぁペリッソン、麗しのキュルケ嬢の代わりにはとてもならないが、この平民にはここで服を脱いでもらうってのはどうだ?」
「まぁ嫌なら無理にとは言わないがね。その時はそっちのメイドを脱がせば良い事だし」

ペリッソンは、彼等の様子をつまらなそうに傍観していた。
平民などの裸体を見たいほど飢えていないが、わざわざ助け船を出すほど慈愛に満ちた性格でも無いのだ。
ゆえに、誰もシエスタ達を助けない。
いかにもモテなさそうなアバタ面の少年達は、今にもヨダレを垂らしそうな様子である。
ありがちな思春期の男子の好奇心の暴走だが、そこに絶対的な権力と暴力の差があるからには笑い事では無かった。

「ほら、モタモタしてないで早く脱げよ!」
「DVD! DVD!」

手を叩いてなにやら謎の呪文まで唱える者すら居る。
ブルブルと恐怖に震えながら、しかしもう失神してしまいそうな同僚を救うためにリボンに手を掛けるシエスタ。
―――救い主は、その時に現われた。

「まてい!!」

事の成り行きを半分ほど見て、あまりの暴挙に止めに入ろうとルイズが駆け出しそうになった瞬間だった。
いつの間にか広場にある彫像の上に立っていたのは、骸骨の浮かぶポッドが顔面の位置にある異形の姿。
赤いマントを風にはためかせ、悪の化身が颯爽と現われたのだ。

「それ以上の不埒な行い、このドクロ仮面が許さんぞ!!」
「なっなっなっなっなっ…………」
「あ、悪魔!?」

三年生は今日ルイズによって召喚されたドクロ仮面の事を知らない。
突然現われた奇怪な存在に、恐怖と混乱の坩堝へと叩き落された。
とは言え彼等とてメイジ。
敵と見れば咄嗟に杖を引き抜いてスペルを唱えようとする程度の気概はある。
その瞬間、閃光が走った。
まるで認識できないスピードで疾駆するドクロ仮面。
気が付けば既に三人の少年が、杖を折られて悶絶していた。
すれ違いざまに一瞬で、杖ごと身体をへし折るようなボディーブローを見舞ったのである。
そう気が付いて、凝った軍装拵えの杖をペリッソンが抜こうとした時には、ドクロ仮面の掌は自分ともう1人の少年の顔を掴んでいた。
口を完全に塞がれ、それぞれ片手で軽々と持ち上げられる二人のメイジ。
こうなっては、杖が有っても呪文など唱えられない。
その上このまま顎を握り潰されるのではないかという握力でギリギリと締め付けられ、二人の貴族は恐怖に震えた。
メイド達二人など、もう手を取り合って涙を流して恐がるしかできないでいる。

「貴様等っ! 貴様等の魔法は何のためにあるっ!」
「!?」

そんな状態でドクロ仮面突然の問いかけ。
当然ながら、ペリッソンももう1人の少年も答えられない。色々な意味で。

「貴様等は貴族なんだろう! 皆をその魔法で守る者なんだろう!
それが、力の無い者を傷つけてどうするっ!!
それでも魔法使いか! それでも貴族か! いや、それ以前に―――それでも男か!!」

その言葉に、悶絶していた少年達は打たれたように目を見開く。
が、掴まれている二人はそれどころでは無い。

「ええい! なんとか言うっスー!!」

口が塞がれている二人に対して理不尽にもそう言ってガクガク揺するドクロ仮面。
正に悪魔。
本人達は「潰れるーっ」「中身出るっー」「眼が回るー」「死ぬー」「ごめんなさいー」「二度としませんー」等々反省していたのだが……
いかんせんフガフガとしか聞こえない声にドクロ仮面の折檻が続いてしまう。
しまいに顔色を紫にして意識を手放したペリッソン達を放り投げ、ドクロ仮面は重々しく言った。

「よいかお前達―――この世は私のもの。勝手な事は断じて許さん。
これに懲りたら、二度と恥知らずなマネはせぬように」
「は、はいっ!」

怯えた声で答えると、気絶した二人を三人で担いでその場から逃げ去る少年達。
杖を折られて魔法も使えないから一仕事だが、素早く速やかに最高速度で彼等は姿を消した。
悪魔恐いから。

「あのっ……あ、ありがとうございます」
「…………ございますっ!」

おそるおそると言った様子で、それでも勇気を出してお礼を言うシエスタ達に、ドクロ仮面は笑って(?)答える。

「気にするな。悪の組織の幹部として当然の事をしただけだ。
それに、オマエの優しさは多くの者を救うだろう。その気持ちを大切にな―――さらば!」

力強く飛び上がり渡り廊下の屋根へ。
そこから更に飛んで姿を消したドクロ仮面を見送ってから、二人は顔を見合わせる。

「いい人でしたね。シエスタ先輩」
「強くて優しくて……人は見かけによらないってホントね。人じゃないけど」

シミジミと語りあってから、仕事の時間に遅れたと駆け出す二人。
その背中を、出時を逸したルイズが呆然と見つめていた。
自分が召喚したモノが悪魔強いのを見て驚いているというのもある。しかしそれ以上に、その言葉と行動に衝撃を受けていたのだ。
平民のピンチに迷い無く飛び出す姿。貴族とは何か、その本質を突く言葉。
そんな姿を前に、ルイズは自分の弱さや不甲斐無さを感じてしまったのである。
そもそも使い魔の在る無しで魔法使い「らしい」とか「らしくない」とか考えている自分が恥ずかしくもなっていた。
そんなモノは、貴族の魂になんら関係が無いと気づかされたのだ。

「わたし……なにやってるんだろう」

ションボリと肩を落とす魔法の使えない魔法使い。
ルイズはトボトボと、自分の部屋へと帰るのだった。

「ふぃー、これで良かったんスかねぇ」

その頃、本塔の壁に施された彫刻の上で、ドクロのスーツを脱いだ少女が息をついていた。
恩人が絡まれている所に遭遇して、流石にメイド服で問題を起こしてはマズかろうとスーツに着替えて仲裁に入ったベホイミ。
これはこれで、教師にでも告げ口されて捜索隊でも組まれればやっかいな事になるのだろうが……まぁ仕方ないと諦める。
結局何処に行っても、騙し騙しそれなりにやっていくしか無いのだ。
地上から高さ50メートルほど離れた壁面から沈む夕日をアンニュイに眺める。

「それにしても。いきなり異世界に飛ばされるなんて、いきなり魔法少女にされるのとおんなじぐらいムチャクチャっスねぇ」

呟いて、もう一度盛大に溜め息をつく。
自分でもそれなりに数奇な人生を送っていると思っていたが、この事態は数奇にも程がある。
元の世界に帰れるのだろうかと不安になって当然だ。
そしてそれ以上に、元の世界に戻った時に学校の出席と単位がどうなっているかが不安だった。
ただでさえ地味キャラかつ色々妙な属性が付いているのに、今更ダブリ属性なんて欲しくないのだ。

「宇宙人、助けに来てくれねーっスかねぇ……もしくはサラマンダーみたいな妖精とか」

他人が聞いたら電波としか思えない独り言。

「あー……そろそろ戻って皿洗いとかしなきゃ。その後まかない貰えるし」

続けてヤケに日常的なセリフを口にした。
着ぐるみを着たせいで乱れた髪を輪ゴムで縛りなおして、ふと、この異世界ってお風呂とか有るんスかねー、などと考える。
そんな、異常事態に対する自分の適応能力の異常さに気が付いていないベホイミちゃんであった。


デビュー戦
――●ペリッソンVSドクロ仮面○――決まり手は締め上げ
新感覚癒し系魔法少女ベホイミちゃん、第二話へ続く!


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