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とある魔術の使い魔と主-53


「こっちの魔術はちょっとスタイルが違うんだにゃー」
 基本、必要最低限しか摂取しなくても大丈夫な土御門は、村長のご好意によって頂いた夕食を割と早く食べ終えた。
 一方のインデックスは、未だにガツガツと手と口の動きが絶えない。
 土御門がインデックスのためにと残した分もたいらげ、まだまだお腹いっぱいには程遠いご様子。既におかわりモード突入だ。
 あの小柄な少女のどこにそんな腹があるのだろうと、村長が驚きを隠せていない。
 このままでは村長の好感度が下がってしまうと危惧した土御門は、彼女の食事に対する勢いを止めようとインデックスに話しかけた。
 この世界の魔術――もとい魔法を二、三回見ただけで多少理解したのはさすがと言うべきなのだろうか。たとえあのような状況でも観察を怠らないのが土御門だ。
 返事をするのがめんどくさいのだろう。未だに料理は口に運んでいるが、目はちゃんと土御門の方を向いている。
 続きをどうぞという意味を含めているのは有り難いが、これでは裏の目的が達せられない。
 話を続ければ止まるかにゃー……、とやや脱力しながらも、仕方なしに土御門は続けた。
「一、ワンドを使って呪文を詠唱すれば特定の魔術が発動。二、ただしそのワンドがなければ魔術は発動できない模様。後は魔術に頼りすぎてる部分もあるかもにゃー」
 まあこれが全ての魔術師に該当するかは保証できないぜよ、と付け加える。
 さすがにそこまで言われたら、返答しなければならないだろう思ったのか、もぐもぐしていた料理を置いてある水を使い、無理矢理飲み込む。これで口の中は空洞だ。
「ふむふむ。そのワンドに何かの術式が入っているのかな?」
 いや、と土御門はインデックスの意見に反論する。
「確かにその可能性もあるが、俺個人の感想としては多分杖は魔術を発動させる何かの媒介ととらえるべきなんぜい」
 たとえば、アニューゼという人間がいる。
 彼女は『蓮の杖』という武器を使い、『偶像の理論』を組み込む事によって座標攻撃を可能としている。
 これがインデックスが思っている敵の魔術だ。
 つまり、杖に込められている術式を発動する事によって使える代物という事だ。
 しかし、土御門が受けた印象はどちらかというとRPG的な要素を含んだ魔術であった。
 つまり杖自身には術式が込められておらず、単なる始動キーとして存在している感じだ。
 事実、彼らの魔術は魔術と呼べるような物ではない。むしろ、『魔法』と命名した方が良いのかもしれない。
 もっとも、彼らがたまたまそういうタイプのメイジであっただけという可能性も否定できない。が、参考程度に話す分には問題ないと土御門は踏んだ。
 インデックスは土御門の言葉を頼りに、必死に頭を働かせたが、
「うーん……。見ていないからなんとも言えないね」
 どうやらお手上げのようだ。
 土御門との会話にうまく入ってくれたようだ。手に持っていたナイフやフォークは机に置いてある。
 ホッと一安心をした土御門は、そうそうにこの話題を終わらせる。
「にゃー。俺も詳しく見る暇はなかったからな。まぁ後々研究さしてもらうんぜい」
それよりも、と土御門は別の、もっと重要な問題について語り始めた。
「吸血鬼に襲われている、とは予想外なんぜよ」
「うん。こっちの世界でも存在しているっぽいね」
 二人はこの村に着いてまず村長へ事情を説明することにした。
 おそらくこの村に宿と呼ばれるような場所はぱっと見存在しない様子。ならばと、土御門はこういうときに行く場所でのお決まりである『村長の家』へ向かった。
 飛行船に乗ってガリアへ向かっていた所、賊に襲われ命からがらで逃げ出してたどり着いたという嘘は、容易に村長の心をゲットした。
 この際にもインデックスがシスターだと思われたのが幸いだ。
 先程インデックスから聞いた件といい、どうやらある宗教がそうとう大きな支配を持っている、と土御門は判断した。
 その際に話されたのが、今このサビエラ村を襲っている吸血鬼の話であった。
「吸血鬼は太陽の光に弱いから日中外を歩かないそう。なら『こちらの吸血鬼』は『うちらの吸血鬼』とは違うようだにゃー」
「うん、吸血鬼が襲うならここの村人全員が死んでてもおかしくないからね」
 インデックス達の世界に(おそらく)存在している吸血鬼は、漫画やアニメ等に出てくる吸血鬼の比ではない。
 見た人間は存在せず、尽きる事のない無限の魔力を誇る不老不死。おそらくそれらを倒す術は本当に数える程度の物でしかない。
 が、こちらでは違う。
 どうやら、世間一般に広まっている吸血鬼がこの村を襲っているらしい。
 弱点をつけば敵は死ぬ。そしてこの村ではそれを実行できる人間がいなくて困っているとの事。
 ならば話は簡単。
「じゃあ私たちが倒さないとね」
 もちろん倒すべきだ。
 そう、インデックスは思っていた。
「…………………………………………は?」
 が、土御門にとってはどうやら違うようだ。
 予想外の返答に、インデックスも「へ?」と聞き返してしまう。
 土御門は僅かばかりズレた青く輝いたサングラスを戻し、インデックスに確認をとる。
「待て、お前はまさか吸血鬼を倒そうとしてるのか……?」
「うん」
 寸分の迷いもない肯定に、土御門はため息を吐く。
「困っている人がいたら助けなきゃ」
 むしろ自分が困った。
 確かにこちらの吸血鬼は日光に弱いと言われている。ならば心臓に杭を刺したり、火で燃やしたらおそらく死ぬのだろう。
 しかし、それはあくまで可能性だ。
 たまたま日光に弱いという『弱点』が被っただけなのかもしれない。たまたま一人ずつ襲っていく吸血鬼なのかもしれない。
 挙げれば挙げる程こちらが不利になるような展開だ。
 しかも、この件に関して自分達が介入する必要はない。
 自分らは布教するシスターとそのお供をする人間だと判断されている。

 別に吸血鬼退治にこの村に来たわけではない。
 上条当麻という少年と出会う為に一晩泊めてもらうだけの場所だ。

「……無理だ」
 敵の強さがわからないのに立ち向かうのは無謀だ。
 こちらの戦力は魔力がない魔術師に出来損ないの無能力者。
 援軍もなにもないこの状況で、
 『日光が弱い』という事しかわかっていない吸血鬼に勝負をしかけるにはリスクが高すぎる。
 もちろん土御門だってこの村を見殺しになどしたくはない。できる事なら救ってやりたいとも思う。
 しかし、今回は条件が悪すぎる。
「どうしてかな?」
 なのにこの少女は疑問をあらわにする。
 まるで、とある少年と同じ行動を取るかのように。
「わかるだろ? 俺達が死ぬかもしれないんだぞ?」
「でも、このままじゃみんな殺されちゃうかもしれないだよ?」
「そのために俺達が死んでいいのか?」
「なんでそんな話をするのかな?」
 ん、と眉をひそめた土御門に、インデックスは続ける。

「もとはるはこの村の人たちを助けたくないの?」

 迷わず、真っすぐと土御門の目を見た。
 これだ。
 とある少年もおそらく同じ言動を取るだろう。
 そして、こうなっては何を言っても無駄である。
 本当に、困った。
 イェスと言ってもノゥーと言ってもあまりいい未来ではない。
 インデックスを死なせるわけにはいかないのだから結局は自分が頑張らなければならないのだ。
 と、そんな時だった。
 半開きのドアを盾に、自分達を覗いている小さい少女の存在に気付いた。
「ん?」
 自分から視線に離れた事に違和感を感じたのだろう。インデックスは振り返り、土御門の視線の先を見た。
「おお!?」
 まるで小動物を見るかのような輝きを出すインデックスは、さっそくこちらに来てもいいよと手招きする。
 しかし、少女はビクッと体を震わせるだけでこちらに現れようとしない。
「どしたのかな? こっちに来てもいいんだよ?」
 不思議がるインデックスに対して、少女は言うとおりにするべきか悩んでいる。
 そこに、今まで会話に参加しなかった村長が少女を促す。
「お入りエルザ。お客さまにご挨拶しなさい」
 村長の孫娘なのだろうと二人は判断する。まだ五歳ぐらいであろう少女なのだ。初対面の人間に怯えてしまっても仕方ない。
 エルザと呼ばれた少女は、トコトコとやや緊張しながらもインデックスに近づき、一礼する。
「わぁ~、かぁいいんだよー」
 インデックスがそのままお持ち帰りしそうな勢いでキュウ~と抱きしめる。あ、う……と困惑した表情をエルザは浮かべた。
「にゃー、インデックス。相手が困っているんだぜい」
 ニヤニヤと笑みを浮かべながら形だけは静止させる。ほっほ、と村長もつられて笑う。
「あわわわっ、ご、ごめんね?」
 いささか自分の行動が失礼であることに気付いたようだ。
 慌ててインデックスはエルザから離れて、改めて挨拶をした。
「こんにちわ。エルザって言うんだね?」
 こんな腹ぺこシスターでもシスターだ。屈託な笑みを浮かべて、エルザが話しやすい場を作る。
 そんなインデックスの対応にやや心を開いたのか、
「う、うん……」
 と顔を俯き、とても小さな声で肯定した。
「短い間だけどよろしくね。大丈夫、私たちが吸血鬼を退治しちゃうんだから」
 吸血鬼、といえば子供たちが恐怖する対象だ。しかも今現在襲われているのだから、少しでも安心させようとインデックスなりに考えた言葉であった。
 やれやれ、と言わんばかりに土御門はため息を吐く。どうやら既に決定事項らしい。
 しかし、
「お姉ちゃんはメイジなの……?」
 エルザは変わらず怖がっている。いや、むしろどちらかというとインデックスに怯えているようだ。
「うん。そうだよ?」
 小首を傾げ、不思議がるルイズ。何か自分は悪い事を言ってしまったのだろうか?
「ッ!」
 すると、エルザはすぐさまインデックスから離れて、そのまま立ち去っていった。
 呆然とするインデックス。黙っている土御門。ただ一人、事情を知っている村長が口を開いた。
「すみません。エルザはメイジに両親を殺されておりますのじゃ」
「……そう、なんだ」
 よっぽどショックだったのだろう、かなり落ち込んでいる。
 無理もない、小さい子供に拒絶されたのだ。インデックスは、村長に対してなにか返事をしなければならないと思っての言葉であった。
「一年ぐらい前に寺院の前で拾ったのです。聞けば両親はメイジに殺されて自分だけなんとか逃げてきたようでの。すみません、エルザのためを思っての発言が……」
「あ、ううん。気にしなくていいんだよ」
 どうやら村長はインデックスの発言を嘘と捉えたようだ。やはり、メイジ=杖という方程式があるのかもしれない。
 罪悪感を感じたのか、慌てて両手をぶんぶんとインデックスは横に振る。
 その時だ。今まで黙っていた土御門が突然と立ち上がる。
「――インデックス」
「ほえ?」
 サングラスのせいで表情がわからない。一体どのような思いで今この場にいるのかが、わからない。
「気が済むまで吸血鬼探しをしていい。けど自分一人でしてくれ。あと自分がメイジだとあまりばらさないようにな」
「え……、もとはるはどうするの?」
 インデックスの横を通り過ぎ、借りている部屋に向かおうとする土御門に待ったをかける。
 いくらなんでもインデックス一人では危ないのではないだろうか?
「俺はその間こっちの言語を覚えるんだにゃー」
 しかし、どうやら土御門は本気のようであった。


「……んで、俺と一緒に仲良くドキドキピクニックイベントの行き先はどこなのでしょーか?」
 上条当麻とタバサは、シルフィードの背中に乗って快適な空の旅を送っていた。
 ただし、それはあくまで景色のみ。
 まるで当麻がこの場にいないかのように、タバサは黙々と本を読んでいるのであった。
 背びれを背もたれにして、心地よい風を身に浴びながらも、のんびりと字を追っている。
 暇だ。
 勝手に連れてかれたのに、その人物はこちらと話そうとしない。いくら当麻でもこれはどうかと思ってしまう。
 むしろ気まずい。限られた空間の中で、いざ話を振ろうとするにはそうとうの勇気を必要とする。
 それでも当麻はこういった無駄な所で頑張る。当麻はタバサへと近づくと、話しかけた。
 おそらく華麗にスルーされるだろうなぁ、と否定的な思いを浮かべる。
 なんせ、タバサが会話をしている所など数えるくらいの程しか見ていない。
 しかし、
「頼みがあるの」
 まさか返事が来るなんて予想外であった。
 簡潔で短絡。しかもこちらに視線は向けずにぽつりと呟いた程度だ。
 しかし、今の当麻にとってそっちよりも重要な方を指摘した。
「って、普通に返事すんのかよ!?」
「話しかければ、当然の事」
 いやいやいや、と当麻は自分の顔の前で激しく手を横を振る。
「だったらこのような誰にも気付かれない二人だけの空間でコミュニケーションとりたくありませんオーラを出すスキル『本を読む』はありなんですか!?」
 言いながら、あれ? 実はこの空間いろいろとまずいんじゃないかと気付く当麻。
 二人きりの空の旅、何だがとても響きが良さそうに感じると同時、危ない面もありそうだ。
 一方のタバサはようやく顔をこちらに向けて、無表情のまま本のタイトルを当麻に見せつけた。
 が、当麻にはこちらの言語は読めない。普段は会話として成立しているのに、不思議な事だ。
「なんて読むんだ?」
「よくわからない言葉を連発する人とのコミュニケーション方法」
 ズゴッ、と当麻は思わずこけた。その際、シルフィードから落ちそうになるのは言うまでもない。
 うぉ! アブネェよ! とハラハラしながらもシルフィードの背中に乗り直す。
「俺か? 俺なのか!? 確かにこっちには存在していない単語を連発してますけどっ! それはあくまでこちらの世界の話であって、わたくしたちの世界では至極当然な話なのです!」
 彼の言う世界はジャパニーズ文化(オタク世界)という割と狭い空間なのだが、ばれないし問題ないっ! というのが彼の心情だ。
 すると、タバサは本のページをめくり、そこに書いてあるだろう内容を口にする。
「一、ハイテンションな人がこれに該当する」
「嘘こけ! お前俺が読めないからって適当なこと言うんでない!」
 ビシッ! と馬鹿っぽい人のようにタバサに向かって指をさす。
 すると、タバサは次のページをめくり、再び内容を口にする。
「二、割と馬鹿っぽい人がこれに該当する」
「えぇい、今考えました感が逆にありすぎてるんですがっ!」 タバサは数秒ばかしジッと当麻を見つめる。そして視線を本へと戻すと、また黙ってページをめくり始めた。どうやらもう話す事はないらしい。
「…………、なんかよくわかんねえな」
 今の状況を一言で述べた当麻は、タバサから少し離れて、大の字となって寝転ぶ。
 目的地にまではまだ時間がかかる様子、当麻もやることがないため、仕方なく空をボケーっと眺める。
 何もできない当麻は、ただただタバサに付き合うしか道はないのだ。
 そして気付く。

 結局自分はどこに連れていかれるのかわからずじまいであった。


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