あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

豆粒ほどの小さな使い魔-20




心って、ややこしい。

嫌な気持ちだったのは、カトレアさんのことがきらいだからじゃなかったみたい。
ルイズの魔法のお披露目の続きは、ご両親と、元気になったからと着いてきたカトレアさんに暖かくお祝いされた。
ただ、あまりに小さな子供のように可愛がられるのにルイズが最後には爆発しちゃったけど。だから草笛は落ち着いてもらえるようにゆっくりとした曲を選んだ。
笛を吹いていると、いつも合わせてくれる音が聞こえるような気がする。遠くなっちゃった皆との繋がりを忘れないように。

夕ご飯は、全部ルイズの好きな物が用意された。カトレアさんがそうお願いしてたって。怒ったりするところが想像できない。
「ルイズ、ですがこれで満足したりしないでしょうね?」
「もちろん、分かってますお母様。これは最初の一歩に過ぎないことを、行動で証明してご覧にいれます」
かっこいいな。
そう思ってルイズのことを眺めてるのが、私ともう一人、いた。
皆の目が、ルイズとそれをからかうキュルケに向かってるのを確かめて、私はカトレアさんの肩に跳んだ。
「るいずハ、本当ハ泣キ虫、ダケド、スゴク頑張ルノ」
ちょっとびっくりしたみたいだけど、すぐに小さな声で返事をしてくれた。
「そうね、それに本当は、とっても優しいのよね」
「ウン、アト負ケズ嫌イデ」
「恥ずかしがりやさん」
くすくす。カトレアさんが笑ってるのに、タバサが気がついたみたい。でも知らない振りをしてくれた。
「かとれあサンハ、私ガ嫌ジャナイノ?」
「どうして? 小さなルイズが好きな人は、私も大好きよ」
違う。そういうことじゃないの。手のひらに浮かんだ汗を、上着で拭う。聞きたいことがあるのに、言葉が上手く見つからない。
「今は、お食事をしましょう。ほら、ルイズの側に居てあげて」
「ウ……ウン」
「ルイズが寝たら、私の部屋へ。扉に隙間を開けておくから」
「分カッタ」

ほっとした。
やっぱり、優しいだけの人じゃなかったみたい。


* *



「聞いてたのより、優しい感じだったわね。それとも、今日が特別だったってことかしら?」
「そうみたい。お父様があんなに酔っ払ったとこなんて、私も見たことないもの」
そう言う私たちだってお酒入ってるし。騒ぐだけ騒いで、いい感じに疲れちゃった。
シエスタとタバサは客間に引っ込んで、多分もう寝てると思う。キュルケはどういうわけか、私の部屋にまでついてきたけど。
ていうか、そこは私のベッドよ。
「いいじゃないのたまにはこういうのも」
ちょいちょいと手招きされる。キュルケの手には、ワインのボトルとグラスが二つ。カナッペを盛ったお皿まで。
「んっ もう少しスパイシーな方が私の好みなんだけど、でもヴァリエール家の料理人も中々よね」
「寝る前にあまり食べるのもどうかと思うわよ」
「残したって硬くなるだけよ。美味しいうちに食べてあげなきゃ料理に悪いじゃない」
まったく、口ではキュルケには敵わない。お腹一杯でも、そう言われたら食べなきゃって気になるじゃないの。
「そのクリームチーズのは私のよ」
ルルルッ
「硬いこと言わないの。ほら、あなたもこれ食べてみなさいよ」
「ちょっと、そんなの大きすぎるわよ。ハヤテにはこっち」
クラッカーを小さく砕いて、フルーツクリームを乗せてハヤテに渡してあげる。
お行儀が悪いと言いたそうだったけど、ちょっと笑って、一口齧ってくれた。これでハヤテも共犯だからね。


「でも、よくうちに来る気になったわね」
声は掛けたけど、正直来てくれない確率の方が高いと思ってたから。お父様たちはちゃんと客人として遇してくれたけど、キュルケにとって居心地がいい場所じゃないはずだもの。
「ツェルプストーとして、一度はヴァリエール公とちゃんと面識を持ってみたかったっていうのもあるし、そういう意味でもいい機会ではあったのよ」
ここまで素顔を見せてもらえるとは思ってなかったけど、と苦笑する。それはあんたが開けっぴろげだったから、お父様も毒気を抜かれたのよ。
もてなしを受けて料理を褒めるのは、客としてのマナーだ。学院ではだらしないところが目立つけど、ただの色ボケじゃなかったってことか。
「将来のこと、考えてるんだ」
「そりゃ少しはね。再来年はもう卒業してるわけだし」
「ツェルプストー家の家業を継ぐの?」
確か、手広く事業を展開してたはずだ。隣領だけど、そうなると顔を合わせる機会はぐっと少なくなるだろう。学院なら隣の部屋で、嫌というほど顔を合わせるのに。たった二年後には全然違っちゃうのか。
「いつかは継がなきゃって思うんだけど、もう少し見ていたいっていうのもあるのよ」
胸の中の変な気持ちを、ワインでぐっと流し込む。むせた。
「ああもう何やってんのよルイズ」
「うるひゃいっ けほっ」
薄情なキュルケなんて知るもんか。ハヤテはずっと一緒にいてくれるもんね。
「まぁ卒業後のことは置いておいて、あんたやたら熱心にタバサ誘ってたみたいじゃない。それが気になったのもあるわ」
「よく知ってるわね。誰に聞いたのよ」
というか、誘ったのは朝の散歩のときだから、私たちしかいなかったはずなんだけど。
「気がついてなかったの? 授業中もやたらとそわそわして、タバサの方ばっかり見てたじゃないの。放課後の魔法練習の時も、ぼうっとして失敗してたし。あれ、タバサの返事を待ってたんでしょ?」
恥ずかしくて、顔が上げられない。
「素直なのは美徳だけど、あまり素直すぎるのも貴族としてどうかと思うわよ」
「う、うるさいわね、分かってるわよ」
ハヤテが私の指をさすって宥めてくれる。うん、ありがとう。もう大丈夫。
「つまんなーい。その子が来てから、ルイズが爆発しなくなっちゃった」
「キュルケ、あんたねぇ」
「うそうそ、冗談よ。感心してるんだから。あのちょっと突付かれるだけで爆発してたルイズが、だんだん大人になってるんだなって」
悔しい恥ずかしいむずむずするどうしてこんな見守るような目でキュルケに見られないといけないのよ。
「いいお姉ちゃんができて良かったわねールイズ」
「っ からかってるでしょう!」
ケラケラと笑いながら、形のいい喉を反らしてワインをくーっと空ける。
「だってぇ、悔しいじゃないのぉ。私がいっぱい弄っても変わらなかったルイズが、ハヤテだと簡単に変わっちゃうんだもの」
え?
今の、冗談めかした声の中に、違う気持ちが混じってるようで。
私が何か言うよりも早く、キュルケはベッドからひょいと飛び降りた。
「ああ、飲んだ飲んだ。もう流石に限界。それじゃ私も寝るから」
ひらひらと手を振りながらドアから出て行く。あれ? 何で私、ぼうっと見送ってるんだろう。ほっぺたがやたらと熱いし。
「悪口ヲ遠クカラ言ッテクル人ニハ、何ヲ言ッテモ届カナイ、ケド、きゅるけハ違ッタヨネ」
「……うん」
いつでも、入学してからずっと。私のところまで来て、それで散々からかって。
「きゅるけ、キライ?」
「好きじゃないわよ、あんなやつ」
人のことをゼロゼロって、それにからかってばっかりだし。でも、
「でも、きらいじゃないわ」
いなくなったら、寂しいって思うくらいには。
「ちょっと飲みすぎちゃったみたい」
キュルケの悪酔いに釣られちゃった。
見ていたいって言ってた。誰のことをかな? 私もその中に入ってるんだろうか。
お皿とグラスを、サイドテーブルに片付けて、ぽふと枕の位置を直す。
「さぁ寝るわよハヤテ……あ、そうだったわね」
ドアを一度開けてから、置物を挟んで閉めなおす。指二本分の隙間。
「これでいいわね」
「ウン、イツモアリガト」
手紙を出したとき、ついでに学院の寮みたいに改造させちゃえばよかった。そうすれば、ここは私とハヤテの部屋ってことになるし。
「明日残ってくれるのはタバサだけか」
そう、タバサともちゃんと話さないと……それで、タバサとちい姉様と……
目を閉じてたら、ふふ、ハヤテったら指笛で子守唄なんて。
あんまり甘やかすと、もっと甘えちゃうから……ね……




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