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アカイロマジカル-02

第二幕
虚言妄想(狂言盲壮)




白状させれば勝ちっていうゲームをしよう。
いいよ。なにを白状させる?



窓からは、結構な量の光が降り注ぎ、ぼくの頬を焼く。そしてぼくは、驚き、目を覚ました。
「えっ?」
 部屋は……明るっ!ぼくは窓の外を見ると、太陽は憎々しげに斜め上に輝いていた。大体十時頃だと思う。確実に寝すぎだった。
 ぼくは確実にモンモランシーに叱ら(シバか)れる。そうなると、本日のぼくの生命が終演を迎える事は間違いない。
 それは何度も行使されたことだ。すなわち、ぼくの私刑は確定。身体がぼくの意思に反し震えた。
ぼくは只々、神に救いを求める。何故にこの善良なぼくが……善良は言い過ぎか。 やり直し。何故にこの少々有害なぼくが、こんな悩まなくてはならないのか。
 まぁ、ぼくが神ならお前が有害だからだよ。と言う事はあえて考えない。
と、自分へのいいわけを考えたり考えなかったり。まあ、主に考えなかったり。
 ぼくはため息を一つつく。
「不覚だ。こんなに寝てしまうなんて」
と、何となく、規視感、つまりはデジャブを感じる……なんか朝方に暴風が舞い込んできた気がする。しかし窓は閉まってるし。寝ていたのに起きる筈もないしなぁ。
まぁ、いいや。大抵こういう感覚は気のせいなんだよね。

とりあえず、ぼくは着替えを済ませる。ぶっちゃけた話、とても面倒くさい。
 この作業をすると。ぼくは実家に居た時の事を、たまに思い出す。

 あの高慢な父や母や兄達。彼等は何もおかしくはないのだろう。……ただ、ぼくが。いや、ぼくだけが異端であり異常であるだけ。だから、代替物か。
 最低な気分だ。
 ぼくは気分を変えるため、本日の薔薇を胸に差す。
 よし、気分転換完了。
 しかしなぁ、我ながら単純な思考だな。と、ついつい自虐的になりそうになる。――自重。

……さて。今日はどうしようかな?
1、今から教室に急ぐ。
2、とりあえずほとぼりが覚めるまで退避。
選択肢にした意味は無い。ぼくは迷わず2を選んだ。朝から私刑は流石に、キツいんだ。
 だが、その時ぼくの脳に天恵が下った。
……ああ、そうだ。ヴェルダンデに餌とかをあげないと。うん。どばどばミミズは見つけにくい物だよね。うん。
いやぁ、まさかこんなに時間が掛かるとは。しかし、ぼくは妥協をしない。だって大切な使い魔じゃないか。多分。

ぼくは使い魔用の厩舎に向かった。
わりと全速力で。





使い魔に餌をあげ終わり。水場に移動していたぼくは。自分の考えの無さを呪った。
 やはり唾液の洗礼は凄まじく。髪から上着に掛けては、まるで洪水の後の難民の様な様相だった。
そういえば、モンモランシーの実家に近いラグドリアン湖はなかなかに綺麗だった。少し休みが出来たら、モンモランシーを誘って行ってみようかな。
 ちなみに。洪水でモンモランシーを連想する事は、彼女には言えない。ぼくだって自殺はしたく無い。
そして水場についたぼくは、髪と上着を洗う。そうこうしている内に、後ろから声を掛けられた。
「どうかなされましたか?」
振り向いて確認すると、洗濯物を大量に抱えたメイドだった。

 どうしてくれるんだ、きみは! もしぼくが後ろに立たれたら即死する病に侵されていたら、確実に死んでいたんだよ! 軽率じゃあないか! 決闘だっ! とは常識人のぼくは言わないのであった。
 ぼくは、彼女を見た。年の頃は多分、ぼくと同じ位だと思う。
 まあ、別に歳がずれていたって口に出さなければ、誰かに迷惑を掛ける訳では無いはずだ。……しかし、何となく気になる。なんだろう?
ぼくは、なるべく貴族足るように気取りながら答える。
「少しね髪の毛と服を、汚してしまったんだよ」
 べ、別にぼくはこのメイドの気を引こうとか常軌を逸したメイドマニアとかそういう類いじゃないんだからねっ!薔薇なんだから!何となく眼が気になるだけなんだから! と、句読点を一切廃したかの様な廃人思考をしていると。
「あの。もし宜しければ、上着だけでも洗いましょうか?」
 多少の気遣いが嬉しいかも。しかし実は、彼女はぼくに邪魔だから退けよ、この童貞野郎! と、思っているに違いない。うん。被害妄想万歳。
「いや、いいよ。もうすぐ終わるしね。それより隣どうぞ。重いでしょ、それ」
 事実、上着は洗い終わったし。
ぼくは洗濯物を指差す。そして彼女はにこやかに笑いながら。
「はい。実は少し重いんですよ」
と、言った。やっぱり違和感。なんなのだろう、この子。
ぼくは、彼女に話し掛けた。
「いつもそんなに量が有るのかい?」
「大体こんな物ですよ。あぁ、でも今日はジュンさんの服がある分少し多いですね」
ふうん。大変だね。ん、ジュン? ううむ。なんか聞いたことが有るような。って、何だ、その赤一色の服?
「ジュンさんは凄いですよね? こんな格好良い服とかも、ちゃんと着こなせますし……普通の人だったら浮いちゃいますよね?」
疑問系で聞かれても困る。第一ぼくは、こんな赤い服を着ている人を見たことがない。
 いくら記憶能力に少々問題があるぼくでも。そんな派手な人は忘れないはずだ。
ぼくが反応を返せないでいると。
「……ええと。もしかして、ジュンさんの事を知らないのですか?」
「知ってる知ってる。アレだろ?アレ。やたら槍とかを避ける奴」はぐらかしてみる。

「……知らないのですか?」
 目が、冷たい。
「知ってるよ! 知ってんだよ! 多分!」
 逆切れしてみる。しかし、多分が付いたせいで説得力は皆無だろう。
彼女は、倒置法を駆使し。ぼくを追い詰める。少々気持ち良くなってきた。はい、降参。
「……はい。知らないのです。どうか、この愚民であるぼくに教えたまえ。フハハ」
 もう、なにがなんやら。ぼくは、考えるのを止めた。のは、真っ赤な嘘である。もしくは、嘘じゃないのかも。
彼女はぼくを見つめ微笑んだ。……ああ、なるほど。そういう事か。
そして彼女は口を開く。
「ジュンさんは、ミスヴァリエールの使い魔ですよ。さらに、なんと平民なのですよ」
 彼女は、まるで自分の事を自慢するかの様に。腰に手を当て胸を張った。ちょっと可愛い。
「ふーん。そうなんだ」
「反応、薄っ!」
きみの反応が大きいんだよ。それに、その件に関してはあり得ない事でもないかな。
「うぅ。じゃあ、これでどうですか?―――――ジュンさんは天才であり、人類最強なんです!」
「な、なんだってー!!」
ぼくは驚きを隠せずに叫んでしまう。ま、まさか、天才で人類最強でもあるなんて。
「反応大きっ! って、信じていませんね?」
「信じてる、信じてる。世界における格差社会の完全撤廃の可能性くらい信じてるよ。本当、ほんと」
「つまりは、人間絶滅しろと!」
うぅん、面白い。飛躍したなぁ。
「ああ、いけない。厨房に行かなきゃならないのでした」
 昼を知らせる鐘が鳴った。
彼女はぼくに礼をし身を翻し厨房に向かう。
 ぼくは彼女を引き止めた。
「名前を聞いていいかい? ぼくはギーシュ」
「申し遅れました。私は、シエスタといいます。ギーシュ様」
「ギーシュでいいよ。ねぇシエスタ、一つ失礼な質問していいかな?」
 ぼくは彼女に聞かなくてはならない事がある。そのジュンって人も気になるけど。
「ええ、構いませんが」
 シエスタは頷いた。

「ねぇ、シエスタ。きみは生きていて楽しいかい?」

シエスタは、まるで空洞の様な深く暗い瞳を、ぼくに向け。
「やだなぁ、ギーシュ様。『楽しい』なんてある訳ないじゃないですか」

 と、言った。そして続ける。

「それでは。貴方はどうなのですか?」

 ぼくは、その言葉に揺れた。
そして、シエスタはぼくの返答を聞かず。厨房に向った。

 ぼくは。誰にも聞こえない様に、呟く。


「楽しいよ。すごく、ね」


言葉は、誰にも届かなかった。

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