あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのしもべ19



深夜、学院長室でオスマンは戻った4人の報告を聞いていた。
曖昧だった状態を無理矢理電気ショックで引き起こしている。よく死なないものだ。
「ふむ……では、ミス・ロングビルが土くれのフーケであり、あくまで単独犯。しかし、協力組織は存在していた、と?」
髭をもしゃもしゃ弄り、報告書に目を通すオールド・オスマン。
「美人だったのでなんの疑いもなく秘書に採用したのだが…惜しいことをした。」
「ちょっとは反省してください。で、いったいどこで採用されたんですか?」
隣に控えたコルベールが尋ねる。目が泣きどおしで真っ赤である。
「町の居酒屋でな、まあ色々と…ごにょごにょ…おっほん。まあ、深い詮索をするのはトリステインの人間としては恥ずべきことじゃ。」
「そういう風に言うと誤魔化しがものすごい高尚なことに感じるから不思議ですね。」
「今思えば、全て魔法学院に潜入するための罠じゃッたのか。つくづく惜しい…。罠と知りつつも男には行かねばならぬことがある。
つまりそういうことじゃな。うほっほん。」
全員の冷たい視線を振り払うように咳払いをする。そして厳しい顔つきをして、
「さてと。君たちはよくぞ『破壊の杖』を取り戻してくれた。心から感謝するぞ。」
しかし、4人とも、いやコルベールも含めて沈痛な雰囲気であった。
「……どうしたのかな?そういえば、わしはまだ破壊の杖の無事を確認しておらんかったな。コルベール君、どこにあるのじゃな?」
は、はあと恐る恐る箱を運んでくるコルベール。
「……これです。」とふたを開けるとそこには熱で溶けてつぶれ、ゆがみ、おまけに焦げた破壊の杖の姿が。
「………どったの、これ?」
「……見ての通り、破壊の杖です。」
「ははは、そうか。破壊の杖な。あはは、戻って来たのじゃな。わはははは。」
「あ、あは、あはははは」
「わはははは」
「あはははははは」
「ぬ、ぬふぅ…」
「う、うわぁ!学院長!」
気を失って頭から地面に落ちる学院長。おまけに気を取り戻してしばらく曖昧になって暴れまわり、正気を取り戻したのは2時間後の
ことであった。


「ど、どうしたの?ねえ、どうしたの、これ。なんだかおかしくない?こんなに曲がってなかったよね?」
「が、学院長…落ち着いてください。」首を絞められて苦しそうにうめきながらコルベールが言う。
「お、落ち着けるか…わしの、わしの破壊の杖が……命を救ってもらった杖が……なんか鉄くずにかわっちゃってるじゃないですか?
どゆこと?ねえ、どゆこと?」
「そ、それは、4人の話によると、ミスロングビルを殺害した連中の仕業だと…」
がっくりと肩を落とす学院長。完全に魂が抜け切っている。
「で、ですが、ご安心ください、学院長!」
コルベールが合図をすると、運び込まれてきたのは…
「ほ、ほら、破壊の杖がこんなにたくさん。このうち似たのを展示しておきましょう。ねえ?」
大量の自動小銃やバズーカ砲、ロケットランチャー…etcだった。
そして再びオスマンは気絶した。

「…一件落着でよいのかのう?」
大量に積まれた破壊の杖とその亜種の山を、どーすんのこれ、と言いたげに見つめるオスマン。頭に濡れタオルを乗せている。
「とりあえず君たち3名の『シュヴァリエ』の爵位申請を宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。ま、ミス・タバサはすでに
爵位持ちゆえ今回は精霊勲章で我慢して欲しい。」
水を持ってきた職員が邪魔だな、これと言いたげに破壊の杖を見る。完全に邪魔者扱いである、なんと不憫な。
「……これだけあるなら盗まなくても、ミス・ロングビルに一本ぐらいあげてもよかったのぉ。」
名残惜しそうに言うオスマン。だめだこいつ。
「本当ですか?」
もっともルイズたちは見ちゃいなかった。頭の中は爵位で一杯だ。
「本当じゃ。いいのじゃ。君たちはそのぐらいのことをしたんじゃから。もっとも、この破壊の杖がなければもっとよかったんじゃが。」
粗大ゴミ扱いだ。
「さてと、今日の夜はフリッグの舞踏会の予定じゃッたが、特別に明日…いや今日か。すまん、もう日付がかわっておるな。
今日の夜の舞踏会は、昨日の予定を延期し、行うことになった。」
キュルケの顔がぱっと輝く。
「そうでしたわ!騒ぎで忘れておりました。」
と、ルイズがおずおずと前に進み出た。
「オールド・オスマン。ビッグ・ファイアが別に話があるそうなんです…。」
「ふむ、なにかな?」


突然のルイズの申し出に一瞬途惑うコルベール。いったい、ガンダールヴかもしれぬ男が何を?と警戒する。
3人は目で合図をすると、礼をしドアへ向かう。
後にはバビル2世だけが残った。
妙な緊張感が漂う。
「……なにか、その……そうじゃ、菓子でも食うかの?」
「いえ、けっこうです。」
空気を和ませようとするがあっさり拒絶される。
「なら、訊きたいことでもおありかな?できるだけ力になろう。君に爵位を授けれぬ、せめてものお礼じゃ。」
「では単刀直入に言います。」
コルベールに出て行けと促そうとするオスマンの動きが止まった。あわてて追い出す。このまま一気にいろいろ言いそうだからだ。
「あの破壊の杖…ぼくが元いた世界の武器です。」
「ふむ。元いた世界とは?」
説明が始まった。ヨミの事は隠したが、魔法がなく代わりに機械が活躍する世界のことを。
オスマンはうーむと腕を組んで思案しながら聞いていた。
「なるほど、それで合点が行った。これ、っちゅーかなんちゅーか、あれを私にくれたのは、私の命の恩人じゃ。」
「恩人?」
変わってオスマンが説明を始めた。ワイバーンに襲われたところを助けてくれた勇士のことを。だが死んでしまったことを。
「彼は『元の世界に帰りたい』とうわごとのように繰り返しておった。おそらく、君と同じ世界からきたのじゃろうな。」
そしてあらためて破壊の杖の一つを手にとって、
「しかし、なぜそれに似たものが、こんなにも……」
「気をつけてください。」
バビル2世がガンを宣告する医者のような表情で言う。
「ぼくが元いた世界から、こういった武器を持ち込み、この世界に戦争を仕掛けようとしている男がいます。」
「な、なんじゃと!?」
げえっ、と叫んでバビル2世と杖を交互に見る。
「こ、この杖の力を知っているからわかるのじゃが、こんなものを持ち込まれて戦いになれば、勝てる国などこのハルケギニアに
一つもない…。大惨事になるじゃろう。そ、それはまことの話なのか?」
バビル2世は頷く。気が抜けたように椅子にへたり込むオスマン。


「ガンダー、いやビッグ・ファイアよ…」
顔を上げてバビル2世を見る。
「わしはあまりに話が大きすぎるゆえ、真贋を見抜けぬ。しかし、この破壊の杖の山を見ると、嘘とも思えぬ。」
もし、おぬしが本当に神の盾と呼ばれる伝説の使い魔なのなら、この世界の盾となりその悪夢を止めてくれぬか。そう呟くオスマン。
「わしは今日は疲れたよ…少し一人にしてくれぬか?」
頭を下げ、出て行こうとするバビル2世。その背中に、
「これだけは言っておくよ。私はおぬしの味方じゃ。なに、いざとなれば嫁の1人2人ぐらい世話するぞ?」
最後のほうは聞かずに出て行った。

フリッグの舞踏会。
どうも文化祭や体育祭のような扱いなのだろうか?食堂上階の大ホールは、着飾った生徒や教師が人いきれするほど集合していた。
豪華な料理の周りで、楽しそうに歓談するみなの姿を、バルコニーの枠にもたれてバビル2世はぼんやりと見ていた。
あのあと、学院近くへ戻ってきた4名は、まずしもべをどうするかで大いにもめた。
「学院に連れて行きたい!」
と駄々を捏ねるルイズと、
「いや、駄目だろ、常識的に考えて…」
と渋る残り3名である。ルイズはどうも、
「わたしの使い魔のしもべなんだから、これはつまりわたしのしもべということ。人の使い魔を平民だのなんだのと最初にバカにして
いた連中に目に物見せてやるわ!」
と考えていたようで、ようはまあ何一つ変わっていないということであった。あのとき空の上でひそかに誓っていたことはなんだった
んだろう。やはり人間、そう簡単には変わらないということか。
まあ、バビル2世を実際に助けたことはたしかだ。その分、成長はしているはずだ。
結局、置き場所がないことと、使い魔が怯えてパニックになり今までのような惨事が起こらないと言い切れないため、ロデムのみを
学院内にいれることにした。なんだかけっこうルイズはロデムがお気に入りのようで、喉を撫で回している。
猫好きなのだろうか?
そのロデムはルイズの部屋に入ることになった。
つまりロデムとルイズとバビル2世が一つの部屋に入ることになる。なるべくしもべは隠す必要があるし、しかたがない。


だが寝る場所がロデムはベッドの上で、ぼくは床の上というのはどういうことなんだろうか?
観察していると、ルイズの命令に対してロデムはどうもヨミとぼくが同時に命令を出したときと似たような反応をするときがある。
そういえばルイズたちをロデムは止めなかったようだし、ひょっとすると…の可能性があるのでしばらく様子を見るにも近くにいたほうが
ちょうどよいか、などと思いほうっておくことにした。
そのロデムはバビル2世の傍にいる。観察力の鋭いものならば、バルコニーの柱が一本増えていることに気づいたはずだ。
手元にいくつかの料理がある。シエスタが気を利かせてもってきてくれたものだ。
デルフリンガーは足元に立てかけてある。よく耳を澄ますとぐるるるカチャカチャ音がしているので、ロデムとしゃべっているのだろうか。
さすがはインテリジェンスソード、よく会話できるものだ。
などと考えていると突然甲高い声が。
「ヴァルエーリ公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな~~り~~!」
相撲の呼び出しもかくやという感じで到着を告げる衛兵。
姿を現したのは、息を呑むような着飾った姿のルイズ。
ルイズは長い桃色がかった髪をバレッタにまとめ、ホワイトのパーティードレスに身を包んでいた。肘までの白い手袋がルイズの
高貴さをいやがおうにも引き出し、胸元の開いたドレスが造りの小さい顔を宝石のように輝かせている。
主役が全員揃った事を確認した楽士達が、小さく流れるように音楽を奏で始めた。
あっというまにその美貌に惹かれて男たちが群がり、ダンスを申し込んでいる。
黙っていれば素材はいいからな、とバビル2世は苦笑した。あの分じゃ全員と踊っていると朝までかかりそうだ。
ふと、空を見上げるとそこには月がかかっていた。
召喚されたときと同じ、双月だ。
バルコニーから飛び降り、少し月明かりの下を歩く。
背後には踊るルイズたち。ここにはまぎれもない平和がある。
だが、その平和を享受するためには倒さねばならぬ敵がいた。
自分がこの世界に呼ばれた理由、それはおそらくヨミを倒すため。
優雅な舞踏会を背に、バビル2世はいつまでもヨミのことを考えていた。
これから始まるであろう壮絶な戦いのことを。

ゼロのしもべ 第1部 誕生編~白昼の双月~ 完


              …エピローグ…

「ヨミ。今度こそ決着をつけてやろう」
「ビッグ・ファイア…」
「む?」
声をかけられ、振り返るとルイズが立っていた。
「踊らないのかい?」
「相手がいないのよ」
すっと腕を差し出すルイズ。
「むむむ?」
「踊ってあげても、よくってよ。」
目を逸らし、ルイズはちょっと照れたように言った。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。」
バビル2世は学生服である。とてもではないがこの格好で踊れるものか。
「いいじゃないの。今日だけよ。」
ドレスの裾を両手で掴み、膝を曲げてルイズが恭しく一礼する。
「わたくしと一曲踊ってくださいませんこと。ジェントルマン。」

「ねえ、ビッグ・ファイア」踊りながらルイズが語りかけてくる。
「あなたの本当の名前はなんていうの?」
必死にルイズについてステップを踏んでいたバビル2世は目を瞬かせる。
「気づいてないとでも思ってたの?ビッグ・ファイアって名乗ったのに、あいつらはバビル2世って呼ぶじゃない。子供でも、本当の
名前が別にあるんじゃないか、ぐらい思うわよ。」
くすくすと笑うルイズ。その笑顔に、なぜか心臓がドキドキするバビル2世。
「浩一だよ。」
「コーイチ?」
「ああ、山野浩一。それがぼくの本当の名前だ。」
「コーイチ、ね。」
いい事を聞いたわ、と言わんばかりのルイズ。


「ねえ、コーイチ。もとの世界に帰りたい?」
「ああ。だが、ぼくはまだ帰るわけにいかない。」
それをどういう意味に受け取ったのか、ルイズの顔がなぜか一瞬で赤くなる。そして思い切ったように
「ありがとう」と呟いた。
「その……あんな連中を退治してくれたし、命も助けてもらったからよ。それ以外にないから。」
むしろそれ以外にない気がするが、強調するルイズ。
バビル2世は思った。自分も、今ぐらいは平和を楽しむのは悪くないんじゃないか、と。
「気にすることはない。」
「どうして?」
「ぼくは、きみの使い魔だ。」
楽士たちがテンポのいい音楽を奏でだした。なにかの曲のイントロのようだ。男が1人、前に進み出た。歌手らしい。
その男が燃えるような声で曲名を叫んだ。そして高らかに唄いだした。

 砂の嵐に 隠された …… ♪


「バビル2世よ…」
同じ月明かりの下、ヨミが呟く。
「おまえがこの世界の特性を知らぬ分、わしがまだ有利。いずれ直々に相手をしてやる。そうだ、今度こそ決着をつけてやる。」
そう言い、額から何かを剥がすヨミ。皮膚と同じ色をしたシールを貼っていたのだ。
その額でルーンが怪しい光を放っていた。


はるかなる異世界 人類は魔法の力を用いて 繁栄ある社会を築いていた。
だが その繁栄の陰に 暗躍する一つの影があった。
かつていくつもの組織を率い、世界を支配せんと目論んだ、ヨミ。
一方、3つのしもべを率いて、その野望に立ち向かう一人の少年がいた。
名をバビル2世。



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