あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

魔法少女リリカルルイズ23


次の日の朝、品評会二日前まで話は進む。
その日のロングビルは朝から大忙しであった。
もしかしたら学院の誰よりも忙しかったかもしれない。
明日には王宮からの来賓がある。
そういった、やんごとなきお方を迎えるとなると準備もただごとではない。
晩餐会の手配。宿泊場所の手配。院内の清掃。品評会での貴賓席の準備。
さらには、そういったお方は大勢お付きの者を従えて来る。
そちらの方にも様々なものを用意しておかなければならない。
それらを担当しているのはコルベールではあるが、実際には授業もある彼に代わって学院長秘書のロングビルが細々としたことを行っていた。
今も学院長にいくつかの事項について説明をしているところだ。
学院長は神妙な顔でロングビルの言葉を一言たりとも聞き逃さぬようにしているように見える。
だが、こんな時は学院長が悪癖を見せる前兆でもある。
それを熟知しているロングビルは足下をみる。
予想通り白いネズミがスカートの直下に入ろうとしていた。
すかさずロングビルは片足をネズミに向かって全体重を乗せて踏み下ろす。
気合いの入った見事な踏み下ろした。
だがネズミもさるもの。
直前で反転し、オールドオスマンの元に走る。
「おー。危ないところじゃったな、モートソグニル」
手に乗せたネズミ、すなわち自らの使い魔モートソグニルを耳元に寄せるオールドオスマン。
声を潜めて何事かをモートソグニルに訪ねる。
使い魔とメイジは声に出さなくても意志を通じることができるのだが、そこはそれ。雰囲気というやつだ。
「して、今日の色は?」
何の色かは推して知るべし。
その……あの……ロングビルのスカートの中のあれだ。
ああ、多少どころかかなりトウが立っているが一応、乙女秘密がここにさらされるのか、と思われたがモートソグニルは首を横に振る。
「なに!見られなかったと?それは遺憾じゃ」
どうやら乙女の秘密は守られたようだ。
だが、そんなことでは収まらない者がここに一人。ロングビルがいる。
笑っていない笑顔を満面にたたえ、最後に説明するはずだった警備状態について書かれた書類を挟んだボードを振り上げ、オールドオスマンの脳天めがけて振り下ろす。

「うわー、これ、年寄りにもはもっと……」

学院長室が静かになった頃、ロングビルは部屋を辞した。
警備状態についての説明がまだだったがそれは仕方ない。
オールドオスマンの責任だ。
そう、仕方のないことだ。
誰もいない廊下で、ロングビルは唇を三日月のようにして笑った。


結局、あれからユーノたちは明日の品評会に何をするか思いつかなかった。
といっても一晩中考え続けていたわけではない。
ルイズがデルフリンガーを折檻し終えたあと、まずユーノが轟沈した。
すでに子供にはつらい時間だったようだ。
そのあとにルイズが撃沈。
デルフリンガーに至っては考えるつもりだったかどうかも怪しい。
そして今日の昼に至るわけである。
授業中に考える訳にはいかないルイズに変わって、ユーノが考えているのだがどうにもうまくいかない。
どうしようもなく困りに困ったユーノは洗濯物を干しているシエスタとお喋りをしていた。
幸い周りには誰もいない。
人間に戻るのは少しまずいかもしれないが、声を出すくらいなら問題ない。
「お姫様が来るの?」
そのことをユーノは今、初めて知った。
ルイズが怖くなるくらい張り切っているのも、それなら納得できる。
「アンリエッタ様は陛下がお亡くなりになって以来、この国の象徴的な存在なんですよ」
「そうだんだ」
そういうことならユーノもできるだけのことはしたいが、いかんせん芸事にはユーノも通じていない。
「うーん」
お姫様が満足するような芸なんて思いつくはずもない。
「そうだ、ユーノさん。こういうのはどうですか?」
「何かいい方法があるの?」
「はい。シーツと、インクと、本を用意して、それから……」
「うんうん」
シエスタのアイデアはとても素敵なものに思えた。


時間はさらに進み夜へ。
空ににかかる青い月は昨日よりさらに痩せて、夜の闇を少し深くしている。
その闇をはらう明かりの下で、ロングビルはコルベールと明日に向けての打ち合わせをしていた。
「ミスタ・コルベール。宝物庫の衛士を門の警備に回すのですか?」
「何せ、急なことなので人手が全然足りませんので」
急なことでなければ、足りていたかと言えばそうでもない。
「ここの宝物は大丈夫なのでしょうか。たとえば、土くれのフーケとか」
近辺の貴族や傭兵にも打診をしてみたのだが、盗賊が世間を騒がしているような時だ。
はいそうですか、と人を回してもらえるはずもない。
「いやぁ。とはいえ姫殿下の護衛が目を光らせている時にわざわざ入り込む賊もおりますまい」
「ええ、そうですわね。では、明日の警備状況はこれで」
ロングビルは手元の書類に、品評会当日の宝物庫には一人も衛士を回さない旨を書き込む。
そして、唇を青い三日月のような形にして薄く笑った。


その頃、ルイズは大変盛り上がっていた。
「それよ!ユーノ!それならいけるわ」
ルイズは拳をぐっと握りしめて盛り上がりに盛り上がっている。
もう勝ったも同然、とでも言いたそうだ。
何に勝つのかは謎だが。
「それで道具は?」
「そっちはシエスタさんが用意しててくれるって」
「なら、あたしたちは練習よ。がんばりましょう!」
「うん」
その夜、遅くまでルイズの部屋の明かりは消えなかった。


品評会一日前。
学院の多くの者たちにとっては、この日からが本番といえる。
到着の先触れのすぐ後に到着した馬車から降りた王女は、学院生の感嘆の声に迎えられた。
「あれがトリステインの王女?あたしの方が美人じゃない」
中には例外もいるようではあるが。
ルイズもその例外の一人と言えるかもしれない。
一言も声を出さず、ただじっとアンリエッタ王女を見つめている。
「ルイズどうしたの?」
「ん……」
「おおかた王女様に見とれてんだろうよ」
「うるさい、黙ってて」
歓声を受けた王女はオールドオスマンの前に歩を進め、いくらか言葉を交わす。
今年の品評会はどうしても見たいという王女に、オールドオスマンはなぜかと聞いたが、王女はただ一言
「個人的なことですわ」
と答えたのみだった。


品評会一日前の夜。
他の学院生たちはすでに寝ているが、出遅れたルイズたちにそんな暇はない。
なんとしても今日の内に仕上げるのだと、箱を積み上げ、シーツを吊して最後の追い込みをかける。
「そこでシーツの向こうに!それっ」
叫ぶルイズ、走るユーノ、あくびするデルフリンガー。
そんな大騒ぎの中でも、三人はドアをノックする音を敏感に察知した。
ここしばらくのキュルケ襲撃のおかげだ。
三人は、いつものように顔を見合わせそれぞれ様子を確認。
問題がないことを確認すると、ルイズはドアの鍵に手をかけた。
「誰かしら」
こんな時間に部屋を訪ねてくるのはキュルケ以外にはいないはずなのだが、キュルケならノックなどせずに突入してくるはず。
こうやって鍵を開けるのを静かに待っている客というのは本当に久しぶりだ。
「どうぞ」
扉を開けるとローブを深くかぶった少女が部屋に飛び込んできた。
少女はいきなりルイズの首に抱きつくと感極まった声を出した。
「久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ」
ローブが落ちて少女の顔があらわになる。
ルイズはその少女の顔と声に覚えがあった。
忘れるはずもなかった。その少女との思い出は、ルイズにとって大切なものだったのだから。
「姫殿下!」
ユーノは自分が乗った箱の上で、首をちょこちょこ動かしながら二人を見ていた。


新着情報

取得中です。