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KNIGHT-ZERO ep09


                 星空の彼方に神を求めよ
                 星々の上に、神は必ず住みたもう


                            ベートーヴェン交響曲第九「歓喜の唄」より 



ルイズはKITTをレキシントンの直下に突入させる、戦艦の横腹が光り、上空からの砲撃が始まった


分子結合殻で守られたKITTのボディはこの時代の大砲程度いくら食らってもビクともしなかったが
中に居るルイズは別だった、火薬を詰めた砲弾がKITTの至近で爆発するたびに激しい振動を味わい
人の頭ほどの鉛球がルーフを直撃した時は、全身の骨が外れるのではないかというほどの衝撃を食らった

被弾箇所を発生源として室内の操縦者を襲う衝撃波はKITTのテクノロジーでもどうしようもなかった
物理法則上、衝撃は緩和拡散しても消滅しない、リアクティブアーマーに似た緩衝システムに存在する限界
それはウィルトン・ナイトが扱い方次第で強力な武器にもなり得るKITTにあえて残したものだった

魔法攻撃の時の比にならぬほどの重く激しい衝撃はマイケルより小さく細い体格のルイズを遠慮なく襲った
砲弾を受けた場所から来ると身構えた途端に室内での反響で予想外の所から食らうパンチに呻き声を上げる


もしもあの艦が地上に停泊していたなら、船内に飛び込んでメチャクチャに走り回ってやろうと思った
森の中で一抱えはある杉の木に激突し、太い幹を叩き折り傷ひとつなく走行を続けたKITTなら
木造艦の船体など紙のように突き破り、船体を完膚なきまでに破壊しながら突っ走ってくれるだろう


ルイズは以前、KITTが緊急操縦の教材として見せてくれた『エイガ』とかいう異世界の映像の中で
東方人の武道家が木造の貧民窟をKITTより不恰好なクルマで走り抜けるシーンを見た事があった


レキシントン号はKITTの上空で高度を下げた船体を右に傾け、右舷から直下に激しい砲火を浴びせた
続いて艦を反転させて左に傾斜させ、左舷の砲で地上の敵を集中射撃する間に右舷の砲の装填を済ませる

巨大艦をヨットのように操り、この眼下の敵に艦対艦の戦術を柔軟に応用する大胆な操艦は手強かった
KITTはズームカメラで艦橋を、上空の敵である艦長の姿を見た、向こうも双眼鏡でこちらを見ている
艦長は左右交互の砲撃で双方の膠着状態を維持しつつ、その動きをつぶさに観察し未知の物体の弱点を探る

歴戦の船乗りボーウッド提督は、間断なき艦砲射撃による消耗戦が最も確実であることに気づいていた
彼の唯一の誤算は、その不沈艦の如き機械の弱点がその内部で操作する者の疲労と限界であるように
最大の武器もまた彼女であることだった、ルイズの不屈の意思こそが、KITTが最も誇るべき装備だった





アンリエッタは自軍の兵と共に、KITTがレキシントン号から砲撃を食らう様を森の縁から睨んでいた
以前ルイズがギーシュのゴーレムに滅多打ちされるKITTを成す術なく見ていた時と、似ていて違う目

アンリエッタの中の全軍の指揮を取る王女としての彼女は、現状とその打開法を冷徹に模索していた

コミュニケーター・リンクからは既に砲声と悲鳴と呻き声、そして上空の敵への罵りしか聞こえてこない

あの戦艦が大砲と魔法兵器を撃ちまくり、ルイズの乗っているオバケみたいな馬車を仕留めた瞬間
砲弾を消耗し人員も疲労したレキシントン号に、自軍に残った数少ない竜で一気に体当たり攻撃をかける

それしかないと思った

ここで敗北し艦に詰め込まれたアルビオン兵が上陸を成せば、トリスティンはあっさり陥落するだろう
タルブの防衛に出張ったトリスティン騎兵部隊の全滅でそれが止められれば、政治的には成功と言えた


もしもこのわたくしが生き残ることがあったら、ルイズの骨を、たとえひとかけらでも拾ってあげよう
その時は、あのオバケ馬車の破片も一緒に・・・でも、きっとわたくしにはそれは無理でしょう

アンリエッタは自分のために隠していた風竜に括りつけた火薬の木箱を確め、縄をもう一度結び直した

どこかの嫡子を引っ張ってくれば取り替えの利く王女の命一つで国家が守られれば、安いものだと思った






ルイズとKITTは未だ戦艦レキシントンの直下を走り回り、砲撃を避け、食らい、奮戦し続けていた

次々に食らう衝撃と振動に頭がぼうっとしてくる、操縦桿から食らうキックバックで手首が折れそうだった

室内全体を超音速機のGスーツのように加圧する構造と、レーザーで体を拘束する独特のシートのおかげで
ルイズの体と意識は辛うじて原型を留めていたが、それももう、あまり長くは持ちそうになかった
KITTの居た世界で主流のシートベルトでの固定なら、ルイズの手足はとっくに千切れていただろう

ルイズは胸に衝撃を食らい血の唾を吐き出す、薄い胸を授けた神を恨み、八つ当たり気分で戦艦を見上げた

「それにしても、人間が地から授かった木と鉄を悪用してくれたものね、罰当たりにも空からなんて」

ルイズは危機に追い詰められながらも、自分の体の中を不可解な力が巡りつつあるのを感じていた

砲撃の雨を食らい、巨大な飛行戦艦をひきつけるべくKITTの操縦桿と各種装置を激しく操作しながら
ドアポケットに入れっ放しだったインチキ臭い祈祷書に、ルイズが水のルビーの輝く左手で一瞬触れた時
ルイズの感じていたそれは確信に変わった、始祖の祈祷書が、蒼い宝石が体内を流れて教えてくれるもの

「・・・KITT・・・わたし・・・もしかして……選ばれちゃったかもしれない・・・」

「あなたがこのトリスティンで最も不幸なメイジに選ばれたのは間違いないでしょう、そして最もタフだ」

こんな時だというのにKITTの言葉に笑みがこぼれる、赤ん坊が母親の声を聞いた時みたいだと思った
契約を交わした使い魔には主人を守る意識が芽生えるらしいが、きっと変わったのはわたしも同じ


「・・・ねぇKITT・・・約束して・・・わたしは・・・わたしの力は・・・きっと目に映るすべてを巻き込む・・・
これからわたしがわたしでなくなっても・・・あなたはわたしの使い魔で・・・ずっと・・・わたしと・・・」

「それでは今、約束することにしましょう、私とあなた、双方の世界での言葉で『死が二人を別つまで』」

凛とした瞳で戦艦を見上げていたルイズが突然、顔を赤らめ俯く、意地を張るかのように声が上ずった

「バ・・・バカっ!・・・こんな時に・・・それって・・・そういう・・・意味?・・・その・・・困るわよぉ・・・心の準備が・・・」

ルイズの左の薬指、彼女の闘志に応え輝いていたルビーは、心のもっと奥から更に強い力を得て蒼光を放つ



誇り高き貴族であるルイズの大切な物を守る意思は強かった、そして恋する女のコのルイズはもっと強い






ルイズはKITTをオートクルーズに切り替え、ルーフを開けて立ち上がった、胸には始祖の祈祷書

今、砲撃を至近に食らえばルイズの上半身が消滅する、KITTはこの世界と過去の異世界で蓄積した
走行データの全てを発揮し、既存のオートクルーズの限界値を超える激しい機動で砲撃を避け続けた

あの契約以来、KITTの制御システムが立ち上がる時にメインモニターに必ず表示される青白い文字
主人の詠唱を守る為の存在の証であるルーンが強く輝き、それに同調してKITTの稼動領域が拡大する
ガンダールフなるOSを得たKITTが観測した既存プログラムとの変更点は、その起動画面くらいだが
少なくとも以前インストールされていたビル・ゲイツ製のそれよりはKITTの好みのデザインだった



砲撃の穴だらけのタルブの草原、レキシントン、遠くのトリスティン騎兵、ルイズには何も見えなかった
唱えるべきルーンは祈祷書がその青いルビーの輝く掌を通して、体内に流れ込みながら教えてくれる
激しく揺れながら走りつづけるKITTの上で、ただ感じるのは、たゆたうように体内を巡る力だけ




ルイズはルーンを詠唱し続けた、長い、祈りのような詠唱、わたしはこれから神の力を得るんだろうか

それは違う

わたしはこの大地と空、その間に立ち、ふたつの意思の触れ合おうとする思いに橋を渡すだけに過ぎない





ルイズは杖を掲げた、天空を指すメイジの杖、戦艦レキシントンの上空、遥か上の宇宙、そこに在る命
裂帛の気合も感情の爆発も無く、ただあるべき物をあるべき処へ回帰させる、その衝動にルイズは従った




空と大地、そしてルイズが繋がった、その絆は大きな力を産み、天と地に反した物の存在を禁じた


戦艦レキシントンは巨大な光の球に覆われた、艦の主要部分が操作不能になり、その航走と砲撃を止めた




ルイズはKITTのシートに落ちる、ルーフを閉じ、ただオートクルーズで走行する振動に身を委ねていた




その左手は始祖の祈祷書、右手はKITTの操縦桿に、彼女の意思を表わすかのように添えられていた




                わたしは       信じてる




KITTから出て、葡萄畑の外れにある草地に座り込んだルイズは、大きな菩提樹の樹に背を預けていた
レキシントン号が煙を吐きながら、ゆっくりと高度を下げていく様を他人事のように眺めていた

自分があの巨大な光球を出現させたこと、虚無系統の使い手であったこと、実感が沸かなかった

ただ体がだるかった

KITTはルイズの側に控え、ルイズがそれを望んでいることを知っているかのように沈黙を守っていた
フロント・インジケーターの赤い光が左右に動きながら発するヒュンヒュン・・・という音だけが辺りに響く

降下したレキシントン号は草原に着底し、艦長の迅速な決断でトリスティン軍の包囲の前に投降した
最新艦の能力を過信し、レキシントンを単艦で先行させていた僚艦は未知の兵器を恐れ引き返して行った
KITTは指向性ソナーで兵士達の会話をモニターし、双方に犠牲者が出なかった事に一安心する

ルイズは眠りにつこうとしていた、どうやらわたしは、KITTのこの音を聞いてるとよく眠れるらしい
ルイズが菩提樹の木に頭をもたれかけ、木漏れ日の中で静かな寝息を発する頃、KITTは静かに動いた
音も無くルイズが身を委ねる木に向かい合う位置に車体を動かす、ちょうと木に挟んで轢き潰す位置
KITTはエアサスを作動させて車高を上げながら、そのタイヤで忍び足をするかのように草を踏んだ
黒いフロントノーズが少しづつルイズに近づき、その尖った先端がルイズの顔面、その唇に接した

KITTは少しの間、眠るルイズの唇とフロントノーズを接していたが、やがて車を静かに後退させ
何事もなかったかのように車をゆっくりと回すとルイズの横、使い魔の控えるべき位置に戻った

それはKITTの生まれた世界、そしてKITTとルイズの生きるこの世界に共通した親愛の行動


キスと呼ばれるものだった


KITTの生体モニターはらしからぬエラーを起こした、ルイズはその外見から眠っている様に見えたが
彼女は薄目を開けながら、いつまで寝たふりをしていればいいのかしら、と考えていたのだから
鼓動が早くなる、ルイズは自分の頬がいつもより赤くなってないかと思っていたが、不要な心配だった
KITTのフロント・インジケーター、いつもより少し速い光の往復がルイズの顔を赤く照らしていた







  <パラレルなオマケ>





ワルドの乗る風竜とルイズの駆るKITTは、タルブの平原で対峙していた

「KITT!あの風竜に思いきり寄せてターボジャンプ!それから私をイジェクトして!」
「ルイズ!無茶です!」
「いいから早く」

ルイズが赤いボタンを押すと同時にKITTは蹴っ飛ばされたように大地から脱した
その放物線が描く最高点でリフトしたシートをさらに跳ね上げ、開かれたルーフからルイズを放り投げた

ワルドの操る風竜、その後部に落ちたルイズはワルドの背後にしっかりと騎乗した、両腿で竜を挟む

「ミ・レイディ、僕の邪魔をするなら君とて容赦はしないよ」
「OKベイビィ!あんたはこれでゲームセットよ!さぁ一緒にハードなロックを踊りましょ」
「…ルイズ・・・・・・君は変わった……なんかこう……根本的に変わった・・・・・・」

ルイズは背後から奪った手綱で一度上昇させた風竜を急降下させた、風圧の中で地面が迫る
風竜が地に激突する寸前、ルイズは中空に身を躍らせた、わたしには必ず抱きとめてくれる王子様が居る

再びターボジャンプして待ち受けていたKITTのシートに落ちたルイズは緩衝装置に受け止められた

一瞬、対応の遅れたワルドはそのまま風竜とともに地面に叩きつけられる、

「イヤァッホゥ!やったぜKITT!一発逆転、ハーフラインから一気にタッチダウンよ!」

「ルイズ、貴女は変わりましたね、私の以前のパートナーによく似てきました」

「そんなにその「まいける」とかいうのに口癖が似ちゃったの、いやだわ」

「……いえ…その、申し上げにくいんですが……最近、胸毛とモミアゲが……」

ルイズは革ジャンの下、ブラウスの合わせ目からこぼれる桃色の縮れ毛を見て赤面した


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