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牙狼~黄金の遣い魔 第6話(Aパート)

~GARO 黄金の遣い魔~

光あるところに、漆黒の闇ありき。
古の時代より、人類は闇を恐れた。
しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、
人類は希望の光を得たのだ。

行け 疾風のごとく
宿命の戦士よ 異界の大地を
何故戦うのか それは剣に聞け
か弱き命守るため 俺は駈け続ける
闇に生まれ 闇に忍び 闇を切り裂く
遥かな 運命の果て巡り合う 二人だから
行け!疾風の如く 魔戒の剣士よ
異界の双月の下 金色になれ
雄雄しき姿の 孤高の剣士よ
魂を込めた 正義の刃 叩きつけて
気高く吠えろ 牙狼!
第6話 封剣
闇の彼方から近づいて来る照明を、ジャン・コルベールはひどく厳しい表情で待ち続けた。
最初針の先ほどだったソレは次第に大きく膨れ上がり、ついには圧倒的な暴力となって地上に降り注いだ。
同時に凄まじい突風が吹き荒れ、身にまとうものを全身に張り付かせた。
耳元では、鼓膜が破れんばかりの羽ばたきの音が響いている。
余りの眩さに、目を開けていられない。コルベールは限界まで眼を細め、自分を照らし出す照明を払うように両腕を振った。
自分の足元に描いた、巨大な円弧の中に着陸するよう指示を出す。
それを確認したのか、運搬用飛竜の騎手はゆっくりと高度を下げていった。
まず、六頭の飛竜の中心にあるコンテナが着地する。
ついで、ここまでコンテナを搬送してきた飛竜がその周りに着陸した。
飛竜が翼を閉じると同意に、あれほど騒がしかった羽音が止まる。
コンテナを係留索につなぎ、竜を一旦轡から外して小休止させる。彼らの仕事は、とりあえずここまででお終いだ。
代わりにコンテナ側面の扉が開き、中から数人の人影が現われた。人影は扉から伸びたスロープを降り、コルベールの前まで歩いてきて停まる。
「魔法学院の方かしら?」
艶がある、と形容するにはいささか無味乾燥すぎる女性の声が誰何する。コルベールはうなづく代わりに、マントを留めた学院の徽章を相手に見せた。
「けっこうだわ」

ソレを確認して、相手の女性がうなづく。背後の照明に照らされて、金属製の眼鏡のフレームが鈍い輝きを放った。
「このたびは、アカデミーに御協力いただき感謝します」
儀礼的なものだろうが、相手が突き出した掌に握手し、コルベールは歩き始めた。
その背後を、アカデミー……王立研究所から派遣された者たちがついてくる。
「サンプルは、貴方が捕獲なされたのですか?」
どうやら、この場で一番の上司らしい先ほどの女性が、コルベールに尋ねた。
「いいえ」
それに対して素っ気なく返事をして。
「“アレ”は、学長のオールド・オスマンが倒されたそうです。私は、学長から皆さんへ引き渡す役割りを担っただけですので」
「そうですか」
相手の女性もあっさりと引き下がった。
「捕獲時の状況を、本人の口から聞きたいと考えたものですから」
「それについては、必要ならば学長からアカデミーへ報告書が提出されると思いますが……なにぶんにも」
「アカデミー嫌いな方ですから」と言う言葉を飲み込み、コルベールは無言を保ち続けた。
やがて一行の前に、奇妙なものが現われた。
巨大な天幕である。
屋外宿泊用のソレではなく、なにかを覆い隠すようにしてある、キャンバス地の四角い壁である。
御丁寧にも、外観は目立たぬよう迷彩模様まで施されていた。
位置は学院の敷地のギリギリ内側にある。おそらく学院関係者の立ち入りを妨げるためだろう。魔法による警報装置が仕掛けられたエリアへとコルベールは歩み寄った。
「良いですか?」
解錠の呪文を唱えた後、コルベールは確認するように全員を見回した。
「危険はありません。完全に封印されています。身動きもできないでしょう。ただ、オールド・オスマンによると用いられた封印が特殊なため、魔法を照射すると、その封印に何らかの影響を及ぼす恐れがあるそうです」
最後に、今の言葉に全員同意していることを確認してから、コルベールは天幕を開けた。
天幕の中は、思われたよりもずっと広かった。
正確には置かれた調度品は何もなく、床すらなかった。露出した土間が足元に続いている。
否、足元にあるのはすり鉢状のくぼ地だった。深さは最大で人の腰くらいもある。まるで何か、『凄まじい重量物』が押し付けられたみたいに陥没してしまっている。
陥没した、すり鉢状の土地の真ん中に、『ソレ』はあった。
最初ソレは、巨大な氷の結晶に見えた。何処までも透明で、澄んでいる。先すぼまりの涙滴型のソレは、くぼ地にすっぽりはまる形で存在した。
「これは…石英……水晶か?」
「錬金にしても、これほど純粋な……不純物のない状態はなかなかできるものではない」

一行の中から、感嘆と共に分析する声が漏れ出た。さすが王立研究所。トリステインの全ての魔法研究の総元締めたる存在である。すぐさま、目の前の研究対象に対する様々な意見が飛び交った。
だが、何よりも一行の関心を集めたのは。
「これが、件(くだん)の未知の幻獣と同じ種類の個体なのかね?」
水晶の中心部に埋まり込む、灰色の異形の姿であった。
大きさは、ほぼ人間と同じほど。
形状も人にほぼ近似している。
だが顔は骸骨と豚を足したような容貌をしており、側頭部からは曲がりくねった角のようなものさえ伸びていた。
黒みがかった灰色の表皮は節くれだち、しわとも鱗ともつかないものが点在している。背中には羽根。それも鳥の物ではなく、蝙蝠やドラゴンのような皮のみの翼の形状である。臀部からは、ほとんど骨と皮だけの細い尻尾が生えていた。
「まるで、悪魔だな」
誰かが、息を呑む音と共にそんな声を漏らした。
ソレに対して、コルベールの目の前の女性は非常に腹ただしそうな表情をあらわにして睨みつけた。
「コレは単なる生き物よ。何を信仰しようと勝手だけれど、そのような空想上のモノとコレを混同しないで!」
「は、はい!」
かなり強面らしい、その女性の一声でその場は一挙に静まり返った。
……トリステイン魔法学院が、『未知の大型幻獣』の襲撃により、大きなダメージを受けてから一ヶ月余りが経つ。
当然その、『学院の生徒たちにより駆逐された』生物に対するアカデミーの関心は高まった。
だが、当然あるべき生物の遺骸はなく、その話の信憑性を疑う声すら上がった。
元よりアカデミーと学院長であるオールド・オスマンとの確執も有り、アカデミー側から学院を懐疑する指摘も王室に昇った。
ソレに対して今回、魔法学院側から『先日現われたものと同じタイプの幻獣を捕獲した』との報告が上がり、その検証にアカデミー側から人員が派遣されたのだ。場合によっては、その幻獣をアカデミー側が回収し、分析すると言った要請も出ている。
そうして今、彼らの目の前に居るのがその『未知の幻獣』の正体であった。
正直、アカデミーの面々は失望を隠さない。このような人間大の生物に、本当にメイジたちが敗れたのかと。
ソレに対して、コルベールは説明を開始した。無論、全てオールド・オスマンから受けたレクチャアだと断りを入れてからだが。
曰く、この幻獣は人間を始めとする生命と融合する。その形状、大きさ、攻撃力に理論上限界は存在しない。
曰く、この幻獣を滅ぼせる魔法は存在しない。
曰く、この幻獣には“死”という概念は存在しない。
「……つまり、まだ生きていると?」

目の前の水晶中に封印された『ホラー』(それが幻獣の名だとオスマンから伝えられた)を見ながら問うと。
「ええ、それが条件の一つのはずですが?」
眼鏡をかけた女性の、燦然と輝くブロンドヘアを見ながらコルベールは答えた。それに対して相手もうなづく。
「確かに。あなた方の学院を襲った、『未知の幻獣』のサンプル。しかも生きているものを提供される代わりに、学院の再建費用一切を面倒見るのが取引の条件です」
交換条件としては破格のものだが、今聴いた話が確かならばそれに十分見合うだけの投資と言えるだろう。
いかにも禍々しい『ホラー』を見ながら、眼鏡の女性……エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ヴァリエールは考えた。
「はたしてこれが、生物と呼べるものなのか?」と。
そうして。
「この『ホラー』を倒したと言う、『学院の生徒たち』とは何者なのか?」と。

穏やかな日差しに、机につっぷしてルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはため息をついた。
ギトー担当『風の応用学』の授業中である。
目の前では、陰気な事この上もない教師によるワンパターンな授業が続けられている。
曰く、風の属性は最強。
曰く、風の魔法使いは最高。
故に俺最高。
なんだそうである。教師として好かれたいのならば、新鮮かつ簡明な授業とヒトを捉えて離さない話術が必須であろうに、俺が強いからお前ら俺をあがめろなどというジャイアニズムが通用すると考えている辺り、人間的素養がかなり欠落している気配が濃厚だった。キュルケなどこっくりこっくり舟をこいでいる始末だ。最近は夜の男関係は控えているみたいだから、房事に耽り過ぎての疲労ではないだろう。まあ、今は自分の部屋の隣ではなく、鋼牙の部屋の隣に移転しているのでその辺りの様子は定かではないが。考えてみればこの間まで壁一つ隔てたところに居て、艶事関係筒抜けの関係だったのだ。良く自分は我慢できたなと不思議に思う。いや、性的な意味合いで持て余す事がなかったのは、ある意味自分がまだ発育不良の段階であるからではないのか?そう思うと、逆の意味で悔しくなってくる。
(ああもうナニ考えてるんだか……授業に身が入らないのは、雑念が多過ぎるからかもね。なにせようやくひと段落着いたと思ったら、いろいろ、イロイロ有りすぎるくらい有り過ぎたからなんだけどね)
ボーとした頭でボーとしながらボーとした事を考えていると、不意に誰かを呼ぶ声に意識が再浮上した。
「んん?」
どうやら睡魔と格闘中のキュルケがお気に召さなかった模様である。講師ギトーはキュルケを名指しで呼んで、最強の属性は何かと尋ねていた。

当然、ソレに対してキュルケは唇から垂れた涎を拭きながら「火に決まっている。焼いて良し。煮て良し。蒸して良し。兎に角火力が一番」などと答えた。
ソレに対して、講師ギトーの肩がそびやかされる。陰気な顔に自信ありげな表情をたたえながら彼の御仁は「ならば最強の火の魔法で私を攻撃したまえ」などとのたまった。
「あら」
それを聞いて、キュルケはきょとんとした顔をし、ついで不敵な笑みを浮かべた。
「本当にいいんですか?大怪我をしても知りませんよ?」
「かまわん。全力できなさい」
売り言葉に買い言葉である。両者とも杖を掲げて、教室の通路越しに睨み合った。既に進路上の学生たちは席を立ち、退避し終えていた。
「ならば!」
キュルケの掲げた杖の先に、『ファイヤーボール』の火球が産まれた。こぶし大くらいの炎の塊である。これでも、立派に人に大火傷を負わせるくらいの威力は存在する。
だが、魔法を発動し終えたにもかかわらず、キュルケの呪文詠唱は終わらなかった。
ルイズたちの見ている前で、火球は徐々に膨れ上がり始めた。次々に魔力がつぎ込まれてゆき、始めに生み出されたときよりも二倍、三倍の大きさまでなっていった。
「ほう」
ソレに対して、ギトーは余裕の笑みを浮かべながら己の杖の先端を振った。
空気が渦巻状に歪み、陰気な教師の前に風の壁が展開される。
「それでは、行きますわよ」
キュルケが攻撃の開始を告げたとき、ルイズは奇妙な事に気がついた。
(あれって?)
ギトーに対して杖を向けているのとは、反対の腕。
ちょうど机の陰に隠れてしまっているひとさし指の先に炎が宿っている。大きさは豆粒くらい。だがそこに込められた熱量は尋常ではなく、眼に残像が焼きつくほど白熱化している。
ギトーに向けて、杖の先端からファイヤーボールが放たれると同時にその炎の小球も放出された。
ただし、ソレが放たれた先はまっ正面のギトーではなく、キュルケの足元だった。
足元に落下した白熱の小球は、床面の石材を溶かしあっさり床下に潜り込む。その後、床の上に揺ら揺らと陽炎のような空気の揺らぎが、一直線に教卓のほうへ向かっていった。
一方、正面からキュルケが放ったファイヤーボールは、案の定ギトーの風の壁に阻まれていた。ぶつかった後、ある程度まで障壁にめり込んでいったがすぐに押し戻されてしまった。
そして次の瞬間、風の障壁に弾かれたファイヤーボールは、乱れる大気の渦ごとキュルケに押し返された。
「く!」
キュルケはとっさに杖を真横に打ち振るい、跳ね返されたファイヤーボールを窓側へ向けて弾き飛ばした。窓を破ってファイヤーボールが飛び出した先の校庭で爆発音が鳴る。それを見つつ、ギトーが告げた。

「どうかね?やはり風こそが最強だという事がわかったかね」
それに対して、にこやかな笑顔を浮かべながらキュルケが応じる。
「いいえ先生。まだ、攻撃は終わってませんわ……ブレイク!」
「なにィ!?」
ギトーが驚愕の声を上げたのと、『床下を融かしながら掘り進んでいた』小球が背後から飛び出したのは同時だった。
キュルケの「ブレイク!」の言葉と共に、背後の床から貫き出た小球が膨れ上がり、さらにバーストした。
数十本の炎の矢と化したソレは、ギトーの背中に突き刺さり、表面をこんがりとローストする。
背後からの襲撃に、前側につんのめりながら吹き飛んだギトーは、次の瞬間絶叫した。
「あらあら、とんでもないことになりましたわね?」
髪をかき上げながら、流し目でキュルケ。
「でも、これではっきりしたのじゃあありません?」
「魔法と言うのは、遣い手と工夫しだいでいかようにも強さが変わるということが」
ここ最近の、夜の『魔戒法師としての修行』の成果、魔法の複数発動と操作、魔力の集中を披露し終えたキュルケは嫣然と笑った。

『疾風のギトー』 重度の火傷を負って授業中止。

「何と言うか、アタシだけ仲間はずれな気がする」
ルイズはタバサと組み手をしながら、ブチブチと呟いた。
「何がだ?」
ソレに対して、鋼牙は魔戒剣を構えながら尋ねる。
トリステイン魔法学院のそば。以前、鋼牙が剣の修練をしていた森の中である。森の中にポッカリ開いた、周囲を立ち木に囲まれた空き地は訓練にうってつけだった。
ちなみに、復讐にはやるモンモランシーが鋼牙たちを襲った場所でもある。
今はその時より碧がより一層濃く、さらに彼方からは見通せないようになっている。メイジとして規格外の訓練を見られる心配はない。
鋼牙たち一行は、魔戒騎士、魔戒法師としての訓練にいそしんでいた。
はるか昔、このハルケギニアにもホラーの侵入があった。そして鋼牙らの世界と同様、魔戒騎士や魔戒法師が存在していたというのだ。だが、あるときを境にホラーの侵入は停まり、魔戒騎士たちは徐々に数を減らしていった。
そうして、現在トリステイン魔法学院に残ったものが『ハルケギニア最後の番犬所』となってしまったらしい。
『最後の神官』を名乗ったオールド・オスマンは、ルイズら四人のメイジを魔戒法師として教育するよう、鋼牙に要請した。
元々、魔戒騎士は魔戒法師からホラーとの戦闘専用に特化された存在である。ホラーとの戦闘面に限定して、鋼牙はオールド・オスマンの申し出を承諾した。
現在、ルイズはタバサと体術の訓練中だった。

小柄な身体を生かして宙を飛ぶ。立ち木の幹を蹴り、真横に移動しての蹴り技。蹴った反動でさらに軌道を変えて別の木に映る。二度、三度とソレを繰り返し、地上には脚を着かぬまま掌打を交叉させる。
「くっ!」
腕にビリビリくる痺れを我慢しながら、一旦タバサから離れる。相手は身の丈より長い杖の先端で、左足を鶴のように高く掲げて対峙していた。
再度幹を蹴り、空中で身体を独楽のように側転させてタバサへ迫る。至近まで迫ったところで身体を伸ばし、当初の間合いより遠距離から横なぎに蹴りを見舞う。
だがその時既に、タバサは杖の上から垂直に跳躍していた。通常なら的(まと)にしかなり得ない機動である。だがこの時、ルイズの身体は横向きに回転していた。そのため、より高度からはその脇ががら空きになる。
「愚行」
静かに舞い降りたタバサは、ルイズの右わき腹にひざを叩き込んだ。
「んぎゃっ!」
ルイズは、トラックに轢き殺された猫のような声を上げて落下。そのまま草むらに頭から突っ込んでいった。なにやら木が折れる音が響き、足先だけを出して停止する。
「無残」
杖の上に再び降り立ったタバサは、ルイズの末路を見届け心静かに呟いた。
一方、鋼牙は剣の鍛錬に余念がない。
その周囲にはキュルケ、そしてモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシの二人がいた。挟み込むように立っていた少女たちは、既に呪文の詠唱を終わっている。
「来るがいい」
鋼牙がうながした瞬間、二人の少女の前方で魔法が結実した。
キュルケは複数のファイヤーボール。モンモランシーは鞭のような水流を従えていた。
「イクわよ~ん」「お願いしますっ!」
二者二様の掛け声とともに、二人のメイジは魔法攻撃を鋼牙に放った。
まず、複数の火球が鋼牙を包む込むように接近した。三百六十度どこにも逃げ場がない攻撃を、鋼牙はその一角を無理矢理打ち破る事で突破しようとする。だがその周囲を水の斬刃が周回し、逃亡を阻んだ。
すぐさま鋼牙は魔戒剣を振りかざし、足元の大地に叩き付けた。途端に舞い上がる粉塵。すわ目潰しかと色めき立つキュルケに、異様な気配が伝わった。
何かが己の操る火球に触れ、焼け融けたかのような感触。
「うふっ!かかったかしら……いくら目くらまししようと、“微熱”の炎から逃れるなんて……」
言いかけたキュルケは、粉塵の中から飛び出した陰に息を呑んだ。
大きい。鋼牙と比しても、あきらかに大きすぎる影が突っ込んでくる。
影はモンモランシーの水刃に触れると、すっぱりまっ二つに裂けた。
だが、巨大すぎる影に潜んでいた者はそれで十分だったようである。

『地面ごと割り飛ばし、自らの代わり身とした岩塊』の陰から飛び出した鋼牙は、キュルケとモンモランシーを一直線に見る位置に立った。その位置からならば、モンモランシーが邪魔になって、キュルケが魔法の攻撃を放てないという理屈だ。
だが、キュルケは笑うと指を鳴らし、「三番!六番!ブレイク!」と叫んだ。
「なに!?」
次の瞬間、鋼牙の足元が赤熱化し、小さな火球が二個、地中から垂直に踊り出た。先ほどギトーに見舞った高熱球だ。どうやらあらかじめあちこちの地中に忍ばせていたらしい。
包囲網を組んだ火球と、魔力発動が同時だったため気付かなかったのだろう。
零距離からの、しかも垂直に跳ね上げるような攻撃には鋼牙も成す術はない。
そのように思われた次の瞬間、鋼牙は魔戒剣を平に持ち直して高熱球に叩きつけた。
垂直に跳ね上がろうとする力と、押さえ込もうとする力が一瞬、平衡状態を作り上げる。
と、鋼牙は身体ごとくるりと剣を振り回した。まるで奇術のように高熱球が刀身を滑り、弧を描きながら先端から発射される。軌道を逸らされた高熱球は、もう一つのソレへとぶつかり、ぶつかられた方はビリヤードの球のように弾き飛ばされた。
最初に軌道を逸らされた高熱球は立ち木の幹に突き刺さったが、もう一つはそのまま宙を駈けて行き―。
鋼牙を狙おうとしたモンモランシーの水刃に当たった。
高熱球と水刃が接蝕した瞬間、まっ白な蒸気が発生した。あたり一面に立ち込める水蒸気に、誰が何処に居るかも分からなくなる。キュルケは舌打ちし、モンモランシーに水蒸気を冷却するよう頼もうとして、異常に気付いた。
「気配が、消えた?」
二人とも、気配が完全に消えていた。鋼牙どころか、モンモランシーの居る様子もない。一体どうしたことかと考え―。キュルケは思いついたアイデアを実行した。
「全弾、ブレイク!」
次の瞬間、地中に『伏せていた』高熱球を全て浮上させた。余りの高熱に周囲の気温が急上昇する。さらに、気温が上がったことにより水蒸気が一斉に透明になり始めた。視界がクリアになったことで、ようやく辺りを見渡したキュルケは目標を見つけた。
「木の、上!」
鋼牙は、はるか樹上の枝のところに居た。さらにモンモランシーもいる。すっくと枝上に立っている鋼牙に比べて、こちらはぐったりした状態で枝にぶら下がっていた。どうやら、鋼牙はある種の猫科の動物のように獲物を抱えて樹上までいっきに上がったらしい。これでは、地上から二人の気配がなくなるはずだ。
「やってくれるわね」
キュルケがうめくのと、自分が発見されたことに鋼牙が気付いて飛び降りるのとは同時だった。
先ほどの小球は全弾、使い切ってしまった。もはやキュルケに残された手は……一つしかない。
「しゃっ!」
鋼牙が跳ぶ。魔戒剣のきっ先は確実にキュルケに向けられている。当のキュルケは己の腰に手をやり、なにかを引き抜くように左から右へと振り抜いた。

魔戒剣のきっ先が振り下ろされ、風を斬る音と交差した。金属と金属が触れ合う、澄んだ音が鳴り響く。
鋼牙は、魔戒剣のきっ先を自分が意図したより前に振り下ろし、踏ん張った。否、踏ん張らねばならなかった。ソレに対してキュルケは、鋼牙に斬られるより前に腕を伸ばし振り抜いている。
キュルケの腕の先から、奇妙な金属光沢のリボンのようなものが伸びて、魔戒剣のきっ先に絡み付いていた。鋼牙はこれを防ぐために、魔戒剣を予定よりずっと手前で振り下ろさねばならなかったのである。
「どうやら、間合いはあたしのほうが遠いのかしら?」
スカートのベルト部に仕込んだ、耐熱金属製のリボンを魔戒剣に絡みつかせてキュルケは余裕の笑みを見せる。
「どうする?リボンを発熱すれば、貴方は大火傷するかもね。それにこれは杖も兼ねてるから、あらためてファイヤーボールを出しても良いし」
『まあ、お互い手打ちってことで良いんじゃあないか?』
緊張感漂う二人に、魔導輪《ザルバ》が提案を行なう。
『これ以上ヤルと、お互い大怪我するぜ。こいつはあくまで練習なんだろう?』
「フン!」
「まあ、珠の肌に傷を付けられてもたまらないからねえ」
《ザルバ》に説得された二人は、お互いに顔を見合わせ剣を引いた。
鋼牙はキュルケに背を向け、歩き出してゆく。向かっているのは、草むらから足先だけ出したルイズの元だ。それを見送りながら、キュルケは嬉しそうに呟いた。
「魔戒騎士より先を制することができるなんて、あたしも成長したものだわ」
そう言いながら、耐熱合金製のリボンを手元に戻そうと引き寄せる。だが―。
「あ、ら?」
巻き取ろうとしたリボンが、その端からパラリッと断片になって零れ落ちていった。
細切れにされたソレは、すでにリボンの形状を成していない。
「なんてこと……とっくの昔にあたしの武器は破壊されていたっていうの?」
気を失ったルイズを抱き起こし、目覚めさせようとする鋼牙を見ながら、キュルケは挑戦的な笑みを浮かべた。
「やってくれるじゃない。さすが魔戒騎士ね」
そうして、もう一つ重大な事実に彼女は気がついた。
「えーと、モンモランシーを木の上から下ろさなきゃならないんだけど……誰か手伝ってくれないかしら?タバサ?タバサ~!」

そうして、冒頭のルイズの発言に戻る。
鋼牙に文字通り草むらの中から引っこ抜かれたルイズは、タバサに『レピテーション』で木から下ろされたモンモランシーの治癒で息を吹き返した。
制服に付いた血の痕(ほとんどが鼻血だったが)をふき取りながら、しみじみと呟いたのが上の言葉だ。
曰く「仲間はずれである」と。

その心について問われたルイズは、どうしてキュルケやモンモランシーが魔戒法師として魔法の応用例を学んでいるのに、自分だけが体術の修練だけなのか問うた。
「大体、神官のオスマン学院長に『よ~こそ未来の魔戒法師』なんて最初に言われたのは、アタシなんだけどな~」
「仕方ないじゃないの。ルイズ。貴方の魔法で失敗したら、下手すりゃ五体吹っ飛ぶのよ?おまけに狙いも付けられないし、そんな危険物状態で訓練なんてできないでしょう?」
「そりゃあ、まあ、そうかもしれないけどさ」
ブチブチとなおも不平を垂れるルイズ。
「アタシだって、修行すれば百発百中になるかもしれないじゃない!」
「だが、闇雲に修行しても間違った方向へ行くぞ。その後で訂正するほうが困難だ」
「うう」
鋼牙に真顔で言われて、悔しげに歯噛みするルイズ。これが同い年くらいならば蹴るなり殴るなり好き勝手できるのだが、年上だとそうはいかない。と言うか自分より年上の男性に依存心を抱く傾向にあるのは、やはり三女であるゆえからか。
「まず、特性をつかむ」
タバサもどうやら同意見のようだ。こちらの方は、体術、魔法ともにトップクラス(と言うよりも《ザルバ》曰く『実戦慣れしているな。そのための専門の訓練を受けたか、そういう組織の出身か』と分析した)なため、実戦感覚を鈍らさない程度に訓練して、ルイズの面倒を見ている。
兎に角、昼はお互いに対戦することで腕を磨き、夜は神官オールド・オスマンのもとで、魔戒法師としての術を学ぶ。それが四人娘の最近のカリキュラムだった。キュルケが授業中船を漕いでいたのも、そのせいだった。
お互いに汗を拭き、冷たい飲み物で喉を潤していると、モンモランシーが鋼牙が難しい顔をしているのに気がついた。
「どうしたの?何か問題が―?」
「いや、今のところはない」
鋼牙は首を振り、鞘に収められた自分の愛刀を見つめた。
「ただ、この世界の魔法……メイジをこれから相手して行くのに、もう少し良い方法がないか考えていただけだ」
『特に、メイジに取り憑いたホラーは、その力を何倍にも増大させてるだろ?だから、それを無効化するような方法がないかと考えてるんだ』
《ザルバ》の言葉に、全員さも有りなんとうなづいた。
「確かにね。魔法を使えない鋼牙じゃあ、メイジがホラーに取り憑かれると厳しいか」
「でもそんな方法なんてないわねえ。あるいは、アイテムとかも」
「聞いたことがない」
キュルケ、モンモランシー、タバサともに否定的な意見だった。そんな中、ただ一人ルイズだけが挑むように顔を上げた。
「だったら、探しに行きましょうよ」
「はい?(な~に言ってんだこのおチビわ)」「ええっと(ナニ言い出すのよこの子は!)」「困難(不可能)」

三者三様の驚きを示す中、ルイズは薄い胸を張って、さらに宣言する。
「遣い魔が困ってるんだもの。それを助けてやるのもご主人様の役目よ」
なにやら微妙にその理由は間違ってるんじゃあないだろうか?普通は逆よねえ?常識的に考えて?みたいな三人の様子を無視して、ルイズの熱弁は続く。
「そうね。明日はちょうど『虚無』の曜日なんだし、鋼牙、二人でトリスタニアまで行きましょう!」
「「「二人で?」」」
「え?当たり前じゃない……ご主人様と遣い魔なんだ、か、ら」
「「「却下」」」
ニマニマと笑うキュルケ+モンモランシー、あいかわらず無表情のタバサが口をそろえて否定する、その剣幕にルイズが口ごもるとすかさず三人娘は身を乗り出した。
「こういう面白いイベントは」「普通全員そろって」「行くべき」
「わかった!わかったわよもうっ!」
もはや抗おうにも抗いきれない、その勢いにルイズは不承不承うなづくしかなかった。

水晶に穿たれた挿入口から差し込まれたプローブの先端が、黒い組織片を抉り取った。
息を詰めてその様子を見守っていたスタッフから、ため息のような吐息が漏れる。
ゴーレムを操作していたメイジは、額ににじみ出た汗も拭わず作業を続行した。
王都トリスタニア中心近くにある、王立魔法研究所=通称アカデミーの施設内である。幾層にも階層が重なった施設内は、万が一の事態を考えられて固定化が施された分厚い石材で作られていた。
ほぼ半地下式のため、一年を通じて気温の上下が少ない。各階層は独立した風の魔法による換気で汚染を食い止められるようになっていた。
そうした階層の中でも、ここは一番警戒が厳重に施された施設だった。換気以外にも、この施設内に持ち込まれた器具類は使用後完全に焼却処分されていた。
要は施設内の汚染を絶対に外へ漏らさぬようにする、そのための配慮だった。
今、エレオノールの目の前で行なわれている作業もそうした思惑の元に実行されていた。
偏光が限りなくゼロに近くなるよう、錬金された分厚い硝子越しに動いているのは対爆用鋼鉄製のゴーレムである。ソレがほぼ人間の大きさとプロポーションを持つのは、安っぽい美観上の目的ではない。
ゴーレムを操作するメイジは、奇妙な篭手を装備していた。メイジがそれを動かすと、ゴーレムも同様の動きを髪の毛一筋ほどの狂いもなく実行した。
篭手は、ゴーレム側が受ける感覚をダイレクトに術者に伝える機能を担っていた。術者はそこから受け取る情報に従い、ゴーレムを自分の身体と全く同じ感覚で操作することが可能なのだ。これはほんのわずかな作業の狂いが、致命的な事態を招く実験上必須である。
ホラーと呼称される、未知の幻獣の取り扱いについては紛糾した。
急進派のメイジたちは、封印を解き即解剖を行なうべきだと断じた。
それに対してエレオノールら穏健派は、封印を維持したまま可能な限り調査を進め、特性を理解した上で封印を解こうとした。

結局、穏健派の主張が通ったのは、学院側と交渉を受け持ったのがエレオノ―ルであったことと、これまでの急進派の行動が貴重なサンプルをただ食いつぶす結果しか生み出さなかった二つの理由による。
いずれにせよ、急進派、穏健派とは言ってもありとあらゆるものを研究対象、単なるモノとして認識している点では変わりはない。
その典型的な見本が、今目の前に居る男だ。
「……だからね。もっと精神力そのものを資源として認識して良いと思うんだ僕は」
ホラーから組織片を採取するという、緊張感あふれる作業から数十分後、エレオノールはアカデミーの食堂に居た。
作業時間が大幅に伸びて、今は昼と言っても午後のお茶の時間に近い。暇を持て余した研究者が、食堂に陣取ってディスカッションに華を咲かしても不思議ではない時刻だった。
エレオノールは、残りものを皿の上にぶちまけたようなトレイを手にとぼとぼ歩いていた。とりあえず開いている席に着く。固くひび割れたパンを渾身の力を込めて引き千切り、どろどろの元シチューだかなんだか分からないものに浸してようやく柔らかくすると、開くのもおっくうな唇を開いて口腔内に押し込んだ。
「はあ」とため息が漏れる
正直、このところ疲れが溜まる傾向にある。
二十七歳と言う、ハルケギニア西方文化上ではすでに中堅に達する年齢である。普通ならば、すでに家庭を築いて子供の一人でもいておかしくない歳だった。正直焦りが生じていた。若いうちは周囲のそうした見方に反発したが、実際その歳になるとイロイロと見えてくるものがある。
……数日間、せめて二、三日休暇をとりたい。
他の部署との絡みも有り、いわゆる長期休暇をとったことはなかった。自分の担当が遅れれば、それだけ他部署に遅滞が生じるのだ。
そんなこんなで、いらついた精神が鼓膜に突き刺さる甲高い声に思わず過剰反応を示してしまったのだろう。
気がつけば、エレオノールは席を立ち、声のする方向へ歩き出していた。
地上から鏡の反射で導いた陽光の照明の下、数人の男女が討論している。
「だが、メイジの精神力には限界がある。そんなことは常識だろう?」
先ほどの声に、一人のメイジが反論する。それに対して、すらりと背の高い青年が言い返した。
「僕の発言を、正確に捉えていないらしいね。君。どうして、本人のみでまかなおうとするのかな?言ったよね?僕は。『資源』として認識しろと」
嫌味なほど整った顔だが、それが逆に特徴に乏しい。十人居れば十人が「ハンサムだ」と評価するが、その場を離れると忘れてしまう。そんな印象のない相手の顔を、エレオノールはようやく思い出した。確か、青年の名前は―。
「レナード・ルイ・カタリ。なんの話をしているのかしら?」
「おや。これは“ミセス”・ヴァリエール」
ピクリ!とエレオノールの眉が跳ね上がったが、相手は気付かず話を続けた。

「なに、我らメイジの力の源『精神力』の有効活用についてね。僕はこれを、取り出し、濃縮可能なエネルギーだと捉えている」
「ほう」
なにやら、途方もない話を始めた。印象に乏しい外観とは反して、中身は只者ではないらしい。興味を覚えたエレオノールは、近くの席に座り、相手の話しに耳を傾けた。
「もし、そうであるならばある種の水の秘薬や風石と同じ様な形で備蓄する事ができるだろう」
「でも、私たちは未だソレを認識できる形に取り出せていないわ。感覚的に感じ取っているだけよ」
「うん。それについては良く、わかっているとも」
レナードはエレオノールの反論に「もっともだ」とうなづいてみせた。
「ならばまず、ソレを利用できる形で取り出してみようというのが、僕の理論なんだよ」
それに対して、周囲から再び反論が沸き起こる。
「ならば、その方法を述べたまえ。他人の『精神力』を利用可能な形にする方法を」
「新たなマジックアイテムの合成?カタリ君。君の専門は錬金魔法ではなく、生命魔法のほうだったと記憶しているが」
すると、レナードはまっ白な歯を見せて笑った。いちいち演出効果が過剰な男だ。
「そう、これは生命魔法学の応用だ。具体的には、これまでの僕の研究の集大成さ」
杖を打ち振ると、コップの中に水が立ち上がり一つの形を作った。
それは、ここに居る者ならば解剖実験で何度も見てきたものだった。細長く、緩いSの字を描く柱の先端にそれよりさらに大きい半球状のものが乗っかっている。
コップから立ち上がった、水細工のソレをエレオノールは無感動な目で眺めた。
「なるほど、脳か」
誰とも言うなしに、ソレの名前を呟いた。
レナードは同意を得たように大きくうなづく。
「そう!“脳”だ。具体的には、脳とソレに伴う脊髄こそがメイジの精神力の源であると僕は考える」
さらに、レナードの仰々しい論説は続いた。
「ならば、他の人間のこの部位を取り出し加工することで、僕達メイジは好きなだけ無限に魔法を行使でできると考えられる。そう、必要なのは他の人間の脳髄なのだよ!」

魔法学院から王都トリスタニアまで、タバサの風竜で約一時間を要した。実際に馬で行けば、約三時間ほどもかかることを思えば、ずい分な高速移動である。
「ここで、待つ」
「んじゃあね~フレイム~」
きゅいきゅい啼く風竜と、キュルキュル唸るサラマンダーを厩舎に預けて、彼らは城下町に出た。ちなみに、サラマンダーは風竜の下に懸架して運んできたのだ。
トリスタニアの街並みは、全体を白い石で作られている。陽光を反射しやすい素材のためか、狭い路地でも意外と明るく感じる。一番広いブルドンネ街でも、その街路は最大五メイルほどしかない。その路の両端いっぱいに、様々な露天商が出店を並べていた

『何と言うか、世界が変わっても、人間の営みは変わらないものだなあ』
辺りを見回し?《ザルバ》が感慨めいた事を漏らした。
『鋼牙、気をつけろよ。こんな世界でもスリはいるだろうからな』
「分かっている」
肩が触れ合うくらいに、ぎっしり人が並ぶ様にわずかに眉をしかめながら、鋼牙がうなづいた。そんな主従に腰に手を当てた格好で、ルイズは口を開いた。
「わかっちゃいないわね。鋼牙。メイジのスリだっているんだから、もっと気をつけなさい!」
『メイジのスリ?そいつはおかしいんじゃあないのか?メイジは全員貴族なんだろう?』
ルイズの言葉に、矛盾したものを感じたのか《ザルバ》が反論した。
だが、それに対してルイズは首を横に振った。やや、悔しそうに顔をうつむけて。
「違うわ。その逆ね。貴族であるからこそメイジ、よ。なかには身を持ち崩して、貴族の資格を失った者だっているの。そうした者たちは、せっかくの魔法の力を、犯罪に使用したりするのよ」
キュルケがルイズの説明を受け継ぎ、具体例を挙げた。
「最近一番有名なところだと、『土くれのフーケ』って泥棒かしら。『土くれの~』の二つ名の通り、犯罪にもっぱら錬金とゴーレムを利用しているのよ」
『なるほどな』
得心が行ったと《ザルバ》。
『と言うことは、そうした連中が襲ってくる可能性があるわけだ。こいつは面白いな。腕試しにはちょうどいい』
「自重しろ。《ザルバ》」
さすがに不謹慎(ふきんしん)な《ザルバ》の言葉に、鋼牙の注意が飛んだ。
「今日は買い物に来たんだ。喧嘩を売りに来たんじゃあない」
『はは、わかってるって鋼牙』
果たして本当に反省しているのやら?《ザルバ》は金属がすれるような笑い声を残して、それきり黙った。

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