あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの使い魔人-03


「チキュウ? トウキョウ? シンジュク? …変わった地名ね。聞いた事ないわ」
「…ハルケギニア大陸のトリステイン王国、だったか。一晩に月が二つも昇る夜、
というのも有り得ん話だが、何より魔法なんて代物は、俺の世界では表向き、完全に否定されたからな」
「そもそも、あんたのいた世界ってなによ? 月が一つだけ? しかも、魔法が無いだなんて信じられないわ」
…その夜。
学院生寮内、ルイズの私室にて両者は話合いの場を持っていた。
部屋の主は、天蓋付きのベッドに腰を下ろし、龍麻はその対面にて椅子に座り、足を組んでいる。
「別の世界から(無理やり)呼び込まれた」と言う龍麻の主張に対し、ルイズは露骨な不信…を通り越して、
『頭がちょっと可哀想な人』という視線を向けっ放しだった。
相棒ともいえる、小型多目的情報端末(通称H.A.N.T)を始めとする『証拠』を見せて、どうにか納得させようとした龍麻だが、
「ふーん、でも、これだけじゃ、わかんないわよ」
「わからん奴だな…。なら、お前達には出来ない事が、当たり前に出来る場所が有る…。とでも考えておけ」
これ以上、説得と説明を続けても無駄と感じ、龍麻は本題を切り出す。
「――回りくどいのは無しだ。俺が、此処から元の世界へと帰る方法は有るのか?」
「無理よ」
「予想通り…。と、言いたいが、どういう理由でだ?」
「召喚の魔法…つまり『サモン・サーヴァント』は、ハルケギニアの生き物を呼び出すのよ。
普通は動物や幻獣なんだけどね。人間が召喚されるなんて初めてだわ。
そして…、あんたはわたしの使い魔として、契約しちゃったのよ。あんたがどこの田舎モノだろうが、
別の世界とやらから来た人間だろうが、一度使い魔として契約したからには、もう動かせない」
「…なんつー横暴かつ、一方的な話だ…! 大体、意に沿わん相手が来たなら、
無理に契約せずとも、送り返すなり、別の相手を探すなりするのが自然だろうが…!?」
こめかみに指をやって、怒りと偏頭痛を抑えながらの龍麻の言葉に、ルイズは頭を振る。
「それも無理」
「…即答かよ。キッチリ説明してくれるんだろうな?」
「だって、あんたの世界と、こっちの世界を繋ぐ魔法なんて無いもの。そして、『サモン・サーヴァント』は
呼び出すだけ。使い魔はメイジにとって、生涯のパートナーよ。それを元に還す呪文なんて、存在しないし……」



「…で、何と続くんだ?」
「一度呼び出した、その使い魔が死ぬ迄、『サモン・サーヴァント』を唱える事は出来ないのよ。
例え、それがどんなに強いメイジであってもね」
「…………。つまりは、帰る途など無く、このまま一生かそれに相応する時間を、お前に付き合え、と」
ぎり、と言葉の最後に歯ぎしりが混じる。
「…俺もよくよく、運の無い男だが、それにも増して巫山戯ているのは、この世界と魔法だな……」
と、心の底からの悪罵を吐く龍麻に、ルイズもルイズでジト目を向ける。
「ほんとに…、なんであんたみたいなのが召喚されちゃったのよ! このヴァリエール家の三女が……。
由緒正しい旧い家柄を誇る貴族のわたしが、なんだって平民なんかを使い魔にしなくちゃなんないのよ?」
「…五月蠅い。その科白、熨斗と引き出物付けて返す。後先考えず、下手糞な術を使いやがって。
誰が好き好んで、こんな貴族や魔術師なんぞがのさばる世界に来て、従僕(サーヴァント)になるものか」
我の強い者同士、深刻かつ多大な互いへの失望と苛立ちをぶつけ合う。
既に両者の間に漂う空気は、リアルファイト勃発迄の秒読み段階といっていい。
「――で、だ。お互いこれ以上無い程、不本意かつ現状に対し、不満と怒りを抱え込んでいる訳だが」
「それがなによ」
「話が進まんからな。一方的な従属など真っ平だが、条件によっては、俺は妥協しないでも無い」
「わたしに従うって事?」
「何を聞いてんだ。――いわば、取り引きだ。お互い、持っている物を出し合う。俺は労働力なり、技能を出す。
お前は、衣、食等の俺が動くのに必要な物を出す。…決して理不尽なモノでは無いと思うが?」
聞きながら、ルイズの眉が段々吊り上がって行くのが見て取れるが、気にせず続ける。
「俺は絶対に帰るつもりだが、その為には、この世界の情報が必要る。片やお前の方も今迄の話を総合するとだ、
形はどうあれ魔術師である以上、俺という使い魔がいない事には、此処での生活なり立場に支障をきたす…違うか?」
龍麻の声に、む、とルイズの表情に不機嫌そうな色が浮かぶ。
『……………………』
それきり、睨み合う二人。
この場合、先に視線を逸らした方が負けだというのは言うまでも無い。



「重ねて言うが、一方的な従属はせん。だが、仁義なり道理や良心に背かん限り、
そちらの指示や意思は尊重した上、希望に対しても善処するさ」
「――わかったわよ! 色々気に入らないけど、家僕の声を聞き入れるのも又、主の器量よ。
いいわね? これからは、わたしがあんたの主人よ」
「交渉成立…だな。短い付き合いだろうが、それ迄宜しく頼むよ、マスターさん」
椅子から立つと、軽くではあるが龍麻は頭を下げて見せる。
「なによ、そのマスターって言葉は?」
「俺の世界で言う所の、主君なり師匠等、目上の人物を指す言葉だ。
人前で名前や姓を呼び捨てにするのは、無礼に当たるんだろう?」
「そんなの当たり前じゃない」
「なら、それでいいだろう。…で、だ。使い魔として、俺に一体、何をさせるつもりでいるんだ?」
との龍麻の質問に、ルイズはぴっ、と人差し指を立てる。
「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ」
「つまり、感覚または認識の共有…。と、いう訳か」
「そうよ。でも、あんたとじゃ無理みたいね。現に、何にも見えないし、聞こえないわ」
「それは無条件で成立する物なのか? 小動物ならまだしも、確たる自我を持つ人間相手なら、
相互の相性なり、魔術師側の技倆に依る可能性も在ると思うが?」
と、龍麻は知り合いの陰陽師や魔女らとの付き合いから得た、知識を持ち出す。
が、龍麻の疑問を無視したルイズは、別の話題を持ち出した。
「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば秘薬とかね」
「秘薬?」
「特定の魔法や儀式を行う時に必要な触媒よ。硫黄とか、コケに…、ある種の鉱石、宝石も含まれるわね」
「成る程」
「あんた、トレジャーハンターだったっけ? そういうの、得意なんじゃないの?」
「…不可能では無いが、すぐには無理だな。俺の持つ知識が、そのまま『こちら側』でも通用するとは限らん。
やるなら、『こちら側』での下調べ…、偏に時間が必要るな」
「そう。期待はしてないから。最後に、これが一番なんだけど…。使い魔は、主人を護る存在であるのよ!
その能力で、主人を敵から護るのが一番の役目! …出来ないとは言わせないわよ」
「この六年で、一対一で負けたのは一度きりだな。後は常に一対多数の状況で生き残って来たが」



「あんたが何と戦ってたかは知らないけど、ウソや口からでまかせで無い事を祈ってるわ。
…強い幻獣だったら、並大抵の敵には負けないし、こんな心配をせずにすむんだけど」
「言ってろ」
「――そうそう。部屋の掃除や洗濯とかもあんたの仕事だからね。さてと、喋ってたら、眠くなってきちゃったわ」
その声で話は終わりと判断した龍麻は、椅子を元の場所に戻すと部屋の壁際に陣取り、
ルイズに背を向けて所持品を確かめる。
…バックパックに穴が開いていたとかいうベタな展開は無く、詰め込んでいた物品が床に並ぶ。
此処に持ち込めたのは、銃火器が大小合わせて三梃。鞭が一振りに、手甲一つ。
永久電池を含む希少品(オーパーツ)に始まり、銃器に対応した弾薬類はそれなり。爆薬類は…僅少。
後は緊急医療キットと某国難民も喰わんと揶揄られる野戦食に、護符や雑具の類いで全てである。
「――あの三連戦が響いたなぁ…。こんな事になるのなら、銃器は弾の共有が利く奴を用意するんだった…」
ついついぼやく龍麻の頭にばふっ、と投げかけられる物がある。
何かといえば、ルイズが先程迄身に着けていた、制服のブラウスやスカートに肌着。最後に薄手の毛布である。
「これ、明日になったら洗濯しといて。後、ベッドは駄目だからこれを使いなさい」
「汚れ物を他人に投げるな! そこらに一纏めにして置いておけ! …で、洗い場はどこだ?」
「ここに仕えるメイドか、使用人にでも聞けば解るわよ」
興味なさげに言い捨てると、指を鳴らす。
同時にランプの灯が落ち、室内を照らすのはカーテン越しに差し込む双月の光だけとなる。
――部屋の主は眠りの国へと旅立とうとしていたが、居候にはまだ、確かめるべき事があった。
結跏趺坐に組み、瞼を閉じて精神を研ぎ澄す。
息を継ぐ毎に、身体の奥底より湧き出す《力》を全身に行き渡らせながら、一点に導き、高めながら望む形へと錬り上げる。
「……巫炎」
短く呟くと、開いた掌の中で『炎氣』により生み出した、鮮やかな焔が小さく躍る。
(ふう…。世界や法則が異なる上、龍脈との繋りが無い今は、《黄龍の力》は駄目だが、
普通に《力》を使う分には、異常が無い事は不幸中の幸いだな……)
手を振り、焔を消す龍麻。
(――地図も羅針盤も無い旅だが、俺の採る道は決まっている。この世界の魔術師共が存在しないと断言しようが、


関係無い。何がなんでも、還る手段を探り当てて、生きて日本の土を踏んでやる…!)
口に出す事無く、決意を己が裡に刻み込むと、壁に寄り掛かって毛布を被る。
睡眠に優る疲労回復は無し。腕時計のアラームをセットした龍麻も目を閉じる。
――こうして、彼と彼女の長過ぎる一日は終わったのだった。

ハルケギニア24時…
双月の輝きは語るを知らず、
歴史の流れは人には見えず、
希望は全ての心の中に…
時は静かに命を刻む。


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