あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

第5話 禁忌

モンモランシーは不機嫌だった。
先日、言葉からギーシュが自分をかばってくれた時、本当に嬉しかった。
でも、その後、言葉に言われた。
「恋人を、誰かに盗られたりしないよう、注意した方がいいですよ」
一年生にケティという可愛らしい女の子がいる。
そして、ギーシュがケティと仲良くしているという噂を、モンモランシーは聞いた。
不安がつのる。
「誠君みたいに、なっちゃいますから」
あれはどういう意味だったのだろう?
「誠君みたいに、なっちゃいますから」
ギーシュが首だけに? 悪い冗談はやめて欲しい。
「誠君みたいに、なっちゃいますから」
だいたい誰がギーシュの首を刎ねるというのか。
「誠君みたいに、なっちゃいますから」
そうする理由が万が一生まれるとしたら、いったい?
「誠君みたいに、なっちゃいますから」
大丈夫。ギーシュが本当に好きなのは私のはず。
「誠君みたいに、なっちゃいますから」
だから私がギーシュをどうこうするなんてありえない。
「誠君みたいに、なっちゃいますから」
そう思おうとしても、ギーシュと一緒にティータイムをすごしても。
「誠君みたいに、なっちゃいますから」
不安は消えない。そして、見てしまう。
「誠君みたいに、なっちゃいますから」
ギーシュがケティからクッキーをもらって、喜んでいる姿を。
「誠君みたいに、なっちゃいますから」
ギーシュの愛を独り占めしたい。そう思って、モンモランシーは行動を起こした。
「誠君みたいに、なっちゃいますから」
耳から離れない、コトノハの言葉を忘れるために。
「誠君みたいに、なっちゃいますから」
禁忌の調合を。

美人は三日で飽きる。ブスは三日で慣れる。
じゃあ平均的な容姿で年頃の少年の血の気の無い生首は何日で慣れますか?
ルイズに限定して言うならば、それは三日で慣れた。
初日は大騒ぎで、二日目は泣いて、三日目に色々あって。
慣れたきっかけは、やっぱり誠の頭を自発的に素手で拾った時だろう。
そうしなければギーシュとモンモランシーが殺されかねない緊急時、
それが幸いしてなりふり構わず誠を持ってみれば、意外と大丈夫だったのだ。
しかしその事をルイズは全然ちっとも微塵もわずかにも芥ほどにも喜んでない。
「ああ、慣れって怖い」
なぜ学生の身で、特に従軍してたりする訳でもないのに、
生首なんぞに慣れなきゃならないのか。十六歳の花の乙女の身空でですよ?
そして五日目の朝ともなれば、目を覚ました瞬間に誠君とご対面しても平気ですもの。
言葉に髪を梳いてもらった後、彼女が今度は誠の髪を梳いていても気にならない。
さすがにクシは言葉と誠兼用のを用意してやったが。
それとかなりどうでもいい事だけど、誠の髪をクシで梳いても抜け毛はゼロ。
オールド・オスマンの固定化ってすごいなぁとルイズは心底感心した。
ミスタ・コルベールも手遅れになる前に髪の毛に固定化をかけるべきだったと思う。
「さ、コトノハ。朝ご飯にしましょ」
「はい」

基本的に従順な言葉の態度を認めたルイズは、ちょっと食事に色をつけて上げた。
硬いパンから柔らかいパンに、野菜クズが浮いてる程度のスープが普通のスープに。
それからサラダもつけた。はしばみ草が入ってないからおいしく食べられるだろう。

こんな調子でルイズと言葉(と誠)の異常な生活は日常となりつつあった。
もう言葉から鞄(の中の誠)をどうこうしようという連中はいなくなったし、
鞄にさえ入っているなら何とか我慢できると折り合いをつける生徒も増えた。
その理由は言葉がギーシュのワルキューレを、
ただのノコギリでコテンパンにしたという噂も影響している。
さてそのコテンパンにされたワルキューレの使い手ギーシュだが、
命懸けで女生徒を守ろうとした行動が人気を呼び、
モンモランシー以外の女の子から色々とプレゼントをもらっていた。
特にケティという子とは、今度の休日に馬で遠乗りに行く約束まで。
ギーシュ薔薇色の日々。
その裏で、モンモランシーは禁忌の調合をひっそりと続けていた。

そして運命の夜。
モンモランシーは一緒に月を眺めながらワインを飲もうとギーシュを誘う。
僕の時代到来、我が世の春が来た状態のギーシュ・ド・グラモン。
警戒心皆無でモンモランシーの誘いに飛びつきます。
さあ、お月見しながらワインを楽しもう。

「お月様、綺麗ですね」
「そうねぇ」
「でも星も綺麗ですね」
「そうねぇ」
「星座とかあるんですか?」
「あるわよ」
「よろしければ教えてください」
「あれがムウ座で、あれがアルデバラン座で、あれがサガ座で、あれがデスマスク座で、
 あれがアイオリア座で、あれがシャカ座で、あれがドウコ座で、あれがミロ座で、
 あれがアイオロス座で、あれがシュラ座で、あれがカミュ座で、あれがアフロディーテ座」
「そうですか。綺麗ですね、誠君」
何でこんな事してんだろう、とルイズは天を仰いだ。
ここまでの流れを思い返す。

言葉は誠とイチャイチャベタベタ。
お昼は鞄に入れっぱなしでごめんなさいたまには外の空気も吸いたいですよね。
いやいや外でマコトを外に出すとかありえないから人に見られたらまた大騒ぎだから。
でしたらみんな眠っている夜中に散歩に行っていいですか?
まあそれなら……いや、やっぱりダメ。私が寝てる間に何か起きないか心配。
……ルイズさんも一緒に来たいんですか?
何でそうなるのよ! あー、まあ、その方が安全だと思うけど。
……。
そうね、寝る前にちょっと散歩するくらいならいいわ。
ありがとうございます、ルイズさん。

そんな感じで今は夜の散歩中なのだ。
言葉は念のため鞄も持ってきてるけど、大きな胸の前に誠の頭を抱えてる。
まぶたを開けられて瞳孔全開な誠の目がちょっと怖いけど、
すごく楽しそうな言葉を見ているとまあいいかという気になってくるルイズ。
(それにしても、私ったら何で平民のコトノハ相手にこんな寛容なのかしら)
やっぱり最初の出会いというか出遭いでドン引きしたせいで、
苦手意識やら恐怖心やら抱えてしまって、それが弱味になってるのだろうか。
でも一緒にすごすうちに、言葉のいいところも結構見えてきたりしてる。

言葉のいいところ!
誠さえ取り上げようとしなければ従順。
ただのノコギリでワルキューレを圧倒するほど強い。
美人。
胸の大きさを自慢しない。

(うん、だいたいこんなところね。特に一番最後のは重要だわ)
ご主人様と使い魔は似ると以前どこかで誰かが言ってた気がする。
つまりルイズもいずれは言葉みたく胸の大きな大きな女の子になるに違いない。
間違っても好きな人の首を持ち歩くような危険人物にはならないが、
胸が大きくなるのはもう何ていうか運命というか決定というか。
(ふふふ。キュルケなんかぶっちぎりで超越してやるんだから)
言葉級に胸の大きくなった自分を夢想してルイズはうっとりとニヤけた。
ある意味順調に壊れてきてるのかもしれない。

さて、ルイズと言葉(と誠)が散歩している時、
モンモランシーもいよいよ禁忌の行いを決行しようとしていた。
月を肴に一杯やろうと、用意しておいたテーブルに着いているモンモランシーとギーシュ。
とっておきのワインをグラスに注いで、乾杯しようという段になった時。
「あっ、裸の美女が歩いてる」
「えっ!? どどど、どこだい!?」
モンモランシーは適当な方向を指差してギーシュの視線をそらし、
その隙にギーシュのワインに秘密のポーションを注いだ。よし、完璧。
「ごめんなさい、見間違い――」
「あ、あれは!」
しかしギーシュは発見してしまった。裸の美女、ではなく、ルイズと言葉を。
ギーシュはワルキューレを全滅させられノコギリを向けられた出来事を思い出した。
トラウマスイッチオン!
「に、逃げよう」
「え」
席を立ち、モンモランシーの手を握り、歩き出すギーシュ。
モンモランシーも言葉に気づき怯えてしまったため、ついそれについていってしまう。
ワインを残したまま。

「あら? あれ、モンモランシーと……ギーシュ? こんな時間に何してたのかしら」
慌てて逃げ去っていく二人に気づいたルイズは、
言葉と一緒に二人がいた場所へと行ってみる。テーブルとワイン。
夜のデートを邪魔してしまったのだろうか?
まあ、夜に誠を持っている言葉を見たら逃げ出したくもなるだろう。
あの二人の場合、以前恐怖体験をしているだけに尚更。
納得しつつ、ルイズの目にワインの銘柄が映る。わ、上等なやつだ。
「蓋を開けっ放しで行っちゃって……まったく」
蓋を閉めつつ、もうグラスに注がれてしまっている分をどうしようか考える。
わざわざワイン瓶なら届けてやってもいいが、ワインの入ったグラスまでは。
だったら、まあ、自分達が飲んじゃってもいいかな? 丁度喉も渇いてるし。
「コトノハ。この開けられちゃった分、飲んじゃおうか?」
「私達、未成年なんですけど」
「貴族の使い魔たるもの、お酒が飲めなくてどうするの。
 私だってお酒に強い訳じゃないけど、ちゃんと食卓に出た分は飲むわよ」
「はぁ……」
「じゃ、かんぱーい」
ワインを飲むルイズ。うん、おいしい。
ワインを飲む言葉。まあ、おいしい。誠君にも飲ませて……上げ………………。
「コトノハ? たった一口で酔っちゃったの?」
突然ふらつき出す言葉を見て眉をひそめるルイズ。
そして、声をかけられたから、言葉はルイズを見て、暗い瞳に光が宿る。

「あっ……わ、私……」
言葉はグラスを地面に落とし、続けて誠の首も落っことした。
誠の顔が土とワインで汚れる。
が、それに構わず言葉はルイズの手を取った。
「へ? ど、どうしたのよ」
「ルイズさん……私、間違ってました」
「はい?」
「やっぱりおかしいですよね。誠君は死んでいるのに、首を持ち歩くなんて」
「あー、う、うん、そう思う?」
「思います」
なぜか、急に、言葉は人としての常識を取り戻していた。
いつかは誠の死を受け入れさせて、首を何とかしようと思ってたルイズだが、
いきなりこういう展開になられても、どう対応していいか困る。
「やっぱり、愛するなら生きている人ですよね」
「えーっと、それが健全かなぁ」
ぎゅぅっ、と握られた手が、言葉の胸元に運ばれる。
むにゅむにゅっとした感触が、圧倒的胸の柔らかさがルイズに伝わった。
「な、何?」
「愛してます、ルイズさん」
「は? え、あっ」
ふさがれる唇。
入り込む舌。
キスされた、と気づいたルイズは慌てて身を引いた。
「なななななななな! 何するのよ!?」
「私、もういやらしい事を嫌がったりしません」
「何の話よ!?」
「だから、ルイズさんの好きにしてくれていいんですよ」
「だから、何の話!?」
「ルイズさんが私の胸を見てるの、気づいてましたから。だから……」
「ここ、こんなところで脱ごうとしないの!」
胸元を開けようとする言葉の手を掴んで止めて、
ルイズは今いったい何が起こっているのか一生懸命考えた。
すぐに考えは出た。

コトノハがおかしくなった。

いや元々おかしい娘ではあったんだけど、それがまた別方向に変わったというか。
ともかくこのままではまずい非常にまずい何とかせねば。
ルイズは言葉を連れて寮に戻ろうとし、アレの存在を思い出す。
「コトノハ。あの、鞄にマコトをしまって」
「……ルイズさんは、誠君が好きなんですか? 構いませんよ。私は寛容ですから」
「変な勘違いを起こしてんじゃないの! とにかく、マコトをしまって帰るわよ!」
「はい」
その晩、言葉に迫られたルイズは胸の柔らかさに脳味噌を沸騰させられつつも、
そういう事は結婚するまでダメ、結婚しても三ヶ月はダメと必死に拒否するのだった。


新着情報

取得中です。