あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

るいずととら-5


学院長室では、コルベール師とオールド・オスマンが『遠見の鏡』で戦いの一部始終を見届けていた。

「……圧倒的、でしたな。なんとも恐るべき使い魔です。最後の焔……スクウェアクラスのメイジにも劣らぬものでしたよ、オールド・オスマン」

コルベールは鋭い目つきで広場で行われたとらとギーシュの戦いを見ていた。もしあの使い魔が生徒に襲いかかったら、果たして自分が全力を出しても止められるかどうか。

(そもそも、誰かを守る戦いには、私の魔法は向いていませんな…)

『炎蛇』の名を持つメイジは心のなかで呟く。オールド・オスマンはそんなコルベール師の心を見通したように言った。

「ミスタ・コルベール。弱気は無用じゃ。凶暴で強力な使い魔など、過去いくらでも召喚されてきたからの……。
 それよりも重要なのは、あの使い魔にでたルーンのほうであろう?」
「伝説の使い魔『ガンダールヴ』、ですか……」
「ふむ、使い魔が伝説なれば、その使い手もまた伝説……果たしてその力、ミス・ヴァリエールに担いきれるかの?」

険しい目つきで『遠見の鏡』に映るルイズを見つめていたオールド・オスマンの目が、鋭い殺気を帯びてコルベール師を射抜く。
最強のメイジ、トリステイン魔法学院の学院長のオールド・オスマン……コルベールはまるで殺し合いの最中であるかのように、肌がちりちりとひりつくのを感じる。
だがコルベール師も幾多の死線を乗り越えた、歴戦のメイジであった。動じることなく、オールド・オスマンの視線を受け止める。

「彼女を鍛えよ、コルベール。自らの力に喰われるような伝説ならば、わしがこの手で消さねばならんからの」
「……彼女は誰よりも誇り高く努力家です。必ずや力を使いこなすはず……私はそう信じております」
「……だといいがの」

沈黙の中、二人のメイジは静に『遠見の鏡』に映る桃色の髪の少女を見つめた。巨大な力と、凄惨な運命を担わされることになる少女を……。





ギーシュととらの決闘の噂は、あっという間に学園中に広まった。
もちろん、とらがルイズの使い魔であるということも、キュルケを通して生徒たちに伝えられた。

「そそそれで、わたしが『容赦ゼロのルイズ』ってどういうことよ!? 
 わたし、ちゃんととらに手加減しろって言ったもん! 殺しちゃだめ、食べちゃだめって!!」
「あたりまえでしょ! だいたい、あんな大きな幻獣とドットメイジじゃ戦いになるわけないでしょう、ヴァリエール?」
「一方的、非道」

……とまあ、ルイズが使い魔をけしかけてギーシュをぶちのめしたことになってしまったのだった。
また、学園中の人間が、メイジ、平民を問わず、みな香水をつけるようになったことは、とらにとっては大きな苦痛である。
生徒の中には、使い魔に香水を振り掛けるものまでいた。すべて、とらに喰われたくない一心であった。

「くそ、どこもかしこも……」
「とらさん、どんどんおかわりしてください! この『テロヤキバッカ』、わたしの自信作ですよ?」

とらは厨房に出入りすることが多くなっていた。
一つは、腹いっぱい『てろやきばっか』を食べるためであり、また、シエスタがとらにずいぶん懐いたからでもあった。
なにより、シエスタは香水をつけないので、とらには居心地がよかったのだ。


(なによなによ、あんな平民のメイドのところに入り浸って! わたしの使い魔でしょ!?
 そそそれなのに、言うことは聞かないし、化けたらすごい美人になるし、ギーシュの怪我の治療費はわたし持ちだし!)

ルイズはまた机に頭を打ち付ける作業に戻った。
あれほど強力な使い魔を呼び出したことで、最初は浮かれてういたものの、今になってその大変さが分かってきたのだった。

(だいたい、人語を使えて空を飛べて炎を吐いて雷を操って壁をすり抜けて人間に変化できる?
 なんでもありじゃない! なにそれ!?)

決闘の後日しばらくして、ルイズはとらにいろいろと問いただしたのだが、聞き出せたのはそれぐらいだった。
『ナガレ』という人(メイジだろうか?)のことも、元の世界のことも、ほとんどとらは喋らなかった。

「ま、そのうち話してやらあ……オメエがも少し強くなったらな、るいず」

真由子の格好をしたとらは、そう言って一つあくびをすると、ルイズの眠るベッドにもぐりこんだのだった。

「ととととら! ちょっと、あんたなにしてんの!?」
「うるせえな……わしは寝るぞ」
「まま待ちなさいよ……って、寝るの早いわね……んん……っ……!?」

ふと、とらを見ていて、ルイズはあることに気がついた。真由子に化けたとらの寝顔は思いがけないほどに美しかったのである。

(やだ、ちょっと……こんな美人みたことない……)

ルイズはなぜかぺったんこの胸のどこかが、締め付けられるような気がした。
自分の頬が赤くなったのに気がついて、ルイズは慌ててとらに背を向け、ふとんを引っかぶる。

(これは使い魔これは使い魔これは使い魔……というか、そもそも女の子の格好してるじゃないの!? ああもう、わたしのばかばかばか!)

その夜、ルイズはもんもんとして眠れなかった。


……というわけで、先ほどから、ルイズは深い自己嫌悪で机に頭を打ち付けていたのであった。

(いけない……こんなことしてる場合じゃない。コルベール先生が折角持ってきてくれたんだもの、本を読まなきゃ……)

ルイズはコルベールが持ってきた本に目を落とした。
なんでも、地下に収められた古文書で、さまざまな絶滅した幻獣について書かれたものらしい。

(とらくんに近い幻獣についても載っているかもしれませんな。ミス・ヴァリエール、はやくとらくんを使いこなせるよう、頑張るのですぞ!)

コルベールの言葉が頭に響く。

(やや、やってやるわよ! 上等じゃないの!)

ルイズは気合を入れなおし、再び古文書に向かったのだった。

明日は、虚無の曜日である……。



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