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男達の使い魔間章 ゼロのルイズが塾長に拉致されました~

ゼロのルイズが塾長に拉致されました
ドン!

何か重たいものが校庭に落ちる音を聞いたとき、鬼ヒゲは思わず飛び出していた。
予感がしていたのだ。
その予感を裏付けるように、飛行帽や鉄カブトも廊下に飛び出してきた。
共に視線を交わし頷くと、全速力で校庭へと走っていった。

そこには

「「「塾長~!!」」」

その姿を見た江田島平八は、ゆっくりと振り向くと一言発した。

「わしが男塾塾長江田島平八である!」


「ここはいったいどこなのよ~!」

一方、感動の再開を背景に、ルイズとドラゴンは途方に暮れていた。


「いい加減に説明しなさいよ!」

ルイズが江田島に詰め寄る。
比較的落ち着いているように見えるルイズであるが、実は内心相当焦っていたのだ。
江田島とそれを取り囲む男達との会話や、建物の雰囲気から、ここが自分の使い魔達のいたところであると想像はついたが、全く見知らぬ場所でもある。
戸惑うのも仕方がない。

そんなルイズを見た江田島は、この場所の説明をしようとした。
その時、サイレンの音が鳴り響いた。

近所の者達が、重たい物の落下音に不審さを感じて警察に通報したのだ。

その音に気がついた江田島は、ルイズにこう告げた。

「後で状況は説明しよう。今は、わしの話に合わせておけい!良いな?」

その台詞に、ルイズは疑問符を浮かべながらも頷いた。


「こらー!ここから不審な爆発音がしたと聞いたが、責任者はどこだー!」

そう言って警官が二人ほどパトカーから降りてくると、校庭にいる竜の姿を見てぎょっとした。
それを見咎めた江田島は、何とも奇遇、という顔を作ってこう応えた。

「おお!それは心配をお掛けしましたな。
 実は今、青春ファンタジーロマン、「江田島平八ハルケギニア変」を撮影しておりましてな。」

そこで警官達は江田島の姿に気がついたようだ。
江田島の方を向くと、事情を聞くために言葉を発した。

「あなたは、いつぞやの映画俳優!
 ということは、あの竜も模型かなんかですか?」

その言葉に、竜が反応して動こうとするが、江田島の一睨みによって沈黙をした。

「そういうことですな!そしてこちら主演女優の」

そこで言葉を区切って、ルイズの方を見る。
事情は良く分からなかったが、とりあえずルイズは、望まれたとおりに動くことにした。

「ルイズよ!ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!」

そう名乗ったルイズに、警官達は感心したような目線を向ける。

「ほ~う。しかし綺麗な方ですなー。 それに相変わらずセットも凝っていますね。
 少しあの竜を触らせてもらってもよろしいですか?」

江田島は、その言葉に大きく頷きを返した。竜を一睨みするのも忘れない。
いつの間にか和やかに会話をしている姿を見ていた、新一号生の一人が呟いた。

「あいつら、脳が腐ってんじゃねーか?」

ここ数ヶ月というもの、理不尽な運命に翻弄され、不条理(特に塾長絡みの)
になれたこの一号生の性は平賀と言ったが、本筋にとっては関係のないことであるので割愛する。


警官達を追い返した江田島は、ルイズを塾長室へと通し、状況を説明しだした。

意外なことに、ルイズの理解は早かった。
これには、今までの経験も絡んでいるが、テレビや東京タワーなどの景観も大きく関係している。
そう、ルイズはここを別の世界と認めたのだ。

「それで、どうすればわたしは帰れるのよ?」

ルイズが返答する。彼女にとって一番大切なのは、このことだけであるのだ。
ここがどんなに便利な世界であろうと、平和な世界であろうと関係がない。
何故ならば、ここには学院の友人達がいないし、シエスタもいない。
それに何より親友のアンリエッタも、家族もいないのだ。
ならば、ルイズは帰らねばならない。

そこまで考えが及んだ時、ルイズは一つ決心をした。

(あいつらも絶対にここに帰さなきゃね。)

そんなことを考えるルイズの顔は、実に江田島好みを顔をしていた。
女性をたとえるには不適切かもしれないが、まさしく「漢」の顔であった。


校内放送が鳴り響いた時、赤石剛次は愛刀一文字兼正の手入れをしていた。
赤石にとって命とも言うべき斬岩剣である。最後の手入れを自分でするのは当然のことであった。

「赤石剛次!至急塾長室に出頭せよ!」

赤石の手が止まり、思わずスピーカーの方へと顔を向ける。

(やはり、そう簡単にさらわれたままでいる人ではなかったな。)

手早く刀を鞘にしまって背負うと、早足で塾長室へと出頭した。


「赤石剛次入ります!」

そう言って入室した赤石剛次は軽く驚いた。
女人禁制の大本山とでも言うべき男塾の、しかも塾長室に年端もいかない少女がいるのだ。

尋常の事態ではあるまい。そう判断した赤石を真剣な顔で塾長を見つめる。

「今から大河内民明丸のところへと向かう!共をせい!」

塾長の一言から事態が動き始めた。



「何これ?すごいじゃない!」

ルイズは今を楽しんでいた。
初めて見る異世界は、まさしく現実離れをしていた。
遥かに高くそびえ立つ塔(東京タワーと後で聞いた)は、近くで見ると圧倒的な迫力があった。
さらに、トリステイン城よりも遥かに巨大な建造物がそこかしこに溢れているのだ。
目を引かない方がおかしいであろう。
極めつけはこの車という乗り物だ。
魔法も何も使用していないというのに、馬よりも早く、そして圧倒的に素晴らしい乗り心地を提供してくれるのだ。

「うむ。流石は中ちゃん。いい車を持っておるわ。」

そう、これは江田島の帝國大学時代の友人の中ちゃんより借りた『マイバッハ』であった。
ルイズの外見が大変目立つものである事を考慮した江田島は、自動車で移動することにしたのだが、肝心の車がない。
そこで江田島は、先日のJの受け入れの借りとして、中ちゃんより車を借りたのだ。
それが最高級車になったのは一重に江田島の人徳と言っても良いであろう。

「赤石。そこを右だ。」

「押忍!」

運転手代わりとして使われている赤石であるが、特に不満の色はない。
他の者であるならともかく、他ならぬ江田島の運転手兼護衛とあらば光栄というものだ。

周囲が渋滞をしている中、何故かその車の周りだけが混雑していなかったのはただの偶然であろう。

周りが、運転手と車の迫力に自発的に道を譲った、などということは断じてない。


「なに?アレ、楽しそうねえ。」

ルイズが後楽園遊園地を指して凝視していた。
世は全てこともなし。実に平和であった。


「ふーむ。なるほど、それは興味深い!」

一通り江田島から事情を聞いた民明丸は眼を輝かせて聞いていた。

「何かこの娘を帰す手がかりとなりそうなようなことに心当たりはないか?」

江田島がさらに問いかける。その言葉に民明丸は、煮え切らない返事をする。
民明丸が言うには、手がかりを知っていそうな人物には心当たりがあるが、今は行方不明で連絡がつかないということだ。
その言葉を聞いた江田島は、そうかとだけ答えると、民明丸に捜索を任せて立ち去ることにした。

「どこに行くのよ?」

部屋の汚さに辟易した様子のルイズが問いかける。一転してルイズの機嫌は悪くなっていた。
快適であった車の移動から一転して小汚い男の部屋へと移ったのだ。
むしろ、思春期の少女としては良く耐えた方と言っても良いかもしれない。

「塾生達がわしの身を案じて戦いに身を投じようとしておるのだ。塾長のわしが安穏としているわけにはいくまい。」

そう、江田島が宿敵藤堂兵衛にさらわれたと知った男塾は紛糾していたのだ。
現在総代を務める桃たちも行方不明、三号生死天王は重症、いざという時は塾長の代理を務めるはずの王大人まで行方不明とあっては仕方があるまい。
率直にそのことを藤堂に話したところ、意外にも死天王の回復がすみ次第で構わぬという返事が返ってきたのだ。
そのために、まだ三号生達は、いざという時の為に赤石を男塾に残してつい先日旅立って行ったのだ。
ようやく第一のプリズンを一人の死者も出すことなく終えたという連絡が入ってきたばかりである。
しかし悠長に構えている暇はない。一刻も早く宿敵藤堂兵衛を捕らえねばなるない。
その為にも、江田島は奇襲を仕掛けるべく、鬼ヒゲを死者として三号生達の元へと向かわせたのだ。

そんな江田島を見たルイズは顔を引き締めた。そこには、深い深い笑顔を浮かべた男の顔があったのだ。
だからこそルイズは申し出ることにした。自分が貴族である為に、そして世話になった自分の使い魔達の為に。

「何をする気?手伝ってあげても良いわよ。」

フン、という擬音が聞こえそうな様子で目線をそらしたルイズが、如何にも渋々といった様子で声を出した。

しかし、江田島はまるで全てお見通しとばかりにさらに笑みを深めて礼を言った。

「すまぬな。恩に着よう。」

ルイズの顔が赤くなる。照れを隠すかのように言葉が続いた。

「べ、べつにあんた達のためじゃないわよ!ただの暇潰しよ!ひ・ま・つ・ぶ・し!」

そんな素直でない彼女の様子に、さらに江田島が笑みを深める。
それに更にルイズが言葉を重ねていった。

そんな風景を赤石は、珍しそうに眺めていた。


「おー。久しぶりに出番が来たぜ!」

「うるさいわね。何ならすぐに鞘にしまってあげても良いのよ?それが嫌ならとっとと私の質問に答えなさいよ。」

ルイズと江田島、赤石、それに竜が他の者達と別のヘリで移動していた。
そんな中、ルイズと会話を繰り広げるデルフリンガーに興味を引かれたのか、赤石が問いかける。

「意志を持つ剣とはな。話には聞いてたことがあったが、おもしれえ。」

赤石が壮絶な笑顔を貼り付けてデルフリンガーを見る。
この世に斬れぬものなし、一文字流斬岩剣。さて、六千年の硬さを教えて貰おうじゃねえか。

そんな赤石の様子にデルフリンガーが思わず声を荒げる。

「えっ?もしかしてオレって今ピンチ?オ、オレを試し切りなんてしても面白くねーぞ!!」

どうやら軽く錯乱しているようだ。この後に、貞操の危機だのと言った言葉が続く。
その様子にルイズがこめかみを思わず押さえながら声を出す。

「あんた達。そういう事は、わたしが聞くこと聞いてからにしなさい。」

「ちょっとまてー!オレ何でも答えるから、試し切りは勘弁してくれー!」

「……まあいいわ。とりあえず、虚無の魔法についてあんたの知っていることを全て話しなさい。」

そう言った後、チラリと赤石の方に目線をやったルイズに、デルフリンガーはかつてないほど恐怖を感じていた。

(ガンバレ!ガンバレ!俺!思い出すんだ……ってブリミルそこで何手招きしてんだよ、って思い出した!」

赤石が背中から剣を抜いた所でデルフが声を挙げた。その様子に、赤石は少し残念そうに剣を鞘に収める。

「そうだ!虚無の魔法は精神力なんだよ、精神力。お前さんが強い思いを抱けば抱くほど強くなるはずだ!
 さらに、前回のエクスプロージョンみたいに一定量まで精神力を溜めておくことも出来たはずだぜ。」

さらにデルフリンガーが続けるには、今のルイズならば簡単なコモンマジック程度ならば使えるらしい。
その言葉に、ルイズはなるほどと納得し、口の中で短くフライの呪文を唱える。
すると、微かではあるがルイズの体が中に浮いた。

思わずガッツポーズを取るルイズであった。

デルフリンガーも試し切りの材料にならずにすんで、安堵の溜息を吐いていた。

ルイズは考える。
自分の故郷のことを。懐かしい家族のことを。
そして……アンリエッタに学院であった者達、自分の使い魔達が思い浮かんだ。

(わたしは絶対に帰らなければならないのよ!)

ルイズの想いが強くなる。
ルイズは、そんな想いをそのまま言葉に込めた。

「エクスプロージョン!」

竜に乗ったルイズが虚無の魔法を唱えると同時に、大爆発が巻き起こる。
その破壊力は、アルビオン艦隊を沈めた時ほどではないにしろ、城の上部を吹き飛ばすには十分すぎる破壊力であった。

「今よ!」

その言葉と同時に江田島が竜から飛び降りる。
もちろんパラシュートなどという軟弱なモノは装備していない。
そんなものをしていては、藤堂兵衛に逃げられる可能性が生じてしまうのだ。

それに

(捉えた!逃がさんぞ伊佐武光よ!)

すでに江田島の目線は藤堂兵衛を捉えていた。

落下してくる江田島に気がついた、髷を結った男が慌てて藤堂を庇う

「貴様!この俺がいる限り好きには」

「どけい!千歩気功拳!」

しかし最後まで台詞を言うことなく、江田島渾身の千歩気功拳に弾き飛ばされてしまった。


その男を、ルイズを背中に載せて空を飛んでいる竜が同情するかのように見ていたが、きっと気のせいであろう。
少なくともルイズはそう思うことにした。

(人間って、意外と頑丈なのね。こんな高さからでも普通に飛び降りることが出来るなんて。)

ルイズの思考が最近ずれてきているかどうかは定かではないが、そういうことである。


「とうとう年貢の納め時よな!藤堂兵衛!」

「くっ!しかし貴様一人で何ができる。者ども、出会え!」

その言葉に次々と忍者達が飛び出してくる。全員数々の暗殺をこなしてきた、一騎当千の猛者たちだ。
その手には、たっぷりと毒が塗り込められた武器を持っている。

いかな江田島平八であろうとも、これ程の毒を持った手練れ達からは逃れられまい。
そう確信して江田島を見やる藤堂。

(馬鹿な!何故この状況でこうも落ち着いていられる!)

江田島の顔からは不敵な笑みが消えていなかった。
その様子に、むしろ忍者達の方が微かに押されたかのように後ずさる。
その時、一筋の光が閃いた。

チィーーン

納刀の音が響く中、天より音もなく降りてきた男はこう呟いた。

「この世に斬れぬものなし、一文字流斬岩剣。」

藤堂と江田島達がいる場所を除いて高さがズレる。
次の瞬間、全ての忍者達が城を取り巻く堀へと落下していった。
そう、赤石は城の一部のみを除いて、切り落としたのだ。

「これで残すは貴様のみ!」

江田島が藤堂に詰め寄る。
藤堂はそれを強く睨み返していた。


「それにしてもこいつ等も良くやるわよねー。」

竜に乗ったルイズが、空の上から地上を眺めていた。
どうやら江田島達の方は決着がついたと見たルイズは、自分の使い魔の後輩にあたる者達の活躍を見ていた。

「貴様等!道をあけろーーーーー!!」

中でも特にむさ苦しい男が雄叫びを挙げながら、工事用のハンマーを『手で』振り回していた。
男が雄叫びを挙げながらハンマーを振り回すたびに、人がゴミのように吹き飛ばされていく。
技もへったくれもない正しく力技であった。
塾長曰く、思わぬ掘り出し物であったため、半ば無理矢理スカウトしたというその男は、巨漢同士の塾生の中でも一際大きな体躯をしていた。

(アレが男塾に入る前は、ギーシュに似た体形をしていたなんて、想像もつかないわね。)

よほど男塾の水があったのであろう。
その男の姓は平賀と言ったが、またしても本編とは関係がないので割愛させていただく。

なおデルフリンガーが、

「あの兄ちゃん、まさか使い手か?」

などと言った謎の台詞を吐いていたが、同じく本編とは関係がないので割愛させていただくが悪しからず。


ふとルイズの視界に、江田島達がこちらに向かって手を振っている姿が入った。
そこへ竜を急降下させたルイズが尋ねる。

「もう終わったの?」

「うむ。協力に礼を言おう。」

そう言って江田島が深々と頭を下げる。
思わぬその様子に、ルイズは慌てたように声を出した。

「わたしは単に暇潰しに手伝っただけよ!勘違いしないでちょうだい。」

しかし江田島は見逃さなかった。
ルイズの顔は気恥ずかしさからか、赤く染まっていた。

その時、鬼ヒゲの声が響く。

「塾長!連絡が入りました。なんでも探していた人物が見つかったそうです。」

短い時間ではあったが、ルイズの異世界旅行譚は終わりを迎えようとしていた。


あの戦争から二日後のことである。

ここ、新男根寮の地下から何か声が聞こえる。
いつの間にか出来上がっていた階段を降りた所には、王大人にシエスタ、ルイズの使い魔達は勿論のこと、
タバサやキュルケにギーシュ、そして怪しい覆面をした助っ人二号がいた。
いや更にもう一人、助っ人二号の横に、服の上からでもスタイルが良いと分かる女性もいた。
助っ人二号と同じ怪しげな覆面をしているその女性は、助っ人四号と名乗った。
王大人と助っ人二号が今回のために連れてきたという、ルイズと関係の深い女性である。


「貴様等、準備は良いな?」

その声に、皆が思い思いの声で肯定の返事を返す。

「貴様等の想いこそが、今回の逆神毬送りに於いては鍵となる。何か質問はあるか?」

するりとしなやかな手が挙がる。
王大人が目線で促すと、質問者の助っ人四号は声を挙げた。

「もし失敗しましたら、どうなりますでしょうか?」

「貴様等全員が死亡して終わるだけである。想い残すことがあるのならば、大人しく退くがいい。」

微塵も表情を変えずに、残酷なことを告げる王大人に、皆が静まりかえ……らない。

「どうせそんなことだと思ったぜ。」
「フン、問題ないな。」
「成功させれば良いだけのことでしょう。」

いつものことだと騒ぎ立てる周囲の様子を意に解することなく、王大人は真っ直ぐに助っ人四号を見つめる。
助っ人四号はその眼をじっと見つめると、破顔した。覆面の上からでも、その笑顔は美しいのがわかった。

「安心しました。たとえ私達が失敗してもルイズに害はないのですね。」

ルイズがいたおかげで、自分は好きだった人にも会うことができた。
ルイズがいたおかげで、トリステインは滅亡の危機から救われた。
ならば、今回自分が命をかけるくらい、どれほどのことがあろうか。

そう助っ人四号は、アンリエッタには命を懸けるに足る理由がある。
それに

(私達は親友よね、ルイズ?)

たとえ理由がなくともアンリエッタは命を懸けるに違いない。

アンリエッタが促すような視線を向けると同時に、皆の視線が王大人に集まった。
王大人が重々しげに口を動かす。

「それでは只今より、逆神毬送りの儀を執り行う!」


「えーーー。もう帰ったですって!」

ルイズが思わず声を挙げる。
そう、ルイズの帰還の手がかりを知るという人物は既に帰ったという。
それでは意味がないじゃない、と詰め寄るルイズに、民明丸は後ずさりながら返事をする。

「ま、まあ落ち着け!ちゃんとハルケギニアに渡るための方法は聞いたから」

その言葉に、ようやくルイズの勢いが止まるが、今度は、いいからとっとと吐きなさい、とでも言いたげな視線が民明丸に突き刺さる。
そこへ江田島が本題へと入るように促す。

「それで何をすれば良い?」

「うむ。男塾に伝わる秘儀、神毬送りをお願いしたい。」

その言葉に江田島の顔が険しくなる。
民明丸は、気づいたが、それを無視して話を続ける。

「その際に、彼送還者はこれを持っているように、と阿諷呂は言っておったな。
 なんでも、今ならこれが地球とハルケギニアを繋ぐ鍵となりうるらしい。」

そう言って民明丸は一つのロケットをルイズに手渡した。
つい中を開いたルイズの目に、黒い髪の、綺麗な女性の写真が飛び込んできた。
よほど丁寧に扱っているのだろう。
経年劣化はしているが、それ以外に汚れはなく、とても丁寧に保管してあったのがわかる。
他人の心に土足で入り込むような感じを覚えたルイズは、ロケットを閉じてじっと握りこんだ。
もうここには用はない、とばかりに立ち去ろうとするルイズの背中に、民明丸の声がかかる。

「そのロケットは、ついでに王大人に渡してくれ!とのことだ。よろしく頼む。」

振り向いたルイズは、その言葉に大きく頷くことで返事とした。


「わしが男塾塾長江田島平八である!全塾生は速やかに校庭に集まるように」

江田島の声がスピーカーから流れ出る。
普段スピーカーから聞くことのないその声に、新一号生達が怪訝そうな顔をしている。
そう、まだ三号生との対面式を済ませていない彼らは知らないのだ。
江田島しか三号生への命令権を持っていないということを。

まだ一号生しかいない校庭が多少のざわめきに包まれている。

「のう、平賀に東郷よ。三号生ってどんなやつらじゃろうな?」

その中の一人が、新一号生の中でもとりわけ目立っている二人組みに声をかけた。

「フン。知るか。」

「きっと鬼みてえにいかついやつらばかりじゃねえのか?こんなところに二年以上もいるんだぜ。」

バイクに跨った男が無愛想な返事を返す中、雲をつくような巨漢の男が陽気に言葉を返す。
陽気に帰した方は、幼い頃から叩き込まれていたという馬蘭弩磐流範魔亜術の才能にようやく開花した男である。
それは、この男塾に入ってから身長が40cm以上伸びるという脅威の成長を遂げたからでもあるが、詳細については本編とは関係がないので割愛する。

しかし、そんな陽気な会話も長くは続かなかった。
彼らの世話係を行っていた江戸川が大声を張り上げる。

「全員、気をつけーーー!」

その声がした瞬間、場が静まり返った。
平賀と東郷だけが目を光らせて前方を見つめている。

閻魔と恐れられる男塾三号生、そして男塾死天王の入場である。


「わしが男塾塾長江田島平八である!全員そろったようだな。」

場が一触即発の空気を含みはじめた頃、江田島平八が壇上から声をかける。

「塾長!我々までお呼びとは、一体いかなる事態でしょうか。」

皆の疑問を代表するかのように、影慶が質問をする。その目はいたく真剣であった。

「貴様等、新二号生達のために死ねるか?」

三号生達に向かって放ったはずのその言葉であるが、三号生達に動揺はない。
全員取り乱すことなく江田島の方を向いている。一方、その言葉に一号生達の方からざわめきが起こる。

「静まれい!まだ面識がない貴様等にまで命をかけよとは言わぬ。出来るか、影慶よ?」

「これは塾長とは思えぬお言葉。親が子の為に命をかけるのが真理であるならば、先輩が後輩の為に命をかけることもまた真理でありましょう。」

不思議と透き通るその声に、ざわめいていた一号生達ですらも静まりかえる。
三号生達が無言で前へと進み出た。全員影慶と志を同じくする猛者達である。

その様子に満足した江田島は、神毬送りの説明をはじめた。


理屈は簡単である。
ハルケギニアと男塾、双方と強い繋がりのあるルイズを一度ハルケギニアに送り返す。
その際に、この地球と強い繋がりを持つ物体を持たせる。
それを用いて頃合を見計らって、同じく王大人が神毬送りで全員を地球に送り返すというものだ。
ただし、問題点はいくつもある。たとえば必要とする気の量だ。
刀一本を地球上のどこかに送るのですら、莫大な気を必要とする。
それを今回は異世界へと人間を送り届けるのだ。
人は不可能と言うに違いない。

しかし、三号生達の顔に恐れはない。


ルイズを中心として、二重の円が出来ていた。
内側に三号生達、外側に一号生達である。
今回直接念を送りつけるのを三号生達が担当し、一号生達はただのブースター役に過ぎない。

「いくぞ!貴様等準備はいいな。」

羅刹が声を張り上げる。
そうして男塾の秘儀、神毬送りが始まった。

「「「「「「ハアアアアア!」」」」」」

三号生達が次々と念を送り始めると場から光が溢れ出した。
その光を浴びながら、ルイズは一心にハルケギニアのことに思いを馳せていた。


一方ハルケギニアに於いても、皆一心不乱に念を込めていた。

「くっ!」

ギーシュが呻いて体制を崩しそうになったその瞬間、

「しっかりしたまえ!」

助っ人二号が、ウェールズがギーシュを支える。
また、タバサが倒れそうになって、キュルケに支えられていた。
確かに彼らの体力は、男塾の猛者達と比べる少ない。
だが、体力では劣っていても決して心は折れていない、否、折れるわけがない。
歯を喰いしばって、支えあいながら、それでも彼らの目の光は衰えるどころかむしろ輝きを増していた。

(ルイズ様!早く帰ってきて下さい!)

シエスタの祈りが響いたその時、一際強い光が発生した。


(くそ!俺達はこんなものかよ!)

平賀は悔しさから唇をかみ締めていた。
見渡すと、一号生達が次々と力尽きて倒れていく一方で、命をかけている筈の三号生達に脱落者はいない。
限界を遥かに超えて出血を重ねている者もいるというのに、なおも気合の声を挙げ続けている。
そこ平賀一号生は埋めようのない差を感じた。
確かに、自分達は現在の二号生とはあったことがない。
だが、

(そんなこと関係あるかよ!)

そう関係なく、今の自分達ではたとえ二号生を知っていたとしてもあそこまで出来そうにないのだ。
だからこそ、平賀一号生は声を張り上げる。

「てめえら!俺と違って好き好んでこの学校に入ったんだろうが!ならば気合の一つでも入れやがれ!」

自分も限界が近い中、平賀一号生は声を張り上げることで己を鼓舞する。
見ると隣では、東郷が更に気合を入れているのが分かった。

(負けてられるか!)

さらに強くそう念じると、それに共感するように周りの一号生達の出力が挙がるのが分かった。

「入学時は一番華奢だった平賀にあそこまで吼えられて、黙っていては男がすたるぜ!」

珍しく、東郷が雄叫びを挙げる。
そうして一号生達の出力は臨界へと近づいていった。

(いつか必ず、先輩達を超えてみせる!)

平賀一号生は強く念じた。


「今年も一号生達は豊作のようだな。」

センクウが話しかける。如何に男塾死天王とはいえ、既に余裕などない。

「ああ。俺達もうかうかしてられねえな。」

卍丸が軽口で返す。
たとえ彼らに余裕がないとしても、搾り出さねばなるまい。
何故ならば、彼らは三号生の、それも死天王であるのだ。

「これが最後だ!全員気合を入れろ!」

赤石の声が大きく響き渡った。


次の瞬間、湧き起こった光がルイズの元へと集まる。

「今だ!嬢ちゃん、強く念じろ!虚無の魔法の可能性は無限大だ。」

デルフリンガーの声が響く中、ルイズは更に強く念じた。

(みんな!私絶対に帰るから!)

その時、ルイズを中心に集まった光が爆散した。


「「「「「ぬおー!」」」」」「「「きゃあ!」」」

新男根寮の地下に衝撃と光の奔流がほとばしる。
全員思わず体制を崩してしまう。

だが、光が治まった次の瞬間、

「みんな、ただいま!」

顔を涙で濡らしたルイズがそこに立っていた。

「「「「「ルイズ(様)!」」」」」

ルイズがハルケギニアに帰還した瞬間であった。


男達の使い魔間章 ゼロのルイズが塾長に拉致されました 完



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