あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

零魔娘娘追宝録 6 前編

                  奪われた宝物を取替えさんとす
                   ルイズと静嵐刀はいかにして
                          『土くれのフーケ』
                  操るゴーレムと渡り合ったか?
                           そして戦いの後
              ルイズの胸に去来するものやいかに?


「困ったことになったのお。まさかあれが奪われてしまうとは」
 老人――魔法学院学院長であるオスマンが困ったように言う。
 静嵐とタバサとの戦いの後、巨大なゴーレムを使って宝物庫の壁を破壊し、
 禁断の宝物『魔封の札』を奪い去っていった怪盗『土くれのフーケ』
 そのフーケが事件を起こすところを目撃したルイズ、静嵐、タバサ、キュルケはフーケ追跡の任に志願したのだった。
 その一環として、まずは事件の顛末をオスマンに報告するべく学院長室に集まったのである。

「申し訳ありません……。私たちの目の前で宝物を奪われてしまうなんて」
 悔しげにルイズは言う。フーケを止められる位置にありながら、みすみす奴を見逃してしまったことを悔いているのだ。
 そんなルイズに、オスマンは笑いかける。

「いやいや、仕方無いよ。相手はかなりの手だれのメイジじゃ。手を出せばただでは済まなかったじゃろう。
君たちに怪我が無くてよかったと思うべきじゃ。奪われたのは『魔封の札』だけというのも不幸中の幸いだったことであるし」
「その、奪われた『魔封の札』とはいかなる宝物なのですか?」
 興味深そうに、事情聴取に同席していた教師のコルベールが訪ねる。
 オスマンは髭を撫でながら説明する。

「形は一冊の、変わった装丁をした冊子での。
数枚のページ一枚一枚が、とても強力な魔法を封じ込めたマジックアイテムになっておる。
それ故に『魔封の札』と名づけたのじゃ」
「名づけたとはどういうことです?」
 ルイズたちの供述を筆記していたオスマンの秘書、ロングビルが問う。
 彼女はオスマン自らがスカウトしてきたという才媛で、
 今回の事件においてもいち早くフーケを捜索し、その居所の目星をつけているという。
 そのためルイズたちの引率兼案内役として同行することになっていた。

「あれは本来そういう名前ではないのだ。ワシが手に入れたときには、きちんと別の名前があっての。
何と言ったかのお? もう何年も昔のことじゃから、はっきりとはせんが、
とにかく覚えにくい名前だったから保管する際にワシが名づけなおしたのじゃ」
 再びコルベールが質問する。
「どういう経緯でそれを入手したんですか?」

「三十年前のことになる。ワシは森を散策中にワイバーンの群れに襲われたのじゃ。
幸い群れは小型のものばかりで、一匹一匹はたいしたことがなかったんじゃが何せ数が多かった。
必死に応戦するワシの精神力も切れて、もはやここまでかと思ったその時。『魔封の札』を携えた男がワシを助けてくれた」
「マジックアイテムを持った男? どんな人物だったんですか?」
 三度目のコルベールの質問に、オスマンは何かを懐かしむように目を細める。

「見たことも無いような服装……ちょうどそこの、ミス・ヴァリエールの使い魔のような服装をしていての。
手には一本の長い棒と大きな槍を持っていた、それ以外はどうにも掴みどころの無い凡庸な姿の男じゃった。
ただ、物腰はしっかりとしていたことから、軍人か何かだったのではないかとワシは考えておる」
「……それで、その人はどうやって札を使ったんですか?」
 真剣な面持ちで、ロングビルは問う。

「男はワシに駆け寄り、冊子から破り取った札の一枚を、ワシの口に札をねじ込んで食べさせた。
すると不思議なことにワシの精神力は見る間に回復し、間一髪でワイバーンを倒すことができたんじゃよ。
その後男は、『魔封の札』をワシに託し、いずこかに姿を消した。
ワシは窮地を救ってくれたその男を友と思い、託された『魔封の札』を保管し続けてきたのじゃ」

 そう言ってオスマンは遠くを見るような目をする。
 ほんのわずかな邂逅、しかし人生を左右する一瞬の中で自分を救ってくれた友。
 その友の思い出の品が無惨にもフーケに奪われた。オスマンとてさぞかし無念であろう。
 ルイズは決意する。そんな大事なものを奪うような輩を許すことはできない。
「大事なものなんですね。――わかりました、必ず取り戻してみせます」

 ルイズの言葉に、オスマンは嬉しさと心配さの入り混じったまなざしを向ける。
 その性癖……というか趣味ゆえに誤解されやすい男であるが、これでも生徒たちには人気のある学院長なのだ。
 オスマンは重々しく頷き、ルイズたちに同行するロングビルに向き直る。
「……うむ。くれぐれも気をつけてな。ミス・ロングビルも、この娘たちを頼む」
「はい。しっかりと、彼女たちをエスコートしますわ。『土くれのフーケ』のところまで、ね……」
 そう言ってロングビルは嫣然と微笑んだ。

                  *


 ロングビルに案内されてやってきたのは林の中の一軒の小屋だった。
 元は樵の小屋か何かだったのだろう、打ち捨てられた小屋の中には家具が残っている。
 ロングビルの話では、どうやらここにフーケは潜伏しているという。
 なるほど、それらしいと言えばそれらしい。このすえた廃屋の雰囲気は、いかにも盗賊の根城と言った風体である。

 小屋の中を、タバサ、ルイズ、そして静嵐が探索する。
 ロングビルは林の中の見回り、キュルケは小屋の外での警戒である。
 小柄な二人と頑丈さが取り柄の使い魔である静嵐は、小屋の内部で『魔封の札』の捜索するのが仕事だった。
 どたんばたん、と家具を適当にひっくり返し、それらしいものを探す。

 ロングビルの情報が確かならば、この部屋の何処かに『魔封の札』が隠されているはずである。
 そのまま『魔封の札』を回収し脱出、あわよくばフーケを待ち伏せて捕縛しようというのがルイズたちの作戦だった。
 ここまでは順調。シルフィードに乗って近づいたり、無闇に魔法を使ったりしていない以上、フーケに感づかれている様子は無い。
 だが、


 なんとなく静嵐は思った。
「もしかして、フーケが全て仕組んだ罠かもね」


「!」
 静嵐の言葉にタバサはぎょっとした表情で静嵐を見つめる。
 声を落し、ただでさえ小さな声を押し殺し、囁くような声で問う。
「何故、何故そう思ったの?」
 何故か、と問われて静嵐は考える。
 考えてふと気づく。何故自分はその結論に至ったのだろう?
 それがさっぱりわからないことに気がついた。

 静嵐は状況を分析する。
 この状況下で、フーケが『魔封の札』を餌に罠を仕掛けるという可能性はたしかにある。
 だが、学生であるとはいえメイジ三人を相手に、盗賊がそんな危険な橋を渡るであろうか?
 わからない。情報が足りない。静嵐がフーケを見たのは、ほんの数秒であったのだ。
 フーケがどんな人物かなどわかりようもない。だから静嵐は素直に自分がそう思った理由を言う。 
「いや、なんとなく。根拠は無いよ」

 静嵐の言葉に、タバサは全身の緊張を解く。
 静嵐はそれが、自分の答えのあまりのいい加減さに、脱力したのだとは気づいていない。
 脱力したタバサは、その無表情を崩して恨みがましい視線を静嵐に向ける。
 それはまるで「こいつの言葉に一瞬でも驚いてしまった自分が情けない」と言わんばかりである。
「……」

 自分よりも遥かに年下の、小柄な少女に睨まれて、静嵐はうろたえる。
「な、なんだいタバサ。そんな怖い顔して」
「……別に」
 そう言ってタバサはついとそっぽを向き、またしてもごそごそと部屋の探索を再開する。
 ベッドをひっくり返し、敷物を引っぺがす。その手つきは妙に乱暴であった。
 何か悪いことを言っちゃったかな、と静嵐が思っていると。

 二人のやり取りに気づかずチェストを探っていたルイズが歓声をあげる。
「あったわ! これがそうじゃない?」
 その声に、タバサと静嵐は駆け寄る。
「へえ? どれどれ――これは!」
 なるほど、ルイズの開いたチェストの一段の中に、それらしき冊子が収められていた。
 だが静嵐が驚いたのは、それがそこにあったことではない。

「どうしたの、セイラン?」
 静嵐は珍しく真面目な顔をして、おそるおそる書物を手に取り、内容をあらためる。
 表紙に踊る、荒々しい文字は見たことがある。
 この独特の紙の手触りを指は覚えている。
 そして何より、この、『同属』の感覚を静嵐は知っている。
 つまり、これは
「……これは宝貝だよ、ルイズ」

 そう。紛れも無い。これは自分と同じ宝貝だ。
 静嵐の言葉に、ルイズは驚きの声を挙げる。
「パオペイ? あんたと同じ?」
 そう言って、静嵐の手から『魔封の札』――いや、宝貝をひったくって確かめる。
 宝貝に触れた瞬間、ルイズは表情を変える。
 静嵐のような確固たる人格を持たない宝貝には、己の名や能力を所有者に伝える機能がある。
 その機能が、ルイズに教えているのだ。自分が宝貝であることを。

「わかる、わかるわ。このパオペイ、名前はフホウロク、センジュツを封じたフを封印するためのパオペイ。
製作者は……リュウカですって?」
 そう。その宝貝の名は『符方録』
 仙人の使う魔法にも良く似た技、『仙術』を『符』という形にして保存したものを封印するための宝貝だ。
 仙術を封じた『符』は扱いが難しい。むき出しになった仙術的力は、ふとしたことで勝手に解放されかねない。
 そのため『符』はそのまま状態で保管しておくことができず、ひょうたんなどの保管宝貝か、
 符を封じる為の宝貝つまりは『符方録』のようなもので保存するしかない。
 そしてこの符方録の製作者は龍華。静嵐刀と同じ製作者の仙人である。

「そう、僕と同じなんだよ。つまりこれは」
 かつて、とある道士が誤って封印を解いてしまい、散逸してしまった七百を超える宝貝たち。
「あんたと一緒にバラ撒かれたっていう、欠陥パオペイの一つ? でも、なんでそれがここにあるの!」
 ルイズの疑問はもっともだった。
 このハルキゲニアという世界と、自分たちの元いた世界は遠く離れている。

 自分のように『召喚』されたわけでもない宝貝が、この世界に存在しているのは不自然だ。
 そう思った時、小屋の外からキュルケの叫び声が聞こえた。その瞬間、
「タバサ! ルイズ! 早くそこから出なさい!」
 タバサと静嵐は行動を起こす。

――タバサは一瞬だけ静嵐に瞳を向け、静嵐はルイズに向き直り、タバサすぐに視線を戻し、
静嵐はルイズを見て、ルイズは符方録をつかんだまま、タバサは窓から外に向かって飛び出す、
静嵐はルイズの腕をひっつかみ、ルイズは「え?」と声を漏らす、静嵐はルイズを抱きかかえ、
ルイズがキュルケの言葉の意味を脳で理解しようとした時、静嵐はルイズを抱えて小屋の外に飛び出す、
小屋は轟音を立てて崩れ落ちる。

 戦いに慣れた少女であるタバサと、武器の宝貝である静嵐であったからこそできた芸当であった。
 小屋の外で静嵐とタバサが体を起こした時、ほんの一瞬前まで自分たちが居た小屋が押しつぶされているのを見る。
 そこに居たのは、忘れもしないあの巨大な土人形。土くれのフーケのゴーレムであった。
「またこいつ!?」
 ようやく状況を察したルイズが、ゴーレムを見て叫ぶ。

 そしてゴーレムは、自分の攻撃が無意味だったと気づいた風も無く、再び静嵐たちに向かって拳を振り上げる。
 どうやらこの辺りに潜んでいたフーケが、自分たちを攻撃しようとしているのだ
「待ち伏せされていたみたいだね。気配を隠していたのかな? でも、この辺りには僕たちの気配しかなかったのに」
 この小屋に入る前あたりの気配を探った静嵐は、このあたりには自分たち、
 つまりはルイズ、タバサ、キュルケ、ロングビル、そして静嵐の五つの気配しかないことを確かめている。

 無論、凄腕の武人であるならば静嵐の気配探知を誤魔化すことは可能であるし、
 罠の宝貝の類を使えば武器の宝貝を欺くことなど容易い。
 だが、それらの『ごまかし』に対する違和感すら感じなかったというのはどうにも変である。
「こっちに来る!」
 窓と入り口。それぞれ別方向に逃げた静嵐たちとタバサ、どうやらゴーレムは静嵐たちに狙いを定めたようだ。

「ルイズ! 早く逃げなさい。」
 上空に待機していたであろう、タバサの操るシルフィードに拾われたキュルケが叫ぶ。
 空中に逃げれば、ゴーレムとて手は出せない。だが、
「くっ!」
 再びルイズを抱え、静嵐は跳躍する。一瞬遅れて、二人のいた場所にゴーレムの拳がめり込む。

 シルフィードはそんな二人を拾いあげようとするが、風竜の巨体が災いしてなかなか近づくことができない。
 静嵐一人であるならば、鈍重なゴーレムの攻撃を回避することなど容易いが、腕に抱えたルイズが邪魔でそれもできない。
「静嵐、私のことはいいからあんたはさっさと逃げなさい!」
 悔しさのあまりか、ルイズの瞳に涙が浮かぶ。
 ルイズは自尊心が高く、またその自尊心にに見合うだけの人間であらんと努力する少女だ。
 そんな自分が、己の使い魔の足を引っ張っている。それがどうにも許せないのだ。

「そんなわけに……、いかないよ!」
 ゴーレムの拳が、静嵐たちをかすめる。間一髪回避し、静嵐はなんとか距離をとる。
 ルイズの体が震えている。怖いのだ。一撃で自分を殺しうる存在に狙われる。
 そのような恐怖を、ただの少女が耐えられるわけがない。
 ルイズは悔しげに歯噛みする。怖がっている自分が悔しいのだ。悔しいと思っても何もできない自分が情けないのだ。
 そんなルイズを見て、静嵐の心がわずかに震える。

 このどうしようもなく弱い、だが並ぶものがないほど気高い、ご主人様を助けねば、と心の底から感じた。
 ルイズは自分自身に筋を通そうとしている。それは、彼の創造主たる龍華にもよく似た態度だ。
 ルイズが龍華と違うのは、彼女は圧倒的に無力だということだ。
 だが、今のルイズは一つだけ力を持っている。宝貝、すなわち自分だ。
 なればこそ、自分がやることは一つしかない。

「……デルフ、今回はごめん」
 静嵐は背中の剣、デルフリンガーに一言謝る。
 デルフリンガーは少しだけ不満げにそれを受け入れる。
『ま、しょうがねえな。気をつけろよ、相棒。相棒の刃は俺より鋭いが、なにせ相手がデカすぎる』
「わかってるさ」
 静嵐は背中の剣を上空に放り投げた。シルフィードに乗ったタバサがそれを器用に受け止める。

「何をする気なの?」
 自ら武器を捨てた静嵐に、ルイズは問う。
 静嵐は、自分の腕の中のルイズを見つめて言う。
「ルイズ、僕を使って戦うんだ。このままじゃ逃げ切ることもできない」
「!」
 その言葉に、ルイズは息を呑む。

 静嵐は己の真の姿、刀の形態に戻った時。使用者の体を操ることができる。
 ならば、ルイズの体を操ればそれだけ逃走もしやすくなる。
 しかしそれは、彼女自身が生身で敵と向かい合うということでもある。
 果たしてそれに彼女が耐えられるか? いや、耐えられる。そういう芯の強さを持った少女なのだ。自分の主人とは。
 ルイズは意を決し、うなずく。そしてさらに、ルイズは静嵐の言葉の一部を否定する。それは違う、と。

「逃げるんじゃないわ、あいつと戦うのよ、私たち二人で。いいわよね?」
「……了解さ!」
 逃げるのではなく、戦う。そう答えるだけの強さを持った主人がとても誇らしい。
 ルイズを下ろし、静嵐の体は爆煙に包まれる。

 煙が晴れた時、そこには刀を片手に持ち、柔和な笑みをわずかに細め、敵を見据えて構えを取るルイズの姿があった。
 ルイズは無造作にゴーレムに向かってわずかに歩を進め、そしてすぐに駆け出す。
 すらり、と刀を抜き放ち、鞘を撫でる。鞘はそのまま、静嵐の外套へと姿を変える。
 鎧代わりにもなる長い外套をマントの上に羽織り、そのまま流れる風にはためかせ、ルイズは跳ぶ。

「まずは……!」
『一太刀!』
 鈍重なゴーレムの体を駆け上り、高く上空に跳躍する。
 刀宝貝の十八番。素早さを生かし、重量の無さを補うことのできる常套手段。高空落下攻撃だ。
 ルイズの動きのあまりの速さに対応できないゴーレムは、その頭部に一閃を受ける。
 頭部に一撃を見舞ったルイズは、落下の反動をそのまま利用して後ろに跳び、再びゴーレムに向き直る。

 ゼロの使い魔、静嵐刀。そしてそれ手にする、ゼロのルイズの一太刀。
 これから先、二人の経験することになる、幾度のもの長い戦いの連続の中で振るわれた、最初の一太刀であった。

                  *

「タバサ! なんとか二人を拾えないの!?」
「無理」
 タバサはわずかに表情を悔しげに歪ませて否定する。
 静嵐たちの近くで拳を滅茶苦茶に振り回すゴーレム。無理に近づけばシルフィードとて無事では済まない。
「見ていることしかできないなんて!」
 悔しいのはキュルケとて同じであった。

 上空から何度か火魔法を放ってはみたが、まるで効果は無い。
 それはけして、キュルケの魔法が貧弱だというわけではない。
 フーケのゴーレムが規格外に大きいため、少しの攻撃に意味がないだけだ。
 あれを倒しきるのなら、もっと大きな火力。トライアングルクラスのメイジ数人がかりの大規模な爆発が必要だ。
 そんなものを、今ここでどうやって用意できるだろう。このまま二人を見捨てるしかないのか?

 キュルケの心がわずかに諦めに傾きそうになった時、異変が起きる。
 何を思ったのか剣を捨て、ルイズを地面に下ろす静嵐。
 まさか捨て身の囮にでもなるつもりか? もしそうならば、ルイズだけでもなんとか回収しなければ。
 だが、実際に起こったのはもっと驚くことだった。静嵐の体が爆煙に包まれる。
 ルイズが何か魔法でも使ったのかと思ったが、彼女は杖を抜いてすらいない。

 爆煙が収まったとき、そこに静嵐の姿は無く。かわりにルイズが一本の剣を握っている。
 どう考えても、静嵐の体が変化したとしか思えない。
「何あれ! セイランが剣になったわよ!」
「あれが彼の正体。パオペイと呼ばれる異世界のマジックアイテム」
 タバサは既に知っていたのであろう。冷静な声でそう言う。

 そうか、と納得する。静嵐の正体がそのような特殊な存在であるが故に、タバサはあれほど彼のことを気にしていたのだろう。
 視界の中のルイズは抜き放った剣を片手に、ゴーレムへと突進する。
「でも、どうする気なの? まさか、剣一本であの巨大なゴーレムと戦うつもり?」
「わからない。でも、彼がパオペイなら」
 ルイズの動きはあきらかにいつものものとは違う、滑らかで淀みの無い洗練された動きだ。

 それが一流の武人がとる動きであるとはキュルケは知らなかったが、先ほどまでの静嵐の動きに通じるものがあると見て取る。
 あのような動きができるのならば、鈍重なゴーレムの攻撃にも対処できるかもしれない。
「たしかにあの動きは普通じゃないけれど……」
 だが、剣一本で何ができる? いや、そのようなことを考えてる場合ではない。

 ままよ、とキュルケは逡巡し、杖を抜く。
 すでにキュルケの精神力はかなり消耗していたが、やはりそれでも何もせず見ているだけなどは御免だ。
「とにかく、二人を支援するわよ。タバサ!」
 タバサも頷き、二人は同時に杖を振るった。


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