あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

美的センスゼロの使い魔-1

「宇宙のどこかにいる私の下僕よ! 強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ!
 私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」

 ルイズがこれで十数回目の召喚の呪文を唱え終わった瞬間、爆発が巻き起こった。
それ自体はいつもの事だ。珍しくもない。だが、今回はそれだけでは終わらなかった。
爆煙のたちこめる中に浮かび上がる巨大な人影。

「まさか!」
「ゼロのルイズが召喚に成功したのか!」
「ありえない!」

 そんな生徒たちの動揺の声を圧して響き渡るのは、

「うわぁっははははははははははははははははひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

 という力強い高笑い。
力強さと高すぎるテンションのせいか、貫禄や高貴さと言った要素は皆無である。

「何だこの下品な高笑いは!」
「い、いったい、何者だ!」

 口々に発せられる誰何の声に、その人影は笑い声に劣らぬ大音声で応えた。

「ダーク・シュナイダー様の次に美しく!
 ダーク・シュナイダー様の次に強く!
 ダーク・シュナイダー様の次に偉大なる大魔導士!
 忠誠の蒼き爪持つ元・鬼道三人衆筆頭!
 それが私!ダァァァァァァァァァイ・アモォォン!」

 朗々たる名乗りの声と共に、アモンと名乗った人影がマント(どうやら、彼はマントを羽織っていたらしい)を翻す。
たちまち彼を中心として旋風が巻き起こり、たちこめる煙を一気に吹き飛ばしたその瞬間。
「て言うかダークシュナイダー様って誰よ?」と思う暇もなく。

「ってこれは日光ぉぉぉっぉ!昼間じゃねえかYO!ぶぉえぁ!」

 蛙を潰した様な悲鳴とともに人影は消え去り、煙の晴れたあとに残っていたのは白い灰の山であった。

「え?ちょっと、何今の!わたし召喚に成功したの?それとも失敗したの?」

 凄い勢いで現れ、凄い勢いで退場して言った謎の存在。
いや、人語を操り人型のシルエットで日光で灰になる存在と言えば一つしかないので謎の存在ではないのかもしれないが、
登場して早々自滅したあの存在を、夜の貴族と言われる高貴なイメージのあの種族にカテゴライズするのは抵抗がある。

「さすがゼロのルイズ!」
「召喚したのは灰の山かよ!」
「ゼロにふさわしい使い魔じゃないか! そのまま契約しちまえよ!」

 クラスメイトの嘲笑が痛い。
だが、この程度でくじけてなるものか。不屈の精神こそ私の唯一の取り得なのだ。
もう一度の挑戦をコルベール先生に願い出ようと決意した時。

『ククククク、やってくれましたね! だが、このダイ・アモン様は不死身! この程度では滅びませんよ!!』

 再び無意味にテンションが高い大声が響き渡る。
正直、大人しく滅びてて欲しかった。もう一度、もっとまともなものが出る事に賭けて召喚に挑戦させて欲しい。

「なんだ、今の声は!」
「何処から聞こえてきたんだ!」
「おい、あれを見ろ!」

 言われたとおりに灰の山を見ると、ギャアギャアと鳴声を上げながら、
翼長2メイルに達しようかと言う巨大な蝙蝠が這い出してくる。

『今は日光に敗れましたが、次はこうは行きませんよぉぉ! 覚悟していなさい、下等な人間どもぉぉぉ!』

 ギャアギャア、キィキィと言う蝙蝠の鳴声とは別に、再び響き渡るダミ声。周囲の生徒たちの混乱にも拍車がかかる。

「いったいどこから聞こえてくるんだ、この声は!」
「ひょっとしてあの蝙蝠か!?」
「いや、あれはただのジャイアントバットだ!」

『ふはははははは! 私がどこにいるかわからないでしょう!』

 こいつら、本気で言ってるのか? だんだん頭が痛くなってきた。そう考えつつ、エアカッターの呪文を詠唱する。
成功はしないだろうけどそんな事は今はどうでもいい。

「この…」

『うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!』

 周囲に響き渡る下品な笑い声。ギャアギャア、キィキィと鳴声を上げて飛び回る大蝙蝠。

「ド阿呆がぁぁぁぁぁ!!!」

 叫びながらエアカッター発動。いつものように巻き起こる爆発。
案の定、エアカッターは不発。だが、それでいい。いや、それがいい。その位置がちょうどいい!

『ぶげぎゃひゃおぶぇっ!』

 失敗魔法で発生した爆発が、大蝙蝠を直撃した。そのまま無様な悲鳴を響かせて墜落した蝙蝠に歩み寄ると、
その首根っこを全力で踏みつける。

『こっ、小娘ぇぇぇぇぇ! なぜ私が蝙蝠に化けているとわかったぁぁぁぁ!?』

「あの蝙蝠が声の主だったのか!」
「全然気付かなかったわ!」

 頭がくらくらしてきた。コイツといいクラスメイトといい、どいつもこいつも本気で言ってるのだろうか。

「アンタ馬鹿? こんなあからさまに怪しい蝙蝠、見たことないわよ!」

 怒りと侮蔑をこめて思いっきり踏みにじり、その辺に落ちてた人頭大の石を拾ってゴスゴスと殴りつける。
どうせこの手の連中は殺しても死なないのだ。徹底的に痛めつける必要がある!

『グギャァァァァァァァァ! やめてぇぇぇぇ! 暴力反対ぃぃぃぃぃぃ!』

「なんて容赦のない攻撃! まさに残虐非道ッ!」
「貧民街のゴロツキがやるブースボクシングよりダーティー!」
「ゲェ―――――っ残虐超人ルイズの誕生かぁーッ!」

 ギャラリーが好き勝手なことを言っている。後で覚えていなさい。
心の中の復讐手帳に各人の名を記入しながら殴っていると、蝙蝠はぐったりとして時々痙攣するだけになってしまった。

『ひ…ヒドイ…』

 ふう、今日のところはこれくらいで勘弁してあげるわ。血まみれになった石を投げ捨てて、
ようやく一息ついたところで、コルベールが近付いてきた。心なしか引き攣った笑みを浮かべているがそこは無視。
この状況で先生が私に言う事ってなんだろうなー。うわー、なんだか物凄く嫌な予感。

「良くやりましたね、ミス・ヴァリエール!
 さあ、そのまま契約してしまいなさい!」

 マジですか、コルベール先生。これと契約するのって凄くイヤなんですけど。
…でも、契約しないと留年なんだろうなあ…究極の選択ってこういうのを言うんじゃないだろうか。
しばらく考えこんでしまったが、結局「強力な亜人には違いないし、留年するよりはマシか」と言う結論に落ち着いた。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 うう…これは儀式だし相手も人間じゃないから未確定…ッ! 成立していない…っ 不成立なんだっ…!
ファーストもクソもないっ…キスとしてはノーカウントッ…! ノーカウントなんだ…ッ!
ノーカウントっ…! ノーカウントっ…ノーカウントっ…!
 必死でそう自分に言い聞かせながら、唇を近づける。

『ギャー! やめてぇー! 二重契約なんてしたら青爪邪核呪詛(アキューズド)の呪いがぁぁぁぁ!』

 ああ、この蝙蝠うるさい! もう一発ぶん殴って黙らせた。
あと、アキューズドって何?とか思ったが、このルイズ容赦せんっ!
覚悟は出来てるか? 私は出来てるっ!

ズキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

 とかいう音がしたかどうかは知らないが(心情的にはこんな擬音がふさわしいくらいショッキングだった)、
唇が蝙蝠の口に触れた。うー、後で口を漱がなきゃ…

『ガマガエルになるのはイヤァァァァァァァァァァ!! って言うか痛ェェェってか熱ゥゥゥゥッ!!』

 そう叫びながら蝙蝠がのた打ち回る。左の翼に生えた指…というか、指先の爪に使い魔のルーンが浮かび上がり、
光を放っている。…なんで左翼だけ爪が青いのかしら。と思ったそばから爪の色がだんだん毒々しい紫に変わっていく。

『…あれ?』

 いったん大人しくなった蝙蝠がおもむろに起き上がり、左手の爪をしげしげと眺めている。
コルベール先生も一緒になって紫の爪の上に浮き出た使い魔のルーンを観察している。

「ふむふむ、これは珍しいルーンだ…スケッチしておこう」

 楽しそうですね先生。とか思ったら、

『あぁぁぁぁッ! 青爪邪核呪詛の術式に何か変な魔術文字が上書きされてるゥゥゥゥゥゥゥゥ!?』

 蝙蝠が叫びだしやがった。いちいちうるさい使い魔だ。

『仕方がありません…そこなちっこい小娘、この私、偉大なる真祖ダイ・アモン伯爵が
 使い魔となって差し上げますよ! せいぜい感謝しなさい!』

 なんか引っかかる言い方だが、まあ良しとしよう。使い魔にふさわしい態度は後々みっちり教育して行けばいい。

「はい、それじゃあ今日の授業はここまで。皆さん、それでは校舎に戻りましょう」

 コルベール先生の言葉に従い、使い魔召喚を終えた生徒たちが校舎に向けて飛び立つ。
いつも通り飛翔魔法で飛ぶものが多いが、中には召喚した使い魔に乗って飛ぶものもいる。
私はといえば、当然フライの魔法は使えないし、このジャイアントバットは図体ばかり大きいくせに
人を乗せて飛ぶほどの力はないらしい。…役立たずだ。そう言ったら

『うっせー小娘! フルパゥワァーの美しい私なら小娘一人抱えて飛ぶなんて造作もありませんよ!
 昼間に呼び出すテメーがワリぃーんです!』

 とか言われた。ううむ、ある意味正しいので反論が難しい。でも、好きで呼び出したわけじゃないし。
吸血鬼が出てくるってわかってたら昼間に呼んだりしない。
…いや、反抗的な吸血鬼を夜に呼び出したりしたら、そもそも契約できたかどうかが疑問だ。
やっぱり昼間に召喚したのは正解だったかもしれない。

『で、マスターは飛んで帰らねーんですかぁー』

「うるさいわね! 私は歩くのが好きなの!」

 そういって帰ろうとしたら、この使い魔、
『灰の山を持ち帰って地面に埋めてください。そうしねーと何時までたっても復活できねーんですよ』
とか言い出したので、仕方なくマントに包んで持ち帰った。うう、このマント後で洗濯しないと…

 宿舎の裏に灰を埋め、ようやく部屋に戻ってきたらもう日が暮れていた。
凄まじく疲れたが、それも仕方がない。今日はやたらと肉体労働が多かった気がするのだ。
メイジとしてどうかと思うが。

『ここがご主人様の部屋ですか。小娘の分際で中々いい部屋に住んでやがりますねー』

 大蝙蝠はそう言って部屋に入るなり、天井の梁にぶら下がった。
しまった、蝙蝠だけに寝床は天井か!
床に毛布で寝させて立場をわきまえさせる作戦はいきなり失敗だ!

『で、とりあえず使い魔といっても具体的に何をすれば良いんですか?』

 良い質問だ。とりあえず、絡め手の作戦が失敗した以上は正攻法、普通の質疑応答で使い魔の立場を理解させなくては。

「まず、使い魔はご主人様の目となり耳となるのよ」

『感覚の共有と言うわけですねェ。まあ基本的な要素ですが…で、見えてますか?』

 意識を集中してみるが、何も見えないし聞こえない。

「…ダメね。なんでかしら。
 まあいいわ。次は、苔や硫黄とか秘薬の材料となるものを集めてくる事!」

『そんな雑用、使用人にやらせればいいでしょう。何で伯爵であるこの私がそんなことをしなくちゃいけねーんですか!』

「む、ご主人様に歯向かう気なの!?」

 そう言うと、蝙蝠は慌てて左翼の爪を見た。心なしか、だんだんと爪の色が紫から赤紫っぽく…

『いえ、逆らうなんて滅相もありませんよぉぉぉぉ!』

 あ、また紫に戻った。…どうやら逆らうと赤く、従うと青くなるみたい。なんなんだろう。
ついでに私は公爵家の令嬢であり、伯爵よりも偉いのだと言っておいた。別に公爵家の当主と言うわけでもないし
そもそも公爵位は姉が継ぐだろうから、私自身が伯爵より偉いわけでもないのだが…こういうヤツには
ハッタリの一つくらいはかましておいた方が良いだろう。

「で3つ目。これが一番重要なんだけど、使い魔は主人の身を守るの」

『力が戻ればその程度は容易い事ですよ』

 まあ、そうだろう。吸血鬼といえば強大な魔力を持つ不死身の怪物。この点だけは期待しても大丈夫なはずだ。

『まー夜限定ですけどねー』

 …最大の問題を忘れてた。強力な代わりに時間帯による制限が著しく厳しい種族だ。
使い勝手が悪いのと契約してしまったなあ。
とりあえず、使い魔の仕事について説明したんで今度はこっちが質問する番だ。

「とりあえず、名前はダイ・アモンでいいのよね?」

『Yes!』

 まあ、いきなり名乗ってたし。

「種族は吸血鬼?」

『Exactly(その通りでございます)』

 これも判り切ってること。ここまでは軽いジャブのようなものだ。ここからが本番。

「で、その紫の爪は何よ?」

『ギクゥ!』

 ビクリと体を硬直させ、脂汗を流し始めた。…あからさまな反応でわかりやすくて良い。

『ななななな、何のことか判りませんねぇぇぇぇ!』

「ふーん、とぼけるんだ?
 私に逆らうって事よね。いいのかしら? また爪が赤くなるんじゃないの?」

 無論、これも推測によるハッタリに過ぎないが、勝率は高いはずだ。

『…実は』

 勝った。



 ダイ・アモンと名乗るこの吸血鬼が言う事には、この爪は青爪邪核呪詛(アキューズド)と言い、
忠誠を強制するための太古の呪詛魔法らしい。忠誠心を示せば爪は青く、逆らえば少しずつ赤くなり、
その爪が真紅に染まった時、この呪いをかけられたものは肉体を分解されヒキガエルにされてしまうそうだ。

…悪趣味な呪いだなあ。

 で、以前にダークシュナイダーとかいう邪悪な魔法使いに敗れた時、この呪いで手下にされてしまったらしいのだが、
私がコントラクト・サーヴァントをかけたときに魔法同士が干渉し合い、結果として青爪邪核呪詛の忠誠の対象を
上書きしてしまったらしい。

「と、言う事はアンタは私に逆らえないわけね?」

『そのとーりですが、いい気になられては困りますね小娘! 確かに爪が赤くなるほどに逆らいはしませんが
 私が真に忠誠を誓うのは強く美しい者のみ! 私の主人に相応しい力を示さない限り、爪が青くなることはありません!』

 生意気なヤツだ。いいだろう、その挑戦受けて立つ。必ずその爪を青くして見せるわ!
…参考までに、そのダークシュナイダーとやらがどのくらいのメイジなのか聞いてみた。

400年生きて、炎系を中心としてあらゆる属性の魔術(ただし、何故か水系だけは使えないらしい)から呪詛、
果ては失われた古代の秘術をも使いこなす大魔法使い。鋼のゴーレムの軍団と数万の闇の軍勢を率いて大陸を
征服しようとした破壊と殺戮の権化。美形だが凄い悪人面の性欲大魔神。エルフが束になってもかなわないって。

…マジですか?

『ん? …こっ…これはぁぁぁぁぁ!』

 突然何事だ。そう思ったらいきなり翼を広げて飛びだし、開けっ放しになっていた窓に突っ込んだ。
どうやら夜空を見上げているらしい。

『ありえねーぐらい月の魔力が満ち溢れてると思ったら、月が二つぅぅぅぅぅぅ!?』

 当たり前ではないか。何を驚いているんだろう。

『ここは一体何処なんですか!
 ダーク・シュナイダー様の事を知らない人がいるなんて何かおかしいと思ったら!』

「ここはトリステイン王国よ。ハルケギニア大陸の」

 アモンが言うには、出身地には月が一つしかなかったと言う。
…コイツが法螺を吹いている可能性もあるので爪にかけて聞いてみたが、やはりコイツの出身地は
月が一つで正しいようだ。違う大陸の出身なのかもしれないが、それにしても月が一つしかない大陸なんてあるんだろうか。

『…むう、天界や魔界と言うわけでもなさそうですし、どうやら星単位か時空世界単位で転移してしまったようですね…
 これだけの大転移魔術、そうそうに実行できるはずがないのですが…平行世界理論はアビゲイル様にでも聞かないと…』

 なんだか良くわからない事を言い出した。何を言っているのかと聞いたら、説明しても多分わからないと言われた。
むかついたのでいいから説明しろといったら説明してくれたがやっぱり良くわからなかった。
なんでもカガクとか言う失われた秘術を理解する必要があるらしいが、それについてはアモンも大して詳しくはないらしい。
前の主、ダークシュナイダーとやらはカガクと言う秘術にも通じており、その配下だった暗黒神官アビゲイルとやらは
その道の専門家でもあるらしいのだが今ここに居ないので話を聞くことも出来ないとか。

『まあ、その辺は置いておきましょう。目下もう一つの問題ですが…
 吸血鬼の力が月齢によって左右されるのはご存知ですか?』

「それは聞いたことがあるような気がするわ」

『現在、夜空には月が二つ出ています。しかも、その両方が満月!
 夜の眷属がフルパゥワァーになれるエネルギー源がワンダフリャな事に二倍ニバーイぃ!
 日光で失った魔力を大幅に回復させる事が可能なのですよ!』

「それで?」

『これで処女の生き血が1リットルほどあればすっかり元通りになれるんで血をよこせやぁぁ!』

「却下!」

 んなもの用意できるわけがないだろうが。私の血は…まあ、条件にはあってるがそんなに血抜きしたら大変な事になる。
かといってコイツに他の女生徒を襲わせるなど持っての他だ。
そう考えてようやく気付いた。…吸血鬼は血を吸わなければ生きていけないのだ。コイツの食事はどうすればいいんだろう。

 聞いてみた結果、やはり人間の生き血が必要らしい。そんなものどうやって確保すればいいんだろう、と思ったが
極上の処女の生き血なら数滴で1日しのげるらしい。極上と言うのはどういうものか良く判らないが…
私の血でもおそらく大丈夫だとの事。つまり私は極上の処女と言うことか。これって喜んでいいのだろうか。
『まーチンチクリンな小娘は私の好みじゃないんですけどねー』とか嫌そうに付け加えていたので銀の置物でぶん殴っておいた。
吸血鬼に銀が有効と言うのは事実のようだ。勉強になった。



『…とりあえず、数滴の血で良いんでよこしやがってください』

 その程度なら、という事で妥協する事にした。流石に食料なしと言うわけにも行かない。
指先をナイフで突いて血を垂らし、アモンに与えた。これで一晩待てばとりあえず人型に戻れる程度には回復するらしい。
人型に戻ったら、掃除や洗濯をやらせようと心に決め、今日はもう寝る事にした。
寝る前に「明日の朝、ちゃんと起こしてよね」と言ったら嫌がったので爪で脅したら、
『朝日が差し込まないように部屋の窓を閉め切っておく』事と、『専用の棺を用意する事』と言う条件で妥協した。
そうしなければ、朝が来ると同時にまた灰になってしまうので当然と言えば当然の条件か。棺の方も考えておこう。


 ルイズがベッドに入った後、ダイ・アモンは夜明けまでの時間を土の中で過ごした。
灰を埋めた場所はじめじめして日当たりが悪い場所である。これは吸血鬼が不浄な魔力を蓄える為に必要な条件だ。
多くの血を吸った土地や放置された墓場のような場所ならなお良いのだが、当然この学院内にそんな場所があるはずもない。
だが、土地がベストな条件ではなく、糧となる血も数滴程度しか啜っていないにもかかわらず、ダイ・アモンの魔力は
予想以上に回復している。最初は月が二つあるために魔力が増幅されているためと考えたが、それを計算に入れても
回復量が多すぎる。

『あの小娘の血…どうやら予想以上に夜の眷属に馴染むようですねぇぇぇぇ!
 これはラッキーかもしれませんよぉぉぉぉぉ!』

「やかましいわ!今何時だと思ってるのよ!」

 銀の置物が窓から降ってきた。
その夜響き渡った凄まじい悲鳴は翌日の学院内の話題となり、そこから派生した噂話が学院に新たなる怪談を
作りだす事になるのだがそれはまた別の話。

    第一話――END

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