アンジェ、アンジェリカが目を覚ました!
ルイズは息を切らしながら医務室へと駆けていく。
バタンと大きな音を立て部屋を見渡した。
ルイズは息を切らしながら医務室へと駆けていく。
バタンと大きな音を立て部屋を見渡した。
「アンジェ!」
「あ、ルイズさん」
「あ、ルイズさん」
ベッドから体を起こしたアンジェリカが何事も無かったかのように微笑んでいた。
「アンジェ、よかった…」
ルイズは目に涙を浮かべながらアンジェリカを抱きしめる。
「おはようございます。ルイズさん、どうかされたのですか?」
「どうかしたじゃないわよぅ。あんたずっと寝てて起きないから心配したんだからね」
「どうかしたじゃないわよぅ。あんたずっと寝てて起きないから心配したんだからね」
そうは言うもののアンジェリカはキョトンとした顔をしている。まるで何を言っているのか理解できないとでもいいたげに。
「ルイズさんここはどこなんですか?ルイズさんのお部屋ではないみたいですけど」
「え? ここは医務室よ」
「え? ここは医務室よ」
ルイズがそう答えるとアンジェリカは顔を歪めはじめた。
「あの、ルイズさん。私ルイズさんに何かご迷惑をおかけしましたか?」
「迷惑って…」
「迷惑って…」
迷惑……ルイズの脳裏にはあの一連の惨劇が蘇る。だがここで迷惑をかけたと言ってしまえば姉に続き、アンジェリカにまで見捨てらてしまうのではないか、そんな不安がルイズの胸を過ぎるのだ。
「大丈夫よ。迷惑なんか誰にもかけていないわ」
気がつけばそんな言葉が口から出ていた。
「だからね? ゆっくり休んでいいのよ」
本心は早く以前の生活に戻りたいのだが、それを抑えて優しく語り掛ける。
「もう大丈夫ですよ」
アンジェリカは笑みを浮かべて答える。
「どうなの?」
そう答えるアンジェリカに思わずモンモランシーを見るのだった。
「ええ!? わたし? えーと無理をさせなければ大丈夫じゃないかしら?」
「ハッキリしないわね」
「ハッキリしないわね」
ルイズは不満げに言葉を漏らす。
「しょうがないでしょ! 別に専門医って言うわけじゃないんだからね!」
声を荒げるモンモランシー
危うく口論になりかけた二人の間にノックの音が割ってはいる。
危うく口論になりかけた二人の間にノックの音が割ってはいる。
「頼まれた食事をもってきたぜ」
マルトーがスープを持って部屋に入ってきた。二人は思わず口を閉じる。
「久しぶりだな。もう大丈夫か?」
ぎこちない笑顔でアンジェリカに語りかけるマルトー。
だがアンジェリカは……
だがアンジェリカは……
「あの、初めまして。スープ、ありがとうございます」
「おいおい。そんな冗談はよしてくれ」
「おいおい。そんな冗談はよしてくれ」
アンジェリカは何も答えない。
「まさか…本気か?」
Zero ed una bambola ゼロと人形
ルイズは学院の外で他の使い魔たちと戯れるアンジェリカを眺めていた。
そう以前と同じように見えるその光景。ただ違うのは他の使い魔たちは久方ぶりに合う友人と接するように馴れ馴れしく、アンジェリカは初めて会うものに接するようにしていることだ。
そう以前と同じように見えるその光景。ただ違うのは他の使い魔たちは久方ぶりに合う友人と接するように馴れ馴れしく、アンジェリカは初めて会うものに接するようにしていることだ。
きゅるきゅる~
親しげに近づくキュルケの使い魔のフレイム、おそるおそる体に触れる。
親しげに近づくキュルケの使い魔のフレイム、おそるおそる体に触れる。
きゅいきゅい
空から舞い降りたタバサの使い魔、シルフィードに大きく驚くアンジェリカ。初めて見るわけではないのに……。
空から舞い降りたタバサの使い魔、シルフィードに大きく驚くアンジェリカ。初めて見るわけではないのに……。
「アンジェ! 部屋に戻るわよ!」
もう見ていられない。アンジェリカを大声で呼び戻す。バイバイ、またねと使い魔たちに手を振って別れを告げるアンジェリカ、年相応に見れる姿にあの事件の面影はない。
アンジェリカの手を引いて歩くルイズ、自然と足早になるのであった。
アンジェリカの手を引いて歩くルイズ、自然と足早になるのであった。
「あれ? シエスタじゃないかしら」
「シエスタちゃん?」
「シエスタちゃん?」
よかった……シエスタのことは覚えているようだ。
「シエスタ、久しぶりね。見て、アンジェがようやく起きたのよ」
そう呼びかけるとシエスタは振り返った。
「あ…い…ぁ」
その顔は見る見るうちに青くなっていく。
「シエスタちゃん、お久しぶりです」
対照的に笑顔でシエスタに近づくアンジェリカ。
恐怖に顔を強張らせたシエスタ、一歩また一歩後ずさりをする。
恐怖に顔を強張らせたシエスタ、一歩また一歩後ずさりをする。
「どうしたのよ」
ルイズはシエスタに問いかけるが何も答えない。
「シエスタちゃん?」
どうかしたのかとアンジェリカがシエスタに手を伸ばそうとする。
「ひぃっ!」
その手を振り払うシエスタ。
振り払われた手を呆然と見つめるアンジェリカ。
振り払われた手を呆然と見つめるアンジェリカ。
「ちょっと何するの…」
その姿を見たルイズはシエスタを問い詰めようとするが最後まで言葉を告げることができなかった。
シエスタはその目には溢れんばかりの涙を溜めていたのだ。
シエスタはその目には溢れんばかりの涙を溜めていたのだ。
「………」
「………」
「………」
少しの間、沈黙がその場を支配する。
何も言わないシエスタを睨みつけるルイズ。その視線、そしてアンジェリカの視線からも逃れるように顔を逸らすシエスタ。
一方のアンジェリカといえば、視線を忙しなく動かし、なにやら落ち着かない様子だ。
ルイズは先ほどから何度も口を開こうとするが言葉がなかなか出てこない。
それほど時間が過ぎてもいないはずなのにやけに長く感じられる。
意を決し言葉を紡ごうと口を開きかけたルイズだったが、それよりも先にシエスタは唐突にルイズに向かって頭を下げ、踵を返しその場から走り去った。
何も言わないシエスタを睨みつけるルイズ。その視線、そしてアンジェリカの視線からも逃れるように顔を逸らすシエスタ。
一方のアンジェリカといえば、視線を忙しなく動かし、なにやら落ち着かない様子だ。
ルイズは先ほどから何度も口を開こうとするが言葉がなかなか出てこない。
それほど時間が過ぎてもいないはずなのにやけに長く感じられる。
意を決し言葉を紡ごうと口を開きかけたルイズだったが、それよりも先にシエスタは唐突にルイズに向かって頭を下げ、踵を返しその場から走り去った。
「ちょ、ちょっと」
突然のことに驚きながらも呼び止めようとするも、シエスタは振り返ることもなくその場から逃げていく。
「何よ! 何なのよ!」
激しい憤りをおぼえるもそれも長くは続かず、ルイズはただ小さく溜息をつくのだった。
「アンジェ」
ルイズが呼びかけるとアンジェリカは少し悲しそうな顔をルイズに向ける。
「部屋に…戻るわよ」
元気を出して、そんなありきたりな慰めの言葉しか掛けてあげることしか出来ない。
「はい…」
アンジェリカはコクンと小さく頷く。
ルイズはそっとアンジェリカの手を優しく握るのだった。
Episodio 19
La vita quotidiana per scomparire
消え往く日常
消え往く日常