あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

とある魔術の使い魔と主-12


そう、それはもう魔術と呼べる代物ではなかった。
科学で作り上げた、直径一メートルはあるであろうレーザー兵器に近い。今まで見たことがない純白の、輝かしい光が襲い掛かった瞬間、当麻は迷わず、いつもと変わらずに右手を前に突き出す。
突き出すしか彼には方法がないのだ。
じゅう、と熱した鉄板に肉を押し付けるような激突音。
しかし、痛みも熱も感じられない。幻想殺しが全てを防いでいるのだ。
それでも消し切れない。光の柱は消えるような面影が見えない。
(くっ……確か……これはっ……)
じりじりと、足が後ろに下がっていく。防ごうと、全身の力を足にへと注ぐ。
もう数秒過ぎている。消しても消しても、消し去ることはない。
そう、当麻は覚えている。この魔術は幻想殺しで防げないのだ。
幻想殺しの処理能力が追い付かない程の質量を放った魔術。当麻の記憶通り、じりじりと痛みを感じて来た右手を、左手で掴む。
わかっている。この魔術は打ち消す事が出来ない。せいぜい時間稼ぎだ。
ならば……と当麻は叫んだ。
「頼む! 俺の力じゃこいつを防ぎ切れない! この間にもあいつを攻撃してくれ!」
当麻の声に、三人の意識はフーケへと降り注がれる。
再びタバサは風の魔法、キュルケは炎の魔法、遅れてルイズの失敗魔法が放たれた。
が、どれも直撃する前に本の迎撃術式が発動して防がれてしまう。
ルイズにいたってはフーケのちょっと隣の所で暴発した。
「ちょっとルイズ! ちゃんと狙いなさいよ!」
たまらずキュルケが怒鳴る。ルイズは唇を噛み締めた。
「狙ってるわよ! でも当たらないのよ!」
「当たらないのよ! じゃないわ! あなたの使い魔を見なさい!」
キュルケは当麻を指差した。いや、指さなくても既に視線は向いているのだが……
ただ、当麻の方をちゃんとよく見ていなかったのだ。
そして、その姿をはっきし見て、思わず「あ」とルイズの声が凍り付く。

『――いてててて……って何処ですかここはー!?』
出会いは最悪だった。自分が期待していたのよりも遥か下のランク外で。
『――俺も自分の主が馬鹿にされたのを黙って見ていられなかっただけさ』
だけど違う。過ごして来てその考えは変わった。
『――お前がまだ何かに対して絶対無理だと思ってるならな……まずはその幻想をぶち壊してやる!』
その少年は『強い』と純粋に思えた。
『――そういう事です。異能の力なら例えどんな事でも打ち消しちゃう右手なのです』
今でもその背中は大きい。自分達を何がなんでも守ろうとする意志がある。
が、実際はボロボロであった。自分達よりも、何倍も、ボロボロになっていた。
「わかってるの!? 私達は当てなきゃいけないのよ!」
キュルケの声は震えていた。悲しみと、恐怖が混ざり合わさった感情を表面に出しながら再び魔法を唱える。
だけど、ルイズには何が出来るのだろうか? 発動させる事も、当てる事もままならない。そんな自分が本当に必要なのだろうか?
使い魔がこんなにも頼れる存在なのに……と思っていると、
「ルイズ!」
その使い魔が主の名前を呼んだ。

(くそっ! どうすりゃいい!?)
俄然向こうの魔術は衰えず、むしろ勢いがましてゆく。
手首がグキリと嫌な音を発した。それでも、耐え続ける。耐え続けながら考える。
今が無防備であるフーケ本体にあてようにも、迎撃術式が自動で発動してしまう。
最強の盾と最強の矛を装備しているフーケ。何か、何か手は!? と必死に手掛かりを探していた当麻にある閃きが思い付いた。
最初に放った魔法。確かその時、ルイズの魔法だけ迎撃術式が発動しなかった。
今もタバサとキュルケが魔法を放っているが、ルイズはそれ一回きりだ。
実際発動しなかった理由は考えられる。事実当たらなかったとか、そもそも魔法ではないとか。
しかし、それでも百パーセント防がれてる魔法と、可能性がある未知なる魔法、比べるとしたらどちらに賭けるべきなのか言うまでもない。
ビキリと、一本の爪に亀裂が入り、血がどくどくと流れるが気にしない。

『――あんた誰よ』
出会いは最悪だった。ちなみにキスは最高であったが。
『――み、見直したなら早く片付けて頂戴! ちょっとペース落ちてるわよ!』
ゼロと呼ばれ続けて努力してきた主。それは誇るべき事。
『――何いってるの! 平民は絶対メイジに勝てないじゃない!』
自分の事を心配してくれたその少女を『強い』と思えた。
全てはその主に任せる。今回だけは、当麻はゼロである事に感謝を覚えた。
「ルイズ!」

一人の使い魔と、一人の主が交差する時、物語は始まる――!

「な、何よ!」
「お前の魔術ならあいつにダメージを与えられるかもしれない! やれるか!?」
当麻は振り向かない。今だけは、今だけは使い魔と主という関係を断ち切る。
当麻は求めている。『成功』の魔法ではなく、『失敗』の魔法を。
そしてそれはルイズにしか放てない。
「えぇ……。でも当たらないかもしれないし……」
「おぃおぃ勘弁してくれよ」
バキッ、と二本目の爪に亀裂が入ろうとも、当麻は気にせずにいつもの口調を繰り返す。
「お前は今までの努力を信じないのかよ!」
当麻は再び叫ぶ。何度でも、何度でも叫ぶ。
「大丈夫だ! お前なら出来る!」
当麻は諦めない。何が起ころうとも絶対に。
「俺を召喚したお前に! 当てられないわけないだろ!」
ルイズは気付く。この姿に憧れていたのだと。何があっても、絶対に諦めないその気持ちが。
二人の震えがいつの間にか消えている。もう、恐怖はない。
「とっくにプロローグは終わってんだ! 後は踏み込むだけだぜ! ルイズ様!」
三本目の爪に亀裂が入り、ピキッ、と骨からよろしくない音が聞こえた。
その瞬間、ルイズは再び魔法を詠唱した。一回きりのワンチャンス、祈るように杖を振った。

ボン! と小さな爆発がフーケの足元で起こった。
「なっ!?」
完全に防御の概念を捨てたフーケはバランスを崩して、放たれる方向はずらされる。その結果、光の柱は消え去った。
その隙を当麻は見逃さない。
ドン! と地面から一気に離れて跳躍する。
まだ後十何メートルは残っている。それでも、あの本を破壊するのは当麻にしか出来ない。
幻想殺しを持つ当麻にしか。
「くっ」
体勢を立て直し、再び本に魔力を込めた。
瞬ッ、と氷の風の刃が襲い掛かる。
「うぉぉぉぉおおおおッ!!」
痛みで感覚が麻痺している右手を盾にする。顔や体といった重要部分だけを打ち消したが、残りは切り刻まれる。
肩、ふともも、腕から血がブシャッ、と噴き出る。それでも、それでも止まる事を知らない。
「なっ……」
フーケの額にはいつの間にか汗が出ていた。
あれも防がれた。ならばどの魔法を放てば? 先程のでかいのはもう時間がない。
では何を優先すべき? 量? スピード?
フーケはこの局面で、放つ魔法に悩んだ。全てを彼は打ち消してしまうのでは? という錯覚に陥ってしまったが故に。
その間にも二人の距離は縮まる。
(あいつがくれたチャンスを)
残り距離僅か、当麻は思いっきり文字通り、飛んだ。
(無駄に出来るかぁぁぁぁあああああッ!!)
自分の右手に全ての力を注ぎ込み、拳を握り締める。この一撃に全てを、己の生命すらも預ける。
この先にあるハッピーエンドを迎える為に、当麻は拳を振るう。
(ダメ……まにあわな――)
結局答えが出ずに何も出来ないフーケ。

その瞬間、ベキッ! と何かが破れるような音がして、ゴガン!! という壮絶な激突音が響いた。
フーケの体が数メートル吹っ飛び、さらに数メートル転がる。
シーン、とした静寂がしばらく続く。起き上がる様子はない。また、全ての力を使い切った当麻もまた倒れ込む。

この戦い、仲間と一つの武器を信じ続けた者が、勝利した。



新着情報

取得中です。