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白き使い魔への子守唄 第8話 集う力

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「出たな土くれのフーケ!」
ハクオロが威勢よく叫ぶかたわらで、タバサが竜巻を、キュルケが火の玉を魔法で出す。
だが竜巻がぶつかっても、炎に焼かれても、ゴーレムはものともしない。
「退却」
タバサが呟き、三人は小屋から飛び出した。
どうせもう天照らすものは奪還している、逃げ切れば任務は達成だ。
森の中へ逃げ込もうとしながら、ハクオロはルイズの姿を探す。
ゴーレムは自分達を追いかけようとしていて、ルイズは、そのゴーレムの後ろ。
杖を向けて詠唱をしていると思ったら、ゴーレムの頭部が爆発した。
キュルケとタバサの魔法でも傷ひとつつかなかったゴーレムが、
失敗魔法の爆発で頭部を吹き飛ばされる。

   第8話 集う力

「やった!」
確かな手応えにルイズは喜んだが、ゴーレムの頭部はすぐさま新たな土がふさいでしまった。
どうやら地面についている足から土を補給したらしい。
「ルイズ! いくら攻撃しても復元されてはいずれ追い詰められる! 逃げるんだ!」
「嫌よ! あいつを捕まえて、私が『ゼロ』じゃないって事を証明するの!」
ゴーレムは天照らすものを持つハクオロ達と、攻撃をしてくるルイズに挟まれ、
どちらの相手をしようか迷うような素振りを見せた。
立ち止まってデルフリンガーを抜いたハクオロは、ゴーレムに向かって剣を構える。
「よう相棒、いきなりピンチみてーだね」
「ルイズ! 君が『ゼロ』でない事は私が知っている、無茶をするんじゃない!」
言葉の通りピンチ真っ盛りだったためデルフリンガーの言葉はスルーされた。
そしてハクオロはルイズに説得の言葉を向けながらも、遠目ながらに彼女の目を見て、
強い意志の色を感じ取り口で下がらせるのは無理だろうと悟る。
それを肯定するように、ルイズは叫び返した。
「私にだって貴族としてのプライドがあるわ。だから絶対に退けない!
 魔法を使える者ではなく、決して敵から退かない勇敢な者をこそ貴族と呼ぶのよ!」
「聞く耳持たずか……!」
ゴーレムは矛先をルイズに決め、その巨体を向け拳を振り上げた。
一歩も退こうとしないルイズは再び魔法を詠唱、ゴーレムの胸を爆発させる。
人間一人分くらいのくぼみができたが、ぶ厚い胸板の前では小さすぎる穴だった。
構わずゴーレムは拳を振り下ろす。
間に合わ――。

「ウインド・ブレイク」

ハクオロの横を突風が駆け抜け、ゴーレムの拳よりも早くルイズに直撃した。
「ひゃあっ!?」
吹っ飛ばされたルイズがいた場所を、地響きを起こすほどの力でゴーレムが殴る。
土砂が飛び散り、数メイルほど飛ばされ地面に転がったルイズの髪にかかった。
ハクオロは一瞬だけ背後へ視線を向け、タバサが杖を突き出している姿を確認。
心の中で礼を言いながら、ハクオロはゴーレムの股の下を潜り抜けルイズを抱き起こした。
「大丈夫か!?」
「お、お星様がぐるぐる回ってるぅ~」


どうやら頭を打ったらしく、すぐには動けない様子だ。
そこに再びゴーレムの拳が迫る、今度は横から払うようにだ。
ルイズを突き飛ばし、拳の軌道からそらしたハクオロは、
自身も拳に当たらないよう後ろに跳ねつつ、
眼前の地面をえぐった巨腕にデルフリンガーを力いっぱい振り下ろす。
「ぬぅん!」
刀身の長さの問題があって切断には至らなかったが、
見事ゴーレムの腕を半ばまで切り裂いた。
ゴーレムが腕を上げるや、切れ込みのせいで肘から先を支え切れず、
切り込みの部分からブツンとちぎれた腕が地面に落下する。
その隙にハクオロはルイズをもう一度抱き起こした。
「早く逃げるぞ」
「うっ、うう……イヤよ、私は……」
駄目だ。ルイズが自発的に逃げようとしてくれなければ、どうにもならない。
ルイズを抱きかかえて逃げようとしても、ゴーレムに追いつかれて潰される。
今すぐ行動を起こさねばゴーレムの次なる一撃を受けてしまう。
どうすれば。
「乗って」
舞い降りる空色のドラゴン。
「これは!?」
「タバサの使い魔、風竜のシルフィードよ!」
風竜の背中に乗っていたキュルケが、風竜の着地と同時に両手を伸ばす。
その両手に、ハクオロはルイズを押し付けた。
緊急事態なので、キュルケは急いでルイズを引き上げる。
続いてハクオロも乗り込もうとしたが、突然シルフィードが飛び立った。
同時にハクオロは振り向き様に剣を構え、迫っていたゴーレムの拳を刀身で受ける。
「グアッ!」
数メイルほど地面を転がるハクオロ。
構わずタバサはシルフィードを上昇させる。下手に助けようとしたら、こっちまで危ない。
「タバサ! ダーリンを助けないと!」
「……隙を作らないと無理」
キュルケは駄目で元々と思いファイヤーボールを使おうとしたが、
精神力の無駄遣いは避けた方がいいとタバサに咎められ、自分達の無力に苛立った。
と、そこでルイズの頭の中で回っていたお星様が消えた。
「うぅっ?」
まだ少し頭がクラクラして目がチカチカするが、とりあえずまともな思考が可能になる。
「うー……あれ? ここどこ?」
「シルフィードの背中よ」
「シル……えっと、確かタバサの使い魔。……ハクオロは?」
「下」
タバサが短く答え、ルイズは言われた方向を見た。
ゴーレムの振り回す拳をギリギリでかわし、避け切れない時は剣でガードし吹っ飛ばされる。
「は、ハクオロが! ハクオロを助けないと!」
「だから、今手を考えてるんじゃない! あんたはちょっと黙ってなさい!」
「でも……あっ!」
ルイズはタバサが持っている黒い箱を見ると、いきなりそれを掴み取った。
その行動にタバサが驚くと同時に、ルイズはシルフィードから飛び降りる。
「もうっ! アレを使うつもりなんでしょうけど……」
キュルケはレビテーションでルイズの落下を遅めながら、
天照らすものにディテクトマジックをかけた時、何の反応も示さなかった事を思い出した。
形や使い方こそ知らないものの、噂では天照らすものは強力なマジックアイテムで、
凄まじい破壊力を持つ魔法を放てるという物らしい。
しかしそれは眉唾だったようだ。
ディテクトマジックに反応しない、すなわちマジックアイテムじゃない。
天照らすものは、何の能力も持たない、ただの装飾用の、


「腕輪!?」
黒い箱を開けたルイズは、中から出てきた腕輪を見て、一瞬困惑した。
変わった装飾の腕輪には、蒼く輝く丸い宝石がついており、
その中で蒼い光が渦が巻いているという非常に美しい球だった。
だが、きっとこの宝石にすごい魔力が秘められているのだろう。
ここに来る途中、天照らすものの形や使い方をみんなで想像してみた時、
キュルケが噂話で強力な破壊の光を放てるっぽいような感じだとか言っていた。
真偽はともかく、今はそれに賭けるしかない。
ルイズは右手で天照らすものを掴むと、箱を放り捨て、左腕に装着した。
少々ゆとりを持って着けれる程度の使いやすいサイズ。
ルイズは、ゴーレムの頭と同じくらいの高さまで降りている事に気づくと、
左腕を真っ直ぐゴーレムに向けて叫んだ。

「天照らすものよ!」

デルフリンガーを杖代わりにして身体を支えているハクオロが、
その声に気づいて見上げ、ルイズが何をしようとしているのかに気づく。
ゴーレムもまた、ルイズに気がつき顔を上げた。

「あのゴーレムを……」

ルイズはコモンマジックしか使えない。系統魔法はなぜか爆発する。
でも、マジックアイテムなら話は別だ。
使い方さえ解っていれば、平民でさえ扱えるのだから。

「やっつけなさい!!」

叫んでから気づいた。
ノリでゴーレムに天照らすものを着けた腕を向けてるけど、使い方、知らない。
効力を発揮させるためにどうすればいいのか?
何かキーワードを言えばいいのか、腕を決まった形に動かせばいいのか、
あるいは魔力を流し込むだとか、何らかの魔法と併用して使うのではとか、
とにかく使い方が全然解らないのにこんな恰好つけて登場して使えませんでしたでは、
相当恥ずかしい上、ハクオロどころか自分も殺されかねない危険な状況。

ルイズは、左腕に、力を込めた。
ルイズが自覚して起こした行動はそれくらいだった。
ただ蒼い宝石の腕輪に、天照らすものに、どうか力を発揮してと願って……。

空が、天が、光る。


「え」
ルイズは眩き閃光を呆然と見つめた。
「これは……」
ハクオロは天空から降り注ぐ光の柱がゴーレムを撃つのを見た。
「天照らすもの……」
キュルケは呆然と、その秘宝の名を呟く。
「……雷光?」
タバサは光の正体に気づき驚愕する。

稲妻、雷を操る魔法は高等技術だ。
風系統のメイジ、最低でもトライアングル、理想を言えばスクウェアの実力者が、
風と水の系統を絶妙なバランスで融合させ制御しなければ、電撃は発生しない。
仮にできたとしても、精々人間一人を攻撃する程度が限度のはず。
とはいえその威力は絶大。
特別な防具でもつけていない限り、メイジの放った電撃は確実に命を奪うほど強力無比。
だというのに、今目の前に降り注いでいる稲妻の柱は十本近くある。

青白く放電する雷撃の柱はバツの時を描くように降り注ぎ、
ゴーレムの巨体に五本以上の稲妻が突き刺さって消えていった。
威力は相当のものらしく、表面がボロボロと崩れ落ちゴーレムは一回り小さくなる。
だがまだ戦えるとばかりに両手を振り上げてルイズを捕まえようとした。
その途端、ルイズにかけられていたレビテーションが切れ急速に落下する。
「ひゃあっ!?」
天照らすものの威力にキュルケが驚いたため切れたのだが、
それが幸いしてゴーレムの手から逃れたルイズは、下にいたハクオロにキャッチされる。
「ルイズ、大丈夫か!? ……まったく、無茶をする」
「つ、使い魔を見捨てるような奴を、貴族とは呼ばないもの」
「そうか」
ハクオロはルイズを地面に降ろしながら、青白い雷光を思い返していた。
何かが、記憶を、駆け巡る。
そして、突如思考がスパークする。

「タバサ! 雪風という二つ名、雪や氷を使えるならそれでゴーレムを攻撃しろ!」
言われて、タバサは即座に詠唱を開始した。
なるほど、一瞬でこんな作戦を思いつくなんて、彼はとても賢い。
しかしハクオロの作戦を瞬時に把握し、一番適切な魔法を唱えるタバサの洞察力も見事。
「ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ウィンデ」
詠唱が完成、杖をゴーレムに向ける。
「ウィンディ・アイシクル」
何十にも及ぶ氷の矢が空中に生まれ、ゴーレムの全身に飛来する。
矢は次々とゴーレムの身体に突き刺さる。頭部、肩、腕、胸などに。
しかし氷の矢をいくら撃ち込まれても、ゴーレムはものともしない耐久力を持つ。

「キュルケ! ゴーレムに刺さった氷を炎で溶かせ!」
続いてハクオロの指示が飛ぶ。
もうこうなったら彼に任せようと、キュルケは短い詠唱をして、
杖の先から蛇のように細長い炎を放ちゴーレムに刺さった氷を狙って這い回させた。
氷を溶かすならこの程度の炎で十分だが、もちろんダメージは無い。


「ルイズ! 今一度『クスカミの腕輪』で稲妻を放て!」
天照らすものの使い方を本能的に理解している自分に驚きながら、
ルイズは左腕に、腕輪に、天照らすものに、魔法とは違う力を込める。
「降り注げ、天照らす雷光ッ!!」
スクウェアメイジにも不可能な雷撃の猛襲。
天空から大地へと突き刺さる光の柱は、ゴーレムに直撃し表面を走る。
しかし、ゴーレムに突き刺さった氷が、溶かされ水となり、染み込んで、
伝導体として働きゴーレムの内部にまで電流を走らせ蹂躙する。
ゴーレムの全身がヒビ割れていき、土砂崩れのように崩壊していった。

「やった……」
勝利のための最後の引き金を引いたルイズは、内から込み上げる歓喜に震える。
無論これが自分一人の力によるものではないと理解している。
ハクオロが命じ、タバサが氷を突き刺し、キュルケが溶かし、ルイズが稲妻を落とす。

四人の力が集ったからこその勝利。
それがどうしようもなく嬉しかった。

その喜びを、真っ先に彼に伝えようとして。
「ハクオ……」
「いかん! 逃げろ!」
突き飛ばされるルイズ。
離れていくハクオロ。
その上から降り注ぐ大量の土。
「うわ、あっ……」
ゴーレムの残骸の下敷きなり、土の中へと彼の姿が消えていく。
「は、ハクオロ! ハクオロー!」
完全にゴーレムが崩れ去り静かになると、ルイズは慌ててハクオロを掘り起こそうと、
大量の土砂を素手で必死に掻き分けた。
そこにシルフィードに乗ったキュルケとタバサも降りてくる。
「ダーリンが生き埋めだなんて! タバサ、風の魔法で土を吹き飛ばして!」
「解った」
「お待ちください」
タバサが詠唱を始めようとすると、森の中から制止する声がした。
振り向けば、ミス・ロングビルが杖を持って駆け寄ってきている。
「ミス・ロングビル! 今までどこに……来るのが遅すぎるわ!」
「ごめんなさいミス・ツェルプストー。それより、風の魔法で土砂を飛ばすなんて危険です。
 ここは土のメイジである私に任せてください」
そう言ってロングビルはキュルケとタバサを下がらせる。
そして、まだ土を素手で掘り返そうとしているルイズの左腕を掴んだ。
「さあ、ミス・ヴァリエールも」
「ミス・ロングビル! お願いします、急いで!」
「ええ」
微笑を浮かべながらうなずいたロングビルは、ルイズの左手首から、腕輪を抜いた。
その行為に、ルイズは「え?」と疑問の声を漏らす。
刹那、ロングビルは自身の左腕に天照らすものを着けると、後ろに跳んで距離を取った。
「杖を捨てて、その場から動かないで。逆らったらこの腕輪を使うわよ」
「み、ミス・ロングビル!? いったい何の……」
「さっきのゴーレムを操ってたのは、私よ」


そう言いながら、ロングビルは眼鏡を外し、その場に捨てた。
タバサが杖をロングビルに向けようとしたが、すぐさまロングビルは腕輪をタバサに向ける。
「動くな! そう言ったはずよ。雷に撃たれたくなかったら、杖を捨てなさい」
きゅっと唇をきつく閉じたタバサは、言われた通り杖をその場に捨てた。
それを見たキュルケも渋々杖を捨て、ルイズも杖を手放す。
するとフーケは、捨てられた杖をレビテーションで浮かばせると、
自分の足元まで移動させ、腕輪を着けた左腕を下ろして、杖を持つ右手を三人に向ける。
その動作の意図が読めず、ルイズ達は困惑した。
「さて、ミス・ヴァリエール。あなたに質問があるわ」
「……何よ」
「この腕輪、天照らすもの……どうやって使うのかしら?」
「……え?」
「実を言うとね、この『天照らすもの』……盗んだはいいけど使い方が解らなかったの。
 魔力を流しても効果は無いし、ディテクトマジックで調べても反応しないし。
 そこで学院から追っ手をおびき寄せて罠にかけ、
 使い方を教えてもらおうと考えていたのよ。まさか生徒が来るとは計算外だったけど、
 幸運にもあなたは使い方を知っていた……さあ、使い方を教えなさい。
 さもないと、あなたのお友達を殺すわ。その程度の魔法を使う力は残してあるの」
酷薄な笑みを浮かべ嬉々として語るロングビル、いや、フーケを前に、
ルイズは仲間を殺されるかもしれないという恐怖で身体がすくんでしまった。
天照らすものの使い方を教えれば、助かるかもしれない。でも。
「わ、解らないわ! 夢中だったから、どうやったかなんて、覚えてない」
「夢中……ね。まあ、信じて上げるわ」
「じゃ、じゃあ……」
「使い方のヒントは解ったし、覚えていないものを聞き出すのも難儀。
 ここで三人とも死んでもらうわ。さようなら」
フーケは杖を振り、唇を小さく動かし何事かを詠唱し始めた。
抵抗しようにも、杖はフーケの足元。
駄目だ、殺される。

自分達に向けられているフーケの杖を見ているのが怖くて、
ルイズは涙目になってうつむいて、それを、見た。

ルイズの足に絡むような、黒い、霧。

背後で轟音が響く。
何事かと振り返れば、土砂が噴水のように吹き飛び、その中からハクオロが現れた。
「ハク――」
「うおおおおおおおっ!!」
獣のような咆哮を上げたハクオロは、一直線にフーケへと飛び掛った。
咄嗟にフーケは杖をハクオロに向けるが、詠唱が間に合わない。
「でやあああっ!!」
デルフリンガーの峰がフーケの右腕に叩き込まれる。
「ぐぅっ!」
骨の折れる痛みにうめきながら、フーケは杖を落として後ずさった。
そしてハクオロはデルフリンガーを逆手に持ち帰ると、
柄でフーケの鳩尾を強打し昏倒させる。
「……ふぅ。何とか、間に合ったな」
気がつけば、ハクオロは自力で土砂を吹き飛ばし、
ルイズの足元のあたりにあったはずの黒い霧も綺麗さっぱり消えていた。


こうして土くれのフーケを捕らえた一行は、フーケから杖を奪って拘束すると、
ルイズが空中で捨てた黒い箱を探して中に天照らすものをしまい、
馬車に戻って馬を学院へ向けて走らせた。
タバサの使い魔、風竜のシルフィードに乗って帰るという案もあったが、
タバサ以外のメンバーに見つからないようひっそりと後をついてきたため、
結構疲れてしまっているらしく一足先に学院へ帰してやった。

本来平民であり使い魔のハクオロが御者をすべきなのだが、
ゴーレムと格闘したり土に埋もれたりしたせいで負傷と消耗をしており、
「だったら私に任せて!」とキュルケが手綱を握っている。
タバサはのんびりと本を読みつつ、時折フーケの様子をうかがっている。
疲れた様子で座り込んでいるルイズだったが、ハクオロに声をかけられ顔を上げる。
「ん、何?」
「ルイズ、怪我はしていないか?」
「転んだ時にちょっと擦りむいたくらいだから、大丈夫よ」
「そうか。なら遠慮は要らんな」
そう言うや、ハクオロはルイズの頬を平手でパシンと打った。
その音に、キュルケとタバサが振り向く。
ルイズは、なぜ叩かれたのか理解できないとばかりにハクオロを見つめ返していた。
それから、叩かれた怒りが一機に沸き上がる。
「ななな、何するのよ!」
「口で言っても解らんのなら、こうせざるえん!」
ルイズの甲高い怒りの声に対し、ハクオロの低く響く怒りの声は、
問答無用で黙らせるだけの迫力があった。
ハクオロは小さく息を吐くと、今度は厳しい口調で言葉を続ける。
「なぜ逃げなかった。フーケのゴーレムが現れた時、君はなぜ逃げなかった。
 我々の任務にフーケの捕縛もあったが、天照らすものの奪還が最優先のはず。
 それを君は、一人で無謀な戦いを挑み、仲間を危機にさらした」
「や、やっつけたんだからいいじゃない!」
「使い方も解らん腕輪を、偶然使えるという幸運に見舞われたおかげでな。
 だがもし使えなかったとしたら、どうなっていたか解っているのか?
 君一人の無謀な行いに他の者を巻き込んで、それで貴族と言えるのか」
「で、でも、敵に背を向けるだなんて……貴族の……」
「自分の命を軽んじる者を、貴族だなどとは思わない。
 勇敢と無謀は似て非なるものだ。
 自分の勝手な都合で危険を冒すなど、ただの無謀でしかない。
 ルイズ、もう一人で死地に残るような真似をしないと約束してくれ」
ハクオロの言ってる事は、ルイズにも正しいと思えた。
でも、それでも、謝るつもりにはなれなかった。
せっかくみんなで力を合わせてフーケをやっつけ、宝を取り返したのに、
どうしてこんな風に叱られねばならないのか。
ルイズが黙りこくるのを見ると、ハクオロは「叩いて悪かった」と謝り、
それっきり彼もだんまりを決め込んでしまった。

無言で考える。あれはいったい何だったのかと。
土砂に埋もれた真っ暗闇の中、何が起きているのかなんて把握できなかった。
ただ、何か強力な、異質な力の波動を感じた。
次の瞬間、ハクオロは自力で大量の土砂を跳ね飛ばした。
人間が魔法を使わずにできる事ではない。
それに『天照らすもの』を『クスカミの腕輪』と呼びもした。
己が相棒と呼ぶこの仮面の男、ハクオロとはいったい何者なのか?
デルフリンガーはずっと考えていた。

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