あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

つかわれるもの-4


第04話 懐かしむもの




翌日の早朝。
目を覚ましたカルラはひとつ伸びをすると、目をこすって辺りを見回した。
まだベッドの上で惰眠を貪っているルイズの姿を見て、はぁっと溜め息をつく。
頭をぽりぽりと掻きつつ、二度目の溜め息の変わりに呟きをポツリと一つ。

「夢じゃなかったみたいですわねー」

かといって今更愚痴をこぼしても、状況は好転しない。こんな所に来てしまった理由は元を辿れば自分の好奇心からだ。
トウカまで巻き込んでしまいましたしねー、などと考えた時、ふと気付く。部屋の中にトウカの姿が無い事に。

(どこかに出かけたのかしら?)

ハクオロの御側付であったトウカは、その習慣からか朝は早い。
カルラは大方外に顔を洗いに行っているのだろうと目星をつけ、取り敢えずルイズを起こす事にしたのであった。

「ルイズー、起きなさーい」

カルラはゆっさゆっさとルイズの身体を揺らす。
まぁゆっさゆっさと言ってもルイズの胸は揺れるほど無いのであるが。げふんげふん。
兎にも角にも、なおも身体を揺らし続けていく。そして程なくして、パッチリとルイズの目が見開いた。

「んあー……誰?」
「カルラですわ。まったく、自分で呼び出しておきながらそれはあんまりですわよ」
「そっか、昨日召喚したんだったわね」

ほんの少ーしだけ、嬉しそうにルイズが呟く。
そしてのそのそとベッドから這い出し、大きな欠伸をひとつすると、寝ぼけ眼でカルラに命じる。

「服と下着とってー」
「はいはい」

カルラはクローゼットの中から下着をひとつと、椅子に掛けられていた制服を一着掴むと、ルイズに渡す。
ルイズは気持ち良いくらい豪快にネグリジェを脱ぎ捨て、即座に下着を身に着ける。
そんでもって―――

「服着せてー」
「……それぐらい自分でできませんの?」
「貴族は従者が居る時は、自分で服なんて着ないのよ」

―――というある意味お決まりの流れになる。
ハクオロに迫る際にいつもカルラが纏っているような、言っても無駄な気配を漂わせているルイズ。
自分のことを棚に上げて、やれやれといった感じで服を着せ始める。

(全く、世話の掛かるご主人様ですこと)

カルラは、この世界に来て何度目になるだろう溜め息を、心の底から押し出すように吐いたのであった。



一方その頃、トウカは学院の外できょろきょろと挙動不審な行動を取っていた。それは一体何故か。

「某としたことが……ま、迷ってしまった」

朝、日が昇ると同時に目覚めたトウカは顔を洗うため、寝ぼけ眼で外に出た。
そして暫くぼーっと水場を探し歩く内に、自分が何処を歩いているのかの見当がつかなくなってしまったのだ。
幸いにもその後すぐに水場を見つけ、顔を洗う事に成功するものの、ルイズの部屋が何処なのかてんで思い出せないのであった。なんとも間抜けな話である。
取り敢えずトウカは気を取り直して周囲を見回し、誰か人が居ないかと目を凝らす。
その数分後に第一村人、もとい学院のメイドが三人ほどで歩いているのを発見したのであった。

「もし、そこの御仁。少々尋ねたい事があるのだが……宜しいか?」
「あ、はい。何でしょうか?」

声を掛けられ笑顔で振り向いたメイド達の笑みが、若干引きつった。
トリステインにおいて、亜人とはエルフや吸血鬼を筆頭に恐怖の対象であることが多い。
先日のサモンサーヴァントにおいて亜人が召喚された、という話はいつの間にやら学院中に広まっていたのである。
いくらトウカが優しそうでも、怖いものは怖いのだ。既に三人のメイドの内の二人は、後じさって逃げ出していた。
トウカはどちらかと言えば平民寄り――とは言え化け物じみて強い分には亜人とさして変わらない――なのだが、なんとも偏見というのは恐ろしい。
しかしながら残った一人には、トウカに対して怯えた様子など微塵も無かった訳であるが。
二人に逃げられたのが悲しかったのか、一人が残っている事に気付かずに、トウカは暫く呆けていた。

「何故、逃げる」
「ミス・ヴァリエールの、使い魔の亜人さんですか?」

微妙にショックが抜け切らない様子のトウカに苦笑しつつ、残ったメイド――シエスタが尋ねる。
我に返ったトウカは、内心で人が残っていた事に若干動揺しつつも、あくまで表面上は冷静に返した。

「知ってるのか?」
「はい、亜人が二人も召喚されたとかで、結構学院中大騒ぎなんですよ」
「とすると、某達が呼ばれたのはそれだけ異例の事態なのだな」
「そうですねぇ、長い間こちらに奉公させて頂いてますけど、一度もそんな事ありませんでしたし」

暫くの間、使い魔召喚についての談義と自己紹介に花を咲かせる二人であったが、ふと自分の状況を思い出したトウカが申し訳無さそうにシエスタに尋ねた。

「あーそうだ、シエスタ殿。ルイズ殿の部屋が何処にあるのか知らないか?」
「え?はい、知ってますけど?」
「丁度良かった。某を案内しては頂けないか?少々道に迷ってしまってな」
「あらら……はい、判りました」

そして歩き出した二人は、先程とは打って変わってあまり会話を交わさなくなった。
それは何故かと問うのであれば、答えは簡単。両者とも思考の海に沈んでしまったから、だ。

シエスタに連れられルイズの部屋に向かうトウカは、何故か多少の懐かしさを感じていた。
その原因は彼女の瞳。それはトウカがいつだったかどこかで見たような……そんな懐かしい瞳だった。

トウカを連れてルイズの部屋へ向かうシエスタも、懐かしい気分に浸っていた。
その理由は彼女の口調。それはシエスタが大好きだった祖父の口調に、とても良く似ていたから。



はてさて、その頃のルイズであるが、現在の状況を一言で表すと、"とても不機嫌"であった。
その理由はただ一つ、部屋から出たと同時に、憎きツェルプストーと鉢合わせたから、だ。

「おはよう。ルイズ」
「おはよう。キュルケ」

憎きツェルプストー、もとい"微熱"のキュルケは、露骨に嫌な顔をするルイズに軽く笑みをこぼしながら挨拶をする。
ルイズは顔をしかめつつも、嫌そうに挨拶を返した。
その反応に対しキュルケはもう一度笑みをルイズに向けた後、後ろに佇むカルラに声を掛ける。

「あなたがルイズの使い魔さん?私の名前はキュルケよ、よろしくね」
「ご丁寧にどうも、私の名はカルラですわ。あと、正確に言えばもう一人の方が使い魔ですわね」
「あらそう?……亜人を二人も召喚するなんて、"ゼロ"のルイズでもやる時はやるのね」

ルイズは、"ゼロ"という言葉に多少反応したが、一応褒められているようなので満更でもないように胸を張る。

「あ、あったり前でしょ!ツェルプストーの使い魔なんかよりずっと役立つんだから!」
「あら?私の使い魔だってそうそう負けてないわよ?おいで、フレイムー」

キュルケに呼ばれ、のそのそと部屋から這い出てきたのは真っ赤で巨大なトカゲ。口からちろちろと火が漏れ出ている。
その直後に、ルイズの『これってサラマンダー?』発言で、キュルケの使い魔自慢が始まったりもした。
だがカルラはその自慢話には耳を傾けず、サラマンダーを興味深そうに眺める。

(結構可愛らしいですわねー、トウカが見たらどうなるかしら)

恐らくトウカの可愛いものセンサーに引っ掛かるだろう。そして無作為にじゃれついて火でも吹きかけられてしまうんじゃないだろうか。容易に想像できる辺り、なんだかちょっと心配である。
幾ばくかの時間が過ぎ、カルラが意識を二人に移したときには、もう会話も終わりと言った雰囲気に包まれていた。あと、若干ながら険悪な雰囲気も出ている、主にルイズから。

「でも偶然使い魔が召喚できたからって、いい気になるのはおよしなさいな?」
「ぐ、偶然ですって?わ、私だってちゃんとできるわ、絶ッ対に」
「ふーん、他の魔法も成功できたら良いわねー。じゃあまたね、ヴァリエールと使い魔さん」

そういってキュルケが立ち去って行くのを見送ると、ルイズが地団太を踏みながら愚痴愚痴言い始める。
一方のカルラは、去っていくキュルケを見送りながらも、何故か彼女に親近感を覚えていた。
理由に目星をつけるとすれば恐らくはアレだ、自分の同類の匂いを嗅ぎ取ったのだろう。
ルイズを見るキュルケの目。それをカルラの仲間達の誰かが見れば、こう言った筈だ。
『トウカをからかう時のカルラの目だ』と。
恐らくキュルケはルイズを嫌っていない。一々ムキになるルイズの反応が楽しいから、からかっているんだ、間違い無い。

因みにカルラの趣味は真面目な人をからかう事である。
なんとなく彼女らの性格が悪い気がしなくも無いのは、確実に気のせいだ。

なおイライラを募らせたルイズが、丁度その時にシエスタに連れられて戻ってきたトウカに飛び掛り、"ご主人様に黙って出かけた"という名目で躾と称した暴力――八つ当たりとも言う――を始め、シエスタとカルラが生暖かい目でそれを見つめていた事は……


つまるところ完全な余談である。



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