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ウィザーズ・ルーン~雪風の翼~1

死んだものに力をもらい
傷ついたものに勇気をもらい
もう何もいらないと首をふるわたしは
あたらしく出会ったものに笑顔をもらった


ウィザーズ・ルーン ~雪風の翼~


「何これ? タバサが魔法を失敗するなんてめずらしいわねー」
 キュルケが意外というふうに、目をきょとんとさせながら呟く。
 サモン・サーヴァント――使い魔を召喚する儀式により、己の使い魔となる幻獣を召喚したはずのタバサであったが、目の前に浮かんでいるのはどう見ても
「船……大きい……」
 タバサの目の前に突如舞い降りたのは、真っ赤なナイフを連想させる流線型の船体を持った、巨大な航空艦の姿だった。
 船体側面に青いペンキで殴り書きされた、ハルケギニアの者には読めないその船の名は、一五〇メートル級高速機動艦「Hunter Pigeon」という。



「あー、ハリー?」
目頭をほぐしながらヘイズは艦の管制人格である相棒に話しかける。
「なんですかヘイズ」
 甲高い電子合成の声とともに、にゅにゅっとヘイズの前に傍線でできた顔を伴ったウィンドウが開かれた。
 ウィンドウの顔は応答のたびに、コミカルに顔を変化させながらヘイズの周囲をひらりひらりと舞い踊る。
 その光景にと現在自分が置かれた状況に嘆息しながら、ハリーを片目で追いつつ、
「なんだか変な格好した連中が杖っぽいデバイス持ちながらこっちを囲んでるんだが……」
 ヘイズは物憂げな表情を浮かべながら、モニターに写るローブ姿の子供達を確認する。これが全員魔法士だったらなかなか脅威だな、と頭の隅で考えた。
「……この状況に陥ってるのは何故だ?」
 ヘイズとしては半ばすがる様にして、ハリーに話しかけたのだが。
「自業自得、という言葉がふさわしいかと」
 相棒の言葉はにべもないものであった。


 何故こうなったのかといえば遡ること三時間前。
 シティ・ロンドンにおける世界樹事件をなんとか終わらせた後、ヘイズは単身アメリカの地でエリザベート・ザインのメモに関する情報を集めていた。
 そしてある廃棄された地熱プラントで、手がかりがないかと探索していた時のことだった。Hunter Pigeonがいることをかぎつけたマサチューセッツ自治軍がプラントに攻撃を仕掛けてきたのである。
 今は廃業してはいるが、ヘイズは昔ある「龍使い」の少女を守る為に空族として輸送船を狙い撃ちしていたことがある。
 そのときに主にターゲットにしていたのが、当時貧困にあえぐ便利屋をやっているヘイズに「龍使い」のサンプル捕獲を命じたシティ・モスクワの情報部であった。
 地球上では子供でも知っていることだが、大戦後のアメリカにあるシティはシティ・マサチューセッツが唯一現存するシティである。そしてそのマサチューセッツとモスクワは同盟を結んでいる。
 ロンドンで一時的にとはいえ軍に在籍していた為、手出しをしてこなかったようだが、それが軍を抜けたとたんにこれ幸いとヘイズを狙ってきたのだった。
 噂ではファクトリーのエージェントが軍を裏切って脱走したらしいが、それで数の減った実験体を新たに欲しがっていたこともヘイズ拿捕に拍車をかけたのかもしれない。
 だがヘイズとしてはどんな理由だろうが、つかまるわけにはいかなかった。
 ハリーから軍からの攻撃が来たと聞くや、即座に艦に乗り込み、本格的な包囲が始まる前にプラントを飛び立ったのだが、そこで突如艦の前に妙な鏡のようなものが現れた。
 当然無視して別の逃走ルートを探すべきだと言うハリーに対し、ヘイズはなんとなく呼ばれているような気がして、艦艇を鏡のようなものに飛び込ませてしまったのである。

 そして今に至るわけであるが。
「ヘイズにしてはあまりにも軽はずみな行動です」
 ハリーの言葉の一つ一つが、ヘイズの心にちくりと突き刺さる。管制人格なのにここまでピンポイントにダメージを与えるのはそうはいないだろう。
「そうは言ってもよ、何故かオレを呼ぶ声が聞こえたんだよな、あのなかから。ファンメイを助けた時みてえな変な感覚があった」
 科学全盛期の時代に何をというセリフではあったが、ハリーもすでにヘイズと十年来の付き合いである。ヘイズが現実主義な中にどこかロマンチスト的側面があるのを知っていた。
 そして当のヘイズはというと――すでに状況の分析を始めている。なんだかんだいってもヘイズは便利屋として一流の嗅覚を持っている。
「どうやらあの鏡みたいなヤツは空間同士をつなげるゲートみてえな役割をしてたようだな。
つーかそうなると普通は完全装備の軍が包囲してるはずだし、んな空中に設置するタイプの空間連結装置なんて聞いたこともねえ。考えるべきことは山ほどあるが、どっちにしてもあのガキ共が魔法士で、仮にオレ達の敵なのだとすればとりあえずここは脱出すべきだな」
 モニター越しに妙な生物が見えて、妙な服装と合わせてヘイズは動揺したが、ここが魔法士の開発施設ならば納得がいく。
 おそらくあの服装や杖は何らかのデバイスで、それによってあの妙な生物を形成する魔法士だろう。
 となればある程度以上距離を離してしまえば、飛行能力のない魔法士はこちらに攻撃を届けることができないはずだ。
「ハリー! 全速上昇! ひとまず退散だ」
 ゆびをぱちんと打ち鳴らし、艦を上昇させようとするが、
「ヘイズ。演算機関の動作効率が十パーセント以下。これでは戦闘機動はおろか、上昇すらもできません」
「何!? どういうことだ!?」
「どうやらここは先ほどまでより気温が高く、それによって演算機関の冷却能力が低下。
この艦は戦中に作られた試作機であるため、冷却能力は極寒地を前提に作られています。
ここのような暖かい気候では十分な冷却を行えず艦の航行に支障が」
 訥々と説明をするハリー。
「何!? ここはシティのなかでもねえのに、そんなに強力な情報制御をしてあるのか!?」
「そのようです。どうやら魔法を打たれる前に緊急離脱、というのは不可能ですね」
 つまりはお手上げだということらしい。
 ヘイズはなかばやけくそ気味に操舵席から立ち上がった。
「あーつまりなんだ。投降するしかねえようだな。勧告もなしにいきなり魔法で射殺とかはないだろ……多分」
 オレの人生って何なんだとダメなことを考え始めながら、部屋の扉を開けたヘイズを尻目に、
「屍は拾ってあげます」
 とやはりハリーはにべもないことを言うのだった。

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