あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔の名は

 ……やった!
 やったやったやった!
 で・き・た!
 目の前に現れた獣を見て、ルイズは震えながら、心の中でガッツポーズを決めた。
 魔法の使えないメイジ。
 人呼んでゼロのルイズと嘲笑される存在。
 それが今までの自分だった。
 でも、これからは違う。
 何故ならば、こんなすごそうな幻獣を召喚したのだから。
 最初は大きな狐かと思ったが、ようく見るとその獣はルイズの知るいかなる獣とも似ていない。
 図鑑にも、こんな幻獣は載っていなかった。
 きっとすごいレアものか、遠い国に生息するものだ。
 それにしても、変わっている。
 全身は真っ白で、体のサイズそのものは大きな狐か犬という感じなのだが、長い尻尾が九本もはえており、それがゆらゆらと動くさまはすごく絵になっていた。
 幻獣は何かひどく驚いているようで、ルイズやコルベール、それに景色を見回しながら、まごまごしている。
 時間も惜しいので、早速に契約の儀式を。
 ルイズは躍る胸を押さえながら、幻獣にキスをする。
 幻獣の顔は、まるで鋭い杭のように前に突き出す形になっていたので、ちょっと苦労したが。
 「ぐ……おおお……!!」
 その直後、幻獣は身をかがめてうなり出した。
 うなる?
 ――何か、変。
 うなるというよりも、それは……。
 「己は……なんだ?」
 いきなり、声がした。
 「へ?」
 聞きなれない声に、ルイズはまわりを見回した後、ゆっくりと目の前の幻獣に眼を向ける。
 「……ま、まさか」
 「お前は、何だ? 何故、我はここにいる?」
 とまどっているようだが、同時にひどく偉そうな声が響いた。
 ルイズの幻獣の口から。
 「あ、あんたがしゃべってるの?」
 ルイズは震える声で、幻獣に言った。
 「他に誰がいる」
 白い幻獣はじれったそうに答えた。
 「…………いぃ」
 幻獣の言葉を聴いて、ルイズはゆっくりとうつむく。
 そして、
 「いぃやったぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
 歓喜の叫びを上げて、拳を天に突き上げた。



 すごい。
 すごい、すごい、すごい!
 マジですごい。
 こんなにすごくていーのだろうか?
 夜、ルイズはへらへら笑いながら、ベッドで上で身もだえしてた。
 ベッドの下には、本日召喚した使い魔が、やや呆れた目つきでルイズを見ている。
 その額には使い魔の印たるルーンが刻まれていた)コルベールは見たこともない形だとか言っていたが)。
 だが、呆れらようがどうしようが、この笑みは止められない。
 何しろこの使い魔、今まで例のない珍しい幻獣で、その上人の言葉まで話せるのだ。
 初めて魔法が成功した上に、召喚したのがこんなすごい代物なのだから、喜ぶなというほうが無理だ。
 「そーいえば……あんた、名前とかあるの?」
 ルイズは床の上に寝そべっている幻獣にたずねてみた。
 人の言葉を話せるものだから、名前だってあるかもしれない。
 「……」
 名前と問われ、幻獣は沈黙した。
 「? ないの?」
 続けて、たずねるルイズ。
 対して幻獣は、やはり沈黙する。
 「じゃあ、私がつけたげる。そうね……最初あんた見たとき狐かと思っちゃったから、フォックス。フォックスってのはどう?」
 「!」
 幻獣は急に顔を上げて、ルイズを見た。
 そのまま、しばらくは沈黙を続けていたが、
 「ああ。それでいい」
 そっけなく答えた。
 しかし、その奥に強い喜びの念が感じられ、ルイズはニコリと笑う。
 「うんうん、これからよろしくね、フォックス」



 その夜、ルイズは不思議な夢を見た。
 暗く淀んだ世界の中、ルイズは一人でいた。
 重くて深くて、陰気なところ。
 いや、陰気そのものの世界。
 ひどく気の沈む世界に、ルイズはいた。
 しかし、上のほうは妙に明るい。
 見上げてみると、きらきらと明るくて、綺麗なものが上のほうで形づくられている。
 うっとりするほど綺麗で、素敵なものだった。
 ――キレイダナア……。
 それを見て、ルイズはつぶやく。
 心からの言葉だった。
 ここにはない、綺麗で美しいもの。
 ルイズはしばらくそれを見つめていたが、やがてある事に気がつく。
 できれば、意識しないほうがよかったことに。
 ――ナンデ、我ハアアジャナイ……?
 そう考えて、自分自身を見てみる。
 上にあるものとは正反対の、穢くて、厭なもの。
 それが自分だった。
 ――ナンデ我ハ、ニゴッテイル……?
 それから、ルイズは暗く濁った世界で過ごし続けた。
 遠くにある、決して手の届かない、綺麗なもの――人間を見つめながら。
 何十年も、何百年も、何千年も(夢の中でだが)。
 気の遠くなるような時間が過ぎ行くうちに、ルイズは人間を見ることがひどく苦痛になってきた。
 いや、それどころか、ある抑えようのない黒い感情が、自身から噴き出してくることに気がついた。
 その感情の名は、憎しみ。

 そして――夢の終わりに。

 闇の中で、声がする。

 ――誰か……けよ……わ……を……

 その言葉を最後まで聞くことなく、ルイズは眼を覚ました。



 「じゃ、いくわよ、フォックス」
 着替えを終えて、ルイズは使い魔に声をかけた。
 「うむ」
 返事は偉そうだが、フォックスは素直にルイズに従う。
 ルイズと使い魔フォックスは共に歩み始める。

 さて、これから後、この一人と一匹はさまざまな事件・冒険に出会うことになるのだが……。

 もしも――
 桃色の髪の少女と、それに付き従う幻獣。
 このハルケギニアならば、されほどに珍しくもない光景かもしれない。 
 けれど、もしこの幻獣がやってきた世界――その住人たちがこれを見たならばどう思うだろうか?
 きっと誰も我が目を疑うに違いない。
 それとも、何かの罠だと思うだろうか?
 それはわからない。
 そして、ルイズはフォックスが召喚される前のことを、知る日がくるのだろうか?
 それもわからない。
 ただ――フォックスと名づけられたこの獣が、以前の世界では決して感じることのできなった、幸せというものを感じるようになるのは、間違いのないことだろう。
 それと引き換えに、まったく無力というわけではないが(むしろルイズたちの常識からすれば十分に強い)、かつて持っていた強大な力がほとんど失われてしまったが。
 けれど、主の少女から、かつて自分が恐れ、憎み、そして憧れたものと、同じ『力』を得ることにもなる。
 いずれにしろ。 
 ここハルケギニアにおいては、この獣は主たるメイジの少女を守る使い魔であり、それ以上の何者でもありえない。
 もはや、邪悪の化身でも、陰の気のかたまりでも、大妖でもなかった。


 誰か……名づけよ我が名を……
 断末魔からの叫びでも、哀惜の慟哭でもなく、静かなる声で……
 誰か、我が名を呼んでくれ……

 我が名は、白面にあらじ

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