あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

魔法少女リリカルルイズ19


空にとどまるユーノの眼の前に、木の枝で編まれた壁はもう無い。
その代わり地面には線を引いたように地面を掘り返した跡があった。
線に沿って倒壊した建物が痛々しくも見える。
「出てこねえな」
「きっと、ハエトリグサと同じだと思う」
ハエトリグサは感覚毛に獲物がさわると二枚の葉が閉じ、獲物を捕らえた後は再び葉を広げて次の獲物を待つ。
木の壁が何に反応しているのかはわからないが、もっと近づかなければ出てこないのだろう。
「迂回するか?」
ユーノは首を横に振る。
壁はかなり大きいし、他に壁があるかもしれない。
隠れた壁の場所はどこかもわからない。
それなら、すでに壁があると解っている場所を突破した方がやりやすい。
――それに
「ルイズが保たないと思う」
視線の先には全身をくまなく蔓で覆われたルイズがいる。
上を向いて口を開いたり閉じたりしているのは呼吸が難しくなっているのだろう。
「ルイズ……」
左手のルーンがわずかに輝きを増した。
「じゃあ、坊主。どうするんだ?」
ユーノはデルフリンガーを握り直す。
切っ先を背中に隠し、脇に構えた。
緊張は感じない。気負いもない。汗もでない。
代わりにこれからどう体を動かして、どう剣を振り抜くか。それが具体的な感覚と一緒に頭に浮かんでくる。
剣を振るったことのないユーノはそんなことを思いつくはずがない。
それでも浮かんでは消える戦いの思考に、自分以外の何かが頭の中にいて考えているような違和感を感じたりもするが、今はそれに頼ることにした。
「このまま行くよ」
「おう!」
空中を蹴る。魔力を走らせる。体が風を切る。ルイズの姿が大きくなる。
その度に左手のルーンはより強く輝き、ユーノの体に力を与えた。
ユーノは先程と同じ軌道で、しかしより速く飛ぶ。
木の枝で編まれた壁が瓦礫と土を巻き上げながら、空を覆いそうな高さまで伸びた。
ユーノはさらに速度を上げる。
――さっきと同じだ。
木の壁が、枝で作った鞭をからみつこうとする蛇のようにうねらせながら伸ばし、ユーノを打ちのめそうと呻りを上げる。
その数は10、20、もっと多い。とても数えられない。
――だけど、見える!
前は見えなかった枝の通る道が見える。死角の枝が気配となって感じられる。
全ての鞭が決して通ることのない隙間が解る。
だから速度を落とさない。
今までは怖くて出せなかったくらい速く飛ぶ。
でもルイズを見ていると怖さなんて全然感じない。
下から枝が来た。体を少しひねっただけで枝は宙を切る。
速度を落とす必要もない。動く枝の隙間に体を滑り込ませるだけでいい。
次は右。片手を突き出す。
回る魔法陣がシールドになって、枝が弾ける。
以前のようにシールドを出しっぱなしにはしない。同じ方向からは鞭が来ないことが分かるから。
もう壁は目の前。
壁が伸ばした枝を引き戻す。
上下、左右、後ろ。全ての方向からユーノを包み込むように迫ってきた。
――そうか、こうすればいいんだ。
ユーノは頭に浮かんだとおりに剣を動かす。
「やあぁぁぁぁああああ!!」
デルフリンガーを横に振り抜く。
重みも衝撃を感じない。
素振りをしたように、だが素振りにはない手応えを見せて剣は走る。
途端、壁は裂け目を生じる。
軋身を挙げる裂け目は瞬時に広がり、自重を支えきれなくなった壁は悲鳴と木くずを飛ばしまがら枝の鞭もろとも倒れた。
ユーノの阻む壁はもうない。
壁の切り口からは小さな枝が生える。
枝同士が自身を編み上げ、壁を作り直そうとするがユーノの速さには追いつかない。
「ルイズっ」
ルイズはもう目の前にいる。
そのルイズは酸素を求めて金魚のように口を開いている。
胸を押さえつけられて息ができないのだ。
苦しさに歪むルイズの顔が目に飛び込んで来たとき、ユーノの体にカッと熱のようなものがルーンの輝きと共に走った。
「今助けるよ!ルイズ」
今のユーノにはどう剣を振れば蔓だけを切れるかがはっきりと見えていた。
その感覚に逆らうことなく剣を走らせるだけで、蔓はバラバラに飛び散る。
戒めを解かれたルイズはバリアジャケット姿を見せる。
支えを失い遙か下の地面に倒れようとするルイズをユーノは両手で抱きしめた。小さい体が落ちてしまわないように。
耳元でルイズが息をする音が聞こえた。
あらく、せわしない音がゆっくり、静かに落ち着いていく。
「ルイズ、大丈夫?」
「はぁ、はぁ。ユーノ、遅いわよ!」
「ご、ごめん」
「あの蔓、巻き付いてきて、締め付けてきて……それに、それに、服の中まで入ってきて!!気持ち悪かったんだからぁっ!!!」
ルイズは腕を振り上げ、ユーノの背中をこれでもかと叩く。
「わぁっ、ルイズ。危ない、危ないよ」
元気なのは嬉しいが魔法を使っていてもこんなに叩かれたらルイズを落としてしまう。
バランスを戻し、空中に体を固定しようとするユーノの耳にいつもなら聞こえないような風を裂く音が届いた。
「危ないっ!」
ルイズを片手で支えたまま長剣を振る。
片手だけであってもデルフリンガーを振るうのに問題はない。
ルイズを再び捕らえようとする蔓をユーノは熟練した剣士のような動きで3つに分断した。
「早くジュエルシードを封印しないと。町にどんどん広がっているみたいなんだ」
「そうみたいね」
ルイズは足下に3対の光の羽を作り出す。
光の羽に支えられたルイズはユーノの手を離れて空を飛んだ。
「やるわよ。ユーノ。ちゃんと守ってよね」
「うん」
返事をするユーノにデルフリンガーが横やりを入れる。
「おいおい。こんな娘っ子が何ができるんだよ」
「なによ。そのインテリジェンスソード。どこで拾ってきたのよ。そんなの捨てちゃいなさい」
デルフリンガーは瞬時に悟った。この娘っ子は本気だ。
本気で俺をこの高さから叩き落とそうとしている。
固定化はかかっているが限度と言う物がある。
この高さから落とされては無事で済む保証は全くない。それどころか曲がってしまっては大変だ。
デルフリンガーは刀身から汗でも噴き出しそうなほど慌てた。
「お、俺は小僧とおめぇを助けに来てやったんだぜ。いきなり捨てるってこたぁないだろ」
「ユーノ、ほんと?」
「本当。それにこの剣、すごく使いやすいんだ」
ユーノはルイズの横に感じた気配に向けて、軽く剣を振る。
「ほら、ね」
ルイズに巻き付こうとしていた色鮮やかな生えたばかりの蔓が分断され、樹液を散らせながら落ちていく。
「後でその剣のことも説明よ。いいわね」
「いいよ」
ルイズは両手でレイジングハートを構える。
その先はジュエルシードが隠されている節くれ立った巨木に向けられる。
「リリカル、マジカル」
力ある言葉が魔力をくみ上げる。
その魔力は足下で広がり新しい魔法のために大きな魔法陣を描き出す。
「リリカル、マジカル」
魔法の完成まではルイズは動けない。
そんなルイズを捕らえるのは、簡単なことだ。
だが、ルイズは慌てない。
今ルイズを守るのは誰よりも防御魔法に長けた魔道師・ユーノだからだ。
「はぁあっ!」
水平にデルフリンガーを払う。
ルイズを絡め取ろうとした蔓をあっという間に剪定されてしまう。
正面からも蔓が来た。
今度はバラバラに動く捕らえようとする蔓ではない。
互いを寄り合わせて、引き締め、固まった無数の蔓がそれこそ1つの槌となって轟音を立てる。
「おい、いくら何でもありゃ切れねえぞ」
「だったら、これで!」
デルフリンガーを持ったまま突き出す両手の前に描き出された光る魔法陣が蔓とぶつかる。
強い衝撃がユーノを襲うが、デルフリンガーを握ったときに生まれた力がそれと拮抗した。
「リリカル、マジカル」
レイジングハートの周りにも新たな魔法陣が生まれる。
帯のような魔法陣はレイジングハートの中心に回転を始める。
魔法の準備は完成した。
「私の体を這い回った上に締め付けてくれるなんて……植物の分際でよくもやってくれたわね」
捕まっていた感触を思い出して歯を食いしばる。
奥歯が斬りと音を立てた。
「受けなさい!私の全力を!」
ルイズは魔法の反動で飛ばされないように足を少し広げる。
この魔法はそれほど強い。
「ユーノ、どいて!」
ルイズの合図に合わせてユーノは下に加速。
マントと髪が風になびいて持ち上がった。
「ディバインバスター!」
杖の先にはルイズの身長ほどもある光球が輝く。
そこに満ちる力を解き放つのは今しかない。
「シューーーーーート!」
光球は瞬時に光の奔流となる。
目の前まで迫っていた蔓の槌は光の壁に飲み込まれ、形をなくす。
光の滝はさらに突き進みルイズが定めた巨木を貫く。
まず、幹に穴が開いた。
光は穴を押し広げ、内側から巨木を崩壊させていく。
幹の半分が塵となったとき、光の中には青い宝石が浮かび上がってきた。
「捕らえた!レイジングハート」
「Sealing form, set up」
青い宝石はジュエルシード。
捕らえてしまえばもう離さない。
レイジングハートはそのための形に姿を変える。
「リリカル、マジカル。ジュエルシードシリアル2 封印!!」
ジュエルシードは青い軌跡を描き、流星となってレイジグハートに吸い込まれる。
「Sealing.Receipt Number Ⅱ」
レイジングハートから放たれる光は力を弱め細くなる。糸のように細くなった光が消えるのにあまり時間はかからなかった。


ジュエルシードの力を失った木々は町を覆い尽くすのを止め、光となってはじけ飛ぶ。
傘のように町を覆っていた枝葉は消え、大通りが姿を現していく。
その先には美しいトリステイン城が見えた。


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