あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのちグゥ-4

「ずいぶん珍獣がいるな」
「みんなグゥと同じ使い魔よ。わたしは授業開始まで休むから、変な事しないようにね」


朝食を済ませ授業教室までやってきたルイズは、平民を召喚したと嘲る級友たちの相手もそこそこに机に突っ伏した。
なお、“その原因”であるグゥは、そこが定位置とばかりにキュルケのサラマンダー、フレイムの頭の上にちょこんと座っている。

キュルケはその様子を見て微妙な表情をした。
「ねえフレイム、重くないの?」
「きゅるきゅる」
「そう、ならいいけど。ところでグゥちゃん、“あれ”はなんで朝からへたばってるの?」
キュルケはそう言うと、どこかつまらなそうな表情でルイズを指差した。

「……?キュルケはルイズのことが心配なのか?」
「そういうわけじゃないけど、あれじゃからかい甲斐がないわ」
「ほほう」
その時、前側の扉が開いて紫のローブを着た中年女性が姿を現した。

「あら、シュヴルーズ先生が来られたみたい。もうすぐ授業が始まるわよ。かわいそうなご主人様のとこへ行ってあげなさい」
「はーい」
音も立てずにフレイムの上から飛び降りたグゥがルイズの元へ向かう。

「変わった子ねえ。面白いからいいけど」
キュルケは誰に聞かせるでもなく呟いた。


教壇に立ったシュヴルーズは教室を見回した後、満足そうに微笑んだ。
「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
その声に気づき、机に伏せてぐったりとしていたルイズが慌てて身を起こした。

「おやおや、朝一だというのに居眠りですか。ミス・ヴァリエール」
「いえあのそういうわけじゃ……」
ルイズが慌てて弁解する。
シュヴルーズはくすくす笑った後、グゥのほうをちらっと見た。
「授業はこれからですから、今のはセーフですよ。それにしても、変わった使い魔を召喚したものですね」
その声に、教室中がどっと笑いに包まれる。

「ゼロのルイズ!召喚できないからって、その辺歩いてた子供を攫ってくるなよ!」
ルイズは顔を真っ赤にして立ち上がり、澄んだ声で怒鳴った。
「違うわ!きちんと召喚したもの!こいつが来ちゃっただけよ!」
「嘘つくな!“サモン・サーヴァント”ができなかったんだろう?」
ゲラゲラと教室中の生徒が笑う。

「ミセス・シュヴルーズ!侮辱されました!かぜっぴきのマリコルヌがわたしを侮辱しました!」

マリコルヌと呼ばれた男子生徒が机を叩き立ち上がる。
「かぜっぴきだと?俺は風上のマリコルヌだ!だいたい“ゼロのルイズ”がまともな使い魔を召喚してないのが悪いんだろう!」
そう言うマリコルヌの傍には、立派な梟が止まっていた。
「ううううるさいわね!あんたのガラガラ声は、まるで風邪でも引いてるみたいなのよ!」


その一触即発の雰囲気を、シュヴルーズ先生は手に持った小ぶりの杖を振ることで解決した。
二人の体が、糸の切れた操り人形のようにすとんと席に落ちる。

「ミス・ヴァリエール。ミスタ・マリコルヌ。みっともない口論はおやめなさい。さあ、授業を始めますよ」
シュヴルーズは、こほんと咳をして周囲を静かにさせた。

その静寂の中、ルイズの耳に重々しい、怒りを押し殺したような呟きが聞こえた。
(……うざってェ)
慌てて辺りを見回すが、誰もそれに気づいている様子はない。どうやらルイズだけに聞こえたらしかった。
(グゥが…まともじゃないだと……)

再び聞こえる呟き。もう間違いようがなかった。
見るとルイズの足元に座ったグゥが、身の毛もよだつような表情でマリコルヌの方を向いている。

ルイズは慌ててグゥに釘を刺した。ひそひそ声でだが。
「ちょ、ちょっとグゥ。気持ちはわかるけど貴族に変な事しちゃダメよ。あんなんでもクラスメートなんだから」
(……そうか)
グゥが渋々といった感じではあるがそれに頷き、教壇の方に向きなおる。
どうやら納得させることができたようだ。
ルイズは今日何度目になるかわからない溜め息を吐くと授業の方に集中した。


「今は失われた系統魔法である“虚無”を合わせて、全部で五つの系統があることは、皆さんも知ってのとおりです」
「わたしは“赤土”赤土のシュヴルーズ、土系統のトライアングルメイジです。
よって、これから一年“土”の魔法を皆さんに講義します」
「今から皆さんには、“土”系統の基本である“錬金”を………」

どうやら今日の講義は自己紹介と基本のおさらいのようだ。
実技はともかくとして、かなり勉強熱心な方であるルイズにとっては退屈極まりない。
足元のグゥはずいぶんと興味深そうに話を聞いている。
魔法が使えなくても面白いのだろうか?

やばい、本当に眠いわ……


「ミス・ヴァリエール!」
随分遠くからシュヴルーズ先生の声が聞こえる。何よ、まだ……ハッ!

「は、はい!」
「授業中の居眠りは、アウトですよ」
「すいません」
「次から気をつけなさい。そうだ、居眠りの罰も兼ねて、“錬金”の実技をやってもらいましょうか。ミス・ヴァリエール」
ルイズの顔が引き攣った。
「え、わたし?」
「そうです。こちらに来てこの石を“錬金”してみなさい。さあ、なんでもいいから変えられる何かを思い浮かべ、念じなさい」
「……はい」

しかし、ルイズの集中は後ろからの声により破られた。
「危険ですよ、ミス・シュヴルーズ!」
「やめた方がいいと思いますが……」
「危険」
「そいつはゼロなんですよ!」
無言で机の下に隠れる生徒まで出る始末である。

ルイズが叫ぶ。
「うるさいわね!やるといったらやるわ!
それに失礼ね、“サモン・サーヴァント”には成功したんだから、少なくともゼロじゃなく1よ!」


結論から言うと、ルイズの“錬金”は失敗であった。
しかも、特別に巨大な、教壇ごと吹き飛ばすような爆発を伴って。

一番近くにいたシュヴルーズ先生は盛大に吹き飛び、ぴくぴくと痙攣している。
使い魔達が大パニックを繰り広げている。
他の生徒たちも机の下で大小さまざまなかすり傷を負っていた。

騒ぎが収まり、シュヴルーズ先生が“水”属性の生徒数人の治療を受けて正気に戻ったのは、およそ一時間後のことであった。

“爆発”で崩れた化粧を直しながらキュルケが呟く。
「そういえば、元凶のルイズはどこ行ったのかしら?」
「そこ」

フレイムの背中にくっついたグゥが、ルイズが元いた席を指差す。
「あら、いつの間に……それにしても、この状態で寝こけてるなんてすごい度胸ね」
「使い魔として、頑張ったで」
「なんだか判らないけど、グゥちゃん偉いわね。あら、口元に羽根がくっついてるわよ?」
「おっと」
口をぬぐったグゥは、今日一番の満足げな笑みを浮かべた。


「ねぇグゥ、もっと真面目に掃除しなさいよ」
「それなりに」

結局、授業は再開されなかった。
そして怒り狂ったシュヴルーズ先生により、ルイズは魔法使用禁止での教室清掃を命じられたのであった。
もっとも、まともに魔法を使えないルイズにとってその制限はあまり意味がなかったのだが。

「それにしても、魔法って面白いな」
グゥは、片手で破壊された教壇を担ぎ上げつつ呟いた。
「そうかしら。それにしても、あんた意外と力持ちね」

「こんなか弱い子供を捕まえて失礼ねぇ」
教壇を外へ放り出したグゥが、顔を変え、目を潤ませてルイズを覗き込む。
「だから“それ”はやめなさいって言ったでしょ」
「チッ」
「さあ、急がないとお昼ご飯が食べられないわよ。……あら?」

教室の隅の机に、男子生徒が臥せっている。
それが気になったルイズは、なんとなく近づいて声をかけた。
「あらマリコルヌじゃない、なにやってんの?掃除の邪魔よ」
「ん……なんだ、ルイズか」
起き上がったマリコルヌの顔は青ざめ、涙の痕までついている。

「一体どうしたのよ」
「俺の使い魔が、クヴァーシルが消えたんだ……」
まるで世界の終わりを前にしたような顔でマリコルヌが呟いた。
「それはご愁傷様。でも、わたしとは関係なくない?」
「いや、クヴァーシルがいなくなったのはルイズ、きみの爆発の後からなんだよ。何か知らないかい?」

ルイズは愕然とした。
なによ、わたしの爆発のせいで使い魔が死んだとでも言いたいわけ?


「そんなの、知るわけないじゃない。ところで、あなたの使い魔の鶏は視覚とかの共有はできないの?それは試してみた?」
マリコルヌがはっとした顔になる。
「俺のクヴァーシルは鶏じゃない!立派な梟だ!」
「あら、ごめんなさい」
少し前、自分の使い魔を馬鹿にされたルイズなりの仕返しであったが、この場面では逆に元気付けてしまったようだ。

「よし、試すぞ!もし出来なかったら、爆発で吹っ飛ばされてたら許さないからな!」
「はいはい」
ルイズは気のない返事をした。
馬鹿じゃないの?あんたの席は教壇から見て一番端っこじゃない。
そんなところにいた奴が死んでたら、この教室の誰も助かってないわよ。

「おお、見えた!見えたよ!」
マリコルヌが嬉し泣きをしながら立ち上がる。
「よかったわね。じゃあ、掃除の邪魔だから出ていってくれる?」

「……でも、これは何処だ?こんな景色の場所、知らないぞ?
なんだこの見たことない木は?それより魔法学院は何処?
地平線ってこんなに綺麗に見えるもの?」
明らかに錯乱しているマリコルヌを見て、ルイズは首をかしげた。

「あんた、何言ってるの。頭大丈夫?」
「ああ、また変なものが見えるよクヴァーシル、きみは一体何処へ旅しているんだい?早く戻ってきておくれ……」
マリコルヌが意味不明な言葉を呟きながら教室を出て行く。


ルイズがしばし呆然としていると、いつの間にかやってきていたグゥに肩を叩かれた。
「直接は、手を出さなかったぞ。グゥを褒めてくれ」
「はい?」
気のない返事をしつつ、ふとグゥの顔を見たルイズが絶叫する。
「な、な、なななな、なぁーーーー!!」


グゥの瞳に、だだっ広い原野を楽しそうに飛び回る立派な梟が映りこんでいる。
その真の意味に気がついたルイズは、意識を手放した。

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