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ときめきメモリアル0-12

「あんた、誰?」
抜けるような青空を背景に才人の顔をまじまじと覗き込んでいる少女が言った。その瞳に、今にも溢れそうな涙が浮かんでいる。
頭痛を感じた才人は頭を降りながら言った。
「誰って……。俺は平賀才人」
一滴の涙が透き通るような白い頬を伝った。
「なんで、成功しちゃうの?なんでよ?私はゼロのルイズでしょ?なんで、こんな時に限って……」
平賀才人と名乗る青年はどことなく彼に似ていた。だけど、彼ではない。
残酷な結果を突き付けられたルイズはとめどなく鳴咽を漏らした。
その光景を見守っていたキュルケは、ルイズにかける言葉も見つからず、沈痛な面持ちのまま俯くしかない。
サモン・サーヴァントの成功は、皮肉にも一つの事実を示唆していた。
それは、一度結ばれたはずの主従関係の消滅。つまり、小波の死である。
才人は目の前で泣き伏せる少女を呆然と見つめ続けた。
「なんで、こんな時に限って、ゼロじゃないのよ……」
ルイズが自嘲気味に呟く。

『ぼくは大丈夫』

彼の言葉は履行されることなく、いともあっさりと蹂躙されたのだ。



かつては名城と謳われたニューカッスルの城は惨状を呈していた。
生き残った者には絶望を感じさせ、死者に鞭打つような状況である。
城壁は度重なる砲撃と魔法攻撃で、瓦礫の山となり、無惨に焼け焦げた死体が転がっている。
この度、勝利を得た反乱軍勢、しかしながらその損害は想像の範疇を越えていた。
三百の王軍に対して、損害は四千。怪我人も合わせれば八千。しかも、その半分近くが、たった一人の戦士によって築かれた被害だった。彼は最後の一兵になりながらも、最後に至るまで果敢に剣を振るったのだ。
彼を始末したのは、反乱軍の指導者、クロムウェルだった。
クロムウェルの唱えた魔法『エクスプロージョン』により、彼の強き意志は吹き飛ばされた。
つまり、アルビオンで巻き起こった革命戦争の最終決戦、ニューカッスル攻城戦は百倍以上の軍に対して、自軍の二十倍にも上る損害を与えた戦い……、伝説となったのであった。



「なぁ、相棒」
剣が、無いはずの口を開いた。
「なんだい、デルフリンガー?」
「お人よしが過ぎるんじゃないかい?嬢ちゃんの元に戻るだけの路銀は十分に貯まったろ?」
気の滅入りそうな雲天の下で、紺色の衣を纏った青年が小さく笑った。
「困っている人を放っては置けない。その性分だけが、ぼくの取り柄なんだよ」
「残った右腕が無くなるのも時間の問題だね、こりゃ」
剣が呆れたように呟いた。
青年は背を付けた廃屋の壁越しに、十数匹のオーク鬼を凛とした瞳で見つめている。
「……クロムウェルの思想は危険だ。何があろうともあの老人だけは取り除かなければならない、ルイズの為にも、トリステインの為にも。そんな気がするんだ。だから、剣の鍛練は欠かせないよ。光の精霊に頼ってばかりでは駄目だ。アルビオンで痛いくらいに、実感したよ」
「相棒はボランティアが好きなんだね」
「なんだよ、それ?今回だって、別に無償で奉仕してるわけじゃない。依頼を終えたら、きっちりと報酬はもらう」
剣はため息をつき、のんびりと言った。
「銅貨十枚で命を賭けるおバカさんはハルケギニア広しと言えど、お前さんくらいだよ。だから、『銅貨の良心』なんぞ、有り難くない二つ名が付いてまわるんだ」
青年はその言葉には応えず、『彼』を強く握りしめると、壁から踊り出て先頭を歩くオーク鬼に切り掛かった。荒縄で繋がれた人骨のネックレスを首にかけるオークの胴体が一瞬にして両断される。
味方を殺されたことに気付いたオーク鬼達は、すぐさま青年を囲むように散開した。
青年は、剣を構えたまま、オーク鬼達を冷たい視線で見据えた。
オーク鬼の背筋に冷たい汗が流れ、本能が、奴は危険だと訴えかける。
オーク鬼たちは顔を見合わせた。
いや、自分達が負けることなど有り得ない。目の前にいるのは人間の、それも隻碗の青年だ。剣を扱うということは、メイジですらない。
オーク鬼は咆哮あげ、一斉に襲い掛かる。それは、彼等の死が決定づけられた瞬間でもあった。



才人は中庭に向かうと、ゼロ戦に取り付いた。
後ろから、ルイズが彼の腰に抱き着く。
「どこに行くのよ!」
「タルブだ!」
「な、何しに行くのよ?」
「決まってるだろ!シエスタを助けに行くんだよ」
ルイズは才人の腕にしがみついた。振りほどこうとしても、がっしりとしがみついて離れない。
「駄目よ!今は戦争中なのよ!あんた、一人がいったってどうにもならないわ!」
「俺には零戦と破壊の一面鏡がある。それに前の使い魔だって、戦場に単身飛び込んだんだろ?だったら、なおさら、逃げるわけにはいかない!」
才人は決意の篭った声で言い放った。
ルイズが悲しみに顔を歪ませる。
「だけど、彼は死んだわ……!」
「俺は死なねぇよ」
「……彼もそう言った。ねえ、お願い。思い留めて」
ルイズは才人の手が震えていることに気付いた。
「やっぱり、怖いんでしょ。ばか、怖い癖に無理してかっこつけないで」
「怖いよ。ああ、無理してる。俺は死ぬことが怖くて仕方ない臆病者さ。だけど、死ぬのが怖いのなんて当然だろ。だれだってそうだ。その小波って奴も、絶対怖かったはずだ。だけど、俺と同じ何の変哲もない高校生が、そこまで勇気を示せたんだ。なら、俺にだってできる!」
ルイズの顔が崩れ、鳶色の瞳から涙が溢れ出した。
「もう嫌なの……。私の周りにいる人が死ぬだなんて、いや。……あんな苦しみ二度と味わいたくない。だから、お願い……」
「ルイズ、俺は必ず生きて帰る」
風防が閉じられ、穏やかな陽光に照らされる中、ゼロ戦は突き抜けるような青空に舞った。



才人は風防から顔を出して、眼下のタルブの村を見つめた。素朴で美しい村は跡形も無かった。全ての家屋は黒く焼け焦げ、ドス黒い煙が立ち上っている。
怒りに奥歯を噛み締めた。
草原を眺めると、そこはアルビオンの軍勢で埋まっていた。
この前、二人で草原を見つめていたときのことを思い出した。シエスタの言葉が蘇る。
『この草原、とても綺麗でしょう?これをサイトさんに見せたかったんです』
美しかった村のはずれの森に向かって、一騎の竜騎兵が炎を吐きかけた。
森が勢いよく延焼した。
唇を噛んだ。地の味が滲む。
「叩き落としてやる」
才人はノートパソコンを操作し、地獄の番犬サイバーファングを召喚した。
ルイズの話では、小波もサイバーファングを駆使したらしい。しかし、プログラム起動に必要なパスワードを知るのはきらめき高校電脳部員だけのはずだ。
彼も自分と同じきらめき高校の生徒だったのだろう。
同窓生の敵はとなければならない。
機体を捻らせ、タルブの村めがけて零戦が急降下を開始する。
サイバーファングは怒りの咆哮をあげると、アルビオン軍に向け疾走した。



三色の『レコン・キスタ』の旗を掲げ、静々と行進してくるアルビオン軍が見えた。彼等が唱歌するアルビオン軍歌が、その威容を不気味なものへと昇華させている。
生まれて初めて見る敵に、ユニコーンに跨がったアンリエッタは震えた。
しかし、恐怖の対象はそれだけにとどまらない。
アンリエッタは敵軍の上空に位置する大艦隊を見つめた。
その舷側が光る。艦砲射撃だ。何百発もの砲弾が重力の後押しを受け、トリステイン軍を襲った。
岩や馬や、人が一緒くたになって舞い上がる。
圧倒的な力を前にして、味方の兵が浮足立った。
アンリエッタの側に控えるマザリーニ卿が呟く。
「この砲撃が終わり次第、敵は一斉に突撃してくるでしょう。とにかく迎えうつしかありませんな」
「祖国の存亡を賭けたこの決戦、勝ち目はありますか?」
マザリーニは、度重なる砲撃によって、兵の間に同様が走りつつあるのを見届けた。
人間の勇気には限界がある。
しかし、幼く純粋な姫殿下に現実を突き付ける気にはなれなかった。
「五分五分、といったところでしょうな」
着弾。辺りが地震のように揺れた。
マザリーニは痛いぐらい状況を理解していた。
敵軍は空からの絶大な支援を受けた五万。
我が軍は砲撃で崩壊しつつある一万二千。
奇跡でも起きない限り勝ち目は、ない。

三つの奇跡が急速に接近しつつある事実を彼が知るよしも無かった。

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