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『虚無と金剛石~ゼロとダイアモンド~』-1


その壱.転機

 "ゼロのルイズ"ことルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは当惑していた。
 何十回目かのサモンサーヴァントの失敗の後、ようやく出現した鋼鉄の人型。
 最初は人間大のアイアンゴーレムかと思ったものの、よく見れば頭部のあたりに生身の人の顔が露出している。意識が朦朧としているようだが、一応息はあるようだ。

 (……ってことは、これは鉄の鎧兜に身を固めた人間? 傭兵か何か?)

 使い魔召喚儀式で現われたのが、"ただの平民"であったことに少なからず落胆するが、しかし……と考え直す。

 (あんなに重そうな鉄の鎧を着て動けるんだから、きっとすごい馬鹿力ね。
なら、傭兵としてはそれなりに強いんだろうし、少なくとも"詠唱中のメイジを守る"という使い魔の意義は十分に果たせるわよね。よく見れば若いし、ちょっと美形だし……)

 魔法の発達に反比例して、剣などの武器の精錬が遅れているハルケギニアでは、防具と言う概念もそれほど発達していない。
平民の兵士や傭兵たちが鎧などの防具を着ることはあるが、それもせいぜいが鎖帷子かブレストプレート程度だ。全身を鋼板で包むフルプレートアーマーなど、皆無に等しい。

 ともかく、いったん教師であるコルベールに相談しようと、"それ"から目を離した瞬間、先程の召喚時から開きっぱなしだった召喚用のゲートから、何かが飛び出し、宙空へと舞い上がった。

 ――光宿りし乙女とその朋友たちよ、聞くがよい……。

 「なっ!?」

 直径2メートルほどの光球に見えるそれは、驚くべきことに、その場にいる者たちに語りかけてきたのだ。

 ――我が名はGNILDA。ここより時と場所を遙かに隔てし王国Llylgamynを守護する精霊神GNILDA。

 (ええっ!! か、神様ぁ!?)

 ふつうならとんでもないと一蹴しそうなヨタ話だが、GNILDAと名乗る光球から放たれる威厳と威圧感は、まぎれもなく本物だった。声にも真実の響きがあふれている。
 座学は優秀なルイズにも、”りるがみん”と言う地名に心当たりはなかったが、「時と場所を隔てし王国」と言うことなので、ずっと遠くの国なのかもしれない。

 ――汝が招きし者の名はアラビク。偉大なるLlylgamyn王家直系の血を引く王子にして、我が認めしダイヤモンドの騎士なり。

 「わ、私、王子様を召喚しちゃったの!?」

 思わず声に出して狼狽えるルイズ。
 よく見れば、アラビク王子の着ている鎧は、精巧な彫金の施された極めて高価そうなものであることがわかった。
 さらに、鎧はもちろん、兜や篭手、盾や剣に至るまで、巨大な――買えば、それこそヴァリエール家の年間予算が丸ごとふっとびそうな大粒のダイヤがはめ込まれている。
 こんな貴重な代物を身に着けていることからして、高貴な身分であることは間違いないだろう。

 ――汝らに後事を託す前に、この者の過去を見せよう。

 なぜかいくぶん厳粛さを増してGNILDAが告げるとともに、光球の表面に幻像(ビジョン)が浮かび上がってきた。

 トリステインの王都よりやや古めかしい、しかし巨大さと荘厳さではまさるとも劣らない石造りの都。人々の服装は少々見慣れぬものだが、街路を平民たちが忙しく行き交い、壮麗な王宮では王侯貴族が責務を果たすその光景は、ここトリステインとそう変わるわけではない。

 しかし、突如画面が暗転したかと思うと、王都のあちらこちらから、恐ろしげな異形のモンスターたちが出現したのだ。
 恐慌し逃げ惑う民衆と、それをいともたやすく惨殺し、ときには人を食らう異形のものたち。

 ――謀反があったのだ。我が守護する王都は、悪意ある者を中に立ち入らせぬ強固な結界にて護られていたが、結界の内にて育まれし邪悪に対しては無力であった。

 数多の兵士や魔法を使うメイジらしき者たちが”異形のもの”と戦ったが、膨大な相手の数に加えて、不意を突かれ戦力を分断されたこともあり、たちまち劣勢に追いやられて、つぎつぎに力尽きていく。

 ――謀反の首謀者の名はダバルプス。傍系の末ながら王家の血を引き、また悪魔を召喚する禁呪を復活させし悪しき天才児よ。

 幻像の中で、美しかった都はたちまちに躙され、血に汚れ、悪魔たち以外の動く者がいなくなる。

 ――国王を始めとする王族や国の重鎮もことごとく抹殺されたが、幸運にも国王の娘と息子の姉弟だけは、からくも脱出することに成功した。

 幻像は一転し、薄暗い場末の酒場のような光景を映し出す。

 ――落ちのびた王女マルグダと王子アラビクは、一介の冒険者に身をやつし、静かに反撃のための牙を磨いた。

 酒場で出会った屈強なふたりの戦士と物静かな僧侶。静謐な寺院での死者の蘇生。蘇生した小男を加えた6人での、洞窟のような場所に潜る探検行。群がるモンスターたちを切り伏せ、薙ぎ倒し、時には魔法で焼き払って進む一行……。

 まるでおとぎ話のような息詰まる冒険活劇の映像に、ルイズはもちろん周囲の学生たちもいつしか夢中になって引き込まれていく。

 ――かくして、王子と王女は頼もしき仲間に助けられ、ついには王家に伝わる聖剣の奪回に成功する。

 画像の中では、アラビク王子が一騎討ちの末、異形の剣士を討ち取り、見事な輝きを持つ長剣を手にしている。確かに、それはここにいる戦士が手にしている剣と寸分違わぬ物であった。

 ――その後、困難な旅の末、王子たちは王家の秘宝とも言える4つの防具を揃え、同時にその冒険の過程で数々の得難き仲間と出会い、彼らの協力を得て、魔人ダバルプスに叛旗を翻したのだ。

 王宮へと攻め入る、アラビクとマルグダに率いられた少数ながら精強な軍団。
 仲間たちの手を借りて悪魔たちの襲撃を潜り抜けた姉弟は、王宮の最深部で反逆の魔人と対峙する。

 魔のものと契約した証かそれともその身に蓄積した禁呪の影響か、ダバルプスは半ば人とは思えぬ恐ろしげな姿をしていた。
 2メイルを越えるであろう長身。まるで吸血鬼のように発達し尖った犬歯と、闇の中で赤く光る双眸。本来はメイジであろうはずなのに、身長ほどもある大剣を軽々と振り回しつつ、恐るべき古代の禁呪文を詠唱する、膂力と魔力のバケモノ。

 それが幻像だとわかっているにも関わらず、ルイズは身体の震えが止まらない。いつもなら、「こ、恐くなんてないんだから!」と虚勢を張るであろうが、その余裕すらない。

 と、同時にそんな怪物を相手にたったふたりで立ち向かったアラビクとその姉に、畏敬の念を抱かずにはいられなかった。

 ――王女の唱えた禁呪”大変異(マハマン)”が、奇跡的にダバルプスの魔法を封じ込め、かの魔人が動揺した一瞬の隙をついて、王子の振るう聖剣がその首を切り落とした。
 もはやこれまでと悟った魔人は、せめてもの道連れにと最後の力で周囲の地盤を崩壊させたのだ。幸いにしてマルグダ王女は崩壊から逃げることが出来たが、すでに限界を越えていたアラビク王子は、その崩落に巻き込まれてしまった……。

 GNILDAの言う通りの光景が幻像に映し出されたが、その光景には続きがあった。
 崩れた床とともに、地の底に落下していくアラビクの身体が、途中に現われた銀色の鏡のようなもの中へと吸い込まれたのだ。

 ――感謝しよう、虚無の光宿す娘よ。汝の召喚のお蔭でアラビクは命を長らえることができた……。

 その言葉とともに、光は急速に弱くなっていく。
 光球の中には、うっすらと杖のような物が見えた。

 ――王子よ、我が守護する王国のため、ダイヤモンドの騎士の装備の核たる宝玉を持ち去ることを許して欲しい。

 アラビクの身に着けた装備から、5つのダイヤが抜け出て、光の球のもとへ集う。

 ――王子よ、残念ながらもはや御身がLlylgamynに戻ることは叶わぬ。しかし、御身の姉と故郷は、我が責任を持って守護することを精霊神の名にかけて約束しよう。余生はこの地にて過ごすがよい……。
 光の娘よ、汝はこののち、否応なく大きな運命の渦に巻き込まれる。その時、汝が正しき道を進むなら、王子は必ず手助けをしてくれるであろう………。

 小さくなる声とともに、光に包まれた杖が5つの宝玉を従えて、ゲートに消えていく。

 ――さらばだ。汝らのもとにLa-La Moo Mooの加護があらんことを…………。

 杖がゲートに飲み込まれるとともに、ゲートも消失した。

 その場に居合わせた一同は―教師のコルベールも含め―あまりに破天荒な出来事に呆然と我を失っていた……が。

 「クッ…こ、ここは……?」

 先程の出来事が夢ではなかったことを表す生きた証拠とも言える存在、”アラビク”と呼ばれた青年が、意識を取り戻したことで、一気に現実感を取り戻す。

 「大丈夫かね? 誰か、水系統が得意な人は、癒しの魔法を」

 「先生、わたくしがちょうど治療用の秘薬を持っていますわ」

 「では、レビテーションをかけたうえで、僕のゴーレムに運ばせよう」

 「―ゴーレムでは遅い。私の風竜に乗せて」

 「あ~ん、はるか彼方の国の王子様ですって! 恋心が燃え上がるわぁ!!」 

 "亡国の王子にして、魔人を討ち果たした騎士"という、おとぎ話に出て来そうな英雄の出現に、場は一気に盛り上がり、傷ついたアラビクを囲んで保健室へと連れて行く。

 ……そして、そんな盛り上がりに乗りそ損ねた少女がひとり。

 「ちょ、ちょっと! そいつ……じゃなくて、その方は、私が召喚したのよォーーーーー!!」

 はたして、ヴァリエール嬢は、無事に使い魔を持てるのであろうか?
 ……まぁ、諸々の理由から、望みは薄そうである。

 「待ちなさいよ! そんなのアリ!?」


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