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ゼロの登竜門-04

ゼロの登竜門 第二章 『土から鉄、そして鋼へ』中編


正直に言うと、キングの飛行速度は圧倒的だった。
おそらくシルフィードを凌駕するだろう、翼もないのにこのように空を飛べる存在がいるとは、驚きだった。
竜……とギーシュはルイズの言っていた言葉を思い浮かべる。
そして、『ポケモン』という種類の生き物。
ここまで圧倒的な力の差を見せられると、嫉妬ではなく羨望が心を占める。
そして、膨れあがる期待。
ヴェルダンデも、同じ『ポケモン』ならば、どれほど強く成長を遂げてくれるのだろうか……
地面を掘ってフーケを仕留めただけでも、その成長への期待に拍車がかかる。
夜が明ける頃にはアルビオンが見えてきた。
白の大陸アルビオン。上空に位置し移動するため、他国に恵みの雨をもたらす浮遊大陸。
しかし、見えたのは良いものの肝心の先に行ったルイズたちの船が見あたらない。
すると、ヴェルダンデがそれを見つけたようだ。
飛ばされないようにその両腕でキングの頭、冠に爪を食い込ませ、ギーシュはそのヴェルダンデの腹をぎゅっと抱きしめるように。
ヴェルダンデの目は複眼、ほぼ視界360度を見ることが出来る、昆虫類特有の目を持っている。
捜し物はお手の物らしい。
眼下おおよそ50m。どうやら船より高い位置を飛んでいたようだ、通りで寒いはず。
すぐさま駆けつけようとするキングをヴェルダンデを通して制する。
様子がおかしい。船に接舷している別の船、旗を掲げていない。
「空賊か……王党派と貴族派とで争っているらしいから仕方ないことなのかな」
それはともかく、ルイズと子爵は無事だろうか。
もし手を出していたら………。
「子爵はともかく、ルイズに手を出していたら………キングを止められないなぁ」
自嘲気味にギーシュは笑った。

☆★

バタン、と牢の扉が激しく開かれた。
「ききききき貴様らっ、あのあのあのあの蒼い、蒼い大蛇は、いいいいいい一体何だっ!?」
蒼い大蛇、と言う単語でルイズは即座に理解した。
キングだ、キングが来たのだと。
愛おしさにきゅうっと心が高鳴るのがわかる。
可愛いキング、愛しいキング、こんなところまで追いかけてきたなんて。
すっくと立ち上がり、ルイズは言った。
「大使としての待遇を要求するわ。みんな揃って空の藻屑にはなりたくはないでしょう?」
悪魔的な笑みを浮かべたルイズに、男はたじろぎながら出ていった。
おそらくはお頭へ連絡に言ったのだろう。
「ルイズ……蒼い大蛇って……」
「えぇそうよ、わたしの使い魔。名前はキングって言うの。とても可愛いのよ」
とても嬉しそうに笑う、そのルイズの笑顔は、数多の男性を魅力しかねない、太陽のような微笑みだった。
「ここまでこれたのかい」
「? おかしな事を言うのね。元々学院からラ・ロシェールまであの子に乗ってきたのよ? まぁ、さすがにアルビオンまでは大変だから船に乗ろうと思って宿を取ってたんだけど……」
くすっと笑って「あの子にとっては問題なかったみたいね」と言った。
そしてワルドは口を噤み、ルイズも沈黙した。
再び扉が開かれる。甲板に出ろ。

☆★

「やあルイズ。宥めるのが大変だったよ、ヴェルダンデを褒めてくれないか?」
甲板に出てルイズが最初に見たのは苦笑しているギーシュの顔だった。
キングの頭の上からヴェルダンデと一緒に顔を出している。
キングは主と再会できた歓びにルイズにすり寄ってきた。ルイズも両手を開いてそれを迎える。
レビテーションで甲板にギーシュは降り立った。
「何があったの?」
キングを撫でながら言うルイズの言葉に、ギーシュは無言で薔薇の杖を背後のもう一隻の船へ向けた。
マストが、無い。
唖然として視線を戻したルイズにギーシュが説明する。
キングは問答無用で光線を放ち、敵の船のメインマストを吹っ飛ばしたらしい。
大騒ぎになった空賊達をギーシュが口上で脅し、ヴェルダンデがキングを宥めたらしい。
「この船に乗っていたメイジの少女、そして男性は無事か。無事ならばよし、そうでないならばこの大蛇が火を噴くぞ」
メインマストを一撃で吹き飛ばしたキングに空賊達はあわてふためき、『メイジの少女』であるルイズたちの元へ来たというわけである。
「大蛇って何よ、竜って言ったじゃない」
「仕方ないじゃないか、竜と言っても通じないんだから」
さて、と言ってルイズは空賊達に向かい合う。
「交渉しましょうか。わたし達をアルビオンの王党派の元へ送り届けなさい、もちろんこの船を見送ること。代償はあなた達の命と船よ」
ルイズの静かな声に空賊達は一瞬ざわめくが、ピタリと止まる。
そして、船長らしき男が一歩踏み出してきていった。
「王党派に味方してなんになる、あいつらはあと一週間とせずに倒れるぜ?」
「空賊に言うような事じゃないわ」
「なぁ、貴族派に付く気はないか? あいつらはメイジを欲しがっている、たんまり礼金も弾むだろうし。なによりそんな強えぇ使い魔を持っているんだ、歓迎されるだろうぜ」
「死んでも嫌よ」
ルイズは左手をキングの頬に触れて、お頭の顔を真っ直ぐににらみ返した。
大丈夫、キングがいる、絶対屈したりしない。
「もう一度言う。貴族派に付く気はないか?」
「しつこい男は嫌われるわよ」
キングが口を開き、そこに光が集まり出す。
甲板の上でぶっ放すとは思っていなかったのか、お頭が物凄く慌てた様子で手を振った。
「待った待った待った、わかった、わかったからもう言わないよ。その物騒なモノを止めてくれ」
キングも本気で打つつもりはなかったようで、光はすぐに拡散して消えた。
「まったく、トリステインの貴族は気ばかり強くてどうしようもないな。まぁどこぞの国の恥知らずより何千倍もマシだが」
そう言って頭は笑った、大きく、大きく、とても嬉しそうに、楽しそうに笑った。

☆★

王党派の最後の砦、ニューカッスルへ行くには大陸の下、雲の中から入るらしい。
というのも、貴族派の旗艦『レキシントン』号が空を見張っているからである。
そう説明するのは、空賊のお頭改め、アルビオン王国皇太子ウェールズ・テューダーだ。
空賊に身を窶していたその理由は、貴族派の補給を断ち、それを自分の補給に出来るからとのこと。
戦争に綺麗事は必要ない、使える物は何でも使う、だが誇りだけは捨てないとのことだった。
綺麗事を謳って死んでしまっては意味がない。だから敵の補給物資を奪っているのだ。と言った。
空はレキシントンに封鎖されている、あんな化け物を相手には出来ないから大陸の下にある秘密の港からはいる。
雲の中へ入り、大陸の下に潜ると日がまったく入らなくなる。
そんな場所を、地形図と測量と魔法の灯りだけで航行するらしい。
とんでもない技術だと誰もが思った。
しかし、ウェールズは軽く笑って、王立空軍の航海士なら難しい事じゃない、と言った。
「奴らは所詮空を知らぬ無粋ものさ」悲しげにそう言う。
「一時停止」「一時停止、アイ・サー」
「微速上昇」「微速上昇、アイ・サー」
どうやら目的地に着いたようだ。
王党派の戦艦の名は『イーグル号』、マストを飛ばされた哀れな船だが、それでも無事に航海してみせるとは、言うだけはあるようだ。
それに続くのはマリー・ガランド号。ラ・ロシェールからルイズたちの乗った船。
船はルイズが買ったような物である。そして目的はウェールズへの援助。彼らに全て差し上げることになった。

☆★

アルビオン王族の最後のパーティーと称され、ニューカッスルでは盛大に宴が催された。
簡易の玉座には老いた国王。ジェームズ一世が坐した。
立ち上がって杯を掲げようとしたが、歳を取っているためかよろめくと、臣下から激励の声が上がる。
明日には死んでしまうと言うのに、なぜ彼らはこうも笑っていられるのだろうか、ギーシュには理解できなかった。
誰も彼もがワインを、料理を勧めて「アルビオン万歳」と行って帰っていく。
そんな光景を、ギーシュは現実感の薄い目で見つめていた。
『命を惜しむな、名を惜しめ』それが実家グラモンの教えである。
けれど自分は落ち零れ。魔法の才能に溢れた兄や父と違って、未だにドットクラスの魔法しか使えない。
このままではいけないとはわかっている。だが精神力を高めると言っても、一体どうしたら良いのかわからない。
ただ、ギーシュは冷めた目で、悲しき未来へ進まんとする彼らを見つめるだけだった
「楽しんでもらえているかな?」
「こ、コレはウェールズ皇太子様。あ、あの、船の上ではご無礼を………!」
突然ウェールズから声をかけられ萎縮するギーシュ。
ウェールズはそれを笑いながら顔を上げるように言った。
「まさか外国に王党派の味方になると言う者がいるとは思えなくてね……悪いが試させてもらったんだよ。顔を上げてくれないか?」
ウェールズに再三促され、ギーシュはおずおずと顔を上げる。
すると穏やかながら凛々しい顔が目の前にあった。
「名前を聞かせて貰えるだろうか。勇気あるメイジ君?」
「は、はいっ、ぼく………いや自分はギーシュ・ド・グラモンと申します」
「グラモン………あぁ、トリステインのかの有名なグラモンの」
「息子でございますッ! ご存じでしたか、真に恐縮です!」
「そうかしこまらなくても良いよ。どうせ王党派は明日にでも消えてしまうだろうからね……」
「………しかし貴方はまだ皇太子です。未だに礼を尽くさねばならぬ相手です、明日のことはぼくにはまだ解りません」
ギーシュの言葉に、ウェールズは目を丸くし、そして嬉しそうに笑った。
「ぼくの部下にあと100人ばかり君のような部下がいれば、わからなかっただろうにね」
「もったいない……お言葉です」
再び礼をするギーシュに、ウェールズは話題を変える。
「ところでそれが君の使い魔かい?」
背負ったヴェルダンデを指してウェルズは言う。そう言えばずっと背負ったままだったことをギーシュは思い出す。
名前を訊かれて、応える。
「ヴェルダンデか。よい名前だ。何を食べるのかい? 取ってきてあげよう」
「め、滅相もありません。皇太子様自らそのようなことをしてもらうわけには、ぼくが自分で取ってきます」
ギーシュのその言葉に、ウェールズはしばし考える仕草をして、言った。
「……ミス・ヴァリエールとアンリエッタは、幼い頃親友だったのだよ。どうやら今までもそうだったようだね」
「はい……?」
急に何を言い出すのだろう、とギーシュは思った。
しかし次の言葉で目玉が飛び出るくらい驚いた。
「ぼくもそのような親友が欲しかった。と今更に思うんだ。しかし皇太子として普通に友達も作れない身分………どうか今だけ君を親友だと想わせてはもらえないだろうか」

☆★

コップに水を入れてきてもらって、ヴェルダンデに上げるとちゅうちゅうと吸うようにして飲み始める。
ウェールズは他の臣下と話をするためのよそへ行ってしまった。
代わりにルイズがやってくる、浮かない顔をして。
「もういや………わたしここにいたくない。なんで死んじゃうのに闘おうとするの?なんで愛する人を置いて死ぬなんて平気で言えるのよ。ねぇギーシュ、男の人ってみんなそう言うモノなの」
「………ぼくにはまだ解らないよ……でも彼らの気持ちはほんの少しわかる。ぼくだって、モンモランシーのためなら命を捨てる……いや、賭ける覚悟を決められると思うよ」
ギーシュの心は、今は驚くほど静かだった。
普段は軽薄で、女の子を口説くのに躍起になっているはずの彼の心が。
それは、友との触れ合い。
心配だと、ただそれだけの理由で駆けつけたキュルケとタバサの二人。
そして、友と呼んでくれたウェールズの優しさ。
自分と、年が変わらないのに、なぜ自分はこんなにも情けないのだろう、みっともないのだろう、と。
そして、背中に負い続けていたヴェルダンデの重さも。
「彼らには………ウェールズ様達の背中にはこのアルビオンという一国が乗っているんだ……それを捨てて逃げるわけにはいかない。捨てられないモノのために命を賭けるんだ」
「………わからない、わからないわっ。ギーシュ貴方の行っていることが全然わからない! だって愛しているのよ? 愛している人がいるなら何もかも捨ててでも駆けつけるべきじゃないの!?」
「………ルイズ、その話はもうよそう……おそらく平行線になる。ぼくらに出来ることは、もう彼らを見送るだけしかできない……」
そう、なにもないのだ。

☆★

会場から大きな魚の料理をもって、ルイズは外のキングの元へ行く。
するとキングを撫でている金髪の男がいた。
「ウェールズ様………」
「やぁ、ミス・ヴァリエール。君の使い魔はずいぶん綺麗だね」
「お褒めにあずかり光栄でございます」
両手に皿を持ったままルイズは頭を下げる。
「あの……キングに食べさせたいのですが、よろしいでしょうか」
「あぁ、すまない。邪魔したね」
「いえ……」
傍らにどいたウェールズの横に立ち、ルイズは魚料理をキングに差し出す。
キングはその料理を、舌でべろんと舐め取ってしまった。
そして咀嚼、しっぽも骨もお構いなく。後に残っているのは皿の上の盛りつけ野菜のみだった。
はしばみ草もいっしょに食べている、あれとても苦いのに。
しばらく沈黙していたが、ルイズは意を決して、もう一度説得した。
しかし、その説得もさっきと同じ、平行線だった。
アンリエッタの手紙は既に渡した、手紙も受け取った。
後は帰るだけ、それだけが任務なのに、ルイズは諦めきれない。
親友のアンリエッタがウェールズを愛し、ウェールズもアンリエッタを愛しているというのに、愛する人を置いて死にに行こうとするその行為が、理解できない。
ギーシュの忠告も、頭の中から既に飛んでいる。
ただ亡命して欲しいと、アンリエッタが待っていると、愛する人を残して死んではいけないと、切々と感情にまかせて訴える。
しかしウェールズは首を振るだけ。
「ミス・ヴァリエール、君は正直すぎる。そのように正直では大使は務まらぬよ……最も、亡国への大使にはこの上なく適任かもしれないね。名誉以外護るモノがないのだから……」
そう言って、ウェールズは話を打ち切った。
「美しいね………最期にこのような美しい使い魔が見れたのはとても幸運だろうと思うよ」
ウェールズは優しい手つきでキングを撫で、キングは嬉しそうに身じろぎをした。
そして何か言おうとするルイズを遮り、パーティー会場へと戻っていった。
その後、呆然としている内にワルドが来て、結婚を告げられた。
辛いことを考えなくてもよくなるのだろうか、そう思ったルイズは、ワルドのその申し出を受けた。

☆★

「わたし。子爵と結婚するわ」
外から戻ってきたルイズは、ギーシュの隣に立ってそう告げた。
「そうか……式にはぼくも参加するよ」
滅び行く国で結婚式を挙げる。ウェールズに神父を依頼したとのこと。この上なく光栄なことだろう。
結婚に関してはさっきルイズが去った後やってきたワルドから聞いた。
てっきり恋人同士だと思われていたらしい。ラ・ロシェールで二人っきりで話したことからそう思っていたとのことだ。
あいにくだがギーシュには心に決めた人がいる。ルイズは可愛らしいとは思っていたがそれ以上の感情はないのだ。
「ルイズを幸せにして上げてください。大切な……そう、大切なぼくの友人です」
友人、滅多にそんな言葉を使わないギーシュだが、不思議と自然のその言葉が出た。
そう、友人だ。
お忍びでルイズの部屋に来たアンリエッタ殿下の話を盗み聞き、力になりたいとやってきただけの、五日もたたないこの短い旅だったが。
ギーシュがルイズたちに友情を抱くには十分な時間と理由があった。
『ポケモン』という共通の使い魔を有しているのも、理由の一つ。
「速く帰りたい……。この国嫌い、イヤな人達とお馬鹿さんで一杯。ウェールズ様も残される人の事なんて考えていないのよ……」
そうじゃない、事はギーシュにはわかっていた。
けれどあれだけ話して分かり合えないのだから、もうこれ以上言うことは無い。
「……すこし飲んだらいい。きっと落ち着く」
そう言ってなにか取りに行こうとしたギーシュの服を、ルイズはぎゅっと掴んだ。
「ルイズ?」
「………ごめん、ちょっと背中……貸して」
ルイズのそんな弱気な行動にギーシュは少しだけどぎまぎとしたが、ルイズの頭が背中に触れるのを感じ、動きを止めた。
「ギーシュ貴方って結構カッコイイわね」
しばらくした後のルイズの言葉にギーシュは笑って応えた。
「咲き誇るのは薔薇、女性の目を楽しませるのは花の役目。女性を守るのは棘の役目なのさ」
「その割には、二股誤魔化そうとしてメイドに突っかかってたじゃない」
「あはは、その話は蒸し返さないでくれたまえ。あの後ケティにもモンモランシーにも、シエスタにもちゃんと謝ったさ」
ぼくの軽率な行動で傷つけてしまったことを深くお詫びしたい。女性を守るべき棘が傷つけてしまうなど言語道断だった、と。
「へえ、縒りもどったんだ。モンモランシーと。じゃぁわたしと二人でこう言うところに行ってるってなるとヤキモチ焼くんじゃないの? あの子」
ギーシュの背中にコツンと額を付けたままルイズは言うが、ギーシュは笑って「構わないさ」と言った。
「たまには君に花を向けるのも良いだろう。愛しいモノが居るからと言って他の人を無視することはぼくには出来ない」
す、とルイズが離れる。
「ありがと、ちょっと楽になったわ。………それとギーシュ、貴方ちょっと変わった?」
「………そうかな。どうだろう………少なくとも君には色々感謝しているよ。今回のことも、ヴェルダンデのことも」
「………わたしキングの所行ってくるね、ずっと一人だと寂しいだろうから」
ルイズはそう言い残して小走りで後を去る。
そしてギーシュはぬるくなったワインを、一気に飲み干した。



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