あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~-05

トリステイン魔法学院、その腹中に抱える数多の教室の一つから響く声。2年生に昇級した
貴族の少年少女たちが、大学の講義室のような石造りのそこでそれぞれに談笑する。
そこへドアを開け放ち、平民の使い魔を召喚した『あの』ルイズが現われる。
そんな彼女をいつも通り馬鹿にしようと思ったクラスメイト。
が、しかし、
「汝、いきなり足蹴とは何様のつもりだ!」
「うっさい! アンタが起こさないのが悪いんだからね!」
怒髪天、教室内に大怒号が響いた。
乱暴に開けられたドアが悲鳴をあげて石壁に叩きつけられる。
「何だと!? それが人の顔面に蹴りをかました者の物言いか!?」
「そうよ! アンタは使い魔! 嫌だけど使い魔! 何したって問題ないの!」
「ふざけるな! 厄介になるとは言ったが使い魔になるとは言っておらん!」
仁王立ちの両者共に大激怒の相、こめかみに青筋立たせて怒り狂う。
理由は分からんがとにかくやばい。
第六感で感じる鬼気、その場にいた全員が二人に声をかけるのを止めた。
「そっちこそふざけないでよ! 昨日使い魔するって言ったじゃない!」
「厄介になるという意味で言っただけだ! 故に見返り分としてちゃんと洗濯物を
 運んだろうが!」
「朝起こしてって言った!」
「知らぬわそんなこと! 己で勝手に起きぬか!」
「起こすの!それも使い魔の仕事なの!」
「貴様は幼児か! それくらい自分でしろ!」
「うるさいうるさいうるさいうるさい! アンタにそんなこと言う資格なんてないんだから!  使い魔はご主人様に絶対服従なんだから!」
「だから使い魔ではない! ただの雇用契約を結んだだけの雇われだ!」
「うっさい! アンタは使い魔なの!」
ルイズは見上げ、九朔は見下ろす。
にらみ合う両者に走る火花、触れれば火傷しかねない雰囲気。
九朔にしてみれば蹴られた恨み、ルイズにしてみれば起こさなかった恨み。
どっちもどっち、引く気など毛頭さらさらないのだ。
「そもそもアンタってば平民じゃない! 平民如きが私に意見しようなんて百年……
 いいえ六千年早いのよ!」
「それは残念だったな、我は別世界から来た故汝の言う貴族など関係ない」
「うっさい! そもそもアンタが異世界から来たとかいうのも怪しいもんだわ!
 それにここでは私は偉いの、だからアンタ言う事聞くの!」
「だが断る」
「っ~~~~~~~~~!!」
手を震わせるルイズ、そして手に持つ杖にお得意のアレ発動の予感。
本能が叫んでいる、今日はヤバイと。
己の身の危険に生徒たちがぞぞぞぞとのけぞり緊急退避しようとした。
が、
「そこの二人何をしているのですか、早く座りなさい!」
そこに扉を開けて現われた女性教師ミス・シュヴルーズに九朔とルイズは口論を止め、
同時に顔を顔を背けた。
教室内をいっせいに安堵の溜息が流れる。全滅の危機は回避された。
「せせせ先生が来たから止めよ、止め。アアあンタここ、床だから。使い魔は椅子なんかに
 座ったら駄目なんだから、だから床。わわ、分かった?」
「ほう? ならば我はそこの椅子に座るとしよう。余っているからな」
床を指差すルイズを無視してややぽっちゃり系の少年マルコリヌの横にドカッと座る九朔。
「っっっ~~~~~!」
自分の言葉と正反対の行動にいよいよ本気でブチ切れそうになるルイズ。
だが、教師の目もあってか残っていた理性を総動員して耐え、そのまま九朔を無視して
席に着いた。
「おい、ここはメイジが座る席だぞ。卑しくも平民で使い魔の君が――ひぎぃ!」
ルイズの使い魔、しかも平民風情に座られて機嫌を害したマルコリヌだったが、軽く呻き、
口から出かけた自分の意見を引っ込めた。
全身に冷水をぶっかけられ、背骨に氷を突っ込まれたかのような強烈な悪寒が体内を
駆け抜ける。
「汝……何か言ったか?」
ぎろりと自分を睨みつける瞳に皮膚が粟立つ。
こいつを怒らせたらヤバイと本能的な部分が危険信号を発していた。
ついでに、脳内で大爆発に巻き込まれてきりもみ回転しつつ宙を舞う自分も幻視できた。
「え? ああ、いや!? なななにもないよ、うん! 使い魔だしご勝手に!」
「……ああ、そうさせてもらおう」
咄嗟に出た言葉に後悔するマルコリヌだったが、誰にも気づかれることなく授業は
開始される。
「皆さん、春の使い魔招喚は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、
 こうやって春の新学期に様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
それは良かったねと興味なさげにうなずく生徒達、先ほどの危機のせいか全員の体から
力が抜けていた。
が、
「あと……あの、あなた。あなたも使い魔でしたね?」
九朔に向かって微笑みかけるミス・シュヴルーズ。
実に空気の読めてない一言に、溶けた筈の教室内の空気がまた凍り付く。
再び訪れる全滅の危機に、その教室に居た全員がシュヴルーズを思い切り睨んだ。
しかし本人に気づいた様子は一つもない。
こりゃ駄目だと生徒の何人かが危機を感じ、逃げる準備を始める。
「ええと、何も言わないと言う事はそれで良いのでしょうか?」
「残念ながら我は使い魔ではない。其処におる娘に勝手に召喚されただけだ。
 …………実に不愉快だがな?」
明らかに自分に向けられたであろうその言葉にビクリと体を振るわせるルイズ、三分の二の
生徒がのけぞった。
「あらあら、では貴女の使い魔なのですかミス・ヴァリエール? 実に変わった
 使い魔を召喚したのですね」
微笑みながら言うそこに悪意はないのだろうが、時と場合が悪すぎる。
残りの三分の一が更にビクリと震えたルイズにのけぞった。
ちなみに九朔の横にいたマルコリヌは、隣に座る使い魔から立ち上る兇悪な波動に
今すぐ逃げたい気分であった。
「それでは、授業を始めましょう」
そんな悲哀に満ちた生徒の様子に気づくことなく、彼女は授業を続ける。
空気を読めない事は時に幸福である。
通夜のような面持ちで授業を受ける気分にならなくて済むのだから。
「私の二つ名は『赤土』。赤土のシュヴルーズです。『土』系統の魔法をこれから一年間
 皆さんに講義します」
そう言って四大系統の魔法、失われた『虚無』を説明する彼女。だが、その言葉を聞く者は
誰もいない。今にも爆発しかねないルイズのアレに恐怖しているからである。
いつもならここまで恐怖を感じる事はないのだが、どうしてだか今日はいつもより酷い
アレが起きると確信していた。
魔法は感情によっても威力を左右されることがある。
魔法を嗜む者ならそれくらいは常識である。
では、今にも怒髪天仏契(ぶっちぎ)りなルイズがアレをしたら?
答えはいうまでもない、考えるだけでゾっとくる。
しかしそんな生徒の思いを無視するように、
「では、あなた。ここにある石ころを望む金属に変えてごらんなさい」
シュヴルーズはルイズを指名した。きっと彼女は状況を悪化させる天才だ、全員が思った。
「ややややや、止めた方が良いですミスシュヴルーズ!!」
がたんと席を立ち、豊満な胸を揺らしてキュルケが叫んだ。その顔は褐色なのに真っ白、
蒼白と言う比喩でなく真っ白。
そりゃそうだ、誰だって死にたくない。
「どうしてですか?」
「先生初めてですよね? いつも止めたほうがいいですけど今回だけは本当の本当に
 駄目です!」
その時教室にいた生徒達の心が一つになった、キュルケが叫ぶのに合わせて他の生徒も
立ち上がる。
「危険です! とっても危険です! 究極的に危険です!」
「その通りです先生!」
「机が消炭になっちゃいます!」 
「椅子が木っ端微塵になります!」
「教室が消滅します!」
「メディーック! メヂィィィィィック!」
最後の一つに関してはあれだが思い思いに絶叫する生徒達。
しかし、
「何て事を言うのですか貴方達! クラスメイトにそのようなことを言うとは
 あなた達、それでも貴族ですか!
 ……さあミスヴァリエール、気にしないでやってごらんなさい。
 大丈夫、失敗を恐れていては何も出来ませんよ?」
彼女には通じなかった。
余りの空気の読めなさに、この教師の息の根を今すぐこの場で止めるべきでは、と何人かの
生徒が殺意を抱く。
そしてその様子に流石に九朔もおかしいと気づく。
ルイズ後生だから止めて、と叫ぶ生徒達の異常に第六感よりもっと先にあるという
幻の感覚あたりがムズムズしてきた。
「お願い本当にこれだけは止めてねえお願い止めてルイズ」
「やります!」
キュルケの願い空しく名乗りをあげるルイズ。
それが決定打、とうとうクラスの中が阿鼻叫喚図になった。
我先にと逃げようとする生徒達、だがシュヴルーズは授業中ですよといって赤土を
生徒達の足元にくっつけて拘束する。
空気が読めないだけでなく鬼であった、鬼畜であった。
生徒はいよいよ死を予感する。
「てけり・り」
「ああ、我も今すぐ退避した方が良い気がしてきた」
足元の赤土をはがそうと躍起になるマルコリヌを見て立ち上がり教室を出る九朔。
扉を閉め、そこから20メートルほど離れた。
と同時、
『ぷぎぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!』
「なぁっ!?」
「てけり・り!?」
シュヴルーズの叫び声が轟き、そして大爆音と共に教室の扉が吹き飛ぶ。
もうもうと上がる黒煙、教室の中から飛び出す蛸人魚やら飛ぶ目玉、カラスにふくろう、
ついでに火トカゲも出てきて、いつの間にか退避していたキュルケの足元で
ガタガタ震えていた。
中を覗いてみると実に酷い有様だった。
最下段にあったはずの机は跡形もなく、そこに近い机も木っ端微塵に
吹き飛んでいた。
かろうじて残った机もほとんど使い物にならない様だ。
教室に居た生徒はと言えばその爆発に巻き込まれてぴくぴく痙攣している者も居れば
顔をすすけて放心している者、恐怖のせいか部屋の隅でガタガタ震えている者がいる始末。
爆心地と思われる地点では泡を吹きビクンビクンとやや命の危険を感じさせる痙攣の仕方を
している教師の姿と制服がボロボロに破けたルイズが。
嗚呼、こういうことだったのか。
そう得心する九朔の後ろ、眼鏡をかけた青色の髪の少女がぼそりと「無残」と呟いたのが
実に印象的だった。



結局その後、ちょっとの失敗どころでない大爆発のお陰で錬金の授業はお流れとなった。
結構ヤバゲな痙攣をしていたミス・シュヴルーズはどうにか命を取り止めはしたが、
当分授業はしたくないと言って自室に引きこもった。
生徒達もさすがに罵倒する気にもなれないレベルの爆発に疲れ果て、ルイズに恨めしい視線を
送るだけに留まった。
正直なところ重傷がシュヴルーズだけというのは奇跡であった。
「今日は……ちょっと失敗しただけ。本当ならちゃんとあの小石が鉛になってたんだから」
「そうか」
「いつも失敗してるけど、でも成功するはずだったんだから」
「そうか」
「だって、アンタを召喚したんだから成功して当たり前なんだから」
「そうか」
部屋に戻って制服を着替えて戻ってきた後、ルイズは教室の隅、椅子の上で体育座りを
して呟いていた。
それに相槌を打ちつつ九朔は新しい机を運び込む。
机を運ぶ作業など、メイジであるなら『レビテーション』や『フライ』ができて当然なので
簡単な筈なのだが、何をしても失敗のルイズには無理な話である。
おまけに華奢な細腕、机を持ち運びできる腕力なぞあるわけがない。
そういう訳でルイズに代わって九朔とランドルフが爆発の後片付けをしているわけだが、
それを眺めているだけというのがルイズ自身悔しかった。
平民ではあったが、自分は『サモンサーヴァント』には成功したのだ。
だから錬金も成功すると思ったのに。
「どうして………失敗なのよ」
聞こえないように呟く。
ボロボロの机、砕けた椅子、積み上げられた残骸、それを見ていると何も出来ない
『ゼロ』という事実をまざまざと見せ付けられているような気がしてたまらない
気持ちになる。
だが、悔しい理由はそれだけではない。
「てけり・り?」
「ああ、この机ならこちらで良いだろう」
「てけり・り」
「……汝、思った以上に便利だな」
「てけり・り!」
クザクだ。
あれだけ罵りあったのに九朔は侮辱するどころか何も言わない。
あのぷにぷにと一緒に、平然とした顔で自分を無視して机を運び込む。
言われたわけでもないのに、自分から率先して。
それはまるで自分など眼にない、頼りにもならない、役立たずだ、そんなことを暗に
言われているようで、馬鹿にされるより何だか堪えた。
でも、だからといって手伝おうと言うのも嫌だった。
こちらから手伝おうなどとでも言えば、それこそ自分が悪かったと認めてしまうような
ものだ。
そんなの貴族としてのプライドが許さない、でも見たままと言うのも嫌。
どっちつかずな思考に胸の辺りがもわもわとする。
「ねえ」
そして気づけば声をかけている自分がいる、なんだか変な気分だ。
「なんだ」
こちらに顔を向けることのない九朔、なんとまあ失礼な。
でも、聞く事が聞くだけに今はこっちの方が良いかなとも思う。
「なんであんた、私を手伝うの? 私の事嫌いなんでしょ?」
自分で尋ねておきながら返答が少し怖いと思う。
「そんなあんたがどうして私の代わりに部屋を片付けるのよ?」
でも、聞かないではいられなかった。
初めての成功の後の失敗で弱気だった自分をもう一度信じたかったのだと思う、目の前に
ある自分のたった一つの魔法の成功例に語りかけることで。
らしくない弱気が声色に出そうになるのを堪え、悟られぬように、とにかくいつものように
強気な姿勢、胸を張り貴族らしく尋ねる。
「使い魔として仕事するのは良いんだけどね。何も言われないでやるって事はやっぱり、
 自分の立場がわかったてことかしら?」
そこで初めて九朔がこちらを見た。
「違う。そんなの、後味が悪いからに決まっておろうが」
「え?」
つまらないことを尋ねるものだな、そんな風に九朔が溜息をつく。
翡翠の瞳があまりにも真直ぐで、一瞬たじろぎそうになるルイズ。
「ど、どういうことよ? それってつまり私を馬鹿にしてるわけ?」
「思いたければ勝手に思っておれ。汝に理解など期待しておらん」
勝手にやってろと机を運び続ける九朔にムカッ、ときた。
自分の方が上なのに、まるで見下されている。
さっきまでの悔しさとかなんか色々吹き飛んだ気分。
「ご、ごごご主人様になんて口をきくのよ、この馬鹿!!」
「ああ、雇用契約上のな。何でもやる下僕とはまた違う」
「違うの! あんたは使い魔で私はご主人様!」
「知らぬ」
「きぃぃ~~~~~!」
なんか、怒りとか色々爆発した。椅子から飛び降り教室を飛び出す。
だが追いかける気配が一つもない、気になって少し戻って見てみれば平然と机を運び
続けているではないか。
余計腹が立った。
「あんた昼ごはん抜き! あと教室も全部綺麗にしときなさい! いいわね!」
それだけ言って出て行ってやった。すこし、気分がよくなった気がした。



「てけり・り?」
「ああ、追わなくて良いさ」
去っていく足音に、ランドルフの目が問うので答える。
「てけり・り」
承知と伸ばした触手20本に雑巾を持って蠢きながらランドルフが床を拭く。
それを手伝い、九朔も机を拭いていく。
別にルイズのためにやっているわけでなはない。
ただ、彼女のあの様子を見ていたらやらないではいられなくなっただけだ。
悔しそうな、それでいてずっと何かに耐えてきたようなあの鳶色の瞳。
ああいう眼をした人間を放っておけないのはいったい何故なのか自分自身にもそれは
分からない。
ただ、こういうのを無視するのは自分的に後味が悪いのだった。
ただのお人よしなのかもしれないが。
「てけり・り」
「ああいう人種は下手に慰める必要はないさ、逆効果になる」
「てけり・り?」
伸ばした目玉が目の前にやってくる。
伸縮率自在なショゴスならではのワザである。
「まあな。良く分からんが、あの者の気持ちが何故だか理解できるのだ。
 もしかすると、我等は似た者同士なのかもしれん」
「てけり・り」
触手が肩を優しくたたく。見た目から想像できぬほどに気配りがきく良い奴である。
「まったく、汝は本当に良くできておる喃?」
「てけ~り」
「謙遜するでない。我など汝ほど役にたってはおらぬさ」
「てけり・り! てけ~り!」
「あはは。まるで主婦だな、汝?」
笑い合う一人と一不定形。
傍目から見れば実に背徳的である。ついでに官能的で、網掛け3枚くらい冷蔵庫がけ。
ぐう、と腹の音が教室に響いた。
朝から何も食べていないことを思い出す。
「そういえば飯抜きであったな」
「てけり・り!」
「ん? シエスタ? ああ、あのメイドか」
ランドルフに言われて思い出す九朔。
そういえばお礼をしますとか何とか言っていた。良ければ昼食でも頼んでみるのも
良いかもしれない。
「良し、終わったらさきほどの洗濯場まで行ってみるか」
「てけり・り」
「よし。では、この教室をさっさと綺麗にしてしまおう」
「てけり・り!」
その後、天井から隅に至るまで教室は綺麗にし尽くされ磨きつくされた。
リフォームの匠と言われた魔法使いも驚きのこの現象、後に誰かがこう呼んだ。

『暗くくすんだ石壁だってごらんのとおりに家族の笑顔が明るい教室に!
 劇的ビフォーアフター・オーギュメンター・ショゴス28剛DX現象』

……名づけた者にどんな電波が下りたかは知らない、知りたくもない。
何処かでエレキギターをかき鳴らす音がした。


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