武器屋を出た後、ルイズ達は残金で極々普通のショッピングを楽しんだ。
服屋ではルイズとシエスタの私服を選び、それだけで2、3時間が経ったり。
昼食を取るため入ったレストランでは、隣の人の料理まで食べようとするカービィを必死になって押さえ込んだり。
露天商ではルイズが口車に乗せられ、危うくただのガラス玉を借金してまで買うところだったり。
……楽しむ、というよりハプニングの連続だった。
しかしルイズの当初の目的である『使い魔との絆を深める』は、カービィの喜び様をみる限り果たされたようだ。
それだけでもルイズは大変満足していた。
そしてルイズに連れられてきたシエスタも、単純にルイズ、そしてカービィとの買い物を楽しんでいた。
前述の通りハプニングは多々あったが、兄弟達と一緒に暮らしていたシエスタにとっては苦ではなかった。
それどころかこの騒がしさが懐かしくもあり、楽しさだけでなくどこか心地よさを感じていた。
――シエスタのルイズへの評価が、『恩人』から『妹のような存在』に変わった――
服屋ではルイズとシエスタの私服を選び、それだけで2、3時間が経ったり。
昼食を取るため入ったレストランでは、隣の人の料理まで食べようとするカービィを必死になって押さえ込んだり。
露天商ではルイズが口車に乗せられ、危うくただのガラス玉を借金してまで買うところだったり。
……楽しむ、というよりハプニングの連続だった。
しかしルイズの当初の目的である『使い魔との絆を深める』は、カービィの喜び様をみる限り果たされたようだ。
それだけでもルイズは大変満足していた。
そしてルイズに連れられてきたシエスタも、単純にルイズ、そしてカービィとの買い物を楽しんでいた。
前述の通りハプニングは多々あったが、兄弟達と一緒に暮らしていたシエスタにとっては苦ではなかった。
それどころかこの騒がしさが懐かしくもあり、楽しさだけでなくどこか心地よさを感じていた。
――シエスタのルイズへの評価が、『恩人』から『妹のような存在』に変わった――
こうして楽しい時間は終わり、今はちょうど街から学院へ帰ってきたところだ。
日はとうの昔に暮れ、漆黒が空を覆っていた。
ルイズはカービィを、シエスタは荷物を女子寮へ運ぶため、馬小屋の前を歩いていた。
「ぽょぉ…………」
「くすっ、カービィさんったら大きな欠伸」
「あれだけはしゃいでたんだもの、疲れたのね。それにもうこんな時間だし……」
ルイズが空を仰ぐと、月がもうすぐ真上に来ようとしていた。
時を忘れて楽しむとはよく言うが、流石に忘れすぎたかと公開する。
その横でシエスタはクスリと微笑んだ。
「でも、楽しかったですよ。また連れて行っていただけますか?」
「そうねぇ……まぁ、シエスタが行きたいなら、また3人で行きましょうか」
「ありがとうございます、ルイズ様」
「べ、別にお礼なんていいわよ」
(私もまた行きたいし)
例の如く、最後の一言はシエスタには聞こえていなかった。
ルイズ・フランソワーズ、芯から素直になるのはまだまだ掛かりそうだ。
そんなやり取りをしながら3人が本塔に差し掛かった時、『それ』は動き始めていた。
日はとうの昔に暮れ、漆黒が空を覆っていた。
ルイズはカービィを、シエスタは荷物を女子寮へ運ぶため、馬小屋の前を歩いていた。
「ぽょぉ…………」
「くすっ、カービィさんったら大きな欠伸」
「あれだけはしゃいでたんだもの、疲れたのね。それにもうこんな時間だし……」
ルイズが空を仰ぐと、月がもうすぐ真上に来ようとしていた。
時を忘れて楽しむとはよく言うが、流石に忘れすぎたかと公開する。
その横でシエスタはクスリと微笑んだ。
「でも、楽しかったですよ。また連れて行っていただけますか?」
「そうねぇ……まぁ、シエスタが行きたいなら、また3人で行きましょうか」
「ありがとうございます、ルイズ様」
「べ、別にお礼なんていいわよ」
(私もまた行きたいし)
例の如く、最後の一言はシエスタには聞こえていなかった。
ルイズ・フランソワーズ、芯から素直になるのはまだまだ掛かりそうだ。
そんなやり取りをしながら3人が本塔に差し掛かった時、『それ』は動き始めていた。
「ぽよ? ……ぽよ?」
異変にいち早く気がついたのはカービィだった。
今にも閉じてしまいそうだった目を見開き、辺りをキョロキョロと見回し始める。
街でスイカを見つけた時とは違い、何やら焦っているようだ。
「ちょ、ちょっと、どうしたのよカービィ?」
腕の中で忙しなく動くカービィをルイズがしっかりと抱きしめる。
今度は逃げられないようにと力を入れた、その時だった。
天をも貫かんばかりの爆音が辺り一面に響いた。
「きゃっ!?」
「な、なによこれ!?」
爆音に思わず頭を押さえてしゃがみ込むシエスタ。
ルイズもカービィを抱きしめたまま音の出元に視線をやった。
「なっ………!?」
「ぽよぉー……」
その先の光景に、ルイズは度肝を抜かれた。
それはもうカービィがギーシュを打ち負かしたあの時のように。
なんと、大きさ30メイルはあるだろうというゴーレムが、本塔の壁目掛けて巨大な拳を叩きつけていたのだ。
ゴーレムの右肩には黒いフードを被った何者かが乗っていた。
恐らくこのゴーレムを操っているメイジだろう。
ゴーレムの大きさから、トライアングルメイジ級の実力を持っていることが伺い知れる。
この強大な敵を前に、ルイズはカービィを地面に下ろして杖を取り出した。
異変にいち早く気がついたのはカービィだった。
今にも閉じてしまいそうだった目を見開き、辺りをキョロキョロと見回し始める。
街でスイカを見つけた時とは違い、何やら焦っているようだ。
「ちょ、ちょっと、どうしたのよカービィ?」
腕の中で忙しなく動くカービィをルイズがしっかりと抱きしめる。
今度は逃げられないようにと力を入れた、その時だった。
天をも貫かんばかりの爆音が辺り一面に響いた。
「きゃっ!?」
「な、なによこれ!?」
爆音に思わず頭を押さえてしゃがみ込むシエスタ。
ルイズもカービィを抱きしめたまま音の出元に視線をやった。
「なっ………!?」
「ぽよぉー……」
その先の光景に、ルイズは度肝を抜かれた。
それはもうカービィがギーシュを打ち負かしたあの時のように。
なんと、大きさ30メイルはあるだろうというゴーレムが、本塔の壁目掛けて巨大な拳を叩きつけていたのだ。
ゴーレムの右肩には黒いフードを被った何者かが乗っていた。
恐らくこのゴーレムを操っているメイジだろう。
ゴーレムの大きさから、トライアングルメイジ級の実力を持っていることが伺い知れる。
この強大な敵を前に、ルイズはカービィを地面に下ろして杖を取り出した。
一方、ゴーレムの肩に乗っている黒いフードのメイジ――今巷を騒がせている怪盗『土くれのフーケ』は、目の前の文字通り『壁』に舌打ちをした。
事前調査でその強度をフーケは知っていたので、今放った渾身の一撃で穴が開くかはほぼ運の問題だった。
確証を持つまで行動しないフーケにとってこの方法は功を焦った感が否めなかったが、知れば知るほど攻略法のない宝物庫にはこの方法しかないと賭けに出たのだ。
そして賭は失敗した。
たった今ゴーレムの拳を受けた壁は、罅が入ってたものの穴が開くことはなかった。
「やっぱり早まった真似はするもんじゃないね……」
後悔するがもう遅い。
今回は諦め、次回別の方法で挑戦するしかないようだ。
フーケは教師達が来る前に、ゴーレムを操って早々に立ち去ろうとした。
瞬間、宝物庫の壁が爆発した。
事前調査でその強度をフーケは知っていたので、今放った渾身の一撃で穴が開くかはほぼ運の問題だった。
確証を持つまで行動しないフーケにとってこの方法は功を焦った感が否めなかったが、知れば知るほど攻略法のない宝物庫にはこの方法しかないと賭けに出たのだ。
そして賭は失敗した。
たった今ゴーレムの拳を受けた壁は、罅が入ってたものの穴が開くことはなかった。
「やっぱり早まった真似はするもんじゃないね……」
後悔するがもう遅い。
今回は諦め、次回別の方法で挑戦するしかないようだ。
フーケは教師達が来る前に、ゴーレムを操って早々に立ち去ろうとした。
瞬間、宝物庫の壁が爆発した。
「なっ!? なんだい!?」
ゴーレムでも破壊できなかった壁が、罅が入っていたとはいえ爆散したのだ。
驚かない筈がない。
ふとゴーレムの足下を見れば、今の魔法を放ったと思われるメイジが杖を構えている。
フーケはゴーレムでも壊せなかった壁を破壊したその威力に一瞬恐怖した。
あんな魔法をまた使われたら今度は自分の身が危ない、と。
しかし、いつまで経っても次の爆発は起きなかった。
疑問を抱きつつこれ幸いと開き直ったフーケは、ゴーレムに宝物庫の番を任せ、自分は開いた穴から内部へ侵入していった。
「誰だか知らないけど、恩に着るよ。どこかのバカな誰かさん」
宝物庫を物色しながら、フーケは穴を開けてくれたメイジに感謝した。
そしてフーケに感謝されているメイジは、その様子を見ながら地団太を踏んでいた。
「なんで当たらないのよ! ワルキューレには当たったのにいぃ!」
「ルイズ様っ!」
シエスタはゴーレムの注意がルイズ向いたことに気付きすぐさま叫んだ。
その叫びにルイズは冷静さを取り戻した。
そして上を向くと……ゴーレムの足が頭上にまで迫っていた。
「きゃああああああ!?」
「ぽよぉ!?」
カービィをひっ掴み、その場から離れるルイズ。
直後、ゴーレムの足が今まで立っていた場所を踏み潰した。
「あ、あわわわわわ……」
目の前の圧倒的力に、ルイズは開いた口が塞がらない。
このゴーレムをどうにも出来ないのかという考えが頭を横切ったとき、彼女の視界にカービィが入ってきた。
同時にシエスタが背負っている剣の存在を思い出す。
「……そうよ! こういう時のために買ったんじゃない!」
ルイズはシエスタに駆け寄ると、背負ってもらっているデルフを引き抜いた。
「おっ! 早速出番みてぇだな!」
「ええ……死 ぬ ほ ど 役 に 立 っ て も ら う わ よ ?」
ルイズの凄みの効いた声に違和感を感じつつ、デルフはカービィに握られる瞬間を今か今かと待っていた。
久々に暴れられる、と期待しながら。
しかしルイズはデルフをカービィに渡さず、思い切り放り投げた。
「なっ!? おいっ、何やってんだ小娘! 気でも触れたか!?」
「カービィ、吸い込みよ!」
「ぽよっ!」
ゴーレムでも破壊できなかった壁が、罅が入っていたとはいえ爆散したのだ。
驚かない筈がない。
ふとゴーレムの足下を見れば、今の魔法を放ったと思われるメイジが杖を構えている。
フーケはゴーレムでも壊せなかった壁を破壊したその威力に一瞬恐怖した。
あんな魔法をまた使われたら今度は自分の身が危ない、と。
しかし、いつまで経っても次の爆発は起きなかった。
疑問を抱きつつこれ幸いと開き直ったフーケは、ゴーレムに宝物庫の番を任せ、自分は開いた穴から内部へ侵入していった。
「誰だか知らないけど、恩に着るよ。どこかのバカな誰かさん」
宝物庫を物色しながら、フーケは穴を開けてくれたメイジに感謝した。
そしてフーケに感謝されているメイジは、その様子を見ながら地団太を踏んでいた。
「なんで当たらないのよ! ワルキューレには当たったのにいぃ!」
「ルイズ様っ!」
シエスタはゴーレムの注意がルイズ向いたことに気付きすぐさま叫んだ。
その叫びにルイズは冷静さを取り戻した。
そして上を向くと……ゴーレムの足が頭上にまで迫っていた。
「きゃああああああ!?」
「ぽよぉ!?」
カービィをひっ掴み、その場から離れるルイズ。
直後、ゴーレムの足が今まで立っていた場所を踏み潰した。
「あ、あわわわわわ……」
目の前の圧倒的力に、ルイズは開いた口が塞がらない。
このゴーレムをどうにも出来ないのかという考えが頭を横切ったとき、彼女の視界にカービィが入ってきた。
同時にシエスタが背負っている剣の存在を思い出す。
「……そうよ! こういう時のために買ったんじゃない!」
ルイズはシエスタに駆け寄ると、背負ってもらっているデルフを引き抜いた。
「おっ! 早速出番みてぇだな!」
「ええ……死 ぬ ほ ど 役 に 立 っ て も ら う わ よ ?」
ルイズの凄みの効いた声に違和感を感じつつ、デルフはカービィに握られる瞬間を今か今かと待っていた。
久々に暴れられる、と期待しながら。
しかしルイズはデルフをカービィに渡さず、思い切り放り投げた。
「なっ!? おいっ、何やってんだ小娘! 気でも触れたか!?」
「カービィ、吸い込みよ!」
「ぽよっ!」