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ゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~-04

「ん………ふわぁぁ」
朝が来た。
記憶を失った大十字九朔、初めての異世界での朝である。
「てけり・り」
「ん? ああ、良い朝だなランドルフ」
「てけり・り!」
枕部分から伸びる目玉も、朝の日差しの明るさに嬉しそうにそのスライムっぽい赤色を
小刻みに震えさせている。
はてさて、昨日あったばかりだというのにこうも親愛の情を深めることができる自分は
一体何者なのか?
「考えたところで何も分からぬのでは、どうしようもないわな?」
「てけり・り」
うんうんとうなずく触手。気が合う、無駄に気が合う。腕と触手を組み、ガッツポーズ。
「ま、冗談はさておき」
ランドルフの変形したベッドから下りると九朔は己を召喚した張本人かつ、記憶喪失の鍵を
握るであろう少女のベッドに向かう。
「すぅ………」
未だ眠るルイズ、その寝顔は昨日の口調から想像できぬほど愛くるしい。
正直なところ、こんな娘が自分たちを召喚したとは思えない。
それなのに『招喚』の事実を受け入れてしまっているのは記憶から抜け落ちた『招喚』の
記述が彼に影響を及ぼしているからか。
「てけり・り」
「ん? ああ、そういえば洗濯物を持っていけとか言われてたな」
「てけり・り」
既にベッドから変形済みのランドルフ、丸のような四角のようなそれとも球のような……
とにかくよく分からない不定形に戻った彼は頭の上と思われる部分に洗濯籠を乗っけて
ぷにぷにと跳ねていた。
「世話になる身だ、一緒に行くとしよう」
ルイズを起こさぬように部屋を退出する一人と一匹(?)、そのまま洗濯場であるという
場所へ直行しようとしたのだが、
「ふむ」
「てけり・り」
「ううむ……」
「てけり・り………」
「ん………」
「てけぇりぃ~……」
迷った。
なにぶん初めての場所である、ルイズからの口伝えだけで洗濯場が分かる訳がなかったのだ。
部屋に帰ろうにもさてどっちから来たか思い出せず右往左往、分からないならば進むのみと
闇雲に行けば右往左往、気づけば中庭らしき場所で立ち尽くすことになる二名であった。
「困ったな」
「てけり・り」
天を仰ぎ唸る一人と一匹。
さて、どうしたものか。
悩む二名はどかりと地面に座り、顔と目玉をつき合わせて腕と触手をああだこうだと
手振り身振り交えて相談する。
はたから見れば実に背徳的な光景、メイジではないっぽい平民の少年と使い魔というには
なんかスライムっぽい何かが触手をうねうねと蠕動させて話し(?)合っているのである。
なんか、こう官能的。
ついでに背徳的で冷蔵庫に網掛けが必要な感じ。
燃えるというよりひんやりする。
普通なら話しかけない。
できれば、避ける。
お付き合いはお断りしたい。
が、そんなのは誰かが見ていたらという前提あってのこと。
こんな朝早く、日の昇ったばかりでは人も居ない。
ついでにそんな眼で見るような人間も居ない。
つまり、彼等を最初に見る人間には偏見の持ちようがない
というわけで、
「あのぉ……どうかなされましたか?」
彼女、シエスタは声をかけたのであった。
「うむ?」
「てけり・り?」
同時振向く一人と不定形。
そこには彼等の知識にあるメイドというにはやたら露出のないメイド服を着込んだ黒髪の少女。
ここに来て九朔とランドルフが見た二人目の人間であった。
「ああ、実は洗濯場がどこか分からぬのでな。話し合っていた」
「てけり・り」
「は、話し合って………ですか?」
初めて見る少年と触手をうねらせて何か意味不明の言葉で会話を試みている不定形。
恐らく使い魔だと思うので多分それと会話をする彼はメイジかと思ったら
マントは羽織っているが杖は持っていない。
ということは、である。
「も、もしかして……あなたが噂のミス・ヴァリエールが召喚した使い魔さんですか?」
「使い魔かどうかと言われたら断固否定したいところだが……まあ、そうだ」
「てけり・り」
肩をすくめる九朔、それにならうように頭と思われる部分を波打たせるランドルフ。
「ふふ。そんなこと言ったらミス・ヴァリエールに怒られちゃいますよ?
 あ、そちらのぷにぷにした方も使い魔さんなんですか?」
「いや、彼も我と一緒に来たようだが違うみたいだ」
「そうなんですか。でも、可愛いですね」
くすりと微笑むシエスタ、ショゴス相手でもまったく動じないあたり、この世界の人間は
どうやらなかなかに良い胆力をお持ちのようである。
「えっと、ではご挨拶ですね。私、ここでメイドとして奉公させて頂いていますシエスタと
 もうします。どうぞ、よろしくお願いしますね」
恭しくお辞儀するシエスタ。
「我は大十字九朔、そして彼はランドルフだ」
それに倣い九朔も深々と頭を垂れ、ランドルフも目玉がある触手をほぼ180度縦に曲げる。
一応お辞儀のつもりのようだった。
「はい、よろしくお願いします。えっと、洗濯場をお探しとの事でしたよね?
 私もこれから行くところでしたのでどうぞご一緒に」
手招きするシエスタに連れられ洗濯場へ向かう二人。
案内されたのは旧い造りの洗濯場、手洗いとは実に古風である。
「では、ミス・ヴァリエールのお洗濯物はこちらでお預かりしますので終わったら
 また取りに来てくださいね」
ランドルフから洗濯籠を受け取り、そのまま洗濯場へと引っ込もうとするシエスタの後姿を
見つめる九朔。あのような少女に洗濯やら何やらを押し付けるのは何だか心苦しい。
「シエスタ」
「はい?」
そんな彼女に九朔は声をかけてしまう。
振向いたシエスタの表情には辛そうなものなどこれっぽちもありはしないのだが、何だか
このままでは宜しくないのだ。
そういうわけで、結局というか父親譲りのお人よしの血というか、
「我も手伝おう。男手があった方が早く終わるであろう?」
こんな申し出をしてしまう九朔。
「そそそ、そんな! ミス・ヴァリエールの使い魔さんにそんな事していただくなんて!」
わたわたと驚いて首をブンブン振るシエスタ。
「いや、構わぬさ。我は記憶を失っておるのでな、こうやって体を動かすなり何なりして
 おれば何か思い出すかも知れぬ」
「てけり・り!」
向かい合う九朔とシエスタの間に入り込む目玉。
「ランドルフ、汝も手伝うのか?」
「てけ~り。てけり・り、てけり・り!」
「ほう。汝、そのようなマネも出来るのか?」
「てけり・り!」
「え? え?」
自分を無視して訳の分からぬ会話を始める一人と一不定形に戸惑うシエスタ。
「てけり・り。てけーり・り! てけ~り!」
「あはは! それはすごい!」
「あ、あのクザクさん?一体何を……」
「ん? ああ、なに。ランドルフが中々におもしろい特技を持っていたのでな。
 それについて話しておったのだ」
「おもしろい特技?」
「ああ、これだ」
指差す先で変形するランドルフ、スライムっぽいそれが固形状に変化して四角い箱になる。
「箱……ですか?」
「ただの箱ではない。……よし、我も手伝うぞランドルフ」
そう言うと、近くの水場から組み上げた水をどんどんランドルフの中に流し込んでいく九朔。
皆目検討つかないその行動に疑問符をどんどん浮かべていくシエスタ。
「あ、あの……クザクさん?」
「済まぬな、もう少し待っていてくれ」
「あ……はい」
目の前で行なわれる奇妙な儀式を見守るしかないシエスタ。いつしか集まっていたほかの
メイド達もそれに注目する。
そうしているうちになみなみと満たされた箱型ランドルフの中、九朔は近くにあった洗濯を
どばどば放り込んでいった。
そして、
「では、ランドルフ……仕れ!」
パチンと指が鳴らされた次の瞬間、
「てぇぇぇぇけぇぇぇぇりぃぃぃぃぃぃぃりいいいぃぃぃぃぃ!!!!」
なんとランドルフが激しく蠕動し始めた。
蠕動は中に溜められた水にまで伝わり、ぐるぐると回転を始める。洗濯物はグルグル回転し、
ついでにランドルフも激しく蠕動。
逆回転も加わり螺旋の動きもばっちり、揉み洗いでもなんでもござれである。
蠕動と回転が組み合わさればこれすなわち汚れ落としもばっちりである。
「おおおおお!!!」
見る間に洗濯物の汚れが落ちていくさまに寄ってきたメイド達からも歓声があがる。
これぞいわゆるショゴス製洗濯機、いろんなものに奉仕している種族なのである、これくらい
できて当たり前だろう……多分。
「す、すごいですランドルフさん! こんな洗濯法初めてです!」
「てけり・り」
なぁにこれくらい朝飯前よ、と身体を蠕動させつつ自慢するように触手を振るわせる
ランドルフとがっちり握手するシエスタ。
不定形スライムと少女の親交、実に微笑ましい光景である。
他意などありやしない。
洗濯物はその間にも放り込まれてはピッカピカされ、放り込まれては漂白され、放り込まれて
は染みも落とされ、そんなそんなの繰り返し。
九朔もそのできあがった厖大な量の洗濯物を両腕に抱えて干していく。
気づけば本日分の洗濯は完全無敵に完成、終了。素晴らしい。
「ふむ、思った以上だな?」
「てけり・り!」
洗濯場の前にずらりと並んだ厖大な量の洗濯物を見て感慨深く呟く一人と一不定形。
メイド達からいたく感謝されたのもあって実に爽快な気分である。
「洗濯の手伝いもやってみるものだな」
「てけり・り」
お互いに得心してうなずく。だがしかし、何か忘れているような気がする。
大事だったような、そうでもなかったような。
「何だと思う?」
「てけり・り?」
さあ?と触手をうねらせる不定形。
もう少し頭をひねってみる。
と、目の前を通り過ぎていくルイズと同じ格好の少年少女たち。
「ああ」
思い出してパンと手を打つ。
ルイズを起こすのを忘れていた。
が、
「まあ、一人で起きることくらいできよう。何も問題あるまい」
「てけり・り」
うんうんとうなずく九朔とランドルフ。結構冷たい奴等であった。


そのままのほほんと朝の陽の光を浴び続ける一名と一不定形。シエスタを始めとした
メイド達は朝食の用意があるといって既になく、朝食の香りが何処からか漂ってきている
だけである。
「そういえば、昨日から何も食べておらぬな」
「てけり・り」
すきっ腹がきゅんと鳴る。
はぁ、と溜息をつく九朔とランドルフ、そんな一名と一不定形に駆け寄る殺意の篭った足音。
空腹のせいで警戒心の緩んでいた九朔はそれにゆっくりと振向く。
そして次の瞬間、
「ぐほぁぁぁあああっ!!」
ルイズの両足ぞろえのとび蹴りが、美事に顔面にクリーンヒットした。
本来の九朔であったら喰らうはずのないそれに、女性っぽい中性的なキレイな顔が見事
フッ飛ぶ。
空中二回転して地面とキス、どこぞのスナイパーもびっくりである。
「おお……うぐぉ………んぐぅぅ………」
顔面へのダメージに悶絶する九朔。
おかしい、こういう役回りは自分ではない、何故か分からないが走馬灯のように緑の
■■■■っぽい誰かが頭に浮かんだ。
「良くも起こさなかったわね? 良くも良くも起こさなかったわね? 起こせって言ったのに
 起こさなかったせいでもう少しで私、寝坊して朝ごはん食べ損なうところだったわ……」
静かな怒りがルイズの周りで渦巻いていた。
ズンと、大地を踏みしめる。
「キュルケにも思い切りバカにされたわ。『貴女ったら使い魔が平民なだけじゃなくて
 ちゃんと使役もできてないの?』って思い切り見下ろして言われたの。
 分かる? ねえ、分かる? バカにされて悔しい私の気持ち?」
人間を、しかも平民を召喚したという事実が今更になってルイズに怒りをもたらしている
ようであった。
「て、てけり・りぃ………」
その鬼気迫る、大気震わす怒りにランドルフは身を恐怖で震わせた。
何かトラウマ的なものが幻視できた。
「でも、良いわ。今回はこれだけで許してあげる。でも次やったら今度はもっと
 酷いんだから………わかった?」
「て、てけり・り!」
ぎろりと、ランドルフを睨みつけるルイズ。
逆らってはいけない、決して逆らってはいけないと彼は理解する。
脳内で主役とは思えぬ邪悪な笑い声をあげる少女の声が響いたのは恐らく幻聴では
あるまい。きっと、彼女はそれと同種のものを持っている。
「行くわよぷにぷに」
「てけり・り!」
彼女は本来の主ではない。
だが、彼はそれに従う。
ショゴスも恐怖によって平伏するするのである。
悶絶する九朔をランドルフに引きずらせ、ルイズは教室へ向かう。
無論九朔もランドルフも朝食を食べる事まかりならなかった。
嗚呼、無残、無残。


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