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スクライド・零-20


スクライド・零 20


「なんと、『土くれのフーケ』の正体はミス・ロングビルじゃったのか」
『どっちかというと逆のような…』
オールド・オスマンに【破壊の杖】奪回の顛末を報告にしたルイズら3人+カズマであるが、
そのオスマン、口調とは裏腹に目はとりたてて驚いていない。おかげで、心の中で
妙なツッコミも入れようというものである。
「美人じゃったもんで、酒場で給仕をしていたところに声をかけて秘書にしてしもうた」
「「「なんでまた」」」
疑問を唱えたのはコルベールとルイズ、そしてキュルケである。タバサとカズマは我関せず。
「尻をなでても怒らんかったうえに魔法も使えると言うんでな。
にしては秘書を始めてからはぶん殴られたり蹴られたり踏まれたりもしたもんじゃが…。
とにかく、すこぶる付きで有能な秘書じゃっただけに残念だの」
本当に残念なのか表情からどうかわからないから困ったものだ。
『どこから冗談なんだこのじーさん』
みんなそう思ったという。

「まー、別にミス・ロングビルがフーケだったなんぞと城に報告せにゃならんわけでもなし、
フーケは逃げたことにでもしてしまってここにいる人間以外他言無用、
監視つきでここで働いてもらった方がわしとしては正直助かるんじゃがの。
おぬしらどう思う?」
何を言い出すのだこのじいさまは。
「あの、ルイズ、いえ、ミス・ヴァリエールなど踏み潰されて死ぬところでしたし、
学院の被害は壁だけかもしれませんが、流石によそでも犯罪を犯した者を
引き続き雇用するのはどうかと思いますわ」
まずキュルケが異を唱える。続けて、
「その通りです。いくら自らは貴族の名を捨てたとはいえ、貴族の子弟を導くべき
学院に働く者としてふさわしくないかと」
ルイズが追随する。それにタバサも軽くうなづいて同意。
コルベールに至っては、
「学院長。官憲に突き出すと脅せばセクハラし放題、とか考えておりますまいな?」
などと言う始末である。

「わーかったわかった。ミス・ロングビルは衛士に引き渡すわい。
その際にミス・ヴァリエールとミス・ツェルプストーの『シュヴァリエ』の爵位申請を
しておこう。ミス・タバサはすでにシュヴァリエの爵位を持っておるので精霊勲章をな。
追って沙汰があることじゃろうて」
その言葉に3人の顔がほころぶ。が、ルイズが気づいた。
「あの、オールド・オスマン。カズマには…」
「残念ながら彼は貴族ではないのでな。それに言ってはナンじゃが
使い魔の手柄は主の手柄じゃ。ミス・ヴァリエールが褒美を受ければ十分…」
建前としては確かにそうだろうが、3人にしてみればカズマがいなければ、
ゴーレムを倒しフーケを捕らえることなど不可能であったことは自明だ。
いくらカズマ本人が全く気にしていない風でも納得しがたいものがある。
「と言われるのがオチじゃからの。代わりに報奨金でもたんまりふんだくってやるわい。
しばらく待っちょれ」
ほっと胸をなで下ろすルイズににやにや笑いをするキュルケが思う。
『なんだかんだ言ってもうまくやっていけそうじゃないの、この二人』
そのなんとなーく暖かい視線に気づいたルイズはと言うと、
とたんに不機嫌になったりするんだが、そこはまぁ、ルイズだししょうがない。

「そういえばお前さん、カズマと言ったかの。なんであの杖の使い方を知っておったんじゃ?」
オスマンが問うと、コルベールまでも興味津々といった目で見る。
「あぁ? ガキの頃からしょっちゅう見てりゃ、イヤでもそれくらい覚える」
どうでもよさそうにそう答えるが、興味を引かれた者もいるようだ。
「なんと、君はあれほどの巨大なゴーレムを吹き飛ばすほどのマジックアイテムと
子供の頃から接する機会があったのかね!」
すなわちコルベールである。愉快な勘違いをする男だ。
「あんなもんただの武器だ。珍しくもなんともねぇ」
つまらなそうに吐き捨てたが、それに反してコルベールはいっそう目を輝かせているではないか。
「なんと、あれほどの物が珍しくないと。うぅむ、これは俄然興味が湧いてきましたぞ。
ぜひそのあたりを詳しく…」
「いい加減にせんか、ミスタ・コルベール。迷惑がっとるしそもそも今でなくてもええじゃろ。
さて諸君、無事に【破壊の杖】も戻ってきたことじゃし、今夜は予定通り
『フリッグの舞踏会』を執り行う。諸君らが主役じゃ、大いに着飾るがええ」
オールド・オスマンの宣言に小さな歓声があがった。


さて、『フリッグの舞踏会』はアルヴィーズの食堂の上の階にあるホールで開かれる。
流石は貴族の子弟の集まる魔法学院、華やかなものだ。
キュルケは自らの魅力をたっぷりと振りまきながら、パートナーをとっかえひっかえして
踊っている。対してタバサであるが、その小柄な体を黒いパーティードレスに包み、
体に似合わぬ勢いでテーブルの上の料理と格闘中。ドレスの作りもあるのだろうが、
見た目が一切変わらないと言うのが恐ろしい。ルイズはまだ姿を見せていない。
そしてカズマはというと、中庭にいた。

「いいんですか? 行かなくて」
どこからか運び出してきたテーブルに、舞踏会へ出す料理の一部を並べながら
シエスタが話しかける。
「…」
別に気まずくて黙っているとか言うわけではなく、一心不乱に食べているだけである。
ある意味子供のような様子にシエスタの顔に笑みが生まれる。
そもそもここにいる理由が子供じみたものであったりするのだが、さすがにそこまでは
シエスタには知るよしも無い。

そうしているうちにルイズがホールに登場する。清楚な白のパーティードレスに包まれた
その姿は、なるほど、公爵家第三息女と呼ばれるにふさわしい可憐な美しさを見るものに
印象付けている。
最後の主役の登場に、楽士が改めて音楽を紡ぎだすと男子生徒が我先にとルイズを誘う。
その手を優雅な所作であしらうのもまた堂に入ったものである。
「そこまで袖にするところを見ると、既に君の手を取る幸運な男性は決まっているのかな?
ミス・ヴァリエール」
「少なくともあなたではないわね、ミスタ・グラモン。あなたの手は他につなぐ
相手がいるでしょう?」
互いに軽く微笑みながら言葉を交わす。そこへ曲の変わり目を見計らったキュルケも
やってきた。
「あらミス・ヴァリエール。お供はどうしたのかしら?」
その言葉にルイズはちょっぴり顔を引きつらせるとすねたように答える。
「いいのよ、来たくないっていうんだもの」
そうは言うが、さすがにいつもの右袖を切り落とした黒革ジャンではまずかろうと、
従者用の服に着替えさせようとしたら逃げ出した、というのが真相だったり。

「んな窮屈なかっこできるかっての」
「まぁ」
とシエスタが朗らかに笑う。
「相変わらずすごいですね、カズマさんは。私と同じ平民なのに平気で貴族の方に
逆らえるなんて」
「平民も貴族もねぇ。俺はそうしなきゃ生きてこれなかっただけだ」
そういうカズマを少々熱っぽい視線で見るシエスタ。
「そういえばカズマさん、ミス・ヴァリエールに召喚される前はどんなところに
いたんですか?」

「そうね、それは是非私も聞かせてもらいたいわ」
ルイズである。主役が会場からいなくなってどうする、せっかく二人きりだったのに、
などとシエスタが考えているかどうかはさておき、ルイズが満足するまでカズマは
長い長い話をさせられたのであった。

それをバルコニーから見守る目が3対あったことを記して、この物語を終わることとしよう。



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