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ハルケギニアの騎士テッカマンゼロ-5


「ここね」
巨大な寺院を前にして、ミス・ロングビルは呟いた。
ここはタルブの村の近くに建てられた寺院である。
入り口と思しき巨大な扉には錠前がかかっているが、学院の宝物庫のように厳重なわけでもない。
この程度ならば何とかなるだろう。
錠前にアン・ロックの呪文をかける。
ガチャンと音がして、鍵が解放される。満足げな笑みを浮かべたミス・ロングビルは、ためらうことなく巨大な扉を開いた。

「まさか、これが竜の羽衣?」
竜? 鳥? いや、これはハルケギニアにあるどんな生物とも似てはいない。
明らかに羽ばたくことはない巨大な翼。大きさは30メイル以上はある。竜などよりはるかに大きい。
だが、このような形をしているだけならばただのガラクタだと思うことだろう。
しかしミス・ロングビルにはこの竜の羽衣の特異性が手に取るように分かった。
触れれば切れそうな、名剣のごとき精悍なシルエット。
その肌は金属でありながら、鉄や銅などとはまるで異なる未知のものだ。
固定化の魔法がかけられており、さびや劣化も見られない。
「これは……予想以上かもね」
ミス・ロングビルはそっと竜の羽衣に触れた。金属独特の冷たい感触がする。
竜の羽衣というのはもともとはただの伝説であり、大して期待していなかった。だが、これは素晴らしい収穫であるかもしれない。
もちろんただの張りぼてである可能性もある。だが、もしそうでないとしたら……
あらためて彼女は陽光に照らされた竜の羽衣、かつて別の世界でブルーアース号と呼ばれ、ラダムと戦っていた宇宙船の同型機を見上げた。
それは差し込まれた陽光を反射して、鈍い輝きを放った。


ラダムの化け物が、鋼鉄をも引き裂く爪を、牙をかき鳴らしながら迫ってくる。
その醜悪な姿は、根源的な恐怖、嫌悪感を掻き立てた。
テックセットシステムは捕食した生命体、つまり私たちにラダムとしての知識や本能を植えつけると同時に、侵略のための情報も引き出す。
ひょっとしたら、ラダム獣の姿もそこから生み出されたのかもしれない。そんなことを考えながらも、わたしはクリスタルを掲げた。
「テックセッター!」
クリスタルの拡大したフィールドに包まれた身体は、ラダムの生み出した最強の肉体へと変貌する。
「テッカマンゼロ!」
変身を完了したわたしはテックランサーを構え、ラダム獣の群れの中に飛び込んでいった。
ハルケギニアの何者よりも高速で飛行しながら、次々と醜悪な化け物を切り裂いていく。
フライはおろか、レビテーションすら使えなかったわたしが、こんなかたちで空を飛べるようになるなんて思ってもみなかった。
けど、いくら倒してもラダム獣は際限なく増えて、しまいには空を真っ黒に染め上げた。
――ッ!?
ひどい頭痛を感じた。ラダムの本能が、わたしの中で目覚めようとしている。
早く、早く何とかしないと!
ボルテッカしかない。わたしは肩の装甲を展開し、ラダムの群れの中心へと狙いを定めた。
光が、反物質粒子が収束していく。
「ボル……」
「ゼロ、また僕を殺すのかい?」
必殺の一撃を放とうとしたところで、不意に声がかけられた。
倒したはずの、ありえない声。
見れば、いつの間にかテッカマンダガーが現れ、群れの中心に陣取っていた。
「な、なんであなたがそこにいるのよ!?」
倒したはず、倒したはずなのに!
「いつまで、そんな悪あがきを続けるのかな?」
「いつまでって……ラダムを全て滅ぼすまでよ!」
わたしの答えを、ダガーは一笑に伏した。そして、まるで芝居のような大仰な仕草で手を振り、言う。
「あははは! 何を言ってるんだい! 無駄なあがきさ。結局君は、ラダムに戻る運命なんだよ。ほら」
彼の声が、わたしを現実に引き戻した。ラダムの本能が、今まさにわたしの意識を侵食しようとして……
「イヤアアァァァァァッッ!!」
その叫びを最期に、わたしの意識は完全に途切れた。


ルイズは自分の声に目を覚ました。
あたりは真っ暗で何も見えない。指をはじいて、ランプをつける。
ぼんやりとした明かりが、狭くて薄汚い部屋を照らす。
ここはゼロ機関が大至急割り当てたルイズの部屋だ。

ゼロ機関は、ルイズを特例で構成員とすることにしたのだ。
それも当たり前のことだとルイズは思った。
ゼロ機関とは怪物――要するにラダムのことだ――に対する調査、研究を目的として設立された組織だという。
ならばそのラダムに唯一対抗できる力を持ったテッカマンゼロ、つまり自分を手元に置きたいと考えるのは当然だ。
ルイズのほうもそれに文句を言うことはなかった。ラダムと戦う以上、その方が都合がいいからだ。
こうして部屋も用意された。倉庫を急遽改装しただけという粗末なものだったが、別に文句も言わなかった。
ラダムと戦うのに、何の不都合もなかったから。
今のルイズは、ラダムと戦うためだけに生きているようなものだった。
母親がラダムのせいで行方不明になったという話を聞き、それはさらに強く、激しいものとなっている。
だからテッカマンダガー、ギーシュを倒すこともできた。
そのことは何ら苦痛も後悔も感じていない、そのはずだった。

「なのに……なのに何で眠れないのよ!」
寝巻きは汗でぐっしょりと濡れている。悪夢にうなされたせいだ。
そして、ルイズの感じる体の変調はそれだけではなかった。
食事は喉を通らず、少し食べてもすぐに戻してしまう。心ここにあらず、といった感じでボーっとしていることも多くなった。
これが既に何日も続いている。
ちょうど公爵領から戻ってきたときからこの調子なため、ワルドたちはそこで何かあったのかと考えを巡らせていた。
それは間違っていない。しかし、彼らが真相に辿り着くことはありえない。
ルイズ自身がその心中を吐露しない限り。
そして、ルイズは誰にも言うつもりはなかった。ミスタ・コルベールに託された自分の使命を。
誰も知らないはずだ。ラダムのテッカマンの正体が、トリステイン魔法学院の生徒たちということは。
もし知ってしまったら、戦いにくくなることは間違いない。
だから、このことは自分の胸にしまっておく。何もかもが終わるときまで、永遠に。


そのように眠れる夜をすごしてきたルイズは、昼間もほとんど部屋を出ることはなかった。
ルイズに声をかけてくる人もほとんどいない。みんな恐れているのだ。あのラダムをも圧倒する、テッカマンという力を。
せいぜい食事のときにワルドが声をかけてくれるくらいで、部屋に誰かが来るということなど皆無だった。
だから、ある発見にゼロ機関が大騒ぎになっていることにも気付かなかった。
そのためドアがノックされたときには心底驚いた。ワルドくらいしか、この部屋を訪れるものはいないはず。
規則正しく二回、続いて短く三回。
ルイズは寝巻きを脱ぎ捨て、慌ててブラウスとスカートを身に着ける。そして立ち上がり、ドアを開けた。
そこに立っていたのは真っ黒な頭巾をかぶった少女だった。少女はルイズの頬に手を添え、顔が良く見えるように持ち上げた。
「……あなたは?」
ルイズは驚いたような声を上げ、それを聞いた少女はうれしそうに小さな身体を抱き締めた。
「久しぶりね、ルイズ!」
その拍子に頭巾が外れた。美しく、気品のある顔立ちがあらわになる。
トリステイン王国の美貌の王女、アンリエッタだった。


突然の来訪者に戸惑いながらも、ルイズはかしこまった声で問いかけた。
「ひ、姫殿下……、何でこのような所に!?」
「今日やっと時間が取れたのです! ああルイズ、ルイズ! 懐かしいルイズ!」
アンリエッタはうれしそうに声を弾ませながら、部屋の中へ入ってくる。
しかし、そんなアンリエッタをルイズは押しとどめようとした。今の自分はともかく、こうも小さく薄汚い部屋が王女を迎え入れるに
ふさわしかろうはずがない。
「お待ちください! このような下賎なところ、姫殿下のいらっしゃるような場所では……!」
「ルイズ、そのような堅苦しい言葉遣いは止めてくださいな。それより、あなたが生きていてくれて本当に良かった!」
「そんな……もったいないお言葉でございます」
「やめて、あなたとわたくしは友達なのよ! トリステイン魔法学院があの怪物たちに占領されたと聞いて、私がどれほど悲しんだか……
生きていてくれ本当にうれしいの。あなたは本物のルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールなのよね!?」
歓喜に満ち溢れたアンリエッタの言葉が胸に響く。姉たちと会ったときと同じように、ルイズの中にもうれしさがこみ上げてくる。
「はい! そのような昔のことを覚えて下さっているなんて、感激です」
ひとしきり懐かしさを確かめ合った二人は、粗末なベッドに腰を下ろした。
「枢機卿から聞きましたけどルイズ、あなたがあの白い魔人なのですか?」
あまりに単刀直入に聞かれ、ルイズはうつむきながらも正直に答えた。
「……はい、そうです」
「本当だったのですね! 今王宮はあなたの噂で持ちきりですわ。怪物たちを瞬く間に蹴散らした白い魔人、救国の救世主!」
「……わたし、そんな立派なものじゃありません」
アンリエッタの賛辞を、無礼だとは思いつつ否定する。虚を突かれたアンリエッタは一瞬呆然としながらも、何とか話題を紡いだ。
「そ、そう……。そういえばあの怪物、ラダムというのですね。ルイズはそれをどこで知ったのですか?」
アンリエッタの世間話的な問いにも、ルイズは首を横に振る。
「……ごめんなさい、姫様。覚えていないのです」
ルイズはアンリエッタに対してまでも、ラダムやテッカマンのことについては固く口を閉ざした。
そう、これは誰にも言ってはならない。
「今、ゼロ機関の方で何か大きな発見があったそうなのですが、ルイズは何か知りませんか?」
「すみません。わたしもあまり部屋を出ていなくて……姫様の方こそご存知ではないのですか?」
すると、アンリエッタはどこか遠くを見るようにして虚空を見上げた。どことなく寂しげな様子だ。
「枢機卿は機密保持だといって何も教えてくれないのです。怪物、いえラダムでしたね。あれが現れて以来、今まで尻尾を振っていた
宮廷貴族たちも掌を返したようにいなくなって……こういったときにこそ本質が見えてくるのですね。本当に信頼できるのは、
もうあなただけですわ。ルイズは、ずっとお友だちでいてくれますよね?」
ルイズは一瞬悩んだ。もちろんアンリエッタのことが嫌いだとか、そういうわけではない。
ただ、自分がこの王女にふさわしいかどうかを考えていたのだ。ラダムを呼び出してしまった張本人で、自らの手で級友たちを倒さなければ
ならない自分が、おともだち?
しかし、アンリエッタは目をきらきらと輝かせ、期待に満ちた眼差しをルイズに向けていた。ここで断れば、アンリエッタが余計に傷つくのは
目に見えている。ルイズは心の中でアンリエッタに謝りながら、彼女の両手を強く握って熱のこもった口調で言った。
「……もちろんですわ。このルイズ・フランソワーズはいつまでも姫さまのお友だちです!」
アンリエッタはしっとりと微笑み、少ししてから手を離した。ルイズは自分の葛藤が見透かされてしまったのかと、一瞬ぎょっとする。
「ありがとう、ルイズ。そんな大切なお友だちであるあなたに危険なことはさせたくないのだけれど……」
そう言いながら、アンリエッタは右手の薬指から指輪を引き抜き、ルイズに手渡した。
「あの、姫様。これは?」
「母君からいただいた『水のルビー』です。せめて、あなたに始祖ブリミルのご加護がありますように」
「そ、そんな! そんなもの、いただけません!」
ルイズは指輪を返そうとするが、アンリエッタはかぶりを振った。
「いいのです。何もできないわたくしですが、せめてものお守りとして持っていてください」
「わ、分かりました。ありがとうございます」
ルイズは深々と頭を下げた。アンリエッタは微笑み、部屋を出た。


「殿下にも何もお話になりませんでしたか。ミス・ヴァリエールは」
部屋を出たアンリエッタの話を聞いたマザリーニは、ため息を吐くように言った。
もともと、ルイズの部屋を訪れるように提案したのはマザリーニだったのだ。
「幼少のみぎり、殿下の遊び相手だったとお聞きしましたので、もしやと期待していたのですが」
「枢機卿! あなたはこのわたくしまでもを利用したというのですか!」
彼の発言に、アンリエッタは激昂する。しかし、当のマザリーニはそれを涼しい顔で受け流した。
「いえいえ、ただ殿下が旧交を温めた際、何かを得たのなら僥倖と思っただけでございます。それに、ミス・ヴァリエールも
近頃ひどく塞ぎこんでおりましたので、殿下との会話で何かが変わればと……」
「……分かりました。その言葉、信じます」
一応、自分とルイズのことを心配してるらしき言葉に納得はする。
「しかし、二度とそのような真似はしないでください」
「肝に命じておきましょう」
釘を刺すようなアンリエッタの言葉に、マザリーニは仰々しく頷いた。

アンリエッタと話をしたルイズは、若干外の様子が気になった。
特に、ゼロ機関の発見とやらが気になる。ルイズは外に出て、ワルドを探した。彼ならば何かを知っているはずだ。
「ワルド、どこにいるのかしら?」
歩いていて、たまたま見かけた衛士に問いかける。魔法衛士隊の隊員だった。
彼はルイズの姿を見ると、直立不動になった。目には畏れの色が浮かんでいる。
「は、はい! ワルド様ならグリフォンの元にいらっしゃってます!」
声も上ずっている。さすがに不快感を覚えたが、それをこの男に言ったところで意味がない。注意して、どうにかなるものではないのだ。
「グリフォン? どこかに行くの?」
「はい! タルブの村で何か発見があったそうです!」
「タルブの村?」
彼の話を聞いたルイズは、少し黙考した。
そういえば、家に帰る途中でワルドが竜の羽衣とか言ってたっけ。ミス・ロングビルが探しているとか……
本物だったのね。ワルドまで駆り出されるなんて、どんなすごい物なのかしら。
それに興味を持ったルイズは、この衛士隊員は放っておいてグリフォンの厩舎まで急いだ。

自らのグリフォンにまたがったワルドは、騎乗したグリフォンを走らせようとした。
しかし、直後に後ろから可愛らしい声が投げかけられる。彼はグリフォンを止め、声のした方へゆっくりと向かわせた。
「あれ、どうしたんだい? 君が自分から部屋を出るなんて、珍しいね」
ワルドの軽口には乗らず、ルイズは言った。
「タルブの村に行くんでしょ。わたしも連れてってもらえる?」
「それは構わないけど、なんでかな?」
「竜の羽衣っていうのが、なんとなく気になったのよ」
それだけ言って、ルイズはグリフォンにまたがった。以前と同じように、ワルドの目の前の位置だ。
「分かった。それじゃ、飛ばすよ!」
ワルドは手綱を握り、勢い良くグリフォンを駆け出させた。


新たにテックシステムから解放されたのは、赤い色をしたテッカマンだ。
ゼロとよく似たシルエットだったが、より禍々しい雰囲気を全身からかもし出している。
彼女はテッカマンの姿のまま、オメガの前に姿を現した。
「おはようございますわ、オメガ様」
「エビル、目が覚めたのですね」
エビルと呼ばれたテッカマンは優雅に一礼して見せた。
「はい。ギーシュが死んだのですね」
「ええ、ゼロに倒されたわ」
「ゼロ……、ルイズに!?」
オメガの言葉を聞いたエビルは、信じられないという風に首を振った。
ダガー、ギーシュはドットクラスとはいえメイジだ。それに比べてルイズ、ゼロはその名の通り魔法を使えない。ゼロそのものだ。
平民とメイジの関係を見れば分かるとおり、魔法が使えるかどうかは戦力において絶対的な差となる。にもかかわらず敗北するとは……。
そんな彼女の疑問を、オメガは肯定する。
「その通りよ。どうやらテッカマンにとって魔法はそれほど絶対的な差とはならないようです。これ以上、ほうっておくわけにはいかないわ」
「そのようですわね。では、このエビルがゼロの首をオメガ様に献上して見せましょう」
「任せます。しかし、ダガーを倒されているのです。油断はなりませんよ」
「所詮ダガーはその程度の器だったと言うことですわ。あのゼロに倒されるなんて」
そしてエビルはオメガに背を向け、テックセットを解除した。
燃えるような赤い髪と褐色の肌があらわになる。
「ゼロ……すぐにあたしが殺してあげるわ」
ねっとりとした口調で呟いた彼女は、うれしそうに唇をゆがめた。


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