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るいずととら第三章-7


「とらさま! な、なんなのかしら、あれ……空が、空がまっくろなのだわ! きゅいきゅい!」
「おちつけよ、しるふぃ……あせるんじゃねえ」

ガリア王室の任務を終えたとらとシルフィードが、その蠢く黒雲と遭遇したのはガリアとトリステインの国境近くにさしかかった頃である。
東から飛来した婢妖の群れが、ラ・ロシェールを目指し飛んでいく。その先にタルブの村があることを、勿論とらは知らない。
ただ――全身を駆け抜けた強烈な予感……嫌な予感に、とらの毛はぞわりと逆立った。

(ざっと100万ってとこか……この婢妖の数……ただごとじゃねえな――!)

とらは空中で急停止して、背中に乗っていたシルフィードに声をかけた。

「しるふぃ、オメエはすぐにたばさのところに戻れ……わしはあの婢妖の行く先に向かうからよ」
「で、でも、とらさま――」

かすかに震えるシルフィードに、あ? ととらは首を傾げる。それが自分を心配しているのだと気がついて、不意にとらは笑い出した。

「ひゃっひゃっひゃ! わしが婢妖どもなんざに負けるかよ! なーに、心配すんな。しるふぃ、オメーも使い魔ならちゃんとたばさのこと守ってやりなァ!」
「は、はいなのだわ、とらさま!」
「おうよッ」

そう言うが速いか、とらはごう!と風を唸らせ飛んでいく。婢妖の向かう先、タルブの村へ……。
シルフィードはしばし心配そうにとらの消えた方向を見つめていたが、やがて頭をトリステイン魔法学院のほうに向けると、全力で空を駆けていった。

(おねえさま、おねえさま。シルフィは心配です……胸が、どきどきするの……)

風韻竜は不安に駆られながら、なおも速度を上げた。


蠢く婢妖の群れを追いかけ、とらは空を駆ける。
かつて長飛丸と呼ばれ恐れられた大妖が空を飛んでいく姿は、まるで金色の矢が走るようだった、

(さーて……わしも守ってやらねぇとな……あのちっちぇえ主人とやらをよ……!)

ニヤリと頬をゆがめる金色の幻獣が、疾風のように加速する。バリ……バリ……と稲妻がとらの髪ではじけて音をたてた。
運悪くその時国境沿いを飛んでいたおぞましい婢妖どもは、悲鳴を上げる時間もなかった。
とらの咆哮に振り返った婢妖は、その目を眩い光に焼き尽くされる。

「おら、邪魔だあァッ! カスどもッ!!」

放たれた雷が黒雲を引き裂く。
金色の風が吹き抜けた後には、ぼとぼとと地面に落下する婢妖の残骸が黒い雨のように地上に降りていった……。

同刻、トリステイン魔法学院――。

「なんなのよ、あの雲は――! あ、あれじゃ……まるで生き物じゃない!」

空を見上げ、キュルケが愕然と呟く。
ラ・ロシェールの方角に向かって進む黒い雲は、ぐねぐねと波打ち、まるで一つの生き物であった。
キュルケの体を恐怖がひたひたと満たしていく。とても嫌な……おぞましい推測が、先ほどからキュルケの頭を離れない。

(まさか……フーケの体からタバサが叩き出した『アレ』じゃないわよね……
 も、もしそうなら冗談じゃないわ……オーク鬼50匹どころの話じゃない。あんなの、私たちじゃ勝てっこない……!)

「ミス・タバサ……あ、あれは一体……」

カタカタと体を震わせるシエスタが、かすれた声でタバサに尋ねる。その顔は恐怖の色に染まっていた。
タバサはじっと黒い雲の動きを見つめていたが、やがてキュルケとシエスタを振り返る。

「……追いかける」
「追うってあなた、馬で行くつもり……? そ、それにルイズだってどこに行ったか分からないのよ! 三人で学院中を探したのに!」

タバサは静かに頷いた。

(おそらく、ルイズは誰かに連れて行かれた。メイジではないはず……メイジが『アンロック』で侵入したなら、わざわざ鍵をかけなおす必要なんてない
 平民でもない。なら――人間以外の、何かのしわざ)

そうでなければ、煙のようにルイズが消えてしまったことに納得がいかなかった。

(……あのルイズの使い魔は壁を抜けることができた。それに――昨日突然部屋に現れた妖魔……)

時逆と時順と名乗ったあの妖怪も、忽然と部屋に姿を現したのだった。

(あの時……妖魔たちは『シエスタと同じ用』だと言った……。黒い雲はそのタルブに向かっている)

タルブに何があるというのだろう?
とにかく行ってみることだと、タバサは考える。自分の目で確かめてみるしかないだろう。
じゃら、と手に握った錫杖の感触をタバサは確かめた。自分の力が鍛鉄に流れていくのが感じられる。

「でも、馬で行くの……? タルブまでは飛ばしても一日かかる距離よ……!」

キュルケの言葉に、タバサは首を振った。

「ちょうど彼女も帰ってきた。全力で飛べば追いつける――」

はっと顔を上げるキュルケ。視線の先には、こちらに向かって飛んでくる風韻竜の姿が小さく見えていた。


ごぉおぉおおぉおおう……

時逆と時順に腕を引かれながら、ルイズは時間と空間を一気に飛び越えていく。

「ここ、こんどはどこ行くのよーッ!」

悲鳴を上げるルイズに、時順がにやりと笑いかけた。

『さーて、時を順に辿っていくぞぅ~……お前さんが生まれる六千年も前のことさぁ、ルイズお嬢ちゃん』
『出るぞぅ、ここが六千年前のハルケギニアだぁ……!』

「きゃああああっ!」

ルイズは見渡す限りに広がる草原に突然投げ出された。
ルイズが転がり出たのは、風の吹き抜ける草原だった。ルイズは顔をしかめてぶつけた腰をさする。

「いたたた……ここ、どこ」
『……ここは、ある男が生まれ育った場所です。忌まわしい流星が異世界がら飛んできたときから、呪われた運命を背負わされた赤子――』

白い女、いや、『お役目』がそう言ったのと同時に――

空を流れ星が走った。

どこからともなく現れ、昼間だというのに不吉な光を放つ流星は、ルイズたちのいる草原の上空を過ぎ、近くの村に落ちる。
地面が震えるような衝撃、そして轟音が響く。一瞬遅れて、その村は劫火に包まれた。

「なんなの……今の――」

カタカタとルイズの歯が震えた。『お役目』の女は、悲しそうに目を伏せる。

『――白面の破片が流星となって落ちたとき、あの村の人間はすべて消滅しました。ただひとり、白面のカケラが飛び込んだ赤ん坊を除いて……
 そして、その呪われた赤ん坊こそが、あなたたちが始祖と呼ぶ人物――』

ルイズの目が驚きに開かれた。

「う、嘘、でしょ――」
『――ブリミル。人は彼をそう呼びました。白面のカケラが飛び込むと同時に、異能の力を身に付けてしまった男。そして……最初の、メイジです……』

キィン――!
鋭い音と共に、ルイズたちはは再び時の流れの中にいた。
ルイズの周りを高速で様々な風景が流れては消えていく。

「そ、それじゃあ……ブリミルからあの『白面』は生まれたって言うの――!?」

ルイズの言葉に『お役目』は頷いた。

『ブリミルが20歳になったとき――『白面』は彼の体を食い破ってこの世に姿を現しました。それも、胸に印を刻まれた使い魔として……!
 そして、その時には彼の体もまた変わり果てていたのです。あなたたちが魔法と呼ぶ力を使えるようになった彼は、強大なメイジでもありました。
 ……まだ小さく、力も弱かった白面を、エルフたちの力を借りて遥か東方の地に封印することができた……』

東方の地。
それって、と呟くルイズ。

「聖地……」
『そうです。それ以来、エルフたちは白面を彼の地に封じてきた。ですが――ある男が白面の使いを、使い魔として召喚してしまった……!
 ちょうど、あなたがあの金色の妖怪を使い魔として召喚したように……』
「誰が、その使いを召喚したの、答えて!」

たずねるルイズに、白い女は答える。

『その男の名は、ジョゼフ……ガリア王ジョゼフです』
「ガリア王ジョゼフ――」

その言葉を呟くと同時に、『現在』へと戻ってきたルイズは寺院の固い床に投げ出された。


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