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ディセプティコン・ゼロ-5


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宝物庫に面した中庭に、緑の髪を靡かせて彼女は立っていた。

「……大したものね。余波だけで『固定化』を打ち破るなんて」

宝物庫の壁を撫ぜつつ呟く、その顔に浮かぶのは微かな笑み。
妖艶なその表情は、この学院内の人間には一度たりとも見せた事の無いものだった。

「後は何時実行に移すかね……さて、どうするか」

そう呟く彼女の頭上に、轟音と共に巨体が影を落とす。
腹に響く振動に視線を上へと投げ掛けた時には、その姿は尾の先で回転する羽だけを残して壁の向こうへと消えていた。

「……取り敢えず、あの化け物が居ない時ってのは決まりね」

苦々しげに吐き捨て、その場を後にする。
後には砲弾の着弾と炸裂によって抉られ、埋め立てられたばかりの真新しい地肌を晒す中庭と、僅かな罅の入った壁のみが残された。





端末が要る。
それも優秀な。

ブラックアウトは、王都上空を旋回して作成した地図を擬似視界の中に表示しながら考える。
視界左上端には、ディセプティコンズのマーク。

より効率的に情報を集める為には、小回りの利く情報収集端末が必要だ。
今のところ、その役目に合うのは自身の一時的な主となった人間、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールしか存在しない。

ルイズの身体データ、音声データ、これまでの各種行動に対する評価。
各種情報を表示、確認しつつ、ブラックアウトは総合評価を下す。

だが、あれには荷が重い。
収集した情報から判断するに、貴族と呼ばれる特権階級は特殊な力を有してはいるものの、耐久性、環境適応力に於いては著しく信頼性に欠ける。
出来る事ならばある程度の自己防衛能力、そして我々と同等の耐久性を備え、此方の指示に忠実な偵察・索敵ユニットが欲しい。

拡大した地図の一画、ブルドンネ街裏路地の一点に、赤い点が浮かび上がる。
併せて表示されるのはハルケギニアのものでも、この機体をスキャンした惑星―――――地球のものとも異なる言語。
余程重要な情報なのか、青い外枠が点滅を繰り返している。



偵察飛行で得たこの国の中心都市、トリステイン王都トリスタニアの各種エネルギー反応探査データ。
電気的エネルギーは皆無、熱エネルギーは極めて微小。
そんな中、1ヶ所だけ異常な反応が検出されたポイントが在った。
膨大な―――――地球では珍しくもない値だが―――――エネルギー反応はしかし、データ上に存在するどの系統とも異なるものであり、詳細は一切不明。
しかし1つだけ、波長が類似するエネルギーが存在する。



『スパーク』。
オートボッツ、ディセプティコンズ両陣営に共通する、機械生命体の核ともいえるエネルギー。
今は地球の何処かに眠る『オールスパーク』によって齎されるエネルギーは電子機器に生命を与え、自己の意思と強大な力を持つ機械生命体への急激な進化を促す。
果たしてそれがどういった原理によるものかは、ブラックアウトの知るところではない。
しかし、手に入れれば全宇宙すら手中に収める事が出来るであろうその力の所有を巡り、オートボッツとディセプティコンズは気の遠くなる程の時を戦争に費やしている。



だが、テクノロジーの発達が遅れに遅れたこの世界に、スパークを持ち得る存在が果たして在るものだろうか?



その疑問に、ブラックアウトの思考は若干の戸惑いを浮かべる。
この世界は地球とは違い、魔法という利便性に富んだ技能が存在する為に科学技術の発展は軽視される傾向に在るらしい事は、これまで集音した会話と王都の場景から判明していた。
実際には自らの優位性が崩れる事を恐れた一部の先見性を持つ貴族達が、その発展を意図的に妨げている可能性も在るが。

とにかく、このエネルギーの発生源の特定が最優先事項だ。
もしそれが手頃な大きさの物ならば、自身のスパークに触れさせる事で手駒とする事が出来るかもしれない。
そうなれば情報収集や主の護衛も、今まで以上にやり易くなるだろう。
そう、全ては地球へと戻り、オールスパークの回収と真の主たる『―――――』の復活を果たす為―――――



そこまで思考が進んだ時、何らかのプログラムがブラックアウトのシステムを急速に侵食し始める。
数多の防壁、アンチウイルスプログラムすら瞬く間に突破したそれは記憶中枢に侵入、複数のデータを書き換え始めた。
ブラックアウトの擬似視界内に、無数の単語が目まぐるしく錯綜する。





『カタール』 『米軍基地』 『エアフォース・ワン』 『アイスマン』 『ウィットウィッキー』 『セクター7』



〈4500X、空軍機の誘導に従え〉
〈4500X接地〉
〈不明機乗員に告ぐ。エンジンを切り、機体を降りろ。指示に従わない場合、射殺する〉



〈オールスパーク発見〉
〈スタースクリームよりディセプティコンズ、出撃せよ〉
〈バリケード了解〉
〈デバステーター了解、出動する〉
〈ボーンクラッシャー了解、これより急行する〉



〈ブラックアウト了解、『―――――』に栄光あれ〉






……最優先事項は、この世界『ハルケギニア』に於けるエレクトロニクス発達の促進。
何れ来る戦力不足を補う為の、ディセプティコン戦士の『生産拠点』を築く事だ。
その為には、人間達と自身を繋ぐ存在が必要不可欠。
そしてそれは我が主、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールを措いて他に無い。
彼女こそが、最優先防衛目標である。
目下最大の懸念は、常時護衛に就けるユニットが存在しない事。
問題解消の為にも王都のエネルギー発生源を特定し、可能ならばディセプティコンとして覚醒させる。
実行は……可能な限り速やかに。

彼の記憶中枢からは既に、本来の主に関するデータの殆どが消失していた。
思考は相変わらずディセプティコンズの戦略に基づいたものだが、既に地球への帰還、オールスパーク回収に関する思案は消え失せている。
そして戦略の果てに生まれた、新たな主ルイズへの義務感にも似た保護心。
それが外部から植え付けられたものと気付く事も無く、ブラックアウトはルイズの安全確保に向けた計略を練り始める。



擬似視界からは何時の間にかディセプティコンズのマークが消え去り、入れ替わる様に使い魔のルーンが浮かび上がっていた。






「……で、何でアンタ達が此処に居るのよ!」
「あら、いいじゃない! 1人で行くよりは人数が居た方が楽しいわよ!?」
「……」

虚無の曜日、ルイズ、キュルケ、タバサの3人はブラックアウトに乗り、王都へと向かっていた。
本来ならルイズは、今日一日をブラックアウトとの対話に費やす筈だったのだが、それは他ならぬブラックアウトにより却下される運びとなる。
尤もブラックアウトが、明確にそう言葉にした訳ではない。
ルイズがコックピットに乗り込んだ際、ディスプレイに王都の地図が表示され、奇妙な光点と『要調査』の文字が浮かんだだけだ。
だが短い期間ながら、これまでの経験からブラックアウトに絶大な信頼を寄せるルイズ。
彼女は使い魔の意思を尊重してその地点へと向かうことを決め、一旦部屋へと戻り支度を済ませると、再度ブラックアウトに乗り込んだのだが。

「まさか見られてたなんて……!」



そう、今や四六時中ブラックアウトに張り付いているフレイムの視界を通し、ルイズとその使い魔が出掛ける事を知ったキュルケが、タバサを巻き込んで先にブラックアウト内部に潜んでいたのである。
因みにシルフィードもブラックアウトに寄り添っている事が多く、何を考えているのか何時もきゅいきゅいと話し掛けているらしい。
タバサは使い魔のプライバシーにまで踏み込む気が無いらしく、同調を行っていない為にその内容を知らないが、最終的には何時も話し疲れたシルフィードがブラックアウトに寄り掛かって昼寝を始めるのが決まったパターンとの事。
他には頭にロビンを乗せたヴェルダンデが、ブラックアウトの影やら日に当たる側面やらを行ったり来たりしつつ昼寝をしているのが、複数の生徒や教師達に目撃されている。
ロビンは先程まで単体でガラスに張り付いていたが、出発の際にワイパーで弾き飛ばされた。
加減はしてあったらしく、草の上に飛ばされただけで済んだが。

「でも私達がいなきゃ、地図の写しも取れなかったじゃない!」
「別に魔法を使わなくても、写しくらい取れるわよ!」
「そう!?」

からかうキュルケと不貞腐れるルイズ。
ローター音が五月蝿い為、2人とも怒鳴り声だ。
タバサは相も変わらず本を読もうと試みていたが、余りの騒音に断念。
今はコックピットから外を眺めている。
そして数分後、頭上のローター音が微妙に変化した。



「あら?」
「そろそろね……」

降下を始めた事を感じ取り、2人は各々僅かな荷物を抱え込む。
馬で2時間の距離を数分で飛んだブラックアウトは王都郊外の森へと降り立ち、ローターの回転が緩やかになったところでハッチを開いた。





「いらっしゃ……旦那、ウチは真っ当な商売をしてま」
「客よ」

タバサが写しを取った地図に従い訪れた先は、ブルドンネ街裏通りに位置する寂れた武器屋だった。
主人の言葉を遮り、3人はブラックアウトが示した店内の一画へと向かう。
其処には安売りの剣が積み上げられ、それを目にしたルイズは顔を僅かに顰めた。

「……ほんとに此処? 写しを間違えたんじゃないの?」
「間違い無い」
「うーん、タバサがそんな基本的な間違いをする筈無いしねぇ……」

首を傾げる3人。
その時、目前の剣の山の中から威勢の良い声が響く。



「帰んな、貴族の娘っ子ども! 此処はおめぇらみてーなナヨナヨした連中の来るトコじゃねーんだ!」



この瞬間、ルイズの購入する剣が決まった。





喚く錆び付いたインテリジェンスソード『デルフリンガー』を手にブラックアウトの元へと戻ったルイズ達は、その側で微動だにせず控える巨大な鋼の蠍に凍り付いた。
スコルポノック自体はブラックアウトの分身の様なものであり、ルイズに危害を与える事は無い。
それはブラックアウトとの対話から既に知り得ていたが、それでも3メイルを超す巨大な蠍ともなると、見た者に生理的な恐怖感を沸き起こさせるものだ。
ルイズ達が再起動を果たし、スコルポノックの前を横切ってブラックアウトへと歩み寄ったのは、輪になった3人と一振りが相談を始めて5分後の事だった。

それはさて置き、漸く歩み寄ったルイズ達の目前でスコルポノックが収納されていたであろうスペースに、青く眩しい光が走る。
驚いてそれを見詰めていた3人だったが、光が一条の線となりルイズの手に収まったデルフリンガーを指した事で、それを此処に置けという指示であると理解した。
3人の視線がデルフリンガーへと注がれ、それを感じ取った彼は妙に怯えた声で恐る恐る発言する。

「な、なぁ娘っ子……何か猛烈にイヤな予感がするんだが」
「奇遇ね、私もよ」
「右に同じ」
「残酷無惨」

そう言いつつ、無常にもデルフリンガーをカーゴ内に置くルイズ。
いよいよもって危機感を煽られた彼は、最早命乞いとも取れる哀れな声を上げ始めた。



「娘っ子! 俺を店に戻してくれ! オメーにゃもっと煌びやかな……そう! ゲルマニアの錬金術師、シュペー卿が鍛えた一品とかが……」
「別に私が使う訳じゃないわ。アンタを買うように言ったのは私の使い魔。アンタが乗ってるそれよ」
「んな! この鉄屑が俺の相棒!? ……ってコイツ使い手」

最後に何かを言い掛けていた様だが、それを言い切る事無くカーゴが閉じられる。
3人はそれぞれ手を振ったり、目頭を押さえたり、むーざんむーざんと呟いたりと見事にばらけた対応で、ブラックアウト内部に消えてゆくデルフリンガーを見送った。





ブラックアウトは驚愕した。
スパークを持たないにも拘らず、自己の意思を持つ無機物。
そしてそれが内包する、驚くべき強大なエネルギー。
永きに渡り宇宙を彷徨ってきたブラックアウトも知り得ない、全く未知の存在―――――魔法自体が未知といえば未知なのだが―――――が其処に在った。

これならば上手くいくかもしれない。
電子機器ではないが、この器物は確固とした自己の意思を持っている。
判断するのは自身のスパークが持つエネルギーであり、意思ではない。



内壁の一部に新たなスペースが開き、カーゴ内に青い光が満ち溢れる。
何事か喚き散らすデルフリンガーを光が呑み込んだ時、ブラックアウトの擬似視界に新たな言葉が浮かび上がった。



『反応、検出』





「……退屈ねぇ」
「あの子達、何やってるのかしら?」
「野暮」

特にする事も無く、ブラックアウトが動き出す様子も無いので、スコルポノックに腰掛けて寛ぐ3人。
ルイズは降り注ぐ日差しと温かい装甲に舟を漕ぎ始め、キュルケはそんなルイズを背に寄り掛からせ化粧の具合を確かめている。
タバサは本を読みつつ、スコルポノックの仕組みが気になるのか時折下へと視線を向け、手で叩いたり装甲の隙間を覗き込んだりしていた。

「……んにゅ」
「野暮って……それにしたって時間が掛かるわねぇ」
「……きっと激しい」
「何がよ」
「あったかーい……」

そしてルイズの腕がキュルケの腰に回り、キュルケが2人の頭を叩き、タバサが並々ならぬ想像力の持ち主である事が判明した頃、金属的な音と共にカーゴが口を開けた。
反射的に振り向いた先には、カーゴの床に転がる錆ひとつ無い片刃の長剣。

「あら? 錆が……消えてる?」
「何、錆落とししてたの?」
「……ち」

口々に呟きながら、カーゴへと歩み寄る3人。
そしてルイズはデルフリンガーを手に取り、その刀身を眺め回す。
キュルケとタバサもそれに続き、錆が落ち見事なまでに磨き上げられた刃をしげしげと眺めていた。

「……アンタ、磨けば結構なものじゃない。新金貨100枚じゃ安過ぎる位よ」
「ほんと、随分な業物みたいね……私は分からないけど」
「……」

3人が無言のデルフリンガーを眺めていたその時、ルイズの手の中でカチリと僅かな金属音が響いた。



「……?」
「何?」
「……! 離れて!」

タバサの警告にルイズとキュルケが視線を上げた瞬間、手の中のデルフリンガーが幾重もの金属音と共に原形を留めぬまでに分解される。
ぎょっとした表情のまま凍り付く2人と、杖を構えて後ずさるタバサの前で、妙に細い腕と脚を持つ何かが立ち上がった。
丁度その頃、漸く我に帰った2人が目の前の存在に混乱し、上手く回らぬ舌で動揺もそのままに叫び出す。

「ななななな何よこれ!? 何!?」
「けけけ剣が剣が剣が亜人、ああ亜人に」
「2人から離れて」

自身を指差したまま混乱の極みに在る2人と臨戦態勢を取る1人に対し、6つの眼と異様に細く長い四肢、50サント程の細く長い刃を備えた異形は、妙に響く奇妙な声で呆けた声を零した。





「……おでれーた」







一頻り怒号と絶叫、爆発音と氷の砕ける音が響いた後、スコルポノックを回収したブラックアウトへと乗り込んだ一同は学院への帰路に着いていた。
機内では奇怪な亜人型となったデルフリンガーに対し、3方から嵐の様な質問が浴びせられる。

「じゃあアンタは元からそういう存在なんじゃなくて、ブラックアウトが何かしたからそうなったっていうのね?」
「おーよ。自分の意志で自分の身体動かすなんざ生まれて初めてだーね」
「剣に戻れるのよね?」
「ほらよ。何時でも戻れるし、人型にもなれるぜ」
「……第二子?」
「……いや、何の事だ青い娘っ子」

そして学院付近へと辿り着いた時、唐突に機内に警報が響き渡った。

「な、何?」
「うわちょっと……うるさっ……!」
「こいつは……! 娘っ子! コックピットへ行け! ヤバい事になってるぜ!」
「アンタ何言って……!」
「急げ! 相棒がそう言ってんだよ!」

何らかの方法で言葉が通じているのか、ブラックアウトの言葉を代弁するデルフリンガー。
急き立てられるままにコックピットへと移動したルイズ達は、其処で驚くべき光景を目にした。



「ゴ、ゴーレム!?」





視線の先では、30メイルは在ろうかという巨大なゴーレムが学院の壁を破壊し、今まさに逃亡を図ろうとするその瞬間であった。



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