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宵闇の使い魔 第陸話

トラゾウの監視の意味も含めての深夜の特訓だって言うのに、
キュルケがついてきたら何の意味もないのよね。
まぁ、まとめて監視できるから良いんだけど。
タバサも良い迷惑なんじゃないかしら。あんのなに振り回されて。
まぁ――――つまらないとは言わないけど――――


宵闇の使い魔
第陸話:開け - Knock Knock -


《土くれ》のフーケ。
今世間を騒がす大快盗である。
神出鬼没且つ手口を一定に保たずに行動パターンを読ませないようにしては、王都衛士隊の魔法衛士も振り回している人物が、今まさに魔法学院の宝物庫がある本塔の壁に垂直に立っていた。
黒いローブと、その下から覗く青い髪が夜風に揺れる。
「流石は魔法学院ってとこか――これは一筋縄ではいかないね」
厳重に《固定化》を掛けられた分厚い壁。
これはフーケといえども簡単には破れない。
――どうやって開けたものかね――
そう考え込んでいたところに、人の気配が近づいてくるのを感じると、チッと舌打をして飛び降りる。
地面ギリギリで《レビテーション》を唱えて減速し、地面に足をつけると音を立てずに塔の影へと飛びこんだ。


其処に現れたのは、虎蔵にルイズ、キュルケ、タバサの御一行である。
「んで。なーんであんたが着いてくるのよ!人の使い魔にべたべたしてんのよッ!」
「いーじゃない、別に。特訓するって言うから見にきてあげたのよ?」
「頼んでないッ!トラゾウもでれでれしてないでなんか言いなさいッ!」
「でれでれしてねーだろ――あー、ほれ、匂いがつくぞ」
御一行のうち二人は夜だというのに騒がしく歩いてくる。
ルイズが虎蔵の腕にべつたりのキュルケに突っかかり、キュルケがそれをいなしては楽しんでいる形だ。
タバサはなかばキュルケに連れ出されたようなもので、月明かりで本を読んでいる。
「あら、私はこの匂い、嫌いじゃないわよ?」
キュルケはそういって虎蔵の胸元に顔を寄せ、すんすんと鼻を鳴らす。
「こらぁぁぁぁッ!」
ルイズは顔を真っ赤にして魔法を放つが、明後日の方向の地面が爆ぜただけだった。
キュルケはそれを見ると、「ほらほら、集中しなきゃね」と言って虎蔵から離れて、もってきたシートをひいて座る。
タバサも本から目は離さずにキュルケの隣に座った。
虎蔵は少し離れて立っている。
流石のキュルケも、いざ特訓と言うときにはからかうのをやめたようだ。
「まったく、本当になんの用なのよ――」
ルイズはぶつぶつ言いながら、一度深呼吸をすると、精神を落ち着かせ始めた。

ルイズの特訓が始まると、キュルケはタバサをすぐ傍に感じながらルイズに気付かれない程度に虎蔵を眺め、続けてルイズへと視線を移す。
彼女にしてみれば、今最も炎を燃え上がらせてくれる虎蔵と居られ、人見知りなのかすぐに篭ろうとするタバサを人と触れ合わせ――まぁ、本を読んでいるのだが、部屋に一人でいるよりは良いだろう――ルイズもからかえる。一石三鳥だ。
とはいえ――
「ほんと、なんであんな風になるのかしらねぇ――」
ルイズの魔法がまた失敗し、視線の先の本塔の壁面が爆発したのを見て呟いたのだった。


だが、その失敗魔法にキュルケとはまったく別の感想を抱いた人物が居た。
塔の影に隠れたままのフーケである。
ルイズ達がなかなか去りそうに無い為、今夜は無理かと諦めかけたときに頭上で爆発がおき――あの壁面に皹が入ったのが見えたからだ。
「ッ――」
――これは、行けるッ――
思わず興奮してぐっと手を握るフーケ。
だが、其処に――

「誰か居るのか?」

と声が掛けられた。
気配を消していたのだが、興奮して思わず漏れてしまったらしい。
一瞬逃げるかとも思ったのだが、それで下手に警戒されるのは不味いと考えたフーケは、彼らの元に出て行くことにした。
ローブを脱ぎ捨て、ミス・ロングビルとして―――


『ミス・ロングビル!?』
塔の影から出てきた人物に、ルイズとタバサの声がハモる。
タバサと声を掛けた張本人である虎蔵の視線も、当然集まってくる。
「ミス・ロングビル――こんな時間に何を?」
四人を代表してルイズが問う。
「いえ、見回りをしていたのですが――突然人のくる気配がしたもので隠れてしまったんですよ」
「何でまた――」
キュルケの疑問は最もで、オスマンの秘書である彼女が見回りをする理由は無い。
だが、ロングビルは理知的な顔立ちに僅かな苦労の表情を浮かべて、
「最近は色々と物騒ですから――ほら、例の快盗とか。ですのに、教師の方々は宝物庫のつくりをとても信用されているようで、宿直の方すら寝ている始末。ですから私が――ね」
と肩を竦めて見せた。
そして次に軽い苦笑を浮かべると、ルイズに視線を向けて、
「それでまぁ、見回っている途中に人が近づいてくる気配があったもので、まさかと思って隠れたのですけど――
 そうしたら、特訓が始まってしまったものですから――」
と申し訳無さそうに軽く頭を下げた。
「あ、いえ、それは良いんですけど――」
確かにあまり人に見られたいものではないルイズとしては、その心遣いは多少なりともありがたく、納得してしまう。

と、そこまで離したところで、突如虎蔵が壁から身体を離してロングビルに近づく。
――なんだい、いったい――
フーケは内心で緊張するが、表には出さずに「えぇと、何か?」と首を傾げる。
「いや、糸屑が付いてるぜ――」
虎蔵はそういうと、片手を彼女の肩を掴むと、もう片手で髪に触れた。
「なッ――」
一瞬、あの黒いローブの物かと緊張してしまうロングビルだが――


「なぁぁぁぁにしてんのぉぉぉぉッ!」

と、ルイズが雄たけびを上げて虎蔵の背中にとび蹴りをかましたものだから、
前につんのめる虎蔵の胸に飛び込んでしまう形――正確には虎蔵がつんのめってロングビルに抱きついた――になった。
煙草の匂いと、よく鍛えられた身体を感じる。
しかし虎蔵はすぐにロングビルを開放して、ルイズへと振り返る。
「ってぇな――おい。なにすんだ、コラ」
「それはコッチの台詞よ!このエロッ、エロ犬ッ!なにいきなり肩抱いてんの?」
ルイズは顔を赤くして、杖でビシビシと虎蔵をたたく。

「あんなのじゃ抱いた内に入らんだろ。なぁ?」
と、肩を竦めて視線を向けられれば、ロングビルは「――どうでしょうか」と、僅かに照れたかのような演技をして見せる。
そして、
「まぁ、勘違いされる方もいらっしゃるかも知れませんから、ほどほどになさった方が良いとは思いますけど。ミスタ――えーと?」
理知的な笑みに戻して何時ものペースで答えるが、名前が解らずに首を傾げた。
「長谷川虎蔵――なんかここ数日名乗ってばっかだな」
虎蔵がそう名乗ると「ミスタ・ハセガワ」と一度復唱をしたロングビルは、
「それでは、私はこれで失礼しますが――皆さんも、余り遅くならない内に」
と丁寧に頭を下げて、立ち去って行った。


ロングビルが見えなくなると、ルイズは再び虎蔵にビシビシと杖を叩きつける。
「ほんっと何してんのよアンタ。最低のエロ犬ね!」
「狗ねぇ――つか、最後のはお前のせいだろうが。まあ、良い女だったのは否定せんけどな」
そう言いながら肩を竦めてスーツの上着を脱ぐと、ルイズの靴跡をパッパッと手で払う。
すると今度はキュルケが不満そうに食いついてきた。
「なによー、ダーリンってば年増好み?」
「年増って、ありゃせいぜい23、4って所じゃねえか?」
虎蔵の感覚では、20代半ばなら食べ頃――もとい、女盛りである。
だが、どうやらこの世界では年増扱いらしい。
キュルケは「十分年増じゃない」といって胸を張る。
それを虎蔵は苦笑しながら煙草を咥える事で答えを濁し、
ルイズは「盛ってんじゃないわよ、全くどいつもこいつも――」と呟くのだった。

そこで、完全に集中力が切れて解散の流れになったことを察したのか、タバサがパタンと本を閉じて立ち上がる。
キュルケがそれを見て頷いて「そろそろ身体も冷えてきたしね」と言って解散を宣言し、寮へと向かって歩き出した。
ルイズと虎蔵もそれを追おうとする――

が、その時。
彼らが先程居た場所に程近い地面が、豪快な音を立てて競りあがっていく。
「なんだとッ――!」
流石の虎蔵もこれには驚く。おおよそ30メートルもの土巨人が地面から現れたのだ。
こういうことをやらかす人物にも心当たりはあるが、よもやこの世界で合うとは考えにくい。
ルイズ達三人も、突然のことに呆然と見上げてしまっている。

しかし、ゴーレムは彼らを無視して学院本塔の壁の一部へと、その鈍重な拳をぶち込んだ。
虎蔵さえも気付かなかったが、そこは先程ルイズが失敗魔法で皹が入った辺りである。
フーケの目論見どおり、見事に破壊される壁面。
さらに、そのゴーレムの肩にはいつの間にか黒いローブの人影が立っている。


「まさか――フーケ!?」
それに気付いたルイズは黒いローブの人影に魔法を打ち込むべく、杖を構えて駆け出すのだが、ゴーレムはお構い無しに腕を引き抜く。
すると、当たり前のように大量の破片がルイズの頭上にも降り注ぎ――
「あッ――」
それを見上げて呆然とするルイズ。
此処にきて頭を危険信号が支配し、逃げようとするが、足をもつらせて転んでしまう。

「ルイズッ!」「ちぃッ!!」「ッ!!」
そこへ、キュルケが庇うように飛びつき、抱きしめる。
虎蔵が刀投げて大きな破片を砕くと、タバサが絶妙なタイミングで《ウインドブレイク》を放ち、砕かれたそれを吹き飛ばした。

結果として、二人には――というより、ルイズを抱きしめたキュルケに――殆どの破片が到達できなかった。
ふぅ、と安堵の溜息を突くタバサに、虎蔵は「ナイスアシスト」と肩を叩いた。
一方、キュルケは抱きしめていたルイズを開放して、怪我が無いことを確認するとほっと息をつく。
「怪我は無いわね?もう、無茶しないでよ――」
「そ、そそ、それはコッチの台詞―――ッ!!」
顔を赤くしながら、いつもの調子で抗議しようとするルイズであったが、その目に飛び込んできたのは、肩に居た黒いローブが見えなくなっているにも拘らず、二人へと向けて手を振り上げてくるゴーレムの姿。
慌ててキュルケを安全圏まで突き飛ばそうとするのだが、非力な彼女の腕では叶わない。

「ひッ――」
声にならない悲鳴を飲み込んで目を瞑った瞬間―――

「く・た・ばれぇッ!!」
怒声を上げた虎蔵の刀が一閃し、ゴーレムの拳を綺麗に切断し、弾き飛ばした。
さらにシルフィードが滑り込み、二人を器用に足で掴むと一気に上空へと舞い上がる。
安全圏に到達すると、足で掴んだ二人を落さぬように気を使いながらターンし、自らの主人を乗せるべく大地を目指す。

一度は手首から先を切り落とされたゴーレムだが、すぐさまそれに手首を近づけてくっつけると、今度は虎蔵目掛けて殴りかかっていた。
「リジェネレイトかっ!?」
切断面が滑らかな為か、再生速度も速いようだ。
流石に刀で切断できるのは手首などの細い部分が限界で、それ以外の部分を斬りつけても直ぐに再生してしまう。
後方からタバサの魔法による援護を受けてはいるが、それも似たようなものだ。

其処へ「きゅぃぃぃ!」と鳴き声を上げてシルフィードが舞い降りる。
タバサはすぐさま飛び乗り、「戦略的撤退!!」と虎蔵に声を掛ける。
虎蔵もチィッと舌打をするが、すぐに驚異的な跳躍力でゴーレムの元からシルフィードへと飛び乗った。
それを確認すると、シルフィードは再び上空に舞い上がる。


その頃、フーケは見事に目的の物を手に入れ、ゴーレムの肩へと飛び乗っていた。
《破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ》とサインを残す事も忘れていない。
なにやら柄が少し太いモールにも見える《破壊の杖》にチュッと軽く口付けをすると、
上空のウインドドラゴンを見上げては「サンクス、ミス・ヴァリエール」と酷薄に笑っては、ゴーレムに城壁を一跨ぎさせて、草原を歩かせ始めた。


盛大な地響きを立てながら進むゴーレムの上空をウイングドラゴンが旋回する。
その背でタバサが自らの身長より長い杖を振ると、《レビテーション》によってルイズとキュルケの身体がドラゴンの足から背中へと移動した。
「ありがとう、タバサ。それに、ルイズ、ダーリンも」
「別に――級友を見捨てるわけには行かないでしょ」
珍しくキュルケに礼を言われて照れたのか、ルイズは僅かに頬を染めて眼下のゴーレムへと視線を逸らした。
「さっきの礼もあるしね――」という呟きは風に流されたと信じたい。
キュルケが「こういう時は友達って言っちゃえば良いのに」と肩を竦めるが、聞かなかったことにした。

「あれが壊した壁は?」
「宝物庫」
誰にともなく虎蔵がつぶやくと、タバサが過不足なく答える。
「随分と派手な盗人だな。その割りに握ってたのは一つしか見えなかったが――」
「見えたの?」
驚くルイズに、虎蔵は目は良いんでね、と答えてゴーレムに視線を向ける。
でかい。
ざっと30メートル程か。
あの外壁を破壊したことや地響きを考えればハリボテということは考えにくい。
――厄介だな――
小さく舌打ちをする。
あれほどのサイズになると、刀や数珠による攻撃では致命傷を与えられないだろう。
あの再生が無ければ時間を掛ければ余裕だろうが――雷術を使うか?
そんな事を考えた瞬間、

「あッ!」

ルイズとキュルケがシンクロして叫ぶ。
ゴーレムが突然崩れ落ちて、ただの土山になってしまったのだ。
虎蔵がタバサに視線を向けると、「魔法を解いたみたい」と短く説明してくれた。
肩に居た筈の黒ローブは姿を消していた。



翌日、魔法学院は蜂の巣を突付いた大騒ぎになっていた。
秘宝《破壊の杖》が盗まれていた事が発覚した為だ。
下手人は巷を騒がす快盗《土くれ》のフーケ。
これはフーケ自身の犯行声明が残っていたことと、ルイズ達の目撃情報から間違いないとされた。

「魔法学院にまで手を出すとは、随分と舐められたものじゃないか!」
「衛兵は何をしていたんだ!」
「衛兵など役に立つと思っているのか?所詮は平民だぞ――」

教師達の怒声が宝物庫に響き渡る。
内容はすぐに当直担当であった教師・シュヴルーズへの責任追及へとかり替わった。
ルイズにも責任の所在を決めておきたい彼らの気持ちは解らなくも無いが、
今はそんな事をしている場合ではないだろうとも思う。
ちらりと横を見れば、キュルケも似たような表情で肩を竦めてきた。
タバサは何時ものように無表情であるが、トラゾウにいたっては壁際で欠伸を噛み殺している。


暫くしてシュヴルーズが泣きながら崩れ落ちたところで、ようやくオスマンがやって来た。
僅かに教師達も落ち着きを取り戻して事実の確認が進む。
途中でルイズ達にも話が振られ、昨夜のことを話すことになったが、
これといってヒントになるような事があったわけではなく、誰もがどうした物かと口を噤んでしまった。

「ときに、そのミス・ロングビルはどうしたのだね。姿が見えんようだが」
「は――そういえば朝から姿を見ませんな」
オスマンが気付いて、教師達に確認を取っていると、タイミングよくロングビルが現れる。
「ミス・ロングビル!この一大事に何処へ言っていたのですか!」
コルベールが興奮した様子でまくし立てるが、彼女はそれを遮ると、何時も通りの冷静な様子で話し始めた。

「申し訳ありません。朝から、少々情報収集を――」
「ほう。フーケの件じゃな?」
「えぇ。自主的とはいえ見回りをしておきながら発見できなかったわけですし――調査は早いに越したことは有りませんから」

仕事が早いの――と感心した様子のオスマンと、数人の教師。
残りの教師達は苦虫を噛み潰したような表情だ。
その様子を見てトラゾウがくくっと小さく肩を揺らす。
ルイズは慌てて睨みつけると、彼は肩を竦めて無表情に切り替えた。
このやり取りに教師達は気付かなかったようで、心中でそっと溜息をつく。

その間にも教師達のやり取りは続いていたようで、
「なんですとッ!」
と、コルベールの素っ頓狂な声にそちらへと意識を戻す。
どうやらロングビルがフーケと思われる人物の目撃情報を見つけてきたようだ。
ロングビルが言うには、近在の農民から近くの森で怪しい黒いローブの人影を目撃したとの事で、
その人影は森の廃屋へと入って言ったという。
黒いローブといえば、昨夜のゴーレムに飛び乗った人影もそうであったことをルイズが告げれば、
教師たちは俄かに盛り上がりを見せた。
場所も近い。まだ取り戻すチャンスがあるようだ。

その後、コルベールが王室に報告し、兵隊を使って討伐することを提案するが、
オスマンは年に似合わぬ迫力でそれを却下する。
王宮に知らせている間に逃げてしまう可能性や、貴族としてのプライド、
魔法学院の問題であることなどを持ち出されれば、コルベールも反論は出来ない。
貴族としてのプライドに関しては人一倍高いルイズも、表には出さないが強く同意していた。
そしてオスマンは、軽く咳払いをすると、有志を募った。
「我と思うものは、杖を掲げよ」

静寂。
誰一人として杖は掲げず、困ったように隣りの教師と顔を見合わせるだけだ。
オスマンがまたしても大声で発破を掛け、煽ってはみるものの、誰一人反応しない。
ルイズはそれを見ると、虎蔵を一瞥する。
彼は軽く肩を竦めて見せた。
好きにしな――そう言っているんだと思う。いや、思いたいだけかも知れないが。
だが、止めておけと言われても、此処で引き下がるわけにはいかないと、ルイズは考える。
教師の誰もが貴族としての義務をはたせないと言うのならば、自分がやるしかないのだ。
ルイズは、すっと杖を顔の前に掲げて見せた。

「ミス・ヴァリエール!何をしているのですか。貴女は生徒ではありませんか!此処は教師に任せて――」
シュヴルーズが驚いた声を上げて止めようとするが、
ルイズはそれを遮って「誰も掲げないじゃないですか」と言い放つ。
虎蔵はルイズの、真剣な目をして貴族としての義務を果そうとする姿に、
凛々しさ、美しさを感じては「ほう――」と小さく呟いた。

すると、
「ふふん。ルイズには負けられないわね。昨日は情けない姿をダーリン――
 もとい、ルイズの使い魔に見せてしまったことだし」
「――心配」
といって、キュルケとタバサも杖を掲げる。

これに数人の教師が反対をしたものの、ならば代わりに行くかと問われれば、言い訳をして断るだけだ。
加えて、キュルケやタバサの優秀さや、ルイズの使い魔である虎蔵がドットとはいえメイジであるギーシュを決闘で破ったことをあげられれば黙るしかない。
オスマンは学院の教師達に情けないものを感じながらも四人に向き直り、
「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」
と告げた。

『杖に掛けて!』
ルイズ、キュルケ、タバサの三人は真顔になって直立し、唱和した。

「では馬車を用意しよう。魔法はフーケに備えて温存しておいた方が良いからな――ミス・ロングビル」
「え、あ――はい」
オスマンに呼ばれたとき、ロングビルはルイズ達を見て僅かに複雑そうな表情をしていたが、
彼に「先程も言ったとおり、彼女等なら心配は無い。安心したまえ。それよりも――」と言われるといつも通りの知的な様子に戻って、
「解っております。一足先に、馬車の用意をしておきますわ」
と今度はにこやかに答えて、宝物庫を出て行った。

ルイズ達も後に続くが、廊下に出て暫く歩くと、虎蔵がくくっと肩を揺らして笑い出した。
怪訝そうに視線を向ける三人に、彼はあまり人の良くなさそうな笑みを見せてこういった。
「なに、ブツが盗まれた翌朝に潜伏場所がわかるとはね」
「なによ。良いことじゃないの」
言外に何かを含んだような言い方にルイズは僅かに抗議の声をあげるが、
虎蔵は「あぁ、全くだ」と言って笑うだけだった。

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