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とある魔術の使い魔と主-39


 次の日、当麻は朝の日差しを浴びて、目が覚めた。昨晩の疲れがあったせいか、いつもより多く寝てしまったらしい。
 うまく働かない思考が、『この状況はまずい』と判断する。寝坊してしまったら、主から罰を受けてしまうのだ。
 慌てて毛布を跳ね飛ばし、ガバッと起き上がる。ルイズのベッドの方を見るが、毛布に体全体を覆いかぶさっているためか、顔が見えない。
 ともかく、まだ主は起きていないらしい。当麻は内心安堵しながらも、いつも通り起こそうとしたが……。
 そこには誰もいなかった。
「あれ……?」
 毛布の中に、いるはずの人間がいない。当麻を寝かせたまま、どこか外へ行くような少女ではない。
 首を傾げてうーんと唸る。神隠しにあったりとか、宇宙人にさらわれたというオチはないと思う。
 となると、昨日の夜に何かあったはずだ。当麻はまだ真新しいはずの記憶を掘り返す。
あ、と思わず口に出てしまった。そうだ、確かあの日の夜は――
『どしたルイズ、寝れないのか?』
『うん……なんだか……』
『なんか様子がおかしくないか?』
『ううん、大丈夫。ねえ、トウマ?』
『ん?』
『わたし、シエスタの所へ行ってもいいかな?』
『へ……? ま、まあいいんじゃないのか』
『ありがと』
 シエスタの所へ行った事を思い出した当麻は、どうするべきか悩んだ。
(まあシエスタがなんとかしてくれるだろ)
 しかし、思いの外早く結論にたどり着いた。
 少年は全てをメイドに任せて、空かした腹を埋める為、朝食へと向かった。



(うーん……)
 ほぼ同時刻、同じように朝の日差しを浴びたシエスタは、意識を現実へと戻した。
 しかし、昨日の疲労が拭いきれないのか目を開こうとはしない。
 趣味が昼寝の彼女は、時折そうやって寝過ごす日が多々あった。
 後数分……、とお決まりの言葉を自分に言い聞かせ、再び夢の中に入り込もうと寝返る。
「……すう……」
 その頬に、かすかな吐息がかかる。不思議な事に甘く、いい匂いであった。
「あ、れ?」
 小さいが、ここは自分のベッドである。それならば誰かが紛れ込んだのだろうか?
 誰だろ、と思いながら仕方なく目を開けてみると、
 ネグリジェ姿のルイズが隣に寝ていた。それも、吐息のかかるほどに近い場所で。
 普段とは違う、
 繊細可憐な、安らいだ寝顔がそこにはあった。
「へ……?」
 予想外の人物に、しばらく呆然と見つめた。疑問と驚きが彼女の思考を妨げる。
「う、ん……」
 すると、シエスタの視線に気付いたのか、目を覚ました。虚ろな瞳はしかし、何の迷いもなくシエスタを向いていた。
「…………」
「…………」
 エレベーターに閉じこめられたような気まずい雰囲気が場を支配する。
 耐えきれなかったのか、シエスタが口を開いた。
「えっと、おはようございます」
「おはよ」
 寝た状態で、とりあえず挨拶をする。そんなシエスタに、ルイズも返事をしたが、なぜか顔を赤らめた。
 また沈黙が支配されそうになったその時、ルイズは上半身だけ立ち上がる。乱れた髪がばさばさっとその肩に降りかかった。そして、恥ずかしがるように手をもじもじさせた。
 つられて、シエスタも寝転んだ態勢から女の子座りへと変える。
「あのね」
「な、なんでしょうか?」
 普段とは違う口調に、シエスタは僅かばかりの不安を抱いた。
 シエスタとルイズは敵対関係となっているのだ。なのに今は違う。どちらかというと、仲のいい親友みたいな感じのように、正反対のイメージが持たれる。
 そんなシエスタの事はお構いなしに、ルイズは自分の内なる思いを伝えた。
「あのね……わたし夢を見たの……」
「夢、ですか?」
 コクリと頷いたルイズは続けた。
「シエスタとわたしが仲良く楽しく過ごしている夢」
 そう言うと、ルイズは両手を使ってシエスタの手を握る。
 思わぬ不意打ちに、シエスタの顔も赤く染まる。ドキッ、と心臓が跳ね上がった。
「え? え?」
「わたし、なんで自分の気持ちに気がつかなかったんだろう……」
「あの……、ルイズさん?」
「手を握るだけでこんなにもドキドキするなんて……」
 言葉のやりとりがうまくいかないので、シエスタは困った。いつもと違う態度に、何事かと思ってしまう。
 しかし、原因がわからない。昨日の事件は、急にルイズの機嫌がよくなった為に終わったのだか、まさかそれが理由ではないはずだ。
 と、突然ルイズがこちらに飛びかかってきた。腰に両手ががっちりと回されたので、そのまま押し倒される。
「へ? へ?」
 自分に覆いかぶさるルイズを見上げているシエスタは、カチコチに凍り付いている。
「えっと、あの……ええ!?」
 何を言えばいいのかわからない。ルイズとシエスタの距離は、目と鼻の先であった。
「わたし……シエスタのことが好き、大好き……」
 そう言うと、顔を近づける。否、顔のもっと細かい場所。そう、唇である。
 ハッと気付くシエスタ。逃げようとするが、なにせルイズが馬乗りとなっているのだ。どうしようもない。
「あ、あの。ルイズさん! ちょ、ちょっと……あ……待って……ん……」
 シエスタの努力も空しく、二人は唇を重ねた。



「おかしいですよね!?」
「いやまあ……、そりゃ普段とは違うよな」
 シエスタが涙目になりながら必死に当麻に訴えた。
 全てシエスタに任せてしまった当麻だからこそ、苦笑いを浮かべる。

 時刻は昼間、当麻とシエスタは再びヴェストリの広場にいた。
 あの後、トイレと偽って脱出をはかったシエスタは、当麻と再び出会う事ができた。
 そして今まで起こった状況を一から、わかりやすく説明をする。
 もっとも、
「うう……もうお嫁さんにいけないかも……」
 どこまでやったのかはわからない。
 しゅんとうなだれる。ここまで落ち込まれると、なんとかしなければならないと思えてくる。
「うーん。しかしルイズがどうしておかしくなったか、だよな」
「それについてなんですけど……」
 シエスタは思い出すかのように応えた。
「心をどうにかしてしまう魔法の薬があるって聞いたことがあるんですけど、それじゃないんでしょうか?」
「魔法の薬……ねえ」
 典型的な漫画等のお決まりを出された当麻は、胡散臭そうな目つきでシエスタを見る。
「わ、わたしだって噂で聞いただけですし……、でも、あったとしてもミス・ヴァリエールがそんなの飲むわけがないし……」
 シエスタの顔がみるみる内に赤く染まっていく。
 まあここで疑いをかけても仕方ない。とりあえず当麻はそれがある物だとして昨日の一件を思い出す。
 その時だった。
 シエスタの背後で、ルイズが睨みつけていた。その目はまるで獲物を逃がさないようにぎらりと光り輝いている。
 タチサラナイトコロス
 そう言っているような気がした。
「……あ、と。ちょい用事があったから行くな。何かわかったらすぐ連絡すっから」
「え? あ、はい……わかりましたー」
 命の危険を感じた弱者は、強者の言うことを聞かなければならない。当麻は成す術なくシエスタから離れた。

 直後、シエスタの悲鳴が聞こえたような気がした。


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