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斬魔の使い魔06


 学院長室。
 コルベールが泡を飛ばして、オスマンに説明していた。
 春の使い魔召喚の際、ルイズが平民の青年を喚び出したこと。
 ルイズがその青年と契約したときに現れたルーン文字を調べていたら、ガンダールヴに行き着いたこと。
 ただ、もう一つ、青年の両手の甲に刻まれていた紋章については不明だということ。
 その時、オスマンはガンダールヴのルーンよりも、紋章の方に興味を示した。

「その紋章の方だが、わしに任せてくれる気はないかね?」
「ええ!? いきなりどうしたんですか!?」
「……何じゃい、いきなり?」
「あ、申し訳ございません。何しろ、普段は面倒ごとを全てこちらに押し付けるオールド・オスマンが、ご自分でお調べになるなんて」
「わしだって、そういう気分になるときもあるわい……」

 何処となく拗ねてしまったオスマンに、慌ててつくろうコルベール。

「あ? ああ、いやいやいや、オールド・オスマンがやって下さるのなら、千人の学者にも勝る素晴らしい戦力です!」
「何か引っかかるが、まあよい。ガンダールヴのルーンについてはさらに詳しく調べるように。紋章の件はわしが一任する」
「は、分かりました」

 ドアがノックされた。

「誰じゃ?」
「私です。オールド・オスマン」
「ミス・ロングビルか。何じゃ?」
「ヴェストリの広場で決闘をしている生徒がいるようで大騒ぎになっています。教師達は決闘を止めるために眠りの鐘の使用許可を求めています」
「アホか。たかが子供の喧嘩を止めるのに秘法を使ってどうするんじゃ、放っておきなさい」
「分かりました」

 ロングビルは去っていて行こうとしたが、呼び止められた。

「あ、ところで」
「はい?」
「決闘をしているのは誰と誰じゃ?」
「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」
「グラモン家の馬鹿息子か。親父も色の道では豪の者じゃったが、その息子も環をかけて女好きじゃ。大方、女の取り合いじゃろ。で、もう一人は?」
「ミス・ヴァリエールの使い魔の青年のようです」

 オスマンとコルベールは顔を見合わせた。

「分かった、下がってよい」
「はっ、分かりました」

 ロングビルが去っていく。
 コルベールは唾を飲み込んで、オスマンを促した。

「うむ」

 オスマンは杖を振った。
 壁にかかった大きな鏡にヴェストリ広場の様子が映った。




 九郎とルイズの唇が触れた瞬間、九郎の姿は光の渦の中へと溶け込んでいた。

「な、何が起こったんだ!?」

 眩い光に、ギーシュは思わず目を手で覆った。
 周囲のギャラリーも眩しそうにしている。
 光が収束し、九郎の身体へと集まっていく。
 そして光が収まる。

「な、何なんだ!? その姿は!?」

 ギーシュの指摘で、九郎は自身の身体の変化に気付いた。
 それはあまりにも見慣れた姿だった。
 身体にピッタリとフィットした黒のボディスーツに、背中にはマントに似た黒い翼。腰まで伸びた長髪。
 紛れもない、これは――

「マギウス・スタイル!?」

 九郎は咄嗟に己の肩を見た。
 もし予想が正しければ、そこにはいるべき存在がいるはずである。
 しかし、そこには誰もいない。

(どうなって――ん!?)

 ルイズが倒れていた。
 何事かと見ると、どうやら気絶しているようだ。

(少し、まずいかも……)

 九郎の魔術師の眼にはハッキリと見て取れた。
 膨大な魔力がルイズから九郎に流れ込んでいる。
 恐らく、マギウス・スタイルを維持するためだろう。
 そのせいで、一見すると気絶しているだけのように見えるルイズだが、その実、衰弱していたのだ。
 どうするべきか一瞬悩んだが、

「九郎……しっかり……むにゃむにゃ」
「……ルイズ」

 何故、マギウス・スタイルになれたのか?
 何故、ルイズから魔力が流れているのか?
 そんなこと、今はどうでもいい。
 ただ一つ言えることは、一刻も早くあのすかしたボンボンにおしおきをすることだけである。

 九郎は立ち上がった。もはや身体は痛くない。
 マギウス・スタイルになった時、ほとんどの怪我が治ったからだ。

 そして、ギーシュの方を向くと、不敵な笑みを浮かべた。
 気圧されて後ずさるギーシュ。

「待たせちまったな。さあ、第二ラウンドの開始と行こうか!」
「ワルキューレエェェェッ!!」

 悲鳴にも似た声で叫ぶ。
 その声に応えるように、一気に突進するワルキューレ。
 その数、六体。一体はギーシュの側で守るように待機している。

「うおおぉぉぉっ!」

 雄たけびと共に九郎も突進する。
 その加速力、先ほどの比ではない。
 しかし――

(いつもより遅い!)

 九郎は感じていた。
 身体にみなぎる魔力、力、それらは普段のマギウス・スタイルと比べると圧倒的に劣っていた。
 やはり、これは不可思議な変身の影響なのか?
 だが――

「お前ら相手には十分だ!」

 突進力をそのままに突き出した拳で、前方にいたワルキューレの頭を粉々に砕いた。
 頭部を失い、倒れるワルキューレを押しのけるように、他の五体が殺到する。
 そこから放たれた拳と蹴りは、黒翼を盾のように広げ、全て防いだ。
 キンキン、と金属同士が接触するような音が響く。
 そのまま、黒翼を刃のように展開して、近くの二体を切り裂く。

「――ぼ、僕のワルキューレが!?」

 慌てて三体を自分の元へと戻す。
 ギーシュはそれらに向かって薔薇の造花を振るった。
 ワルキューレの手に、剣や槍などが錬金される。

「行け、ワルキューレ! 手加減無しだ!」

 剣や槍を構えたワルキューレが突進する。まさに戦乙女の如く。
 九郎はそれらを迎撃しようとし、

「――まずいっ!」

 慌てて飛び退いた。
 九郎がいた場所に刃が突き刺さる。
 九郎の黒翼『マギウス・ウイング』。本来なら銃弾でも軽く弾くほどの強度を持つ。
 だが、今その翼は構成が解けかけ、魔導書のページが見え隠れしている。

 ルイズからの魔力供給が途絶えかけているのだ。

 ゴーレムを一体一体相手にする時間は無い。
 この場合は、術者を狙うのがセオリーなのだが、肝心のギーシュは己のワルキューレを盾に距離を取っている。
 何か武器があれば――例えば剣。

 ――剣――刃。

 九郎の脳裏に武器が浮かんだ。
 そして、その武器を手にすることができるという確信もある。
 だが――

 九郎はルイズを見た。
 相変わらず気絶したまま。傍らにはいつの間にかキュルケがいる。
 これ以上の消費にルイズが耐えられるのか?
 思い悩んだその時――

「何をやっておる! さっさとせんか!」

 あまりにも慣れ親しんだ口調が九郎の耳に響く。
 それは倒れたままのルイズの口から発せられたものだった。
 理由は判らない。しかし、九郎にとってはそれだけで十分だった。
 瞬時に術式を紡ぐ。

「ヴーアの無敵の印において、力を与えよ!」

 九郎の手に燃え盛る炎が現れ、一本の巨大な刀を鍛え上げた。
 炎をまといながら顕現した灼熱の刀身は、ゆるやかに発光する呪文をその表面に残し、急速に冷却した。
 ウルタールの賢者の名を冠した武具にして法具、『バルザイの偃月刀』だ。
 それを手にした瞬間、左腕のルーンが輝いた。

「これは――」

 九郎は驚いた。
 身体が軽い。力がみなぎる。
 手始めにこちらに向かってきていたワルキューレを二体、文字通り三つにおろした。
 魔力は変わっていないが、身体能力はまるで本来の力、否、ひょっとしたらそれ以上かもしれない。

 一方、ギーシュは混乱の極みにあった。
 最初は、平民に貴族に対する礼儀を分からせてやろうとしていただけだったのに。
 少し想定外なことはあったが、とりあえずこちらの目論み通り、平民を痛めつけることは出来た。
 そう、ここまでは予想通りだった。
 しかし――

「何だよ……何なんだよ、お前はー!」

 いきなり変身したと思ったら、こちらのワルキューレを瞬く間に三体潰された。
 さらに、平民のくせに武器を錬金し、一瞬で二体がバラバラにされた。
 平民のくせに!
 平民のくせに!
 平民のくせに!

「あ、あああ、ああああああ!!」

 また、ワルキューレが斬り捨てられた。
 残りは一体。あ、それもまた脳天から真っ二つにされた。
 ギーシュの脳裏には、真っ二つにされたワルキューレの姿が自分自身の姿と重なっていた。
 そして、眼前で刃が閃いたとき――


 ギーシュの意識は消失していた。


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