あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ブレス オブ ファイア 0 前編

ヒトは弱くて

『宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!』


愚かで

『神聖で、美しく、そして、強力な使い魔よ!』


間違いを繰り返し

『私は心より求め、訴えるわ!!』


……そして美しい生き物だ――――――

『わが導きに応えなさい!!!!』


ブレス オブ ファイア 0   ~虚無ろわざるもの~


ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはかつて無い手ごたえを感じていた。
これまでの爆発とは規模の違う、天を覆いつくすような爆煙が上がり
その向こうに長い首をもたげ、翼をはためかせる白銀の巨躯を見たからだ。
煙の向こう側であり、未だにその姿は見えていないというのに強烈な威圧感を放つ、何者か。
その影、恐らくは、竜。

―――成功だ。

喜びで不意に涙がこぼれそうになるが、ルイズはぐっと奥歯を食い縛り耐えた。
『ゼロ』と呼ばれ続けた身なれど、だからこそ最後まで失態は許されない。
契約が終わるまでが召喚の儀式であるのだから。
今は地に伏せ、機を待つべき。

ゆっくりと煙が晴れ、彼女の使い魔が姿をみせて――――――



「……あんた……誰……?」

煙が晴れたその先には、銀髪の青年が横たわっていた。

「え……?は、裸の……平民?」
「へ、へいみ……ん?」
「は、は、はっはははは!!見ろ、ゼロのルイズが平民を!!平民を召喚し……た……ぞ?」
「いや、よく見ろ!耳がとがってる!エルフだ!!」
「な、え、エルフだってーー!?」

周りを取り囲む有象無象のざわめきを意識から追いやる。

「……ミスタ・コルベール、彼はエルフなのでしょうか?それとも……」
「ええ、ミス・ヴァリエール。使い魔の儀式は神聖なものです。呼び出したものが何者であれやり直しは出来ません。
 例え、その相手がエルフであったとしても。さあ彼が立ち直る前に、契約を」

先生から確認と許可を貰い、契約を急かされたのだが、聞きたかった意図は通じなかったようだ。
どうやら爆煙の向こうに見えた巨大な影は、近い場所に居た自分にしか見えていなかったようだった。
しかし、ドラゴンだろうが、エルフだろうがそんなことは彼女にとってどうでも良かった。
ルイズにとって重要なのは、目の前で億劫そうに頭を起こす自分の使い魔となる存在が
間違いなく神聖で、美しく、そして、強力な使い魔であるだろうということだった。
銀髪の青年の瞳が、こちらを射抜いている。

「オマエ、は……?」
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と為せ!」

一息で契約の呪文を唱え、サラサラの銀髪に指を入れアゴを持ち上げる。
さあ、神聖なる契約を。
目を瞑り、顔を近づけ、ルイズの唇は彼の唇へと――――――



――――――あれっ?

手ごたえの無さにルイズは眉を顰めた。
そうか、目を瞑っていたから距離を誤ったのか、と自己分析する。
仕方が無い、これがファーストキスであるのだから失敗もするだろう。
今度こそ、と薄目を開けつつ顔を近づけ……
……また失敗した。
いや、違う。この男、キスを避けている!?

とうとうルイズの瞳は驚愕によって大きく開かれた。

「ん!ん!ん!んーー!」
「……」

こんな所で諦めてなるものか、とルイズは青年の頭部をしかと両手で固定し
契約のキスを、迫る!迫る!迫る!迫る!
負けじと青年も、避ける!避ける!避ける!避ける!

傍から見れば、今の彼女は血走った目で全裸の青年を押し倒し襲い掛かる女にしか見えないだろう。
エルフであるかもしれない、という恐怖から微妙な顔をしているクラスメート達の中で
ルイズにいつもちょっかいを掛けていたツェルプストーという赤髪の女生徒だけが
腹を抱えて笑い転げていた。

ぜぇぜぇと荒い息を吐きつつ、ルイズはもう何度目かになる契約に挑戦する。
頭をつかまれているので大きく避けることが出来ず、顔面を唾液まみれにされている青年はとても迷惑そうな顔をしていた。

結局コルベールに割って入られるまでルイズによるキスの応酬は続いたのだった。



「もうっ、信じらんない!貴族のキスを避けるなんて!しかもエルフじゃなくて、ちょっと耳が尖ってるだけの平民だなんて
 どういうこと!?」
「……さあな」

夜、ルイズの部屋にて彼女は青年と向かい合っていた。

契約失敗の後、コルベールからの質問によって彼はエルフではない、と判明したのだがそれからがまた大変だった。
ゼロのルイズが平民を召喚した、と囃す外野の声は以前に比べ、全く気にはならなかったし
契約には失敗したが、契約履行まで一年という猶予期間を学園長に与えられたので今すぐには留年の危機もない。
そんなことよりも、ルイズを悩ませているのはこの青年の突飛な行動にあった。
召喚された姿のまま、ぷらぷらさせて辺りをうろつこうとするし、何故か一般常識というものが悉く抜けていた。
いや、ヒトからどう思われようとかまわない、とでも言いたげな行動をとっていた。
今はまだ、必要最低限の文化的規範からは抜け出ていないが、放っておいたら何をするか解ったものではない。
とりあえずカーテンを裂いて腰に巻きつけてあるが、半裸のままである。
その滑らかな肌を持つ上半身に、いつの間にか魅入ってしまう。
いけない目の毒だ、とルイズは頭を振る。

「ねぇ、あんたホントに私の使い魔……なのよね?」
「……契約は為されていないが」
「なによ、私が呼び出したんだからあんたは私の使い魔なの!」
「……喚ばれるのは慣れている」
「うっさい!いいからキスさせなさい!!」

息巻いて飛び掛るが、またひょいと避けられ壁とキスするハメになる。
ひりひりと痛む鼻を撫でながら恨みがましい目を青年に向け、ルイズはまたかと歯噛みする。
何度もキスの機会を狙っているのだが、その度に避けられるという繰り返しである。
一年という猶予期間は設けられたものの、この調子では嫌がおうにも留年の危機を感じてしまう。
そもそも、この男は契約という縛りが無ければ自分の下から離れていってしまうのではないか。
早く契約を済ませなければ、もしくは自分の手元に置く手段を考えなければ。

青年はこちらの葛藤など関係ない、何処吹く風という様な態度でゆったりとルイズの与えた藁束の上に
座り込んでいた。
ルイズはその様があまりにも絵になっていてこの青年が、魔法を使えるかどうかは未だ解らないが
まさか何処かの貴族なのでは、とさえ思ってしまったほどである。

他にも使い魔たちが一斉に仰向けになり服従の意を示したりと、この青年は不思議な雰囲気を身に纏っていた。
使い魔達の中でもタバサという蒼髪の女生徒の使い魔、風竜のシルフィードの反応は特に顕著だった。

『ああああ~~!ちょっと!ぷらぷらさせてないで、早くこっちにきなさい!!』
『……あれは、竜、か?』
『はぁ、竜?特に珍しくも無いでしょ?だってあんたも……』
『きゅ、きゅいきゅい!?ほ、ほほほ本日はお日柄もよく御身もご立派にて―――!?』
『……喋っちゃダメ』
『で、ででででもお姉さま!こ、この方に挨拶しないのは失礼、ううん、声をかけるのすら恐れ多くって……
 きゅい!痛い、痛いのねお姉さま!きゅいきゅい!!』
『……喋っちゃ、ダメ』
『きゅいきゅいきゅいーーー!!ごめんなさ、痛っ、痛いのねーーーー!!』
『なんか、もう……いろいろありすぎて疲れたわ……』

昨日までのルイズなら間違いなく驚いたであろうが、今の彼女にとってはドラゴンが喋るということは些細なことでしかなかった。
周りに人影もなく、ルイズだけにしかその事実は目撃されなかったのでタバサにより口止めを求められ、それを生返事で了解した。
しばらくタバサはなんとも不思議そうな、いぶかしむ様な表情を青年に向け、次いでその視線が下にさがるや
顔を耳まで赤くして走り去ってしまった。
その時はカーテンを与える前だったので、青年の自身がぷらぷらとしていたからだった。

翌日から毎日シルフィードによって贈られてくる貢物、もとい、お供え物にルイズはまた頭を抱えることになる。



「……はぁ、もういいわ。ねえ、貴方の名前は?」
「フぉ…………ロンだ」
「ちょ!?今明らかに言い直したわよね!?ねぇちょっと、ねえ!?」

この犬!
と、普段のルイズなら激昂しただろうが彼女は何故か青年、
ロンをそう呼ぶことはできなかった。
確信はなかったが頭どこかで理解していたからだ、この男が竜の化身だということを。
召喚の煙の向こうに感じた気配、人の身の内にこのような圧倒的な気配は閉じ込められないだろう。

これから先、自分とロンにどんな出来事が待ち受けているだろうか。
ルイズは己の使い魔となるロンを視界に入れ、馬での遠乗りを楽しみにする子供のように
明日が待ちきれない、という気持を笑顔いっぱいに広げながらベッドの中に潜り込んだ。




――――――思えばこの時が、一番幸せだったのかもしれない。
何も知らず笑いあえていた時が。
ルイズとロンにとって。
否、人間もエルフも幻獣も、このハルケギニアに住まう全てのヒトにとって。
うつろうもの達にとって――――――

ルイズは瞑目し、目まぐるしく瞬く間に過ぎ去っていった大切な思い出を、
ロンと初めて出会った日の事を思い起こしていた。
ゆっくりと目を開ける。

「ここが……聖地……」

肉の森を抜けた先。
眼前には封印されし遺跡が、
始祖ブリミルが降臨せし聖地が広がっていた。

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