あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

宵闇の使い魔 第参話

餓鬼のお守りに加えて餓鬼の相手とは――
なんだろう。京太郎の病気がうつったのか?
まぁ、餓鬼相手だ。段平の一本もぶん回せば十分だろう。
さて、どんくらい楽しませてくれるもんかね――


宵闇の使い魔
第参話:ヴェストリ広場の決闘


「説明、してくれるんでしょうね。この状況」

むすーっとした表情で現れたルイズに、虎蔵は肩を竦める。
――タイミング悪ぃなぁ――
「いやまぁ、なんだ。成り行き?」
「馬ッ鹿じゃないの!相手はメイジなのよッ!?
 幾らあんたが傭兵で戦い慣れしてるって言っても勝てるわけ無いじゃないの!」
「ほぉ、心配してくれんのか?」
ニヤニヤと笑いながら問えば、途端にルイズはムッとして、
「自分の使い魔がみすみす怪我するのを黙ってみすごすわけないじゃない!」
と睨みつけてくる。
また、シエスタもようやく喋れる程度に落ち着いてきたのか、
「そそ、そうです、トラゾウさん。貴族を本気で怒らせるなんて――
 殺されてしまいます!私が責任を取りますから――」
顔を真っ赤にしながら怒鳴るルイズと真っ青になりながら引き止めるシエスタに、やれやれと肩を竦める。
メイジの魔法とやらは、そんなにもヤバイものなのだろうか。
少なくとも虎蔵には、教師がルイズの爆発を防げずに気絶している程度なのだから、という認識しかない。
仮に、発動すれば強力なのだとしても、発動させなければ良い話だ。
「――まぁ、見てろって。ルイズ、お前さんの使い魔なんだ。少しは信用しろ」
どれだけ言っても泰然自若として答える虎蔵に、ルイズは
「もう良いわッ!かってに決闘でも怪我でもすれば良いのよッ!」
と怒鳴り、食堂を出て行った。
シエスタはオロオロとルイズの背中と虎蔵を交互に見るしか出来ずにいる。
虎蔵はやれやれと肩を竦めてから辺りを見回して、
「さて、ご主人様から許可も貰ったことだ――誰か、ヴェストリの広場とやらに案内してくれんかね」
そう声を掛けた。
――今の何処が許可なんだ?――
そんな視線が集まる中、虎蔵は久しぶりに身体を動かせそうな予感に、上機嫌に歩き出すのだった。



虎蔵が見知らぬ学生たちの案内で広場に着くと、既にギーシュと何人もの観客が集まっていた。
「待っていたよ、使い魔君。この青銅のギーシュから逃げなかったことは褒めてあげよう」
「あいよ。そりゃどーも」
相変わらずおざなりにしか答えない虎蔵に、ひくひくと頬を引きつらせるギーシュ。
「け、剣はどうしたのかね。よもや素手でやりあう気ではあるまい?」
「あぁ、直ぐに出す」
別に始まってから出しても良かったのだが、折角指摘されたのだから出しておくかと、袖の中からするりと刀を抜き出す。
観客の全員がぎょっとした様子でその動作を見つめた。
虎蔵は隠器術に驚くギーシュと観客に気付くと、
「あぁ――ま、手品みたいなもんさ。ほら、何時でも良いぜ。こいよ、お坊ちゃん」
そういってニヤリと、犬歯の見える獰猛な笑みを浮かべる。
何処から刀を出したのか全くつかめなかったギーシュだが、軽く咳払いをして立ち直ると、
「い、良いだろう。ならば僕も、華麗なる技を見せてあげないとね」
そう言って、薔薇の杖を振るった。
花弁が一枚散って地面に落ち、そこから青銅製の武装した乙女を模したゴーレムが生まれる。
「見たまえ。これが僕のワルキューレだッ!」
勝ち誇って告げるギーシュだが、虎蔵は「あぁ、さよか」と全く驚きも動揺もない。
どこぞの正義の味方な爺が呼び出す――ゴーレムと言って良いのかは疑問だが――偶神と比べてしまえば、まさしく子供の玩具なのだから仕方がない。
「くっ――土下座をして謝ったところで止めはしないからなぁッ!」
此処にきて完全にブチ切れたギーシュが、槍を構えたワルキューレを突撃させた。


一方、人だかりから離れたところから二人の少女がその様子を眺めていた。
キュルケとその親友、青い髪と瞳の少女・タバサの二人だ。
「珍しいわね、タバサ。貴方がこういうのに興味を示すなんて」
「―――興味がある」
「決闘に――いや、ルイズの使い魔にかしら?」
キュルケの言葉に、こくりと頷く。
その時、タバサの視線の先で虎蔵が袖口から刀を抜き出した。
キュルケは丁度タバサの方を見ていたため見逃したが、目撃したタバサは再度、
「――興味深い」
と呟く。
タバサは召喚の儀式のときから既に、虎蔵からある種の匂い――荒事を生業とする者の――を感じていた。
そして恐らく、相当な使い手である事も。
他の学生や彼の主でさえも、彼が――平民がメイジに勝つとは思っていないようだが、それは思い上がりであることをタバサは知っている。
その身で体験した事があるわけでは無いが、世の中には確かに《メイジ殺し》と呼ばれる実力者が存在しているのだ。
タバサは彼がその《メイジ殺し》に相当する実力を持っているのではないかとふんでいた。
「動くわね」
キュルケのその一言にこくりと頷き、彼の動きを見落とさぬように見つめるのだった。


突撃してきたワルキューレを、虎蔵は軽々と回避する。
「スピードもパワーも餓鬼の玩具にしちゃあ、過ぎるな。なるほどこれが魔法使いの力か」
シエスタの怯えようにも納得がいった。
「ふん。避けたか――だが、そう何度も幸運が続くものか。
 すぐにその餓鬼呼ばわりを訂正させてやる。ワルキューレ!」
ワルキューレが再び虎蔵へと槍を向け、僅かに腰を落した。
確かにドットのギーシュでこれならば、メイジと平民の間には決定的な壁がある。
だがしかし――

「―――まだまだだな」

その瞬間、ギーシュの目にも観客の目にも、虎蔵が消えたように見えた。
それほどの高速移動で、次の瞬間にはワルキューレと位置を取り替えて立っている。
元々からその程度は朝飯前であるため、虎蔵自身は調子が良いくらいにしか感じていないが、ガンダールヴのルーンの効果も現れている。
ゴトリ――
まるで切られたことを後から思い出したかのように、ワルキューレが胴体から真っ二つに分かれ、崩れ落ちた。


『うおおおぉぉぉぉっ!!』
観客から大歓声が上がった。

「今の動き、見えた?」
キュルケの問いに首を横に振るタバサ。
間違いない、彼は一流の《メイジ殺し》だ。
タバサは確信した。

そしてまた、シエスタに引っ張られるようにやってきたルイズも、それを目撃しては呆気に囚われていた。
彼女を引っ張って来たシエスタも同様に。
「嘘―――」

――まぁ、見てろって。ルイズ、お前さんの使い魔なんだ。少しは信用しろ――

虎蔵の言葉が頭をよぎった。
「凄い――」
シエスタの口から漏れた言葉は、誰しもが感じていたことだった。


単純にワルキューレが切られただけならば、まだ此処までの驚きはなかった筈だ。
だが、彼の見せた動き――それこそが周囲に彼の実力を植えつけたのだ。
――アレほどのスピードで動く相手に、魔法が当てられるのか――
――いやそもそも、唱える暇などあるのか――
この瞬間、観客として集まった生徒達のもつ、メイジの絶対優位という自身に僅かながら皹が入った。


「なるほど――確かに、君は平民にしては強いようだね。それも、かなり、だ。
 だが僕も、ドットとはいえメイジだ。青銅のギーシュとしての――プライドがある」
「そいつぁ重畳。見せてくれよ、そのプライドとやらをな」
くくっと笑みを浮かべて煽る虎蔵。
「ワルキューレ――行けッ!」
再度薔薇の杖を振るうと残っていた花弁が散り、6体のワルキューレが虎蔵を方位するように生み出される。
更に、間髪居れずに――あのギーシュがなんの前口上も無く――ワルキューレを一斉に突撃させた。


ワルキューレの出現から突撃までの動きは実に滑らかで、素早かった。
先程のような迎撃は出来ない――!?
「トラゾウ!」「トラゾウさん!」
そう感じたルイズとシエスタが悲鳴を上げる。

そして次の瞬間、ドスンッという鈍い音と共に、六本の槍が虎蔵へと突き刺さった。


「嫌ぁぁぁぁッ!」
――勝った!
ルイズの悲鳴を聞きながら、ギーシュは心中で喝采を上げた。
――すまないね、ルイズ。君を再び《ゼロ》に戻してしまうが――
――全てはあの平民が悪――
「よっこらせ、と」
「なッ!?」
軽快な音を立て、ギーシュのモノローグを打ち切るようにワルキューレの頭に着地する虎蔵。
全くの無傷だ。
致命傷どころか、スーツに穴一つ開いていない。
「なッ――」
誰もが。
誰もが自らの目を疑った。
「バカな!?確かに槍が貫いたはずなのに――」
そう。先程のように目にも留まらぬほど速く動いたというどころではない。
なにせ、彼らの誰しもが六本の槍が突き刺さる瞬間を目撃しているのだ。

「うぅぅ――」
呻きながら、無意識の内に一歩下がってしまうギーシュ。
一方、ルイズとシエスタは虎蔵の声を聞くと恐る恐る目を開け、無事な姿を確認して胸を撫で下ろす。

「坊ちゃん、よーく狙わんとなぁ」
ニヤニヤと笑いながら、地面へと飛び降りる虎蔵。
皆が、では先程の槍に串刺しにされたのはなんだったのかと、ワルキューレ達の隙間から中心を見つめて、
「なぁッ!?」
驚愕の声を上げた。

「丸太だって!?そんな馬鹿なッ!!」
自らが変わり身に使った丸太を見て驚愕するギーシュに、意地の悪い笑みを浮かべてみせる。
――さて、そろそろ終わらせるか――
「喜べよ。大盤振舞だ――」
手にしていた刀を口に咥えると、ずるりと虎蔵の背後から三対六本の刀が現れる。
今まで何処に隠していたと言うのか。
背後から見ていた生徒にすら認識できていない。
そして――

一閃。
否、六閃。
あろうことか片手で三本、計六本もの刀を持った虎蔵は、一息に六体のワルキューレを切り裂く。
ゴトゴトと音を立ててワルキューレが崩れ落ちる頃には両手の刀は消え去り、口に咥えていた刀を手にしている。
まるで散歩でもするかのようにリラックスした様子でギーシュに近づくと、切っ先を眼前に突きつけた。

「あぁ――っぁ――」

ガクガクと震えながら、後ずさるギーシュ。
虎蔵は獰猛な笑みを浮かべながら観客に問うた。
「なあ、決闘ってのはどうやったら勝ちなんだ?」
笑みを浮かべたまま、もはや息を呑むばかりの生徒達に問う。
ちらりと覗く犬歯が、彼の獣性を象徴しているのかようだ。

「杖を――落したら――」

誰かが呟いた。

虎蔵は「そうか」と答えると、大上段に刀を振り上げる。
「ひッ!?」
恐怖に全身が強張り、逃げる事も出来ずに刀を見上げるギーシュ。
杖は握ってはいるが、もはや落したも同然。
物理的な恐怖よりも、虎蔵の発する濃密な死の気配に怯えきってしまっている。
しかし、
「なあに、腕の一本位――無くなっても死にゃぁせんよ」
と無慈悲に告げ、刀を――

「駄目ぇぇッ!」

ピタリ。
肩ギリギリ。
布を切り裂き、冷たい刃の感触が方にうっすらと伝わる。
「あ――ぁッ――」
声にならない声を漏らしながら、ギーシュがガクッと崩れ落ちた。

「ギーシュッ!」
観客の中から、金髪の少女が駆け寄ってきた。
二股のうちのどっちかだろうか。
虎蔵はそれを見ると、くだんね、と言わんばかりに肩を竦めて刀を納め、最後の声の主――ルイズの下へと向かった。

「勝負は――ついてたわよ」
「かもな」
ルイズもまた僅かに恐怖を滲ませているが、気丈に睨みつけてくる。
虎蔵にはなぜかソレが微笑ましく感じられ、ニヤニヤと笑っては、
「此処で震えてなきゃ、もっと締まるんだがなぁ」
とからかって、人垣を割りながら立ち去っていく。

「シエスタ、俺ぁちと茶が恐いな」
「あ、はい。直ぐに用意します!」
建物の方へと歩きながら、普段どおりの声で注文をよこす虎蔵に、ようやく正気に戻ったシエスタが慌てて追いかけていった。

「一体なんなのよ――あいつは――」
ルイズの呟きは、吹き抜ける風にかき消されるのだった。

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