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マジシャン ザ ルイズ 2章 (9)

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マジシャン ザ ルイズ (9)罪の自覚

暫く前、それはほんの暫く前の物語。

ナインタイタンズ。
ウルザ、テイザー、ダリア、フレイアリーズ、クリスティナ、ウィンドグレイス卿、ガフ提督、ボウ・リヴァー、テヴェシュ・ザットからなる九人のプレインズウォーカーの連合軍。
彼らの目的こそは、暗黒次元ファイレクシア、その九つのスフィアに精神爆弾を設置し破壊することである。
そうなればファイレクシアの次元は壊滅し、ドミナリアを侵略しようとするヨーグモスの野望は阻止される。
勇敢で偉大なるプレインズウォーカー達、しかし、彼らの中にも裏切り者がいたのだ。
邪悪なる黒きドラゴンの王テヴェシュ・ザットが彼らを裏切り、クリスティナとダリアを殺害した。
その裏切りを察知したウルザは、速やかなる反応でテヴェシュ・ザットを粛清する。

「ウルザ!あなたはザットが裏切ることを知っていた!なぜだ!?なぜ放置した!」
あまりに冷静に受け止めるウルザへ、仲間達の追及。
「ザットが我々を裏切るのを知ってたか?」
ウルザはさも面白そうに聞いた。
「それを当てにしていたのだよ」
そう、ウルザの目的はザットを粛清し、その魂を精神爆弾の燃料にすることにあった。
その為にクリスティナとダリアを犠牲にしたのだ。



「自分を正当化するな、ウルザ。お前は男が女を愛しているように、ファイレクシアを愛している。
 この世界のラインを、機械達を、完成された設計を愛している。
 お前はこの世界を破壊したくないと、自分の物としたいと思っている!」
テイザー、ウルザの仕掛けた罠により命を落とした、最も古き力あるプレインズウォーカーの語る真実。

ファイレクシア、第八階層。
そこでウルザを待っていたのは、ヨーグモスの誘惑であった。
アーティファクト使いとして、理想の世界ファイレクシア。
心の何処かで、それを求めていなかったといえば嘘となる。
いや、真実、ウルザはこの邪悪な誘惑に屈してしまう。
そしてヨーグモスのテスト。

ヨーグモスにつれて来られたそこで、ウルザは奇妙なものを発見する。
皮を剥がれ石にはりつけにされ、暗黒卿によって永遠の拷問を与え続けられている何者か。
「………ミシュラ?」
そこにあったのは実の弟、ミシュラの姿であった。
今はウルザの瞳に納まっている二つのパワーストーン。
それを互いに奪い合い争い、最後はファイレクシアに唆され、兄弟戦争を引き起こしたミシュラ。
彼の憎しみの原点である弟の哀れな姿であった。
『兄さん、助けてくれ………お願いだ、助けてくれよ兄さん』
夢か現か、哀れにも苦痛に呻き、助けを求めるミシュラ。
「………」
ウルザは己自身の罪を自覚した。
止まれない、止まることなど出来ないのだ。
『兄さん、お願いだ、お願いだよ…』
助けを求めるミシュラを無視し、進み始めるウルザ。

アルゴスの地を吹き飛ばし、弟ミシュラを殺した。
自らを匿った聖なるセラの次元を崩壊に導いた。
トレイリアの時間移動実験では多数の若者の命を奪った
親友であったバリンさえ、最後には利用し、死なせてしまった。
人造生命体メタスランの創造、キャパシェンの血統実験。
既に己の手は罪で血塗られている。
数々の罪、それらの声がウルザを苛む、けれどその歩み止めさせはしない。
後悔はない。
けれど本当に?後悔はしていない?もしもやり直せるとしても?

「宝箱でね」
ここはニューカッスルの城、その城内にあるウェールズの居室である。
空賊の黒船に偽装された『イーグル』号はニューカッスルの秘密の港に入港し、無事城へと辿り着くことができた。
そして今、ルイズはウェールズに連れられて彼の私室へと招かれているのであった。

ウェールズが取り出した小箱、彼はそれを開き、中から一通の手紙を取り出す。
まるで壊れ物であるように、丁寧に、そして愛おしそうに口付けたあと、開いてゆっくりと読む。
何度も読まれたのであろう、ボロボロになった手紙。
それを大切に閉じて、封筒に入れると、ルイズに手渡した。
「これが、姫から頂いた手紙だ。この通り、確かに返却したよ」
「ありがとうございます」
ルイズは深々と頭を下げると、アンリエッタの心であるその手紙を受け取った。
「明日の正午、この城に向けて反乱軍の大攻勢が行われる。我が軍は三百、対する敵軍は五万。
 我々は全滅する。しかし、王家の誇りにかけて、勇敢に戦って死ぬつもりだ。
 それに先立ち明朝、非戦闘員を乗せた『イーグル』号が、ここを出港する。
 君はそれに乗って、トリステインにお帰りなさい」
ルイズは受け取った手紙をじっと見つめていたが、決心したように口を開いた。
「殿下…。失礼をお許しください。恐れながら、申し上げたきことがございます」


ウェールズの居室へ通されたのはルイズだけである。
ならばお付きであるところのウルザ・ワルドが何をしているかと言えば、居室の扉の前で衛兵のように左右に棒立ちしているのであった。
不動、まるで石のごとく揺らがない二人。
熟達の兵士であっても、平時にこの緊張感は無いだろう。
そんな中、ふいにワルドが口を開いた。
「私は明日、ルイズとここで結婚式を挙げるつもりだ」
「そうかね」
お互い前方を見据えたままの会話。
「この城は、明日墜ちる。その前に脱出するつもりだが、船には一人で乗ってもらいたい、ウルザ殿」
「分かった、ミス・ルイズがそのように言うなら私は一足先に船で出発しよう」
「ルイズは、僕が幸せにする。使い魔殿、あなたは、不要だ」
その後、部屋からウェールズと、何かを必死に堪えているルイズが出てきたことでこの話題は打ち切りとなった。


夜、城では華やかなパーティーが催された。
王党派の貴族達はきらびやかに着飾り、テーブルにはこの日のためにとって置かれた、さまざまなご馳走が並べられている。
全ては明日、終わりを迎える日のために。
貴族達は笑い、歌い、酒を飲み、明日のことなどどうということは無いかのように陽気を振りまく。

死を前に、明るく振舞うその姿はただ悲しさだけをルイズに突きつける。
愛する者を残して死ぬ人の気持ちが分からない、分かりたくない。
帰りたい、トリステインに帰りたい。
この国は嫌い、イヤな人達と、お馬鹿さんが一杯。
誰も彼もが自分のことしか考えていない、残された人のことなんて考えていない。
心の何処かでは分かってる、でも分かりたくない。
誰かに泣きつきたい、泣きついて、全てをぶちまけてしまいたい。
誰に?ウルザに?ワルドに?
違うと思った。
どちらにも、泣きついてはいけないと思った。
泣き付いたら、きっと立ち上がれなくなるから。

その日、ルイズは一人、部屋で眠りについた。


                            彼は狂人だが、機械ではない。そこに不幸がある。


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