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使い魔の夢-11

「品評会? 」
 隠してあったバイクを言われるがまま走らせながら巧は聞き返した。
「そ、春に召喚した使い魔達のお披露目がもうじき行われるのよ」
 ヘルメットを被って巧の後ろにしがみ付いているルイズが答えた。
「品評会では使い魔は必ず何か一つ芸を見せないといけないの。
 サラマンダーなら火を噴いてみたり、風竜なら空を飛んで見せたりとかね」 
 その品評会で使い魔は何か隠し芸でもする必要があるのか、ルイズの使い魔は自分だ。つまりは…… 
「冗談じゃねぇ。俺は芸なんてもってないし、大体、そんな見世物みたいな真似できるか」 
「そういうと思ってたけど、嫌でもやってもらうわ。品評会を欠場するなんてこの上ない大恥よ。
 あんたのご主人様は私、その私に恥をかかせたらどういうことになるかわかってるんでしょうね!?」
 ルイズはそう言って、巧の腰を強く締め付けた。
「……ッ! 分かったからやめろ。 
 で、その品評会とこれから行く買い物とどんな関係があるんだ? 」
「剣を買いに行くのよ。あんたにはそれを使って剣舞を披露してもらう事にするわ」
「剣舞? 」
「あんたにできそうなのはそれ位でしょ。変身を見せれば文句ないって思ってたけど、
 よくよく考えてみたらそれってあんたが凄いんじゃなくてあのベルトが凄いってことじゃない。
 それとも何? あんた自身、他に人様に見せられるような芸でも持っているの? 」
「アイロン掛けなら多少な」
 巧は少し得意げに答えた。
「ハァ? 何、それ!? ふざけないで! 」
 機嫌を損ねたルイズは巧の腰を再び強い力で締め付けた。

「いい事、さっさと剣を買ってさっさと学院に戻ったら、さっさと剣の練習をみっちりやりなさい!
 もう品評会まで日数がないの、死ぬ気でやらないと絶対許さないんだから! 」

 学院からバイクを走らせること一時間半、
 ルイズと巧の二人はトリステイン城下町トリスタニアの駅に到着した。

「剣ならこいつがある、お前だってあの時見たろ。いちいち買いに行くことなんかない」
 きつく締め付けられた腰を撫でながら、巧は左ハンドルを指差した。
「わかってないわね、品評会なんてとどの所はケチの付け合いよ。
 ちゃんとした普通の形の剣を使ってやらないと、何かと文句が飛んで減点になるんだから」
 着いたなり直ぐにバイクから降りて先を行くルイズが平然と言った。


 使い魔の夢 


 何処かのテーマパークのような白い石造りの町並み。
 声を張り上げて肉や果物、野菜を売る商人達の姿。
 道端に溢れている妙な物ばかりを並べた怪しい雰囲気の露店。

 初めて見る異世界の城下町は、無感動な巧の目にも新鮮に映った。

「キョロキョロしないの、ボーッとしてる間にお金擦られちゃったらどうするのよ」
 前に進むルイズが立ち止まって辺りを見回している巧を叱り付けた。
「そう言うんなら、お前が財布持てよ」
 ぎっちりと金貨が詰められた財布は巧の上着の中にあった。
 財布は下僕が持つべき、と言われて、無理矢理押し付けられた物だ。
「二度も同じこと言わせないで、そういうのは下僕であるあんたの役目って決まってるの。
 これから入る路地裏には危ないのがゴロゴロいるんだから、もっと気を引き締めなさい」

 ブルドンネと名のついた通りを歩いている途中、ふとした会話が耳に入り足を止めた。

「どうよ、最近? 」 
「上がったりだわ。どこぞの『土くれ』さんが頑張ってくれてるお陰で、さっぱり客が来やしない」
「『土くれ』? あんなのただの貴族狙いの物取りじゃねぇか」
「知らねぇのか、狂乱の……、何だったか、訳分からん輪ッか手に入れてからだよ。
 手当たり次第腕が立ちそうな奴等を殺し回ってるそうだ、メイジ、剣士、傭兵、問わずな。
 おっかなくてみんな家に引っ込んじまった」
「殺しねぇ……、どうせやるならあの『鳥の骨』でも殺ってくれねぇかなぁ」 
「だなぁ。そうだ、聞いたか? 『鳥の骨』って言えば……」

「また、ボケーッとしてこの犬は! 行くわよ! 」
 ルイズが突っ立ったままの巧の腕を掴んで引っ張っていった。
(……狂乱の、……輪っか、……殺し、……『土くれ』)  
 さっきの話に出てきた幾つかの言葉が、喉に刺さった魚の骨のように引っ掛かっていた。

 目当ての武器屋は狭い路地裏を進んで四辻に出た所にあった。
 剣の形をした銅製の看板が目印のようだ。

 店の中は昼間だというのに薄暗く、ランプの灯りがともっていた。

「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。
 お上に目をつけられるようなことなんか、これっぽっちもありませんや」 
 店の奥で、パイプをくえていた親父はルイズを胡散臭げに見つめ、
 紐タイ留めに描かれた五芒星に気付くと、パイプをはなしドスの利いた声を出した。

「客よ。こいつの使えそうな剣を選んで頂戴」 
 ルイズは巧の方を指差して張り合うように答えた。

 少しの間奥に引っ込んで戻ってきた店主は
 巧の体格に合わせたレイピアを持ってきて薦めたが、見栄えに拘るルイズは頑なにこれを拒否した。
 再び奥に消えた主人が戻ってきて見せた物は、
「店一番の業物でさ。貴族のお供をさせるならコレ位は腰から下げて欲しい物ですな。
 といっても、やっこさんなら、背中からしょわんといかんですな」
 一・五メイルはあろうかという見事な大剣だった。
 柄は両手で扱えるように長く、立派な拵えがしてある。
 ところどころに宝石が散りばめられ、鏡のように両刃の刀身が光っている。
 確かに店一番と太鼓判を押すだけの事はある。
「これでいい?」
 すっかりその大剣が気に入ったルイズは巧に確認を求めるが、
「どれだっていいじゃねぇか。似たようなモンだろ、全部」
 その辺に置いてあった短剣を手にとっては戻しを繰り返す巧は興味なさげに返した。
「真剣に考えて、今から買うのはあんたの護身用のも兼ねてるんだから」
「護身用って何だよ?」
「今は銃一丁で何とかできてるけど、ギーシュの時みたいに取られちゃったらどうするの?
 あんただって手持ちの武器は多くて困る事はない筈よ」

 その時、乱暴に積み上げられた剣の中から声が聞こえた。

「やめとけやめとけ、そんなヒョロイ体した坊主には幾ら武器持たせたって無駄だよ」

 ルイズと巧は声の方を向いた。店主はまたかと頭を抱えた。

「ハッ、おめぇみたいなのは棒っ切れでも振ってりゃいいんだよ!
 そいつがわかったら、そこの貴族の娘ッ子と二人仲良く帰っちまいな! 」

「ああ、そういうことね」
 事態を飲み込めたルイズがつかつかと積み上げられた剣のほうに近づき、その中の一本を掴み取った。 
「て、てめぇ、そんなガキの手で俺様に触るんじゃねぇ! 」 
「やっぱりインテリジェンスソードじゃない」
 その声は、ルイズの掴んだ錆の浮いたボロボロの剣から発せられた。
「嘘だろ!? 喋ってたの、そいつかよ!? 」
 巧は驚きの声を上げる。
「今更何驚いてるのよ、あんたのマジックアイテムだって喋ってるでしょうが」
 呆れ顔で言ったルイズはこれ以上手を汚したくないのか、持った剣を巧に手渡した。
「離しやがれ! 剣をまともにふれねぇような小僧が……、ん?」
 さっきまで騒がしかったその剣は、巧を観察するかのように急に黙りこくった。
「…………おでれーた、見損なってた、てめ、『使い手』か」 
「……」
「ふん、自分の実力も知らんのか。まぁいい。てめ、俺を買え」
「…………嫌だね」 
「何だと!? 」
 この展開はさすがのインテリジェンスソードでも予想外だった。

「お前うるさいんだよ、やかましいのは一人で充分だってのに」
「ちょっとそれ誰の事言ってるのよ!? 誰がやかましいのよ!? 」
「さぁな、誰だろうな」
「大体ね、あんたがボサッとしてたり頼りなかったりするからでしょーが!
 私だってねホントはグダグダ小言ばっか言いたくないのよ! けど、あんたが……」

 ここが何処かなどお構いなしで激しく言い合う二人の客。 

 マズイ、この状況は。どうみてもマズイです、本当にありがとうございました。
 このインテリジェンスソード、デルフリンガーは自身に浮かんだある予感に困惑していた。

 今、このまま放置プレイくらって自分をこの連中に買ってもらわないままだと
 もう自分にスポットライトが当たる事はないんじゃないか。
 このままこの武器屋の片隅で『いらない子』として一生を終えてしまうのではないか。

 イヤだ。それだけは絶対にイヤだ。
 六千年生きてきたその剣は知恵を振り絞り、目の前の男に話し掛けた。
 押して駄目なら、引くまでだ。

「お、オメェ、良く見ると結構な男前じゃねぇか」
「……何だよ、急に? 」
 キョトンとしてデルフリンガーを見つめる男。
「お前さんのことだよ、マジでいい男前だ。場数も踏んでるみたいだしな、腕の方もかなり立つんじゃねぇか。
 そうさ、例えドラゴンが相手でもあんたの前では一撃でやられちまうだろうな。すげぇぜ、旦那!」
「……止してくれ、もういい」
 照れてしまったのか、真っ赤になった顔を背けて指でポリポリ掻いていた。

 デルフリンガーの策は功を奏した。 
 元の世界では「バカ」とか「最低」とか言われ続けてきたこの男、
 乾巧は実はおだてには滅法弱かった。

「あんた何ノせられてるのよ! 見え見えのおだてじゃないの! 」
「オメェは何だ、エライ美人さんだなぁ」
「え? 」
「この国の姫殿下もなかなかのもんだって聞くけど、いやはやあんたには敵わないだろうねぇ」
「そ、そうかしら、私がそんな、姫さまよりキレイだなんて……」
 どうしましょうと両手を頬に当てて、赤らめる娘。

 デルフリンガーの策はやっぱり功を奏した。 
 魔法学院では「ゼロ」とか「ゼロ」とか言われ続けてきたこの娘、
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールもまた実はおだてに滅法弱かった。

 そんなこんなの乗せ言葉ですっかり気を良くした男女は置いてけぼりの主人に同時に言った。

「「親父、こいつ頂戴」」

 男の背中にしょわれて、変な形した鉄の馬で帰路につく途中、

「いつもなら新金貨五百の所を、私がすごい美人だから三百でいいですって。
 私たち本当にいい買い物をしたわね」
「かもな」

 ごめんなさい、ごめんなさい、ホントは俺、新金貨百で良かったんです。

 そんなことは露知らず、顔を見合わせて笑い合う二人。 

 こんなアホな連中に買われて本当によかったんだろうか。

 デルフリンガーの不安は尽きなかった。


 日々は瞬く間に過ぎてゆき、春の使い魔品評会は実に低いテンションで開催されることとなった。

 特別審査員として来場する筈だったアンリエッタ王女殿下が
 流行り風邪をこじらせてしまい、欠席されることとなったからだ。
 代わりに出席することになったのが国民からの人気がやたらと低い枢機卿『鳥の骨』マザリーニ。
 清楚可憐なトリステインの華と謳われたお姫様ならともかく、
 何が悲しくて痩せこけた四十過ぎの親父の前で張り切って芸など見せなくてはいけないのか。
 特に一部男子のモチベーションの低さは露骨に使い魔への態度にも現われ、 
 ひたすらにショボい芸しか見せる事が出来ず、萎えきった雰囲気でお披露目は執り行われていった。

 そして、ルイズたちの番となった。 

「いいわね、お辞儀するだけよ。余計な事は一切しないで」
「ああ、わかってる」

 この日に至るまで巧は剣の練習を行う事が殆ど出来なかった。
 使い魔のお披露目と関係のない他の学年からの決闘の挑戦は絶えることがなかったのと、
 洗濯、掃除、着替えといった一日の雑用も継続してやらされていたからである。
 怪我と疲労でガタガタの巧の体では剣を握る事すらおぼつかなかった。

 そんな様を見るに見兼ねたのか、
 ルイズは巧に取りあえず品評会では挨拶だけして戻るようにと命じた。

「さ、行くわよ」

 そうして出てきた自分達には嘲笑と嘲りの声しか聞こえなかった。
 使い魔の種類は平民とルイズが言えば、流石は『ゼロ』と喝采の声が沸きまくりだった。
 大勢の観客達の笑いの的になりながら、逃げるように会場を後にした。


 とにかく人の目から逃れたくて、ルイズと巧の二人は会場からはるか遠く本塔の中庭を歩いていた。

「全く、あんたのせいで大恥かいたじゃないの」
「あのなぁ、お前、人にやることやらせといてかける言葉がそれかよ」
「あぁなんて可哀想な私! こんな冴えない平民が使い魔だなんて、神様は私を見放したのかしら!?」
 ルイズは芝居がかった仕草で手を合わせて、天に向かって嘆きの言葉を述べた。
 どーしようもないな、この女は。
「おいっ! 聞けよ、人の話……、な!? 」

 あれは何だ。

「ねぇ、何やってるの、え!?」 

 ルイズもまた見てしまったようだ。 

 本塔を殴りつけようとする余りにも大きな人の影。

「あんな大きさのゴーレム、ありなの!? 」

 そうだ、確かに三十メートルはあるだろう大きさの土の巨人。こいつも驚くべき代物だ。

 だけど違う。

 俺が本当に驚くべきなのはその肩の上に乗っている奴なんだ。

 何であいつがこの世界にいるんだ?

 あのベルトはこの世界にはない筈なのに……! 

 何で、お前はそこにいるんだ!? 

「デルタ……! 」 

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