あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ディセプティコン・ゼロ-1


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幾度目かの爆発は、それまでに無いほど巨大なものだった。
周囲を白煙が埋め尽くし、其処彼処から咳き込む声が聴こえる。
そしてルイズのみならず、コルベール、周囲の生徒達の視界をも閉ざした煙が晴れた時、全員が眼を疑った。

其処にあったのは、巨大な鉄の塊。
30メイルはあろうかという胴体の上に細長く先端に向かって僅かにしなる6枚の板が付いており、更に尾の先にも似たような4枚の板が垂直方向に付いている。
幅は約9メイル、高さも4メイル前後はあろうか。
とにかく、巨大としか言い様の無い物体が鎮座していた。

呆然とする生徒達を他所に、一人我に返ったコルベールはどこか興奮気味にそれの周囲を回り出す。

「これは・・・・・・!」

一通りの観察を終えた彼はルイズへと向き直り、内心の興奮そのままに叫ぶ。

「ミス・ヴァリエール! これは素晴らしい発見ですぞ! この物体は我々の未知の技術で作られている!」

有頂天になって声高に語るコルベール。
周囲の生徒達は、その言葉にざわつき始める。
一方、召喚主であるルイズは、目前の鉄塊を呆然と見上げていた。

(なに、これ? こんな巨大な・・・・・・使い魔? これを、私が?)

どうやら、自分がこれほど巨大な使い魔を喚んだ事が信じられないらしい。
やがて我に返った彼女は見る見る内に笑みを浮かべ、使い魔へと歩み寄った。

「ミス・ヴァリエール! 早く契約の儀式を! 先ずは材質の調査にあのガラスらしき物の分析、嗚呼、この鉄の板の用途も・・・・・・」

最早いてもたってもいられないらしく儀式を急かすコルベールを尻目に、ルイズは契約の言葉を紡ぐ。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ・・・・・・」

何処が頭かは分からない為、先端の部分に口付ける。
胴体の横、尾の辺りに描かれた文字らしき物の側にルーンが刻まれ、此処に契約の儀式は成った。

・・・・・・しかし。

「・・・・・・どうして・・・・・・どうして何も起こらないのよ!」

鉄塊は何の反応も返さず、只其処に鎮座しているだけであった。
ゼロのルイズが召喚した得体の知れない物体にどこか緊張気味であった周囲も、結局はただのガラクタだと思い至り、口々にルイズに対する嘲笑を浴びせ始めた。

「脅かすな『ゼロのルイズ』! ただの屑鉄じゃないか!」
「結局ゼロはゼロよね! お笑いだわ!」

それらの心無い罵倒に、ルイズは俯いて唇を噛み締める。
血が滲み、やがてそれが糸を引く頃になっても、嘲笑と侮蔑の声は止まなかった。



・・・・・・やがて、コルベールが奇妙なルーンの写しを取り終え、生徒達はレビテーションで帰途に着く。
またもや嘲笑を浴びせられ、一人取り残されたルイズは大粒の涙を零した。

あんなに頑張ったのに。
あいつらを見返してやるんだと、そう誓ったのに。
結局、私は『ゼロ』のルイズなんだ。

絶望に沈みながらも、ルイズはとぼとぼと歩き出す。
だがその時、背後から何かが開くような金属音が響いた。

「え・・・・・・?」

振り返ったルイズの眼に入ったのは、鉄の塊の横に開いた人が潜れそうなほどの穴。
呆然とするルイズを催促するかのように、中で赤いランプが灯った。

「入れって・・・・・・言ってるの?」

涙に歪む視界の中で、物言わぬ鉄塊が『そうだ』とでも言うかのようにガラスの内側にも光を灯す。
ルイズはおっかなびっくり穴に近付き、それが扉なのだと理解した。
薄暗い内部を抜け、ガラス張りの狭い空間に入ったルイズは、何となくそこにあった座席へと腰を下ろす。
そして思ったよりも高い視界に妙な感心を抱いていると、後方で扉が閉じられる音が響いた。

「な、何!?」

同時に、慌てるルイズの内心など知らぬとでも言うかのように、更に耳障りな騒音が響きだした。
段々と甲高くなってゆくそれにルイズの不安が頂点に達しかけた頃、彼女は頭上の鉄の板が回転している事に気が付く。

そして回転の速度が眼で追えない程にまでなった頃、ルイズの視界がふわりと浮き上がった。



ルイズを除く生徒達は学院へと向け、ある者はレビテーションで、またある者は己の召喚した使い魔の背に乗って帰る途中であった。
誰もがルイズの事など忘れ自身の使い魔の自慢をし合う中、キュルケは己の親友タバサへと語りかけた。

「それにしてもルイズの使い魔・・・・・・一体何だったのかしらね。ミスタ・コルベールは未知の技術がどうとか言ってたけど・・・・・・」
「興味無い」

話を振るも、心底興味なさ気に己の風竜へと目を落とすタバサに、キュルケは肩を竦めた。
斯く言う彼女も本心から疑問に思って話を振った訳ではなく、単に話題が無かったからこそ口にしたに過ぎない。
彼女達・・・・・・否、コルベールを除くハルケギニアの人間達にとって、あの鉄の塊は単なる屑鉄に過ぎないのだ。

(全く、せめて生き物を召喚できればねぇ・・・・・・)

仇敵と称した玩具が見せた打ちひしがれた姿を思い出し、深い溜息を吐くキュルケ。
そんな彼女と、その姿を首を傾げて見ていたタバサ、そしてその周囲を飛ぶ全員の耳に奇妙な重低音が飛び込んできたのは、学院まであと僅かという所であった。

「・・・・・・?」

「何? この音」

音の出所を探そうとメイジ達が視線を彷徨わせている間にも、音は徐々に、徐々にその大きさを増してゆく。
リズミカルに鳴り響く重低音は腹の底に響き、使い魔達の中には聴いた事の無いその音に怯え出すものも居た。
そして、一人のメイジがそれに気付いた。

「上だ!」

その声に頭上を見上げ、コルベールを含めた全員が唖然とした。



あの鉄塊、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔が、轟音と共に凄まじい速さで彼等を追い抜いていったのだから。



ルイズが使い魔の内部に乗り、級友達をいとも簡単に追い抜いてから数分後。
彼女は乗り込んだ時と同様、誘導されるようにして外部へと帰還を果たした。
頭上で回転する鉄の板から巻き起こる風に翻弄されつつも、少し離れた位置から己の使い魔の全貌を見る。

つい十数分前までは、ただの鉄塊にしか見えなかった。
しかし今、自分の目に移り込むそれは何よりも力強く、安心感に満ち、そして頼りになる存在。
未知の原理で動く、不思議な鉄の鳥。
私の、使い魔。

本来であればルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという少女は、その高すぎる貴族としてのプライドと魔法を使えない事から来る劣等感と相俟って、素直に礼を言えるような人物ではない。
しかしこの瞬間、彼女の目の前には物言わぬ鉄の塊しか存在しない。
その事実が彼女の中の壁を取り払い、素直に言葉を紡ぐ事が出来た。

「・・・・・・ありがと」

そう言って、颯爽と身を翻して教室へと向かうルイズ。
その顔は先程までの鬱々としたものではなく、微かな笑みさえ浮かぶ希望に満ちた顔だった。





ルイズは知らない。
己の使い魔が、異世界『地球』にて『Sikorsky MH-53 Pave Low』という名で製造されていた軍用機であると。
本来のそれには、自己意識など備わってはいないという事を。

無人のコックピットに、少女の声が響く。
同時に、この世界のものではない奇妙な言語が、それと重なるようにして響き渡った。

『ありがと』
《Thank you》
『ありがと』
《Thank you》
『ありがと』
《Thank you》

やがて、その奇妙な合唱は他の言葉にも及び、複数の単語が混然と機内に木霊する。

『これは素晴らしい発見ですぞ!』
《This is a brilliant discovery!》
『どうして』
《Why?》
『ただの鉄屑じゃないか!』
《Isn't it steel scrap?》
『お笑いだわ!』
《It's funny!》

記録された音声だけでは飽き足らず学院中の声を拾い、『分析』は更に速度を増す。
そして唐突に声が止み、コックピット内に不気味な、それでいて流暢な『ハルケギニア言語』で、人間には到底発声できない合成音声が響き渡った。





『ブラックアウト、状況開始。ディセプティコンに栄光あれ』



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