「・・・何なの、これ?」
召喚が成功したと喜ぶのもつかの間。
煙が晴れ、ルイズの目の前にあったのは白い板だった。
「おいおい、なんだよアレ?」
「もしかして・・・あの板が使い魔か?」
「ちょwww流石に板が使い魔ってのはねぇよwww」
コルベールも困惑していた。
板が召喚されるなんてことなど今までに前例がないからだ。
「あの、先生・・・私、これに契約しなきゃいけ」
その時、彼らに得体のしれない恐怖が襲ってきた。
―― チョコランタンでぇ、へんてこぴぃまんとぉれぇちゃあったぁ ――
「っ!?」
どこからか歌のようなものが聞こえてきたのだ。
否、それは歌と呼べるものではない。
まるで彼らが使う魔法の唱和の様であった。
―― どぉんなかぁたぁちぃ? ――
ギーシュが空中に浮かび上がった。
「な!だ、誰か助けt――」
―― グォボ ガァゴ メェキョ ――
ギーシュは瞬く間に血の滴る肉塊となった。
―― メリメリメリメリ グッチョグチョオォ ――
そしてギーシュであったものは歌と同じ音を立てながら板に吸い込まれる様にして消えていった。
ふと見ると、いつの間にかその板にはピーマンの様な何かが描かれていた。
―― 地獄門の中にはぁ 地獄門の中にはぁ ――
「み、皆さん!早く逃げてください!」
ようやく我に帰った彼らは逃げだすことにした。
(ここにいては殺される!)
本能がそう叫んでいた。
だが・・・
―― 亡者どもぉ 亡者どもぉ ――
突如板から現れた全身を赤い毛で覆われ、頭にプロペラを付けた怪物と
全身を緑の鱗と無数のイボに覆われた恐竜が生徒達の行く手を阻んだ。
これで逃げ場は、なくなった。
―― 人肉が好きなモンスターがぁ ――
緑の恐竜の近くにいた生徒が捕まり、顔の辺りまで持ち上げられた。
「食べちゃうぞ、食べちゃうぞ、悪戯する子は食べちゃうぞ」
緑の恐竜はそうつぶやいていた。そして・・・
―― 子供のはらわた食べちゃったぁ ――
腹部に噛みつき、辺りに血と臓物を巻き散らした。
―― 返り血2ヵ所 ――
ピッピッ
すでにその場完全に動けなくなっていたルイズの服に血が二滴散ってきた。
―― 触手がぬたり 伸びてきたぁ ――
歌に合わせて板から一本の触手が伸び、板の縁を触手の先の手のようなもので支えた。
―― こっちもでろぉり伸びてきたぁ ――
さらにもう一本触手が板から伸び、同じように縁に手をかけた。
―― 毒の煙 禍々しい色 ――
板から禍々しい煙を吹き出しながら、それは板から現れた。
現れたと同時に、先ほどまで色のなかった体に一瞬で色がついた。
―― 子供の 柔らかい 肉が好きなの だぁれだぁけぇ? ――
黄色い体、今にも血の滴り落ちそうな赤い口、深緑の帽子、どこを見ているのわからない二つの眼、左右から伸びる二本の触手。
そう、遥か昔、一人のお姉さんの手によって産み出されたものが、ハルケギニアに召喚されたのだ。
そして、それは産声をあげた。
「 ス プ ー だ あ あ あ ぁ ぁ ぁ っ ! ! 」
終わり
-「おかあさんといっしょ」のスプーを召喚